捨て看板とは

街なかで見かける機会もある捨て看板街なかで見かける機会もある捨て看板

捨て看板とは、電柱や街路樹、ガードレール、三角ポール等に貼り付けられた主にはり紙のことを指す。もともとは短期間のイベント等を案内するために貼られたチラシが多く、イベントが終わったら捨てることが前提となっていたため、「捨て看板」と呼ばれている。東京都では「捨て看板等の共同除却キャンペーン」を行っており、都内の捨て看板の状況を公開している。

「共同除却キャンペーンの除却枚数の推移(令和元~令和3年度)」によると、各年度の捨て看板の枚数は以下の通りである。
https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2021/11/30/documents/09.pdf

2019年度:1,573枚(参加区市:6区13市)
2020年度:1,654枚(参加区市:7区4市)
2021年度:1,832枚(参加区市:7区4市)

年度によって参加区市は異なるが、捨て看板は減るどころか逆に増加傾向にある。2021年度の種類別の内訳は、以下の通りである。

はり紙:1,598枚(87.2%)
はり札等:186枚(10.2%)
広告旗:4枚(0.2%)
立看板等:44枚(2.4%)

割合は年度によって若干異なるが、傾向としては毎年ほぼ同じであり、捨て看板で最も多いのは「はり紙(チラシのこと)」になっている。また、業種別の割合も公表されている。2021年度の業種別の内訳は、以下の通りである。

金融業:0枚(0.0%)
不動産業:1,502枚(82.0%)
風俗営業:0枚(0.0%)
その他:330枚(18.0%)

業種別の内訳も年度によって若干の差異はあるが、傾向は毎年同じで、最も多いのは毎年不動産業となっている。つまり、捨て看板といえば割合からしてほとんどが「不動産業のはり紙」ということになる。電柱に貼ってある「格安3LDKマンション 2,300万円 連絡先 090-****-****」のようなチラシが典型的な捨て看板ということだ。

街なかで見かける機会もある捨て看板出典:東京都 共同除却キャンペーンの除却枚数の推移(令和元~令和3年度)
https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2021/11/30/documents/09.pdf

捨て看板の問題1:条例違反の可能性がある

電柱や街路樹、ガードレール等に貼り付けられている不動産チラシのような典型的な捨て看板は、基本的には違法である。捨て看板は屋外広告物の一つに分類される。屋外広告物とは「常時または一定の期間継続して屋外で公衆に表示されるもの」を指し、捨て看板も屋外広告物に該当する。屋外広告物は、屋外広告物法に基づき都道府県や指定都市および中核市が屋外広告物条例を定め、必要な規制を行うことができるとされている。

例えば、東京都には東京都屋外広告物条例があり、屋外広告物を設置するためには、一部の例外を除き、設置場所の区市町等への許可申請が必要と定めている。つまり、無許可で電柱にはり紙をしている場合には、条例違反に該当することになる。

東京都では電柱や三角コーンなどへのはり紙、はり札、立看板、のぼり旗などの広告物を道路上に設置することを原則として禁止としているため、基本的に電柱等に不動産のチラシを貼ることは許可が下りないはずである。しかしながら、実際には電柱等にはり紙が貼られているため、そのほとんどは無許可で貼られているものと推測される。つまり、ほとんどの捨て看板は条例に反する違法な看板といえるのだ。

出典:東京都 屋外広告物のルールに関するチラシ<br>
https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/kenchiku/koukoku/pdf/kou_siori_10.pdf出典:東京都 屋外広告物のルールに関するチラシ
https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/kenchiku/koukoku/pdf/kou_siori_10.pdf

捨て看板の問題2:宅建業法違反の可能性がある

おとり物件や誇大広告は禁止されているおとり物件や誇大広告は禁止されている

捨て看板の多くが不動産会社によるものであると仮定した場合、その記載内容が宅地建物取引業法等に違反している可能性もある。宅地建物取引業法32条では「誇大広告の禁止」を定めており、「著しく事実に相違する表示」や「実際のものよりも著しく優良、有利であると一般消費者に誤認されるような表示」を禁止している。

宅地建物取引業法の広告規制は、インターネット広告やチラシ、ビラ、ポスター等に関わらず、あらゆる広告物に適用されるため、捨て看板も規制の対象となる。また、不動産会社は不動産業界が自主的に定めた「不動産の表示に関する公正競争規約」を守らなければならないとされており、公正競争規約に違反した広告も罰則の対象となっている。

公正競争規約では、広告で使ってはいけない用語を定めている (ただし、表示内容を裏付ける合理的な根拠を示す資料を現に有している場合を除く) 。原則として使用してはいけない用語には、以下のようなものがある。

・「完全」、「完璧」、「絶対」、「万全」等の全く欠けるところがないことを意味する用語
・「日本一」、「日本初」、「業界一」、「当社だけ」、「抜群」等の競争事業者よりも優位に立つことを意味する用語
・「特選」、「厳選」等の一定の基準により選別されたことを意味する用語
・「最高」、「最高級」、「特級」等の最上級を意味する用語
・「買い得」、「掘り出し」、「格安」、「破格」、「激安」等の著しく安いという印象を与える用語

例えば、捨て看板に「格安物件!」と記載されていたら、著しく安いという印象を与える用語が使用されているため、公正競争規約となる。また、公正競争規約では「おとり広告」も禁止している。おとり広告とは、「物件が存在せず、実際には取引することができない広告」または「物件は存在するが、実際には取引の対象となり得ない広告」あるいは「物件は存在するが、実際には取引する意思がない広告」を指す。

例えば、本当に売り物件だとしても、取引が終了してしまえば「物件は存在するが、実際には取引の対象となり得ない広告」となり、おとり広告に該当する。取引が終了したにもかかわらず、捨て看板の「剥がし忘れ」をしていたら、それはおとり広告となるのだ。

捨て看板は管理がずさんなものも多いため、いつの間にかおとり広告になっていることも多い。また、見る人の興味を引くために使用が禁止されている用語を使ったはり紙も散見される。
すべてが該当するとはいわないが、公正競争規約違反となっている広告も多いため、捨て看板は違法性の高いものとなっている。

捨て看板が無くならない理由

コーン看板の上に注意を促すチラシがコーン看板の上に注意を促すチラシが

「共同除却キャンペーンの除却枚数の推移(令和元~令和3年度)」によれば、捨て看板の件数は増えている状況にある。捨て看板がなくならない主な理由としては、主に捨て看板に費用対効果がそれなりに高いことが挙げられる。

捨て看板は、売却物件の近くの電柱に貼られることも多い。売却物件の近くは、周辺で物件を探している人が見る機会も多いため、目に留まりやすく反響を得やすいといえる。捨て看板はインターネット広告と比べるとアナログな手法であり、見る人も少なく、一見すると非効率な広告手法と思われる。

しかしながら、たとえ見る人の数は少なくても、既に物件を買うことを決めている真剣な人が見るのであれば、問合せを受ける可能性は高いのだ。不動産は「場所」が買主にとって重要な関心事となるが、物件と物理的に近い「場所」に広告できる捨て看板は不動産業との親和性が高い。そのため、違法とは知りつつも止められない不動産会社が一部に存在しており、捨て看板はなかなか減らないというのが実態となっている。

東京都の捨て看板対策

東京都では警視庁や東京都宅地建物取引業協会、商店会等と協力し、「捨て看板等の共同除却キャンペーン」を実施している。キャンペーンは2021年で第25回目となっており、長期間にわたって除却活動を続けている。

また、捨て看板の大部分を占めている不動産会社に対しても、パンフレットを配りルール違反であることを啓蒙している。長期にわたって組織的な除却活動がなされているが、一部にルールを守らない不動産会社が残っており、なかなか効果が現れない状況が続いている。

気になる物件があったときの注意点

買主として、気になる物件の捨て看板があったときはどうすべきなのかという問題もある。基本的には、気になる広告を見つけたとしても連絡しないというのが適切といえる。理由としては、捨て看板は違法性の高いものであり、違反行為を行っている不動産会社と取引するのは買主としてリスクが高いためだ。

また、捨て看板は「剥がし忘れ」によるおとり広告の可能性もある。問合せてみたところで、取引できない物件となっていることも考えられる。気になる物件であれば、インターネットの物件広告サイトに載っているか確かめることをおすすめする。

物件広告サイトに存在しなければおとり広告の可能性がある。また、仮に物件広告サイトに存在した場合には、インターネット広告を通じて正規のルートで問合せをするのがいいだろう。

気になる物件があった場合、まずはインターネット上に物件情報や広告が掲載されていないか確認することをおすすめる気になる物件があった場合、まずはインターネット上に物件情報や広告が掲載されていないか確認することをおすすめる