住まいや住宅にまつわる総合イベント、特別企画は「マンション防災」
2024年5月30日・31日、東京ビッグサイトにて「住まい・建築・不動産の総合展(BREX)」が行われた。当展示会では、不動産に関係する企業や団体等がブース出展や講演を行うもので、業界のトレンドや最新情報がわかる場となっている。今回は2日間で1万4,470名が来場した。
今回の展示会では、「住宅ビジネスフェア」「非住宅 木造建築フェア」「マンション総合EXPO」「マンション管理組合 サポート展」「賃貸住宅 管理・仲介 EXPO」の5つの専門展に加え、「マンション防災」の特別企画が行われた。2024年1月の能登半島地震を受け、防災に対する意識や需要が高まるなか、さまざまな角度からのマンション防災に関する取り組みやサービスが出展されていた。
マンションでは、家具の転倒防止や防災グッズの用意といった個人でできる対策だけでなく、自治会や管理組合を中心としたマンション全体での防災への取り組みが求められる。今回の特別企画では、現在マンションで暮らす人にとって、またこれからマンションを購入したい人にとって、参考になりそうな事例が随所に見られた。いくつか紹介していこう。
グッドデザイン賞を受賞した「見せる防災」災害用備蓄スタンド
防災備蓄として出展されていたのが、ファシル株式会社の災害用備蓄スタンド「BISTA(ビスタ)」だ。マンションやオフィス等に設置する災害用備蓄スタンドで、2021年グッドデザイン賞、防災グッズ大賞2021備蓄部門大賞を受賞している。
特徴的なのは、デザイン性の高いつくり。シンプルでスッキリした家具のような外見だ。一般的には見えない場所に置かれやすい防災備蓄品を「見せる防災」としてあえて日々目にする場所に設置することで、防災意識を高め、緊急時に備蓄場所を思い出しやすくすることを狙っているという。
中には、スマートフォンを同時に10台充電できる充電器やカセットボンベ式発電機、非常用ランタンや携帯トイレなどがそろっているが、多くの備蓄セットに含まれていることが多い食料や飲料水はセット内容には入っていない。ブースの担当者に理由を尋ねると、「災害発生時、まず最初にごはんを食べようとはなりにくく、避難や連絡、避難生活環境の確保が先決です。BISTAには災害初動時に必要となる物を選んで入れています」とのことだった。いざというときに真っ先に必要な物がマンション共用部に備えてあるのは、住民の安心感につながるだろう。
マンションからの避難手段を確保、階段対応車いす
アビリティーズ・ケアネット株式会社のブースでは、高齢者や障がい者の災害時の移動を支援する車いす「キャリダン」と「階段昇降車ステアチェア」が出展されていた。これらは車輪部についているクローラーにより、災害時に車いすの階段移動を可能とする。キャリダンは階段を下ることができ、階段昇降車ステアチェアはバッテリーを搭載しているため下りに限らず階段の昇降ができる。また、コンパクトに折りたためるため、収納に場所をとらない。
担当者によると、「もともとは福祉施設へのシェアが主でしたが、近年はマンション管理組合からの相談が増えており、今回当展示会に初出展することになりました」とのことだった。高齢化が一層進む中、災害時のマンションからの避難手段の確保は大きな課題となる。この事例のように、福祉業界からの参入やサービス連携が広がっていくかもしれない。
使い方次第で災害時にも役立つマンション内設備
直接的に防災を目的としていなくても、使い方によっては災害時に役立つものもある。そのうちのひとつが、太田商事株式会社が出展していたマンション設置型無人店舗「D」 だ。
こちらは、マンション共用部の空きスペースに設置することで、入居者の入店・会計・支払いを全てスマートフォン上で済ませることができる。トイレットペーパーやティッシュペーパー、おむつなどの日用消耗品が主な品ぞろえである。
平時には日々の買い物を便利にしてくれる無人店舗だが、災害時には備蓄倉庫としての役割も果たすだろう。緊急時には日用消耗品がコンビニやスーパーなどで買い占められるような報道もよく目にするが、そういったときでも一時的にマンション内で確保されていることは大きな安心材料となる。
また、LIFULL ArchiTechが出展していた「インスタントハウス」も使い方次第で防災面での活躍が期待できる。どこにでも設置できるインスタントハウスは、マンション共用部の空きスペースや駐車場・駐輪場にも設置が可能だ。断熱材が入っていて、比較的快適な温度で過ごすことができる。能登半島地震の際には簡易住宅として現地に寄付をしたという実績もあり、マンション内に設置しておけば、災害時の避難スペースとしての役割を果たすだろう。
防災訓練の参加率を高めるオンライン防災訓練
消防法では、マンションでは一定回数の消防訓練を防火管理者の責務としているが、実態としてはなかなか人が集まらないのが現状である。そんな課題を解決するような、リモートで行うことができる防災訓練の出展があった。
大和ハウスグループの大和ライフネクスト株式会社は、横浜市消防局の監修を受けた視聴型防災訓練「VR消防訓練」を提供している。災害時の再現映像を視聴することで、防災対策を喚起するものだ。再現映像はVR技術により360度見ることができ、よりリアルに防災を学べる。また、映像内では対策方法がクイズ形式で出され、災害時即座に行動しなければいけない緊急性を体感できた。
住民は都合のよいタイミングで視聴することができるため、防災訓練参加のハードルが下がることが期待できる。マンション管理者は各世帯の視聴状況を確認でき、未実施者への声掛けといった対応もできそうだ。担当者は、「どれだけ防災についてのハード面を充実させても、使う側の意識が高まらないと意味がありません。まずは意識を上げるところにアプローチしていきたいです」と話していた。その点、このサービスは防災訓練を身近にすることに寄与するだろう。
リモートで行うことができる防災訓練でもうひとつ、株式会社フラップゼロアルファは「リモート型 防災アトラクション®」を出展していた。マンション内の各世帯をオンラインでつないで、謎解きの形式で楽しみながら訓練を行えるものだ。後回しになりがちな防災訓練も、「楽しさによってモチベーションを高めることで、子どもも含め参加率は高いです」とのことだった。
災害時の電力確保をワンストップでサポート
株式会社エクシオテックが出展していたのは、マンションへの太陽光・蓄電池・V2H(Vehicle to Home)の導入をワンストップでサポートするサービスだ。具体的には、太陽光発電でつくったエネルギーを蓄電機にためておくことで災害時に活用することができる。また、通常は車への送電のみのEV車だが、V2Hの導入により、災害時にはEV車から住居に電力を送ることができるようになる。セットで導入することで、災害時の電力対策が強化されるだろう。
このサービスで取り付ける太陽光発電は、屋根を傷つけずに設置できる「低重心架台®」を採用している。また、既存マンションであっても足場やクレーンを使用せずに短期間での設置が可能とのことだ。補助金の申請から設置工事の運用までをワンストップで行うため、導入の手間が少ないところもポイントだ。
災害時の電力自立を考える「シンポジウム~脱炭素×地域防災×マンション~」
シンポジウムの様子。左からRing-ndx(株)代表取締役 蔭山貴弘氏、環境大臣政務官 参議院議員 朝日健太郎氏、(株)LEALIAN代表取締役 佐藤俊氏、Ring-ndx(株)戸部素尚氏。Ring-ndx(株)はマンション管理のコンサルティングを、(株)LEALIAN小型バッテリーのシェアリングモデルを基にした電カネットワークの構築を手がけている
特別講演「シンポジウム~脱炭素×地域防災×マンション~」では、Ring-ndx株式会社の蔭山貴弘氏をモデレーターに、環境大臣政務官・参議院議員の朝日健太郎氏、株式会社LEALIANの佐藤俊氏、Ring-ndxの戸部素尚氏によるトークセッションが行われた。
それぞれの取り組みを紹介する前半パートでは、戸部氏は「マンション防災を考えるうえで、災害時のほとんどの問題を解決するベースとなるのは電気です。災害時は、マンション内の上下の移動をどうやって可能にするかが重要で、その電気をいかに確保するかが最優先で取り組むべき課題です」と、現場視点でマンションの電力自立についての課題を投げかけ、電力を軸にした防災についてのトークセッションに続いた。
災害時におけるマンションの電力自立について、解決手段のひとつとなりうると紹介されたのが、LEALIANのポータブルバッテリーを動力とするEV車だ。LEALIAN代表取締役の佐藤氏は、「電気自動車は一つのアプリケーションであり、エネルギーの使い先を車の走行だけでなく、もっと多様に展開できればより利便性の高い世界がつくれるんじゃないかと考えています」と語り、普段はEV車のバッテリーとして機能する着脱式のポータブルバッテリーを、災害時にはマンションへ運ぶという方法を提案した。
EV車の災害時のバッテリー活用に対し戸部氏は、現在蓄電池に対する補助金はあるものの、EV車については現状補助金がないことを課題として指摘。「走る蓄電池」ともなりうるEV車にも補助金を出すことで、防災観点での導入が進むのではないかと提案した。
朝日氏は、「脱炭素先行地域」という政策を紹介。災害時の電力自立をそれぞれのマンションにとどまらず地域単位で、かつ省エネ計画とうまく掛け合わせることで、補助金を活用できる可能性を提案した。個々のマンション単位から、地域での連携を強化していくことが地域防災を進めていく鍵となるだろう。
個人の対策だけでなく、マンション全体としての防災が必要であるマンション防災。新たな取り組みやサービスが展開されている中で、これからのマンション探しでは防災対策の充実性も考慮して選ぶことが重要となってくるだろう。
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