長野県の里親制度や独自の補助制度で新規参入者の就農を支援
前回紹介した、長野県が推進する「ワインバレー構想」のひとつ、千曲川ワインバレー。
千曲川ワインバレーを形成する市町村のひとつである東御市では「Iターン者等新規参入者の就農を支援する意欲のある農業者『里親』のもとで、農業経営を開始するための2年程度の実践的な研修」を行う長野県の里親制度のほかに、東御市独自の以下のような補助制度も用意している。
●就農希望者受け入れ住宅
里親研修生用の住宅を最長3年間貸し出し
・単身者向け/月額1万1,000円(2DK 約50m2)
・家族向け/月額2万1,000円~(2LDK 約100m2)
●新規就農者等補助金事業
下記の補助金を3年間補助
・苗木購入費補助
・農地賃借料補助
・外部研修参加補助
研修については幾度か面談のうえ、具体的な就農計画を作成し、その計画に沿って受け入れを行っているという。
「新規就農希望者は、畑で野菜を作りたいという人、生食ぶどうの栽培に取り組みたいという人、ワイン用ぶどうを育てたいという人などがいますが、一時よりワイン用ぶどうの希望者は減りました。東御市の補助制度を使って研修をしながら就農を目指す人が以前は年に2~3人はいたのですが、最近は年に1人ぐらいですね。
『半農半X』を希望して、こちらに来られる時だけ農地を借りたいとの相談を受けることがありますが、そのような方法で主要農家になっていけるのかどうかが私たちはとても不安を感じるので、そう簡単に農地をお預けできないという考えはあります。逆に研修制度に参加していただけると、こちらとしても安心して農地を紹介できると考えています」(小林さん)
また、移住希望者用に1週間ほどの移住体験用の家の用意と、移住者向けのセミナーなども行っているという。
今年10回目を迎えた東御ワインフェスタ。生産者が主体となった毎年恒例のイベントに地方創生の手応えを実感
千曲川ワインバレーの担い手のひとつとしてワインづくりに励んできた東御市。手応えについてお聞きした。
「新たにワインによる産業を創出してきたわけですが、この過程で、荒廃農地の再生を推進しながら、ゼロからの産地形成を図り、全国でも有数のワイン銘醸地として認知されるなかで、各ワイナリーの取り組みにより市内産ワイン、さらには東御市のファンが増加し、持続可能な農村地域『ほどよく、田舎。とうみ』の魅力を磨き上げています。
長野県や経済団体の皆さまとは、伸び代が高い成長分野であるという認識を共有しているところであり、ワインが持つ、他の産業との親和性が高い特性を生かして、外部からの様々な新規産業の参入や投資の拡大につなげていきたいと考えています。ワインのことを知れば知るほどさまざまな可能性が見えてきているところで、ワインを基軸とした地方創生の手応えを感じています」と大塚さん。
東御市では毎年「東御ワインフェスタ」が行われており、2024年は5月11日と12日に開催された。醸造場を所有している生産者、醸造場を持たずワイン用ぶどうだけを作っている生産者を含め19の生産者から17種類のワイン用ぶどうが集まり、代表となる醸造場が責任を持って醸造し限定300本を販売したところ、即完売したという。
「今年で10回目の開催になるのですが、市のイベントではないんです。あくまで生産者さんが集まって実行委員会をつくり、東御市が補助金を出して補助をするという形で運営をしてきました。行政がイベントを企画するのではなく、やはり生産者さん自身が考えたイベントの方が、独自性が出ると考えています。それぞれのワイナリーにファンがいますので、行政がプログラムを作成して市長が挨拶をするようなイベントではなく、生産者さん主体で取り組んだ方が面白いイベントになると考えています」(花岡さん)
ワインを基軸とした地方創生が進行中の東御市。今後の課題は?
前述したワインフェスタが盛り上がりを見せるなど、東御市民はもちろん長野県内や全国でも好評の東御市のワイン。今後、さらに認知度を高めていくための課題をお聞きした。
「ワイン産業・文化が芽を出し、ワイナリー等の生産者が増加した段階の次に向かっています。今後は県や市町村、生産者、消費者、その他商工業事業者等が連携する他分野連携により、すそ野の広いワイン産業をさらに外へつなぎ、結果として産地全体の魅力を高めていきたいと考えています。そのために、千曲川ワインバレー特区連絡協議会事務局(各市町村が持ち回りで担当。現在は東御市に事務局がある)としては、各地のイベントや生産者をつなぎ、他分野連携による高付加価値化やエリア全体でのブランディングに取り組みたいと考えています」と大塚さん。
また、東御市にある15ほどのワイナリーでは、それぞれ大きなこだわりを持ってワインを製造していることから、行政がアピールしていきたいことと各ワイナリーが強く打ち出したいこととの一致が困難なため、ブランディングの方法を模索しているところだと話す。
良質なワイン用ぶどうを使った、世界品質の魅力あるワインを醸造
写真左から、東御市産業経済部の花岡 崚哉さん、大塚 伸夫さん、小林 誠司さん。東御市は今年発足20周年を迎えた。「ワインのほかにも、さまざまなアクティビティが楽しめる湯の丸高原には、陸上や水泳のオリンピック選手がトレーニングに来るグラウンドやプールがあるほか、多くの人でにぎわう道の駅『雷伝くるみの里』、歴史的遺産の海野宿などもあります。空気や水がきれいな町ですので、通過型の観光ではなく、ぜひゆっくり滞在していただきたいですね。ふるさと納税でワインもご購入いただけます」。3人の後ろに見えるのは、東御市名産のくるみの木土地に合ったワイン用ぶどうを生産して地元で加工、雇用の創出と地域の活性化に取り組み、一定の成果を挙げている東御市。最後に自慢のワインの紹介をしてもらった。
「ワインの味わいはぶどうの品種、天候、土壌、造り手によって成りますが、中でも品質は、ぶどうの出来で決まるといわれるほど。長野県では、千曲川ワインバレーをはじめ、豊かな地形と環境を生かした良質のワイン用ぶどうを実らせ、世界品質のワインが生み出されています。東御市では、千曲川の右岸、左岸で地質の違いを生かした個性の異なるワインが醸成されており、本場フランスのボルドーを彷彿させる成り立ちが注目と人気を集めています。また、東御には、老舗ワイナリーから、フレッシュな若手ワイナリーまで、さまざまなつくり手がそろいます。初心者でも楽しめる軽くさわやかなスパークリングワイン。対照的にしっかりとしたフルボディの赤。ハッと驚くフレッシュな白。野性味溢れるナチュラルワインまで、どれも世界に通用する東御の自慢のワインたちです」(大塚さん)
千曲川ワインバレーをはじめとした長野県産ワイン、そして東御市でつくられたワイン。国内はもちろん世界的なブランドになっていく過程を、楽しみに見守りたい。
■千曲川ワインバレー
https://chikumagawa-winevalley.com/
■東御市
https://www.city.tomi.nagano.jp/
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