「子供を守る」住宅確保促進事業とは

近年、子どもがマンションのベランダから転落する事故が大きく報道されている。東京都はマンションの割合が高く、かつ、出生率が低いことから、マンションでも子育てしやすい環境を整備することが課題となっている。

2023年4月7日、東京都は「子供を守る」住宅確保促進事業を公表した。当該事業は集合住宅に住む子育て世帯が住戸の安全性の向上のためのリフォームを行う場合、補助金が出るという制度だ。

「子供を守る」住宅確保促進事業
https://www.juutakuseisaku.metro.tokyo.lg.jp/bunyabetsu/jutaku_fudosan/child-protect-jigyo.html

補助金でリフォームを促進することにより、子育て世帯の居住の安全性等を高め、東京都を子育てに適した住環境として整備していくことを目的としている。

ベランダの足がかりとなってしまう位置にエアコンの室外機が設置されているのは子どもにとって危険な状況といえるベランダの足がかりとなってしまう位置にエアコンの室外機が設置されているのは子どもにとって危険な状況といえる

マンションからの転落は、子どもが手すりをよじ登ってしまうことが主な原因となっている。マンションの手すりの高さは、建築基準法施行令で1.1m以上と定められているため、多くのマンションの手すりの高さは1.1mとなっている。東京都は小さな子どもが1.1mの高さの手すりならよじ登ることができる動画を公開しており、確かに1.1mという高さだけでは転落事故は防止できないといえそうだ。

ただし、実際に転落事故が生じているケースでは、ベランダに1.1mの手すりを容易に上ることができてしまう「足がかり」が存在することが多いとされている。足がかりの例としては、椅子やテーブル、荷物、エアコンの室外機、プランターなどが挙げられる。これらの足がかりが手すりに近接していると、子どもでも簡単に手すりをよじ登れてしまう。転落事故を防止するには、まずは「足がかりとなるものは置かない」といったことも対策となる。仮に置く場合でも、「手すりから距離を離して動かせないように固定する」といったことが効果的な対策である。

補助内容

「子供を守る」住宅確保促進事業では、マンションの住戸の安全性を高める工事が補助の対象となる。補助額は上限額が30万円となっており、補助対象工事費の3分の2までが補助される。例えば、補助対象となる工事が45万円の場合には、3分の2かつ上限額である30万円の補助が出され、実質的に15万円の負担で45万円の工事ができるということだ。対象となる工事は安全対策と防犯対策の2つであり、以下のような工事が示されている。

【安全対策】

(1)段差解消工事
(2)転倒防止等手すり設置(玄関、トイレ、洗面所、浴室)
(3)転落防止手すり設置(バルコニーや窓)
(4)バルコニー内エアコン室外機等の設置場所へ高さ1,100mm以上の柵の設置
(5)バルコニーに面する窓へロック付や錠付クレセント等の設置
(6)バルコニーに面する窓へ開口制限ストッパーや補助錠等の設置
(7)バルコニーに面する窓へ子供の手の届かない位置にクレセントの設置
(8)バルコニー内にチャイルドロック等が付いた避難ハッチの設置
(9)浴室の扉へ子供の手の届かない位置に外からの解錠が可能な鍵の設置
(10)火傷防止カバー付き水栓、サーモスタット式水栓等の設置
(11)トイレの扉へ外から解錠が可能な鍵の設置
(12)チャイルドロックや立消え安全装置等が付いた調理器の設置
(13)ドアや扉への指挟み防止対策の実施
(14)チャイルドフェンス等の設置
(15)シャッター付き等感電防止コンセントの設置
(16)壁、柱等の出隅の面取り対策の実施

【防犯対策】

(17)防犯性の高い玄関ドア等の設置
(18)住戸へのカメラ付きインターホンの設置
(19)防犯フィルム、防犯ガラス、面格子等の設置

例えば、「(5)バルコニーに面する窓へ子供の手の届かない位置にクレセントの設置」は、親が留守中に子どもが勝手にバルコニーに出ることを防ぐ対策となる。転落事故は、子どもがバルコニーに出なければ発生を大きく減らすことができる。必ずしも大がかりな工事をしなくても、効果的な対策はあるということは知っておきたい。

東京都「知事の部屋」/記者会見(令和5年4月7日)より東京都「知事の部屋」/記者会見(令和5年4月7日)より

支給要件

申請期間に関しては、2023年4月7日から2024年2月28日までとなっている。
また、補助申請をできる人は、以下の要件を満たす必要がある。

【申請者の要件】

次のいずれかに該当する居住世帯で、同居者に12歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある子どもがいること。

・分譲マンションの区分所有者で、自身が居住していること。
・賃貸マンションに居住していること(分譲マンションの区分所有者が賃貸している住戸の賃借人を含む)。

ただし、補助金を受けようとする改修工事が、これまでに「子供を守る」住宅確保促進事業による補助を受けている場合は除く。

賃貸マンションに居住している借主も利用できるという点が特徴だ。

補助制度の利用にあたっての注意点

分譲マンションに居住の場合、バルコニーのリフォームについては事前に管理規約なども確認しておきたい分譲マンションに居住の場合、バルコニーのリフォームについては事前に管理規約なども確認しておきたい

「子供を守る」住宅確保促進事業では、マンションに住む所有者や借主の個人が申請対象者となっている。分譲マンションの場合、バルコニーは共用部であることからバルコニーに関しては所有者でも勝手にリフォームをすることはできない。分譲マンションの所有者がバルコニーやベランダなどの共用部分にかかる改修工事を実施する場合には、申請の際、当該工事の実施について管理組合の承認を得たことが確認できる書類の写しが必要となっている。

例えば、補助対象となる工事の中に「(4)バルコニー内エアコン室外機等の設置場所へ高さ1,100mm以上の柵の設置」というものがある。エアコンの室外機が足がかりとなることを防げるため、転落防止としては効果的であるが物件によってはバルコニーの避難経路をふさいでしまうこともある。避難経路をふさいでしまう場合には、管理組合の承認が得られない可能性がある。

管理組合の承認が得られない場合には、例えば「バルコニーに面する窓へロック付や錠付クレセント等の設置」などの専有部側でできる工事を選択することが適切だ。一方で、賃貸マンションの場合、専有部や共用部か否かにかかわらず借主は勝手にリフォームをすることができない。賃貸マンションの借主が改修工事を実施する場合には、申請の際に所有者の同意書と賃貸借契約書の写しの提出が必要となっている。

賃貸マンションの場合には、貸主の了承を得たとしても退去時に原状回復を条件とされることが多いと予想される。退去時のことを考慮すると、基本的には原状回復が困難となる工事は避けるべきといえる。ただし、もし原状回復が困難な工事が必要となる場合には、できれば事前に残置の了解を貸主に取っておきたいところである。

分譲マンションに居住の場合、バルコニーのリフォームについては事前に管理規約なども確認しておきたい東京都「子供を守る」住宅確保促進事業<補助金申請の流れ>

また、補助金申請は、「補助金の交付申請」→「審査および交付決定」→「補助対象工事の実施」→「実績報告書の提出」→「額の確知通知」→「補助金の請求」→「補助金の交付」という流れとなっている。申請は工事の前に行う必要があり、補助金は工事が終わった後に交付される。つまり、補助金が交付されるまで一旦は工事費を全額負担しなければならないという点は注意点である。なお、「子供を守る」住宅確保促進事業で対策ができるのは、あくまでもハード面での対策にすぎない。転落事故を防止するには、子どもに「バルコニーは危ない」ということを繰り返し教えるというソフト面の対策も重要だ。ハード面の対策を行ったから安心というわけではなく、危険を教えるというソフト面の対策も併せて行うことが望ましいといえる。

東京こどもすくすく住宅の供給促進とは

東京都ではマンション開発事業者向けの安全対策推進事業も行っている。「東京こどもすくすく住宅の供給促進」という制度であり、一定の要件を満たす子育てに配慮した住宅を建てると東京都が優良な住宅として認定するという制度だ。

認定を受けるには、東京都が示す「子育てに配慮した住宅のガイドライン」に従った設計を行う必要がある。ガイドラインでは、例えばバルコニーにおいてエアコンの室外機が足がかりにならないよう手すりから60cm以上の距離を確保することを求めている。手すりの高さに関しても、1.2m以上(建築基準法施行令では1.1m以上)を推奨している。認定を受けた住宅は、東京都の以下のホームページで公開されている。

東京都子育て支援住宅認定制度
https://www.juutakuseisaku.metro.tokyo.lg.jp/juutaku_seisaku/child-care-nintei.html

小さな子どもがいる人は、住宅選びの一つの参考としてみてもいいだろう。

東京都「知事の部屋」/記者会見(令和5年4月7日)より東京都「知事の部屋」/記者会見(令和5年4月7日)より

公開日:

ホームズ君

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