HTT推進の背景

東京都はHTT・ゼロエミッション推進協議会を設置し、2022年7月に第1回会議を開催。ゼロエミッション東京の実現に向けた取組みを進めている東京都はHTT・ゼロエミッション推進協議会を設置し、2022年7月に第1回会議を開催。ゼロエミッション東京の実現に向けた取組みを進めている

東京都では、地球温暖化対策に加え、エネルギーの中長期的な安定確保を目的として、電力のHTTを推進している。HTTは「減る(へらす)・創る(つくる)・蓄める(ためる)」の日本語の頭文字を取った造語である。東京都住宅政策本部民間住宅部マンション課に確認したところ、HTTはそのまま「エイチティーティー」と読むとのことだ。

東京都がHTTを推進する背景としては、「CO2削減対策」と「電力需給ひっ迫対策」の2つが挙げられる。

1つ目のCO2削減対策とは、東京都では2050年までにCO2排出量を実質ゼロとする「ゼロエミッション東京」という目標を掲げており、HTTもその一環で行われているということになる。HTTによって電力使用量を減らせば火力発電所から生じるCO2が削減でき、地球温暖化対策となる。

2つ目の電力需給ひっ迫対策とは、冬場や夏場に生じる電力不足に対する対策である。
近年、国内では原子力発電を停止していることから火力発電に大きく依存しており、以前よりも電力不足に陥りやすい状況になっている。HTTを推進することで電力使用量が抑えられるため、電力不足が発生する可能性を下げることができる。

2022年度の電力需給に関する総合対策が公表。家庭でできる対策はある?
https://www.homes.co.jp/cont/press/buy/buy_01374/

東京都はHTT・ゼロエミッション推進協議会を設置し、2022年7月に第1回会議を開催。ゼロエミッション東京の実現に向けた取組みを進めている今後も電力需給見通しが厳しいと予想されており、電力需給に関する総合対策が進められている

東京都マンション省エネ・再エネガイドブックとは

東京都マンション省エネ・再エネガイドブック(以下、ガイドブック)とは、マンションの共用部でHTTを実現するための「管理組合向けの手引書」である。

マンションは大きく分けて「専有部」と「共用部」の2種類に分かれる。HTTは専有部に関しては区分所有者である個人が判断すれば実行できるが、共用部に関しては管理組合で決議をしなければ実行することができない。管理組合のような集団組織では、マンションでもできるHTTの取組みや、必要な手続き等がわかりやすくまとめられた手引書があると合意形成を図りやすい。

ガイドブックは、マンションで可能なHTTの具体例や、削減効果、必要な手続きが記載されており、知識が浅い人でもHTTに取組みやすいようにまとめられている。ガイドブックを使えば、理事会で自分たちのマンションで実施できるHTTを検討しやすくなっている。

ガイドブックは東京都が出している資料であるため、内容の信頼性も高く、HTTの効果を組合員に伝えやすい。ガイドブックの記載内容は、全国のマンションでも利用価値があるのものとなっており、認知度が上がればそのうち全国のマンションでも採用されていくものと期待される。

東京都マンション省エネ・再エネガイドブック
https://www.mansion-tokyo.metro.tokyo.lg.jp/shoene-guidebook.html

東京都マンション省エネ・再エネガイドブック<br>
https://www.mansion-tokyo.metro.tokyo.lg.jp/shoene-guidebook.html東京都マンション省エネ・再エネガイドブック
https://www.mansion-tokyo.metro.tokyo.lg.jp/shoene-guidebook.html

管理組合向けのHTT推進メニュー

東京都では、管理組合向けのHTT推進メニューも紹介している。具体的には、マンションの省エネや再エネで利用できる補助金制度や、マンション管理士による省エネ啓蒙活動、省エネアドバイザーの派遣が用意されている。管理組合全体で合意形成を図っていくためには、まずは理事の間でコンセンサスを得ておくことが重要である。

東京都のHTT推進メニューを活用し、まずはマンション管理士や省エネアドバイザーを呼んで理事向けの勉強会から始めてみるのがいいだろう。

「省エネアドバイザー」の派遣は2022年10月以降に開始されることが予定されている。詳細は「東京都マンションポータルサイト」を確認してみよう。
https://www.mansion-tokyo.metro.tokyo.lg.jp/kankyo-support.html

マンションの環境性能向上サポートとして、東京都は、分譲マンションの管理組合を職員またはマンション管理士などが直接訪問し、省エネ・再エネおよび補助制度等のPRを行うことを予定している。この「省エネ啓発隊」の受付窓口は準備中のため、詳細はHPを参照してほしい<br>https://www.mansion-tokyo.metro.tokyo.lg.jp/kankyo-support.html
マンションの環境性能向上サポートとして、東京都は、分譲マンションの管理組合を職員またはマンション管理士などが直接訪問し、省エネ・再エネおよび補助制度等のPRを行うことを予定している。この「省エネ啓発隊」の受付窓口は準備中のため、詳細はHPを参照してほしい
https://www.mansion-tokyo.metro.tokyo.lg.jp/kankyo-support.html

共用部で可能な省エネ施策

国土交通省のガイドラインでは、エレベーターの更新時期は26年~30年とされている。更新の時期を迎える場合は、LED照明への切り替えや最新機種へリニューアルすることも検討の余地があるだろう国土交通省のガイドラインでは、エレベーターの更新時期は26年~30年とされている。更新の時期を迎える場合は、LED照明への切り替えや最新機種へリニューアルすることも検討の余地があるだろう

ここでは、ガイドブックで記載されているHTTをいくつか紹介する。

(1)照明器具

照明器具の省エネとしては、「LED照明化」、「人感センサー設置」、「光センサータイマーの活用」の3つを挙げている。LED照明化は、省エネ効果も高く、認知度も高いため、既に取組んでいるマンションも多いかもしれない。

ただし、ガイドブックではマンション内のどこをLED照明化すると効果が高いかという点にまで踏み込んで情報提供がなされているため、実施済みのマンションでも見直してみる価値がある。具体的には、エントランスやエレベーターホール、屋内駐車場のように24時間照明が点灯し続けている箇所をLEDに変更すると効果が高いことを指摘している。

予算が限られている場合には、効果の高い部分だけLED照明化するという方法もある。また、LEDは紫外線を出さないため虫が寄りにくく、庭園灯や外灯もLEDに適していることも記載されている。組合員から庭園灯に集まる虫に苦情が出ている場合には、庭園灯等も対策しやすい。

さらに、ゴミ置き場や通路、非常階段、備蓄倉庫への人感センサーの設置や、屋外の庭園灯や駐車場の光センサータイマーの設置も例に挙げている。消し忘れや長時間点灯の防止となり、さらに省エネ効果が上がることが示されている。

(2)増圧直結方式への変更

ガイドラインでは、給水方式を高架水槽方式から増圧直結方式に変更することで電気代が削減できることも例として挙げている。給水方式の変更が節電につながるとは想像しにくいため、有益な情報提供と考えられる。

高架水槽方式とは、水道本管から受水槽で貯めた水を揚水ポンプで屋上の高架水槽まで引き上げ、屋上の高架水槽から各戸に給水する方式である。
一方で、増圧直結方式とは、水道本管から直接増圧ポンプを使って各戸に給水する方式のことだ。

高架水槽方式は、比較的古いマンションに多い。一定の貯水機能があるため断水時でも多少の水を利用できるというメリットはあるものの、衛生面で不安があり、点検や清掃に費用もかかることからデメリットが相応に多い。

増圧直結方式なら水道本管から新鮮な水を直接給水でき、かつ、受水槽や高架水槽の点検および清掃の費用の負担もかからない。そのため、昨今の新しいマンションは増圧直結方式が主流だ。

増圧直結方式では水道本管の圧力も利用しながら水をポンプアップしているため、実は高架水槽方式の揚水ポンプよりも少ない電力で水を上階まで上げることができる。そのため、高架水槽方式から増圧直結方式に切り替えると、電気代が約62%も節電できるとされている。加えて、点検や清掃のメンテナンス費用も約55%削減できることから、管理費の削減効果も大きい。

何よりも衛生面が改善されるという大きなメリットがあるため、管理組合総会の決議は取りやすいのではないだろうか。まだ高架水槽方式のままのマンションであれば、増圧直結方式への変更を是非検討してみるといいだろう。

国土交通省のガイドラインでは、エレベーターの更新時期は26年~30年とされている。更新の時期を迎える場合は、LED照明への切り替えや最新機種へリニューアルすることも検討の余地があるだろう出典:東京都マンション省エネ・再エネガイドブック 給水方式と省エネの関係
https://www.mansion-tokyo.metro.tokyo.lg.jp/pdf/shoene-guidebook/shoene-guidebook11.pdf
増圧直結方式への交換で、電気代が約62%削減になるという

(3)太陽光発電設備の導入

HTTの「創る・蓄める」という部分に関し、ガイドブックでは太陽光発電設備の導入を挙げている。具体的には屋上に太陽光発電パネルを設置し、蓄電池も併用して余った電力を蓄える例を紹介している。東京都の場合、太陽光発電システムの導入には補助金制度も用意されているため、有効に活用したいところだ。

実施のための手続き

マンションの場合、共用部に変更を加える場合には、管理組合総会での決議が必要となる。ガイドブックでは、HTTを行うにあたりどのような決議が必要なのかを具体的に例示している。

共用部分の変更に必要な決議には、「普通決議」と「特別決議」の2種類がある。普通決議とは、区分所有者および議決権の過半数の賛成による決議のことを指す。特別決議とは、区分所有者および議決権の各4分の3以上の賛成による決議のことである。

普通決議か特別決議のどちらが必要になるかは、「形状または効用の著しい変更」を伴うかどうかで決まる。

ガイドブックでは、LED照明化や人感センサーの設置、高反射率塗装による防水工事、給水システムの変更工事、エレベーターの更新等は普通決議でよいとされている。一方で、太陽光発電システムの屋上設置や屋上緑化に関しては、特別決議が必要としている。

ガイドブックで紹介されているHTT対策は、普通決議で可能なものが多く掲載されている。合意形成は普通決議の方がハードルは低いため、普通決議で済むものから着手していくというのも一つの考え方である。

ガイドブックは管理組合の理事が使いやすい内容になっており、管理費の削減が課題となっている全国のマンションにおすすめしたい手引書だ。マンションの理事になっている方であれば、一度目を通してみるといいだろう。

東京都マンション省エネ・再エネガイドブックでは、合意形成の進め方についてもまとめられている<br>https://www.mansion-tokyo.metro.tokyo.lg.jp/shoene-guidebook.html東京都マンション省エネ・再エネガイドブックでは、合意形成の進め方についてもまとめられている
https://www.mansion-tokyo.metro.tokyo.lg.jp/shoene-guidebook.html

公開日: