世界の平均気温の上昇を1.5度に抑えるために

地球温暖化が周知の事実となって久しい。産業革命(18世紀半ばから19世紀)の頃と比較すると現在の世界の平均気温は、すでに1度程度上昇している。日本においてこの現象は、大雨の発生頻度の上昇、熱中症による死亡者の増加、農作物の品質低下などさまざまな問題の原因とされている。こうした中、2015年のパリ協定で世界各国は、産業革命以前と比べて平均気温の上昇を1.5度に抑える努力目標を掲げた。そのためには、2050年前後にCO2排出量を正味ゼロにする必要があるとされる。

そこで注目されているのが、住宅の省エネ化だ。日本の世帯当たりのエネルギー消費量は、この半世紀で約1.8倍に増加した。一方で現在の省エネ基準を満たす住宅は、わずか1割程度しかない。脱炭素社会の実現には住宅の省エネ化は必須といえ、政府は2030年度の家庭部門のCO2排出量削減目標を、2013年比66%としている。

その推進策として新たに開始されたのが、「住宅省エネ2023キャンペーン」だ。これは国土交通省、経済産業省、環境省が実施する補助金制度の申請を、ワンストップ(1回の手続き)で行えるというもの。原則的に国の補助金制度は、管轄する省庁が違っていても併用することができない。同キャンペーンはそれを可能にした画期的なものなのだ。

日本の世帯で使用するエネルギー量は、1965年度から2020年度の間で約1.8倍に増加した。消費量の内訳で最も多いのは給湯(28.4%)。そして暖房(25.1%)、厨房(10.2%)と続く(出所:「住宅省エネ2023キャンペーン」総合サイト)日本の世帯で使用するエネルギー量は、1965年度から2020年度の間で約1.8倍に増加した。消費量の内訳で最も多いのは給湯(28.4%)。そして暖房(25.1%)、厨房(10.2%)と続く(出所:「住宅省エネ2023キャンペーン」総合サイト)

対象となる3つの補助事業

「住宅省エネ2023キャンペーン」は、次の3つの補助事業の総称だ。

1.こどもエコすまい支援事業(国土交通省)
2.先進的窓リノベ事業(経済産業省・環境省)
3.給湯省エネ事業(経済産業省)

それぞれの概要を説明しよう。

こどもエコすまい支援事業

●予算

1,500億円

●補助対象

・新築住宅(持ち家)
だたし、申請時に2022年4月1日時点で18歳未満の子どもがいる世帯(子育て世帯)と、申請時に夫婦であり2022年4月1日時点でいずれかが39歳以下の世帯(若者夫婦世帯)のみ対象。

新築の建物は、次の7つの条件を満たす必要がある。
①所有者(建築主)自らが居住する
②住戸の床面積が50m2以上である
③土砂災害防止法に基づく、土砂災害特別警戒区域外に立地する
④都市再生特別措置法第88条第5項の規定により、当該住宅に係る届出をした者が同条第3項の規定による勧告に従わなかった旨の公表がされていないもの
※④は非常に専門的なので、該当するかどうかは後述する支援事業者へ確認してほしい。
⑤未完成または完成から1年以内であり、人が居住したことがないもの
⑥証明書等により高い省エネ性能(ZEH、Nearly ZEH、ZEH Ready、ZEH Orientedレベル、または、認定長期優良住宅、認定低炭素住宅、性能向上計画認定住宅レベル)を有することが確認できるもの
⑦交付申請時、一定以上の出来高(%)の工事完了が確認できるもの

・リフォーム(持ち家と賃貸の両方可)
対象となるリフォーム工事は以下の8つだ。ただし、④~⑧については①~③のいずれかと同時に行うことで補助の対象となる。
①開口部の断熱改修
②外壁、屋根、天井または床の断熱改修(いずれか必須だが例外あり)
③エコ住宅設備の設置(節水トイレ、高効率給湯器など)
④子育て対応改修(ビルトイン食洗機など)
⑤防災性向上改修(暴風に強い窓など)
⑥バリアフリー改修
⑦空気洗浄機能・換気機能付きエアコンの設置
⑧リフォーム瑕疵保険等への加入

●補助上限額

・新築住宅
100万円/戸

・リフォーム
工事内容と世帯属性に応じて5万~60万円/申請

冬の暖房時の熱の58%は、窓などの開口部から流失する。また、断熱性能の低い窓は、結露発生の原因となる(画像はイメージ)冬の暖房時の熱の58%は、窓などの開口部から流失する。また、断熱性能の低い窓は、結露発生の原因となる(画像はイメージ)

先進的窓リノベ事業

●予算

1,000億円

●補助対象

建築から1年が経過した住宅、または過去に人が居住した住宅の窓の断熱リフォーム(持ち家と賃貸の両方可。新築住宅は対象外)
対象となるリフォーム工事は、「ガラス交換」「内窓設置」「外窓交換(カバー工法または、はつり工法)」の4つ。

●補助上限額

窓の性能やサイズなど工事内容に応じて5万~200万円/申請


給湯省エネ事業

●予算

300億円

●補助対象

・新築住宅(持ち家と賃貸の両方可)
・リフォーム(持ち家と賃貸の両方可)
※いずれも高効率給湯器をリースにより導入する場合も含む。

●補助上限額

・家庭用燃料電池(エネファーム)
15万円/台

・電気ヒートポンプ・ガス瞬間式併用型給湯機(ハイブリッド給湯機)
5万円/台

・ヒートポンプ給湯機(エコキュート)
5万円/台

なお、「高効率給湯機の設置が、こどもエコすまい支援事業と給湯省エネ事業の両方にある」といったように、補助の対象が重なるケースもあるが、ワンストップ申請をすることで、より有利な条件のほうで補助金を受け取ることができる(リフォームの場合)。

申請から補助金交付までの流れ

申請手続きや還元は、住宅省エネ支援事業者が行う。同事業者は、事前に事務局へ登録を行った建築事業者やリフォーム事業者のことだ。そのため、一般消費者への還元方法は、次のいずれかになる。

①工事代金に充当する方法
②現金で支払う方法

また、申請期間は、2023年3月下旬から予算上限に達するまで(遅くても2023年12月31日まで)となっている。


新築住宅の場合の流れ

※こどもエコすまい支援事業(新築)は、給湯機を含めた住宅全体の省エネ性能の向上に対して補助を行うため給湯省エネ事業との併用はできない。

①住宅省エネ支援事業者と工事請負契約または売買契約を締結
②工事完了
③事業者が交付申請
④交付決定
⑤補助金交付(「こどもエコすまい」の場合は事務局→支援事業者。「給湯省エネ」は事務局から工事発注者へ直接還元される)
⑥補助金還元(「こどもエコすまい」のみ、支援事業者→工事の発注者)
⑦完了報告(「こどもエコすまい」のみ、支援事業者→事務局)

新築の場合の申請から補助金交付までの流れ。手続きはすべて支援事業者が行う。なお、新築ではワンストップ手続きはできない(出所:「住宅省エネ2023キャンペーン」総合サイト)新築の場合の申請から補助金交付までの流れ。手続きはすべて支援事業者が行う。なお、新築ではワンストップ手続きはできない(出所:「住宅省エネ2023キャンペーン」総合サイト)

リフォームの場合の流れ

①住宅省エネ支援事業者と工事請負契約を締結
②工事完了
③事業者が交付申請(ワンストップ)
④交付決定
⑤補助金交付(各事務局→支援事業者)
⑥補助金還元(支援事業者→工事の発注者)

新築の場合の申請から補助金交付までの流れ。手続きはすべて支援事業者が行う。なお、新築ではワンストップ手続きはできない(出所:「住宅省エネ2023キャンペーン」総合サイト)リフォームの場合の申請から補助金交付までの流れ。手続きはすべて支援事業者が行う。リフォームではワンストップ手続きが可能(出所:「住宅省エネ2023キャンペーン」総合サイト)

利用する際の注意点

以上のようにお得で使い勝手のいい制度だが、利用する際は次の点に注意したい。

注意点①:3つの補助金を併用できるのはリフォーム工事だけ

上記のように、こどもエコすまい支援事業(新築)は、給湯機を含めた住宅全体の省エネ性能の向上に対して補助を行うため給湯省エネ事業との併用はできない。また、先進的窓リノベ事業は、新築住宅を対象としていない。そのため、3つの補助金制度をワンストップで併用できるのはリフォーム工事だけとなる。

注意点②:ほかの補助事業との併用は不可

このキャンペーンと補助対象が重なる国のほかの補助制度との併用は原則的にできない。ただし、それぞれの地方自治体が実施している制度については、国費が充当されていなければ併用可能だ。一度調べてみる価値はあるだろう。

注意点③:すべての事業者が支援事業者とは限らない

支援事業者に登録することは義務化されていない。したがって、気に入った建築依頼先などの事業者が登録している、または登録に応じてくれるとは限らない。すでに登録済みの事業者は事務局のホームページで確認できる。

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断熱材を敷き詰める工事(画像はイメージ)断熱材を敷き詰める工事(画像はイメージ)
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