移住者増の流山市。人口増加率が6年連続1位の理由とは

流山おおたかの森駅周辺

人口減少社会の中で、住民が大きく増え続けている自治体がある。それは千葉県北西部にある流山市だ。市という自治体レベルで見ると、流山市の人口増加率は全国の市で6年連続トップとなっている。

2023年1月1日時点の人口は20万9,099人、世帯数は8万7,988世帯である。面積は35.32キロ平米であり、葛飾区(約34キロ平米)よりはやや大きく、江東区(約40キロ平米)よりは狭いという自治体となっている。人口は10年間で約4.2万人が増加しており、特に35～39歳代の人口のボリュームが最も多く増えている。子育て世帯が多いことから、4歳以下の子どもの数も増えており、合計特殊出生率は全国平均よりも高い。

流山市といえば、みりんが有名である。流山市は白みりんの発祥地とされており、みりんの生産量も日本一の自治体である。みりんは千葉県全体で生産しているわけでもないが、流山市があるおかげで都道府県別に見てもみりんの生産量は千葉県が群を抜いて1位となっている。

また、流山市には営業距離がわずか5.7kmしかない流鉄流山線というローカル列車が通っている。流山線はJR常磐線の馬橋駅を起点とし、終点の流山駅までの駅数は6駅であり、馬橋駅から流山駅までの所要時間も13分という非常に短い路線となっている。

流山市は東京都と千葉県の境を流れている江戸川に面している。千葉県で江戸川に面している自治体は、浦安市、市川市、松戸市、流山市、野田市である。浦安市や市川市、松戸市は東京都に近接していることから、人口も多い自治体として知られている。

流山市も浦安市等と同じ江戸川沿いにある自治体であることから、立地としてのポテンシャルは非常に高い市となっている。

流山市に移住者が増えている大きな理由は、なんといってもつくばエクスプレスが通ったことが大きい。つくばエクスプレスは、2005年に開業した比較的新しい鉄道である。流山市には、つくばエクスプレス線の「南流山駅」と「流山セントラルパーク駅」、「流山おおたかの森駅」の3駅がある。

流山市は東京に近接している立地のポテンシャルが高い自治体であったが、つくばエクスプレスが開業する前は鉄道アクセスの弱い地域であった。流山市には流鉄流山線やJR武蔵野線、東武アーバンパークライン(東武野田線)といった路線はあったが、これらの路線は千葉県と埼玉県を結ぶ路線であり、東京都心からは直接アクセスできない線であった。従来、都内から流山駅に行くにはJR常磐線で松戸市の馬橋駅まで行き、そこから流鉄流山線に乗り換えるとったルートとなっていたため、東京とのアクセスが困難な状況であった。このように東京に近いにもかかわらず東京に行きにくかった流山市は、つくばエクスプレスが開業したことで、一気に東京へのアクセスが改善された。

つくばエクスプレス 南流山駅周辺

例えば、つくばエクスプレスを使わずにJR常磐線や武蔵野線を使って秋葉原駅から南流山駅まで行くとすると、約50分の時間がかかる。一方で、つくばエクスプレスを使うと、秋葉原駅から南流山駅までは25分で行けるようになる。秋葉原までの時間が半分に縮まったため、利便性は大きく向上したといえる。ちなみに秋葉原から25分かけて反対方向に向かうと、阿佐ヶ谷や荻窪あたりが該当する。
阿佐ヶ谷や荻窪までの距離感と考えれば、流山市はかなり都心に近い。2021年の中古マンションの平均価格※を見ると南流山駅は2,364万円、荻窪駅は4,502万円となっている。

※出典：公益財団法人東日本不動産流通機構「年報マーケットウォッチ2021年・年度 6. 沿線・駅別成約状況 表29中古マンション」
http://www.reins.or.jp/pdf/trend/nmw/NMW_2021/NMW_2021_1_29.pdf

秋葉原から同じ距離感であるにもかかわらず中古マンションの価格帯は約半額であるため、都内で働く子育て世帯にとっては魅力的な街といえる。

また、つくばエクスプレスは、千葉県の中では珍しく隣接県から人を呼び込める路線にもなっている。千葉県は半島県であるため、基本的に他県からの通過地点になりにくい。しかしながら、つくばエクスプレスは茨城県を背後に抱えており、茨城からも人を呼び寄せるポテンシャルを有している。流山市は東京都と茨城県の間に挟まれた立地にあるため、東京都からも茨城県からも人を呼び寄せやすくなっている。

さらに、流山市はつくばエクスプレスが開業した後に街づくりが行われてきたことから、街全体が新しい点も強みである。特に、流山おおたかの森駅周辺は商業施設や歩道の広い道路、公園等が計画的に整備されており、暮らしやすい街となっている。千葉県には千葉市美浜区の海浜幕張駅や印西市の千葉ニュータウン駅といった大規模に整備された街があるが、これらの街はいずれも住宅地としての人気が高いという実績がある。流山おおたかの森駅も海浜幕張駅や千葉ニュータウン駅のように広域的に整備されており、さらに新しくてきれいであることから、周辺から人を引き込むことができる街となっている。

つくばエクスプレス,流山おおたかの森駅

流山市は移住支援や子育て支援の施策を実施している

千葉県や流山市では、複数の子育て支援制度を設けている。給付金に関しては、国による支援として「令和5年度 子育て世帯生活支援特別給付金」で児童1人当たり5万円が給付される。また、2023年7月時点では物価高騰対策として、千葉県で「子どもへの臨時給付金」という制度も設けられており、さらに児童1人当たり1万円の給付もある。さらに、3～5歳児クラスに在籍する幼稚園、保育園、認定こども園等の利用料も無償化されている。

気になる待機児童数であるが、2021年には0人を達成したと公表されている。2023年7月時点においても、3人以上の空きのある保育園も複数存在し、保育園は入ることができそうである。また、小学校に入学したら学童保育(流山市では学童クラブと呼んでいる)に入れるかも気になるところだと思われる。流山市は学童クラブも充実しており、2023年4月時点では小学校に併設されている学童クラブに待機児童は発生していない。流山市では、定員に達している場合でも、支援員を増員するなどして児童の安全を確保するとしており、学童クラブにも比較的安易に入れそうである。

出典：流山市
待機児童数0人
https://www.city.nagareyama.chiba.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/031/532/r3_1_shiryou1.pdf

保育園の空き状況
https://www.city.nagareyama.chiba.jp/life/1001107/1001162/1036906.html

学童クラブの空き状況
https://www.city.nagareyama.chiba.jp/life/1001107/1001221/1041568.html

流山市では、「流山市住み替え支援制度」という制度を設けている。流山市住み替え支援制度とは、自宅の売却を考えているシニア世代と住宅を購入したい子育て世帯をマッチングする制度である。

流山市が中心となって不動産会社や設計事務所、工務店等を一つのチームとしてまとめており、中古住宅の購入希望者向けに市が相談会を行っている。中古住宅の購入に関し、市が安心して相談できる窓口を市が設け、移住支援を図っている。

流山市住み替え支援制度
https://www.city.nagareyama.chiba.jp/life/1001891/1001892/1001928.html

流山市は発展の原動力となったつくばエクスプレスの利便性が増すことで、さらに住みよい街になることが期待される。つくばエクスプレスは、現在は秋葉原駅が終点であるが、今後は東京駅まで延伸する計画がある。具体的な開業時期は未定であるが、東京駅まで延伸すればつくばエクスプレスの価値はさらに高まると思料される。

つくばエクスプレスの延伸にはさらに楽しみがあり、東京都の新しい地下鉄である臨海地域地下鉄との接続も目論まれている。臨海地域地下鉄とは、東京駅から有明・東京ビッグサイトまでを繋ぐ新しい地下鉄構想である。銀座や築地、勝どき、晴海といった中央区を縦断し、江東区の豊洲市場や有明・東京ビッグサイトまで貫く地下鉄である。

中央区や江東区の湾岸エリアは発展著しいエリアであるため、つくばエクスプレスが臨海地域地下鉄と接続すれば流山市の利便性はさらに向上する。しかも、臨海地域地下鉄はさらに羽田空港まで延伸する構想も存在している。羽田空港まで延伸すれば、流山市から羽田空港まで直通で行けることから、日本全国の各都市へアクセスがしやすい市へと生まれ変わる。

かつて東京に近くても東京に出るまで時間がかかっていた流山市であるが、つくばエクスプレスが開通したことで大きく発展することになった。つくばエクスプレスが羽田空港まで延伸すれば、流山市の魅力はさらに高まると見込まれ、今後も魅力的な街となることが期待される。

つくばエクスプレスの延伸によりさらに交通利便性が向上することが期待される