ボランティアでどこまで続けられる? まちづくり活動の課題

さまざまな地域で行われている「まちづくり」。目的のひとつに、地域の暮らしをよりよくし、地域社会を発展させたり改善することがあるだろう。そのために都市や地域の計画、開発、再生を行い、住宅やインフラの整備、公共空間の創出、地域コミュニティの活性化、環境保護などが行われる。これには、安全で快適な生活環境の提供、持続可能な発展の推進、文化や歴史の継承、地域経済の活性化なども含まれる。

また、まちづくりには行政だけでなく、住民や企業、NPOなど多様なステークホルダーが協力して進めることが重要だともいわれる。単に物理的な都市計画にとどまらず、地域住民の参加と協力にかかっているともいえよう。

JR福井駅前JR福井駅前

まちづくりはボランティアベースでの活動が主になっていることも多い。一方で、給与が担保される活動として政府が実施する「地域おこし協力隊」があるが、年齢制限があったり、住民票の移動があったり、そもそも人数制限があったりと誰でも条件に当てはまるわけではない。

そんななか、「まちづくり活動成功のカギは、成功させることができるプレイヤーの育成にある!」と活動している会社が、福井県にある。人材育成事業としてのまちづくりプレイヤースクール事業を運営している、一般社団法人地域改革だ。

JR福井駅前JR福井駅から徒歩8分。商店街の中のビルに、一般社団法人福井まちづくりセンターと一般社団法人地域改革のオフィスはある

民間主導でプロジェクトを成し遂げるには

竹本祐司さん(一般社団法人地域改革 代表理事、一般社団法人福井まちづくりセンター 代表理事)は、福井県福井市在住。20代から12年間ほど地域のまちづくりにボランティアとして携わり、活動を行う中で、多くのことを感じたという。基本的にまちづくりは、喜びや楽しさなどが感情の対価になりがちだ。しかしそれはいつかバランスが合わなくなってくる。次第にその対価が大きくならないと満足できなくなり、いつか衰退してしまう。

「長く続く活動にするためにはどうすればいいかを考え始めたんです。プレイヤーは、社会課題解決をしたいという人が多いが、稼ごうという思いが少ない人も多いんです。お金を稼ぐことが目的ではなくてもいいけれど、お金が回らないと活動が続かなくなり、人も幸せにならない。そうでないとまちづくり活動をしている意味がないと思ったんです」と竹本さんは当時を振り返る。

竹本祐司さん竹本祐司さん

プロジェクトの成功事例に、「駅前モール」企画がある。それまで商店街の中の店舗が各々で販促していたが、それは効果的ではないと判断し、福井駅前をひとつのモールとして捉え、全体で情報を発信する運営会社を立ち上げた。10年連続で空きテナントが増えていた場所だったが、1年で11店舗開業し、翌年さらに11店舗を誘致することができたという。駅前でひとつのキャンペーン企画を出す際にも、各店舗がそれぞれに予算を出し合い、お金を出し合って企画販促費を捻出。竹本さんらがリサーチして企画を練り、自ら企画書を持って参加企業を募った結果、多数の参加店舗に加えて、県内の多くの企業からの協賛も集まったそうだ。

「まちづくりは、民間企業が主導権を持って動かすべき。行政では仕組み上、どうしても合意形成に時間がかかりますが、スピーディに決定することで実行できる案件が街にはたくさんあります」。行政のできることと、民間ができることには違いがある。竹本さんたちはこうした成功事例を積み上げながら、行政が予算を使ってできなかったプロジェクトを、民間主導で成し遂げるノウハウを体得してきた。

「福井県には恐竜や福井そばなど魅力的なコンテンツがありますが、同じコンテンツを使ったイベントでも10人も集まらないイベントもあります。中心になって動かしていく人間がすべて。コンテンツ内容ではなく、やる人間が優秀で覚悟を持っていれば、まちづくりは成功すると感じます」と熱を持って続ける。

竹本祐司さん一般社団法人地域改革で実施している企画の事例
竹本祐司さん講演の様子。写真提供:一般社団法人地域改革

「まちづくりプレイヤースクール」で熱意のあるプレイヤーを育てる

現在、竹本さんが関わるまちづくりプロジェクトの8割は行政と協業するものだ。「実行は民間企業が主導となり、その活動を行政が後押しするスタイル。行政は大枠の予算や方向性をつくることが得意で、行政ならではのネットワークが生かせます」

2019年には一般社団法人地域改革を立ち上げ、県内県外でまちづくりの人材育成を始め、商店街の活性化、地域課題の解決に向けて取り組んでいる。なかでも注目したいのは、「まちづくりプレイヤースクール」だ。

まちづくりプレイヤースクールの内容まちづくりプレイヤースクールの内容
まちづくりプレイヤースクールの内容ぎっしりとノウハウが詰まった「コンテンツ管理シート」を見せていただいた。このスプレッドシートに書き込みながら、プロジェクトの全貌を固めていく

参加者は、すでにプロジェクトを抱えた担当者がほとんどだ。スクールでは、プロジェクトを進めるために必要な考え方を学ぶだけでなく、DXや商品企画、販促などそれぞれの領域の専門家とも連携した講座も開かれる。参加者全員に渡される「コンテンツ管理シート」は、プロジェクトの目的や期間、ベネフィットや現状課題点などを細かく書き込めるようになっており、竹本さんのこれまでのノウハウが詰まっている。このシートを竹本さんがチェックし、コメントしていく。「目標設定は集客なのか閲覧数なのか、プロジェクトごとに異なります。プロジェクト自体は無形なものだからこそ、なるべく型にはめて役割を明確にし、抜けをなくしていくことが重要です」

地域課題解決の施策を求める行政に、解決のためのプロジェクトをつくり、許可をもらい、それをスムーズに実行するのがプレイヤーの仕事。これは広告代理店にはできないことだと竹本さんは自負している。「まちづくりだから稼げないのではない、まちづくりじゃないと稼げないことがある。行政と民間それぞれの組織体系を生かすことで、まちづくりでないとできないモデルもあるんです」。なるほど、行政と民間の得意分野を熟知しているからこそ、スムーズに進められるプランがつくれるということなのだろう。

まちづくりプレイヤースクールの内容まちづくりプレイヤースクールの参加者には、学生も。「仕組みは同じなので、どんな規模のイベントやプロジェクトにも対応できます」と竹本さん

プロジェクトを進める上で重要なこととは?

最後に、竹本さんがプロジェクトを進めるうえで重要視しているポイントを2つお聞きした。

まず1つ目が、プロジェクトは一人でやること。「どんなプロジェクトでもすべて共通しています。共同経営がうまくいかないのは、まちづくりでも同じ。自分でやりたいことをつくり込んでから、活動をスタートする。そして活動していくうちにその価値観に惹かれる人が集まってくる。これがいい組織の増やし方だと思うんです」

そして2つ目が、予算はゼロベースから始めること。「自分でやれることから始めることです。予算がないなかで、どう利益を生み出すのか? どうビジネスにしていくのか? を考えます。多くのケースが、予算が与えられてから大人数で実施しようとするものですが、その真逆ですね(笑)。自分でできる範囲から始めないと、結果的に継続するプロジェクトになりません」

「まちづくりプレイヤースクール」の様子。写真提供:一般社団法人地域改革「まちづくりプレイヤースクール」の様子。写真提供:一般社団法人地域改革

起業家育成とまちづくりプレイヤー育成も最終的には同じだという。あえて言えば、後者には最初からさまざまなステークホルダーがいるため、初動から組織の動かし方が異なるそうだ。言葉の節々に、12年間のボランティア経験が生きている。社会起業家への意識が高まっている現代にも、必要な考え方かもしれない。いい意味で人に期待せず、自分の思いを発揮することが重要なのかもしれない。プロジェクトに熱意を持って遂行できるプレイヤーが多ければ多いほど、きっと地域は盛り上がり、組織も活性化していくのだ。

「まちづくりプレイヤースクール」の様子。写真提供:一般社団法人地域改革まちづくり団体の収益化を目的とした講演依頼も多い。写真提供:一般社団法人地域改革

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