名古屋駅周辺で一大プロジェクトが進行中
リニア中央新幹線の開業に向け、駅が設置される各地では整備が進む。新幹線、JR在来線、私鉄、地下鉄が乗り入れる名古屋駅では、周辺地区を含めて大きく変わろうとしている。
現在の名古屋駅は、各線路が南北に延びているが、リニアは東西。駅自体が、より広い空間となることが予想される。
そこで、名古屋市は「名古屋駅周辺まちづくり構想」を2014年9月に発表し、一大プロジェクトが始動した。目標とするのは「世界に冠たるスーパーターミナル・ナゴヤ」。まちづくりの基本方針として、①国際的・広域的な役割を担う圏域の拠点・顔を目指す②誰にも使いやすい国際レベルのターミナル駅をつくる③都心における多彩な魅力をもったまちをつくり、つないでいく④リニア開業を見据え、行政と民間が一丸となって着実に構想を実現する、という4つを掲げる。
そして、この構想を実現するために10の主要プロジェクトを打ち出している。
①都市機能の強化
②リニア駅周辺の面的整備
③わかりやすい乗換空間の形成
④駅前広場周辺の再整備
⑤東西ネットワークの強化
⑥名鉄名駅再開発計画
⑦高速道路とのアクセス性の向上
⑧地区毎の特色を活かしたまちづくり
⑨名駅通の歩行者空間の拡充、駅へのアクセス性の改善
⑩ゆとりのある地下歩行者空間の形成
そのなかから今回は、駅西側の駅前広場再整備の計画について紹介したい。2022年12月に公表された「名古屋駅西側駅前広場デザイン計画」と、2023年1月に開催された「名古屋駅周辺のまちづくりシンポジウム」より、まとめる。
目指すは、交通機能の高度化とまちづくりと連携した重層的な拠点
名古屋駅の東側は高層ビルが立ち並び、ビジネス街として発展しているエリアの一つだ。こちらもすでに予定地にあったモニュメントの撤去がなされ、ロータリー交差点の改良を含めて駅前広場の整備に向けた工事が進む。
そして西側はというと、雰囲気がガラリと変わる。江戸時代に名古屋城を中心に発展したなかでの“まちはずれ”にあたるエリアということもあり、下町の情緒も残る市街地となっている。
住民のほか、飲食店などを訪れる地元客や観光客、また東京や大阪などと結ぶ高速バスの発着場所もあるため、利用者は多い。
そのなかで名古屋駅西側駅前広場の再整備では、「交通機能の高度化と将来を見据えた西側エリアのまちづくりと連携した重層的な拠点の形成」を目指す。
とはいえ、重層的な拠点の形成には時間を要するとし、まずはリニア開業時を目指して、「平面レベルの限られた空間の中での機能確保」を行うという。
平面レベルの整備とは何かというと、3点述べられている。
①顔となる広場の整備…リニア中央新幹線の玄関口にふさわしい「広場空間の形成」
②まちへの動線の確保…駅とまちの主動線につながる「歩行者空間の拡幅」
③タクシースペースの改善…ユニバーサルデザイン等に配慮した「利用しやすい乗降場の配置」
デザイン案では、雲のような屋根が連なる広場へ
トータルデザイン指針(案)では、名古屋らしい近未来のデザイン、活気ある駅周辺とまちのデザイン、わかりやすくユニバーサルなデザインという3つが原則として挙げられている。
では、実際のイメージはというと、一般車やタクシー、高速バスの乗降車場の中央部分に広場空間を3ヶ所に分けて配置。駅に最も近い広場1は短時間の休憩や待ち合わせに、その先の広場2は最も大きく、中心的な空間として遊び場としての機能も備えるなど平常時・イベント時の双方で活用できるように、そしてまちに近い広場3は、人の動きの多い場所として多目的な活動を受け入れる空間に、と考えられている。
特徴的なのは雲のような屋根=クラウド屋根だ。雨よけ、日よけの機能を持ちながら、曲面の形状とすることで、自由でやわらかい印象を与え、すっきりとしたデザインを実現するという。また、白色系で清潔感も醸し出す。
憩いを感じられる植栽のほか、舗装は人の動線となる流動域と、待ち合わせや休憩などの滞留域で素材や目地の大きさなどによって切り替えるという案も。照明も、流動域では安心して歩くことができる明るさで、滞留域では間接光による落ち着いた雰囲気と、利用シーンによる使いやすさが考慮されているのが分かる。
隣接するまちへの動きを促す、見通すことができる軸線を確保
隣接するまちとの連携もデザインに取り込まれている。現在の広場は、地下鉄・地下街への階段や交番などがあることも関係していると思うが、駅前に広がるまち全体をパッと見渡しにくい。そのため、駅のコンコースからの2ヶ所ある出口から真っすぐにまちを見通すことができる2本の軸の確保を予定。ゆとりある歩行者空間とともに、植栽する樹木を東西方向の同一軸線上に配置して、駅とまちとの直進性を出す計画だ。
ゆくゆくは、まちと連携し、地域のイベント開催などでまちのにぎわいの創出も目指すとあって、人の流れも大切にしたデザイン案となっている。
まちのにぎわいなどには、地元の人々や民間事業者などによるエリアマネジメントの取組みを想定する。シンポジウムに登壇した名古屋市役所 住宅都市局・髙山直明さんは「広場の整備後も、いかに維持して使っていくかも大切になる。ただ、一朝一夕にシステムができるものではないので、時間をかけて関係者と段階を踏んで、いろんなことを実践していければ」と語った。
「多彩な人々の多彩な活動を受け止める場になれば」
シンポジウムでは、名古屋駅西側駅前広場の設計チーム代表者であり、市内に建築設計事務所を構える米澤隆さんがパネルディスカッションに登壇。「設計を進めるなかで、駅西エリアのまちは個性豊かなお店とか場所が、肩を寄せ合うように立っている。こういった個性を生かしながらも、一方で、もう少し手を加えたほうがよりよくなるだろうという課題も抱えている」と語った。
その課題とは「まちに行くときに建物と建物の間を、肩を狭めて通っていくような状況。まちと駅の連続性、開放性に課題がある、あるいは駅前広場で滞留する空間が不足している」とのこと。今回のデザイン案は、それらを踏まえて「多様な人々の多彩な活動を受け止める場になれば」と考えられたものだ。
また、「設計者を選定するプロポーザル(企画提案)に応募したとき、『つくると生まれるの間』というタイトルをつけました。設計者がすべてを作って、これが名古屋駅なんだ、名古屋の地域を象徴するのだということではなく、人と場がよい関係を結んで、ここから名古屋の顔がつくれたらなと思っています」と米澤さん。人の利用によってさらに発展していく場となるようだ。
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多路線が交わる複雑な構造から、「迷ってしまう」という声がたびたび上がる名古屋駅。筆者も不慣れな友人を案内するときに動線の機能がよければ分かりやすくなるのに、あるいは荷物を抱えているときに人とぶつからないように気をつけたりして通路幅がもう少しあれば、といったことを思うときがある。それが広場の整備で改善されるのであればうれしい。
当サイトでも筆者ほか駅西エリアの店舗を取材させてもらったこともあり、まちの活性化が踏まえられている点にも大いに期待したい。
参考:名古屋市役所ホームページ
リニア中央新幹線の開業に向けた都心まちづくり
https://www.city.nagoya.jp/shisei/category/53-10-20-0-0-0-0-0-0-0.html
動画:名古屋駅周辺のまちづくりシンポジウム
https://youtu.be/quq5JVyN9c4

















