不動産物件の無償譲渡、0円住宅とは?

無償譲渡物件とは法律的には不動産の「贈与」に当たる無償譲渡物件とは法律的には不動産の「贈与」に当たる

無償譲渡物件、0円住宅とは、文字どおり「無償」、つまりタダで入手できる不動産物件を指す。無償「譲渡」とはいっても、実際には対価が発生しないため、法律的には譲渡ではなく「贈与」に当たる。

無償譲渡物件には特徴がある

無償譲渡物件には一般的な不動産物件にはない次のような特徴が見られる傾向がある。

●立地が悪いため活用が難しい物件

●税金や維持するために費用がかかる物件

●人の生命に関わる事件などのあった、心理的瑕疵がある物件

●築年数が非常に古い物件


無償譲渡のパターンによって税金の有無が変わる?

不動産物件の無償譲渡では、物件を渡す側と渡される側が法人、個人などの組み合わせパターンによって、かかる税金が変わる。

無償譲渡物件とは法律的には不動産の「贈与」に当たる不動産無償譲渡のパターン

1.個人→個人

個人から個人に物件を無償で譲り渡す場合、渡す側には税金はかからない。ただし渡される側には贈与税が発生する場合がある。

2.個人→法人

個人から法人に物件を無償で譲り渡す場合、渡す側の個人は「不動産を現在売買した場合の金額で譲渡した」とみなされ、みなし譲渡として取り扱われて譲渡所得税がかかる。渡された側の法人は、その法人またはその既存株式に対し贈与税がかかる。

3.法人→個人

法人から個人に物件を無償で譲り渡す場合、渡す側の法人は個人に対して寄付をしたものとして扱われる。渡された側の個人は贈与によって一時所得を得たとされ、所得税がかかる。

4.法人→法人

法人から法人に物件を無償で譲り渡す場合、渡す側の法人は法人に対して寄付をしたものとして扱われる。渡された側の法人は、譲り受けた物件を「時価」で取得したものとみなされ、その時価の分を受贈されたとして益金に算入する。結果として法人税が発生する場合がある。

無償譲渡される0円住宅が増えている理由

無償譲渡される0円住宅が増えているのは、昨今空き家が急激に増えているというのが主な理由だ。空き家が増えている理由はいくつか考えられる。

人口減少・少子高齢化のため

空き家が増えている一番の理由は、日本における人口減少と急激な少子高齢化だ。日本では2008年以降人口が減少し続けている 。一方、住宅の新築戸数は増えており 、不動産物件は供給過多状態だ。

平成30年住宅・土地統計調査
https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2018/pdf/kihon_gaiyou.pdf

住む人が減っているのに住宅は増え続けているので、空き家が増えるのも当然といえる。さらに、高齢者の増加によって老人ホームや介護施設等への移転が進むことも空き家を増やす原因となっている。

地方の過疎化のため

日本では東京を中心にした都市圏に人口が集中する傾向にあり、地方の人口は減り、急速な過疎化が進んでいる。そのため特に地方では空き家が増え、無償譲渡対象となる物件が多くなるというわけだ。

税金対策のため

親が地方に住み、子ども世帯は都心に住宅を購入して住んでいるという場合、親が亡くなるとその実家は空き家となるケースが非常に多くなる。その場合、空き家を相続しても相続税がかかるだけではなく、固定資産税や都市計画税の負担も増えてしまう。そのため、誰も住まない空き家に税金を払うくらいなら無償でもいいので譲渡してしまおうという判断に至っていると思われる。

住宅などを取り壊しにくい事情がある

上記のように親が亡くなって実家が空き家となる場合、生まれ育った実家を取り壊すのは忍びないと感じる人は少なくない。取り壊しではなく無償譲渡を判断する考えの背景には、生家への思い入れなどの感情や事情があるとも考えられる。

無償譲渡される物件が増えている主な原因は空き家の増加だ無償譲渡される物件が増えている主な原因は空き家の増加だ

不動産物件の無償譲渡を受けるメリット

無償譲渡物件はコスト面でのメリットが大きい無償譲渡物件はコスト面でのメリットが大きい

実質0円で不動産物件が入手できる

なんといっても実質的に無料で不動産物件が手に入るというのが最大のメリットだ。譲り受けた物件が多少古くても、入手価格は0円だからリフォームに予算を回すことができる。実際、リフォームありきで無償譲渡物件を探している人も多い。

コストを抑えて地方での暮しを満喫できる

都心から地方に移住し、田舎暮らしを満喫したいと考えている人にとっても無償譲渡物件は検討の余地があるだろう。都心部より地方のほうが空き家が多く、無償譲渡物件が比較的多いと いうこともあり、衣食住のうち一番お金のかかる「住」を0円で入手することで、浮いた予算を他の生活費などに回し、ゆとりのある地方移住を満喫することができる可能性がある。

自治体の補助金を活用できるケースもある

地方自治体にとって人口減少と空き家問題は喫緊の課題だ。その課題を解決するため、地方自治体によっては無償譲渡物件のリフォームや建て替えに補助金や特別優遇制度を用意するところも増えている。

【地方自治体の補助金、特別優遇制度の一例】

山形県遊佐町・・・空き家バンク登録物件を町が最大350万円かけてリフォーム
北海道網走市・・・所有住宅のリフォームを行う場合、市のリフォーム融資資金を利用可能
鳥取県岩美町・・・住宅修繕費用を最大200万円助成

対象となる要件や最新の情報は各地方自治体のホームページを参照してほしい。

不動産物件の無償譲渡を受けるデメリット・注意点

無償譲渡物件にはデメリットもあるため注意が必要だ無償譲渡物件にはデメリットもあるため注意が必要だ

0円で手に入るからといって無償譲渡物件を簡単に譲り受けると思わぬ落とし穴がある場合がある。ここでは無償譲渡を受ける際のデメリットや注意点をお伝えする。

訳あり物件の可能性がある

不動産を「無料でも譲り渡したい」と考えるからには、それなりの訳がある場合がある。

●リフォーム費用がかなりかかるケース

外壁にクラック(ひび割れ)が入り雨が染み込んでしまっていたり、シロアリによって家屋が損傷していたりする場合など、リフォーム費用がかなりの額になってしまうケースがある。

●建物維持費が高いケース

建物が老朽化している場合、譲り受けた後の頻繁な改修などによって建物の維持費がかさむケースがある。また建物が古く気密性が低い場合、冷暖房などの光熱費が余計にかかってしまう場合も考えられる。

●解体費用・廃棄物の撤去費用がかかるケース

建物と土地を一括で譲渡されたが建物の老朽化が進んでいて住めない場合、建物の解体や撤去が必要となり、その費用が高額になってしまう場合がある。実際に住むためには解体費用がかかり、撤去後に建物を新築するのであれば、最初から新築物件を購入するのと変わらない費用水準になってしまうケースもあるため注意が必要だ。

●住宅の瑕疵について免責となっているケース

無償譲渡物件の場合、住宅の瑕疵(不具合)についてはもともとの所有者が責任を負わないとする免責条項が入っていることが多くなっている。その場合、譲渡された後に居住できないような重大な瑕疵が見つかったとしても、もともとの所有者に改修費用を請求したり、契約を解除したりすることができない。無償譲渡物件の場合はこうしたリスクについてもあらかじめ覚悟しておく必要がある。

無償譲渡であっても税金はかかる

無償譲渡で発生する税金についても確認しておこう。

●贈与税

無償で相手方に自分の財産を贈ることを「贈与」という。そのため無償譲渡は贈与税の対象となる。無償譲渡物件の場合、贈与の金額は不動産の時価を基に決定されるが、これが110万円を超えると贈与税がかかり、無償譲渡を受けた人は翌年に贈与税の申告をする必要がある。

●登録免許税・不動産取得税

無償譲渡を受けたとしても所有権移転登記をしなければならない。登記をする際には登録免許税が必要となる。また、無償譲渡であっても不動産取得税の負担は発生する。

●固定資産税・都市計画税

土地建物を所有している場合、毎年固定資産税を支払う必要がある。また、無償譲渡を受けた物件が都市計画区域内にある場合は都市計画税も同時に課税される。

譲渡手続きや書類の作成が面倒

一般的な不動産売買の場合、宅建(宅地建物取引士)の資格を持った不動産会社などが間に入り、譲渡手続きに関わる書類の作成や司法書士への登記申請依頼などを一括して行うが、無償譲渡物件の場合はそれらを自分で行う必要がある。もちろん司法書士や行政書士に依頼することもできるが、自治体によっては契約書作成のアドバイスなどを受けられる場合もあるので、自力の作成にチャレンジしてみるのも一つの手だ。

不動産物件を無償譲渡してもらう方法

無償譲渡物件を探すには空き家バンクなどの利用が基本となる無償譲渡物件を探すには空き家バンクなどの利用が基本となる

空き家の譲渡サービス・マッチングサイトを利用する

各自治体が運営する「空き家バンク」の利用も一般的になっている。自分が住みたい地域の空き家バンクを検索し、ホームページ上で紹介されている物件を探すという流れだ。また、不動産ポータルサイト会社などが運営するサイトを利用するのもおすすめだ。

LIFULL HOME'S 空き家バンク
https://www.homes.co.jp/akiyabank/

親類縁者・知人に譲ってもらう

空き家を相続して処分に困っている親類縁者や知人に譲ってもらうのも一つの方法だ。また、移住してみたい土地の自治体に相談してその土地の自治会長などを紹介してもらい、無償譲渡物件を探してもらうという方法もある。

無償譲渡物件の活用方法

無償譲渡物件は自宅以外にビジネスにも活用できる無償譲渡物件は自宅以外にビジネスにも活用できる

自宅として活用する

無償譲渡物件の用途として最も多いのは、自宅としての活用だ。無償譲渡物件の場合は築年数が古いものが多いが、リフォームを前提として譲り受ければ古民家としての風情のある暮らしを実現することもできる。

民泊や宿泊施設として活用する

広めの古民家を無償で譲り受けてリフォームを施し、民泊などの宿泊施設として活用しているケースも多く見受けられる。古民家をリノベーションし、宿泊施設などにすることを代行する会社もあるので、興味のある人は調べてみてもよいだろう。

シェアオフィスやワーケーション施設として活用する

最近ではテレワークが普及し始め、PCとネット環境があればどこでも働くことができるようになるケースが増えてきた。そのため環境のよい地方の古民家をリノベーションし、シェアオフィスやワーケーション施設として活用することも増えている。

福祉施設として活用する

日本全体で広がる高齢化問題は、特に地方で深刻さを増している。そのため高齢化の進む地域で無償譲渡物件を福祉施設として活用することも注目を集めている。福祉施設としての要件を満たしたリフォームや用途変更、介護士などの人員を集めることなどのハードルは決して低くないが、さらなる高齢化社会に向け、有効な活用方法といえるだろう。

トランクルームとして活用する

無償譲渡物件を第二の自宅とし、トランクルームとして活用する方法もある。自宅内の荷物をトランクルームである無償譲渡物件に送ってしまえば今の住まいで広々と生活することができるだけでなく、よりコンパクトなところに住み替えることもできる。また、大きめの無償譲渡物件であれば、ビジネスとしてトランクルーム事業を営むことも方法としてあるだろう。

無償譲渡物件に移住した後、今の家はどうする?

無償譲渡物件に移住したあと、現在の住宅を上手に処分、活用すれば生活費などに充てることができる無償譲渡物件に移住したあと、現在の住宅を上手に処分、活用すれば生活費などに充てることができる

不動産売却をする

無償で譲り受けた物件に完全に移住するのであれば、現在の家を売却するのも一つの方法だ。売却で得た資金は無償譲渡物件のリフォーム費用などに充てることができる。

賃貸として貸し出す

今の家を賃貸として貸し出すのであれば、将来的に、現在の住まいに戻って再び生活することも可能になる。内外装の補修やエアコンなどの設備の交換など、賃貸経営は手間や費用がかかる面もあるが、賃料を生活費に充てることも可能なため、おすすめの方法の一つだ。

リバースモーゲージで活用する

一番のおすすめはリバースモーゲージを利用する方法だ。リバースモーゲージとは自宅を担保に金融機関から融資を受ける金融商品で、借主の生前は「元本の返済が必要ない」という点が一般的な融資と異なる。
生きている間は利息の返済のみを行い、元本の返済は借主の死後、物件を売却するなどして一括で行う仕組みだ。融資を受けた資金は無償譲渡物件のリフォーム資金に充てることも可能で、老後の生活資金にすることもできる。また、元の自宅はそのまま住み続けることが可能なため、子どもたちの自宅にしたり、賃貸で貸し出したりといったことも可能だ。

※リバースモーゲージは基本的に変動金利なため利息返済額が変わったり、担保となる不動産価値の下落によって途中での返済が必要となったりする点などに注意が必要

まとめ


テレワークの普及やインターネット販売の一般化によって、地方でも都心部と変わらない生活を送れるための環境整備が進みつつある。
そのため地方で無償譲渡物件を探し出し、リフォームして地方移住を始める人も増加中だ。
特に最後にご紹介したリバースモーゲージとの組み合わせはメリットも多いため、地方移住に興味のある人は、検討をおすすめしたい。

無償譲渡物件に移住したあと、現在の住宅を上手に処分、活用すれば生活費などに充てることができる大自然の中で生活をするという夢も、無償譲渡物件を活用すれば低コストで実現することができるかもしれない

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