八王子市が刑務所跡地の利用方法を検討

「ミライテラスプロジェクト」の予定地。旧刑務所用地と旧宿舎用地からなり、JR八王子駅から南方向へ約800mと好立地(出所:八王子市資料)「ミライテラスプロジェクト」の予定地。旧刑務所用地と旧宿舎用地からなり、JR八王子駅から南方向へ約800mと好立地(出所:八王子市資料)

東京都心から西へ約40㎞に位置する八王子市。人口約58万人を擁し、21の大学がある学園都市でもある。また、登山客数が世界一といわれる高尾山がある自治体としても知られている。

その八王子市の中心地であるJR八王子駅周辺は、北口と南口で雰囲気が異なる。北口はホテルや商業施設が立ち並ぶ活気ある街並み。一方で南口は閑静な住宅街が広がる落ち着いたエリアだ。この南口エリアには、100年以上にわたって八王子医療刑務所があった。同施設は1878年に神奈川県監獄八王子監獄署として開庁し、1951年より医療刑務所となっていたが、2018年に東京昭島市へ東日本成人矯正医療センターとして移転。その跡地の面積は5万2,000m2で、東京ドームの約1.1倍と広大だ。しかも八王子駅から徒歩約10分と利便性も高い。このようなことから同市は国からこの敷地を購入し、利用方法を検討してきた。そして2023年3月に発表されたのが、「ミライテラスプロジェクト」だ。

医療刑務所とはどのような施設なのか

同事業の内容に入る前に、医療刑務所とは何かを説明しよう。そもそも刑務所と拘置所の違いがわからない人もいるだろう。前者は裁判で有罪を宣告された受刑者が入る施設。後者は主に判決が確定していない刑事被告人、未決拘禁者、被疑者が入る施設だ。ちなみに死刑を言い渡された死刑囚は刑務所ではなく拘置所に収容され、死刑も一部を除き拘置所で執行される。

刑務所には、複数の種類がある。例えば女子刑務所や少年刑務所(矯正施設の少年院とは別)のほか、犯罪傾向の進んでいない者が入る刑務所、進んでいる者が入る刑務所などがある。そのなかで医療刑務所は、重い病気や精神疾患などで普通の刑務所での服役に耐えられない受刑者を収容する刑務所だ。このように書くと、病気を理由に刑を免れているように思えるかもしれない。しかし通常の病院とは異なり、受刑者は常に監視され、たとえ看護師が相手であっても私語厳禁など厳しい規律がある。

刑務所といえばゴミ処理施設や葬儀場のように、いわゆる嫌悪施設とされる。しかし八王子医療刑務所は、前述のように2018年に移転した。その跡地を市民の集いの場として活用する計画が進行中というわけだ。

活用方針と将来のイメージ

八王子市は、同跡地の活用方針と将来のイメージを以下のように定めている。

活用方針

• 本用地は市の中心駅であるJR 八王子駅から徒歩圏の大規模用地であり、まちづくりの核となる用地であることから、地域の活力・魅力の創出に向けた活用を図ります。

• まちの新たな活力・魅力を創出するには民間活力も不可欠な一方、効率性・利便性とともに生活の豊かさを感じるまちづくりを進めるため、公共的視点での活用を前提とします。

• そこで用地の活用にあたっては、将来の定住人口の維持等を見据え、「※QOL が高まること」、「家庭や職場(学校)と異なる第三の居場所(サードプレイス)を提供すること」を目指します。


※QOL:物質的だけでなく精神的な豊かさを含む生活の質。

将来のイメージ

• にぎわい・集いの視点

出会いと集いがにぎわいや交流を生み、何度も訪れたいまちの「顔」となる場

• 文化・学びの視点

歴史・文化等の地域資源に触れることでまちの魅力を再発見し、未来を考える場

• 憩い・癒しの視点

居心地が良く楽しく過ごせるお気に入りの憩い・癒しの場

• 防災の視点

災害発生時の一時的な避難スペースや災害支援活動の場

• 環境の視点

用地活用による環境変化に対応するとともに、まち・ひとへのやさしさが生まれる場

3月に具体的な開発計画を発表

そして2023年3月、八王子市から同整備事業を委託された八王子ミライテラスパートナーズ株式会社より「ミライテラスプロジェクト」の説明があった。

施設概要

敷地面積:約5万2,047m2
延床面積:約8,120m2(レストラン棟、大屋根広場、その他付属棟の床面積は含まず)
駐車場:230台(車いす駐車場あり)

同施設は、「集いの拠点」として2026年10月に誕生予定。学び・交流・防災の3つの機能を備えた拠点として、次の4つのエリア・施設を計画している。

みんなの公園

山に囲まれた八王子の風土を感じるシンボル空間。「8つの山」と「3つの広場」を整備し、高尾山などの山並みが眺められる展望広場も設ける。

憩いライブラリ

目的や気分で居場所を選択できるサードプレイス。本を自由に公園へ持ち出せるとともに、絵本を満載した車を走らせ「園内どこでも図書館」を実現する。

交流スペース

公園とライブラリ・ミュージアムをシームレスにつなぐことで人と人、人と情報が出合う場とする。また、市民の創作作品の展示やピアノ演奏など、さまざまな活動の場となる。

歴史・郷土ミュージアム

養蚕や織物で発展してきた八王子市は、「桑都」と称され、2020年度には文化庁より日本遺産に認定されている。ミュージアムでは、桑都物語を軸に八王子の持つさまざまな魅力を展示。大屋根広場と一体の緑に包まれた活動展示室には、木造舞台を設置する。

また、子どもから高齢者、障がい者、オールジェンダーまですべての人が利用しやすいユニバーサルデザインを採用。災害時には7,000人の一時避難が可能で、3日程度は約1,000人が一時滞在できる。

施設全体のイメージ。山に囲まれた八王子市を象徴する「8つの山」と「3つの広場」を整備。そのうえで「憩いライブラリ」など家庭や職場(学校)と異なるサードプレイスも創出する(出所:八王子市資料)施設全体のイメージ。山に囲まれた八王子市を象徴する「8つの山」と「3つの広場」を整備。そのうえで「憩いライブラリ」など家庭や職場(学校)と異なるサードプレイスも創出する(出所:八王子市資料)

周辺の住環境がどのように変化するのかに期待

八王子市を含む多摩地域には、井の頭恩賜公園(武蔵野市・三鷹市)や国営昭和記念公園(立川市・昭島市)など駅近で自然豊かな公園が多い。しかし、JR八王子駅周辺にはなかった。今回の開発事業によって、周辺の雰囲気や住宅地としての価値が、どのように変化するのか期待したい。

旧八王子医療刑務所。この殺風景な環境が、どれだけ彩り豊かに生まれ変わるのか楽しみだ旧八王子医療刑務所。この殺風景な環境が、どれだけ彩り豊かに生まれ変わるのか楽しみだ

公開日:

ホームズ君

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