最近、主流となっているキッチンレイアウトは?

新築やリフォームを進める中でも、消費者のキッチンプランへの優先順位は高くなっているようだ。最近では、ダイニングやリビングとキッチンをひとつの空間として設計した間取りも多くみられ、キッチンの存在は、住まいや暮らしの中心となってきている。

キッチンのレイアウトには、対面キッチンや壁付けタイプ、アイランドキッチンなどいくつかのプランがある。圧倒的に人気なのが対面式と呼ばれるものだ。TOTO キッチン・洗面事業部 商品企画グループ グループリーダーの藤本勝巳さんによると
「最近は、対面と言われるレイアウトが非常に増えています。新築の場合はほぼ対面式。新築・リフォームを合わせても、半分ぐらいは対面式で、今後も増える傾向にあると思います」と言う。

TOTO東京センターショールーム「ザ・クラッソ」の展示を前に商品特徴を語る藤本勝巳さんTOTO東京センターショールーム「ザ・クラッソ」の展示を前に商品特徴を語る藤本勝巳さん

対面式の中でも、最近注目されているのがキッチンキャビネットとダイニングテーブルを横に並べたレイアウト(横並びプラン・接続タイプなど)。クリナップ 新宿ショールーム所長の熊谷香さんは、「数年前からその兆しがありましたが、特に最近、ハウスメーカー様がお客様に提案する建築図面にも多くみられるようになりました。家族が集まるようなキッチンを希望する方が多い中、キッチンのすぐ横にダイニングというレイアウトは、暮らしのイメージもしやすいのかもしれません」と話す。

横並びのレイアウトの人気の背景は? コロナの影響も?

キッチンキャビネットとダイニングテーブルを横に並べたレイアウトの人気の背景はどのようなことが考えられるだろうか。

「コロナの影響もあるように思います。家族が家にいる時間が増えたことで、一緒に、より近い所で、調理や食事をすることが多くなったことが影響しているのではないでしょうか。在宅ワークも一般化して、リビングで仕事をする人もみられます。同じ空間でもキッチンやダイニングで調理や食事をすることがリフレッシュタイムとなることも。キッチンとダイニングが一直線のラインとなって、リビングスペースとの区切り、オンオフの切り替えになる、というケースもあるようです」と藤本さん。

クリナップ・キッチンタウン・東京のキッチンと同素材のテーブルがプランできる「CENTRO」の展示を前に、使い勝手を説明する熊谷香さん(左)と小泉恭子さん(右)クリナップ・キッチンタウン・東京のキッチンと同素材のテーブルがプランできる「CENTRO」の展示を前に、使い勝手を説明する熊谷香さん(左)と小泉恭子さん(右)

クリナップ 広報・IR課 小泉恭子さんは、「2010年代ころから、『キッチンに集う』という考え方が出てきたように感じます。はじめは家で料理教室などを行うような『サロネーゼ』が注目し、次第に一般的な住まいにも浸透してきたのではないでしょうか。コロナ前からその流れはありましたが、コロナによって加速度がついたのでは? また、女性が仕事を持つことが一般的となっている今、料理をして振舞うのではなく、一緒に作る、食べたら自分で片付ける、といった作業に適しているレイアウトが人気に。家族全員それぞれが、それぞれの時間に使う、個々の使い方がしやすいレイアウト、ということもあるのではないかと思います」と分析する。

キッチンとダイニングテーブルの横並びレイアウトのメリットデメリット

では、ダイニングテーブルを並べたプランのメリットやデメリットは何か。

プランニングや広さなどにもよるが、一般的に、キッチンキャビネットの隣にテーブルがあるため、出来た料理をすぐに出すことができ、片付けることも簡単なこと。動線が単純で短いので、家事の時短にもつながることが挙げられる。「作業性が高いのがメリットでしょう。並べることで、作るところ食べるところの距離感が近くなり、会話も増えていくのではないでしょうか」と藤本さん。

熊谷さんも「動線が短く、配膳が楽なことは魅力です。プランニングや収納方法にもよりますが、調理機能が多様化している電子レンジを家族それぞれが使用したり、必要なカトラリーを準備するなど、行き来がしやすいのもメリット。それらによって時短が図れるのも特徴でしょう」と話す。

その他、ダイニングテーブルが多様な使い方ができることも挙げられる。キッチンの作業台として活用する以外にも、勉強や仕事、趣味のスペースなど、食事以外の時間の利用もしやすい。

ダイニングテーブルだけでなく、複数の扉材をコーディネートすることでオリジナルの空間に。[STEDIA] クリナップダイニングテーブルだけでなく、複数の扉材をコーディネートすることでオリジナルの空間に。[STEDIA] クリナップ

では、デメリットは?
プランニングにもよるが、リビングまでの動線が長くなること、レイアウト変更がしにくいことなど。また、ダイニングテーブルや椅子などに油汚れがついてしまう可能性も。使い方にもよるが、雑然とした作業スペースがダイニングからの視界に入ってしまう、調理道具が見えてしまうといった声も聞かれるようだ。目に見えない音や臭いも気になる場合もあるかもしれない。

キッチンのプランに取り入れる際のポイント、プランニングの注意点

キッチンキャビネットにダイニングを並べたプランとしたい場合、まず、注意したいことは広さの問題。

キャビネットとダイニングテーブルの幅を確認し、リビングなどへ行き来ができるスペースを確保できるか慎重に検討を。特にリフォームの場合は注意が必要だ。配管の関係で自由に位置を変えることができない場合もあるので、早めに検討することが大切だろう。

藤本さんは、「たとえば、I型のカウンター幅が270センチ、テーブルが150センチとすると、4メートル以上の空間が必要になります。リフォームの場合は難しいケースも多いようですね。その場合は、Ⅱ列型のプランにするのもひとつの方法です。たとえば、シンクのあるキャビネットをリビング側に、コンロやIHクッキングヒーターのあるキャビネットを壁付けとすることで、テーブルと並べるキャビネットの横幅が小さくなり、限られたスペースでも設置することが可能です」とアドバイスする。

グレーのカウンターと明るい木目調の扉が明るい空間を生み出す。[ザ・クラッソ]  TOTOグレーのカウンターと明るい木目調の扉が明るい空間を生み出す。[ザ・クラッソ] TOTO

「テーブルを横に並べるレイアウトの場合は、実際には、Ⅱ列型プランの提案がほとんどです」と話すのは熊谷さん。「シンクとコンロ(IH)が同列で並ぶI型プランの方が重い鍋など横移動はさせやすいかもしれませんが、シンクとコンロが別々で前後となるⅡ列型プランの場合では、振り向けばすぐ作業できるので動線が短く使い勝手がいい、という方もいらっしゃいます」(熊谷さん)。

また、調理器具など雑然としたものが見えてしまい、食事中でもくつろげない、という不安を解消するには、使いやすくしまいやすい収納をプランニングしておくことも重要なポイントだ。TOTO 販売統括本部 キッチン商品営業グループの丸山頼子さんは「最近では、家電製品やゴミ箱まで収納できる壁面の収納とセットで検討される方も多くみられます。壁面収納とすることですっきりとしたインテリアを実現できます」とアドバイスする。

熊谷さんも「キッチンをきれいに保つためには、調理道具や食器類などの指定席を作ることが大切です。持ち物に適した空間の確保、収納方法を検討することがポイント。最近では、デザイン性にこだわった調理家電も多く、『見せ家電』として、好みの家電機器を並べるスペースを確保する方もいらっしゃいます」と話す。

片付けやすい、という意味では、食器洗浄乾燥機を取り入れるケースも増えている。丸山さんによると、「食器洗浄乾燥機の設置率は約6割程度」とか。最近、食器洗浄乾燥機は大型化しており、調理道具も洗うことが可能な大型のフロントオープンタイプは海外製品だけでなく国産でもみられるようになってきた。朝昼晩で使う食器や調理器具をセットすることができるので、収納スペースとして考える方も多いようだ。

キッチンの家具化は進むのか?

数年前からキッチンのひとつの傾向として「家具化」がある。使い勝手のよさやお手入れのしやすさなどの性能は備わった上で、よりデザイン性を高めた商品も多くみられる。リビングから見えるキッチンは、どこから見ても美しいデザインが求められるのだろう。特に空間に馴染むタイプは増えてきているようだ。

インテリアデザインの傾向と同様に、キッチンでも人気はナチュラル系やグレージュ系。強いブラック系から少し柔らかい黒からグレー系に移行しているという。熊谷さんは「扉とカウンタートップとのかたまり感を大事にした提案をしています。黒系の人工大理石やセラミック、バイブレーションを施したダーク色のステンレスなども揃えているので、空間とのコーディネートもしやすいのではないでしょうか」と話す。

「家具のように、リビングにあっても違和感のないデザイン傾向は強まると思います。扉材であれば、木目がはっきり見えるタイプ、石の柄が分かるようなタイプといった、素材を感じられるものがトレンドとなっています」と藤本さん。

石目柄の扉、光る水面を模したパターンのカウンターを取り入れたノイズレスデザインのキッチン。 [ザ・クラッソ] TOTO石目柄の扉、光る水面を模したパターンのカウンターを取り入れたノイズレスデザインのキッチン。 [ザ・クラッソ] TOTO

キッチンは、いわゆる住宅設備機器ではなく、空間コーディネートの主たるアイテムとなってきており、リビングやダイニングのインテリアと同時にトータルで検討することが重要になってきている。

藤本さんも「住まいの奥にあったキッチンは、今やリビングキッチンとも呼ばれるようになり、その位置づけが大きく変わった住宅設備機器だと思います。家族みんなが集い、使用するようになると、より明るく、開放的なものが求められるのではないでしょうか」と話す。TOTOの「住宅設備と生活意識に関する実態調査」でも「キッチンは明るい空間にしたい」という声が多いという。

「商品開発としては、オープンなキッチンの場合、面が大きいキッチンカウンター(天板)は重要なアイテムだと考えています。独自のクリスタルカウンターでは、太陽の光や照明によっても変化するような絵画のようなタイプを新しく揃えるなど、気持ちが明るくなるような素材を提案しています」(藤本さん)。

新しいキッチンのトレンドは「誰もが、いつでも、使いやすい、動きやすい」

また、クリナップの「キッチン白書2024」によると、キッチン空間は、「主婦の城」から「家族でシェア」する場所へ、という傾向がみられるという。小泉さんは、「これからは、キッチンの使い方のルールを家族で共有し、誰もが使いやすいようなキッチンに変化していく可能性があるように感じています」と話す。キッチンキャビネットにダイニングを並べたレイアウトは、誰もが作業しやすく、動きやすいという意味では、これからのキッチンのひとつの形と言えるかもしれない。

その他、フレキシブル、モビリティといったことも考えられるのではないか、と小泉さんは話す。「キッチンの要素をコンパクトにしたという商品(HIROMA)は、テーブル部分の置き方が自由になるため、部屋の使い方に合わせたり、模様替えもしやすい。他にも流しのユニットとIHのユニットを分離して持ち運びできる商品(モビリティキッチン)なども研究・発表しています」とか。

シンプルな要素だけで構成された、家事や仕事にフレキシブルに使えるコンパクトなキッチン。[HIROMA] クリナップシンプルな要素だけで構成された、家事や仕事にフレキシブルに使えるコンパクトなキッチン。[HIROMA] クリナップ

誰もがキッチンに立ち、さまざまな調理機器や家電を用いて調理をする時代、冷凍食品やミールキット、フードサービスの充実など、食事に対する意識も変わってきている。SNSによって、多様なスタイル、デザインを身近に感じることができる昨今、プランニングの際には、調理する場としてだけのキッチン空間を考えるだけでなく、「水」と「火」を使うことができるスペースで、どういう時間を、どう過ごすのか、また過ごしたいのかを考えることが必要なのではないだろうか。


協力/ クリナップ TOTO  

公開日: