住宅ローンが不正利用される背景
住宅ローンの不正利用が広がっている。具体的には、住宅ローンを使って投資用ワンルームマンション等の収益物件を購入するという不正利用だ。住宅ローンを借りる際、借主は貸主(銀行)と金銭消費貸借契約書を締結する金銭消費貸借契約書には資金使途が定められている。住宅ローンの資金使途は「自ら居住する住宅の取得(マイホームの購入)」であるが、この資金使途に違反して住宅ローンを収益物件等の購入資金に充てるのが不正利用だ。
では、なぜ住宅ローンの不正利用が行われるかというと、住宅ローンは他のローンと比べて融資条件が有利となっていることが理由として挙げられる。住宅ローンは国民の住宅取得意欲を促すという政策的な観点から、独立行政法人住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)が民間の金融機関を支援しており、長期かつ低金利で組むことができる特殊なローンとなっている。収益物件の購入では、通常、アパートローンもしくは不動産投資ローンと呼ばれるローンを利用することが一般的である。
しかしながら、アパートローン等には住宅金融支援機構のバックアップがないため、銀行にとっては貸し出すリスクが高くなり、その結果、金利は住宅ローンよりも高くなっている。また、アパートローン等の融資期間は建物の法定耐用年数を最長としている銀行が多く、建物構造によっては住宅ローンよりも融資期間は短くなる。
例えば、木造の法定耐用年数は22年であるため、新築の木造アパートに投資しようとすると、融資期間は22年が最長となることが多い。同じ額を借りた場合、毎月の返済額は融資期間が短くなるほど高くなる。そのため、「22年のアパートローン」の方が「35年の住宅ローン」よりも毎月の返済額が高くなってしまい、返済の負担が重くなってしまうのだ。
投資家にとっては、低金利かつ長期で組める住宅ローンの方がアパートローンよりも有利であるため、住宅ローンを利用して収益物件を購入しようとする動機が働いてしまっているのだろう。
住宅ローンの不正利用に巻き込まれないために
住宅ローンの不正利用に関わらないように、契約違反となるケースを確認しておこう。以下のようなケースが挙げられる。
【ローン契約違反となるケース】
・自らは居住するつもりがない住宅を投資目的で取得する
・自動車の購入費用や子供の学費など住宅取得費以外の費用を上乗せして申し込む
・消費者ローンなどの返済に充てる目的で申し込む
上記の例は、借りたお金をマイホームの購入以外の目的で利用しており、いずれも資金使途違反となるケースだ。住宅ローンの不正利用は、借主が銀行をだましてお金を借りているということであり、借主は銀行に対して加害者という立場になる。仮に第三者の勧誘によって不正利用をしたとしても、借主は銀行に対して詐害行為を行っており、銀行は被害者という立場だ。
不正利用は詐欺罪に加担していることになるため、犯罪であるということを意識しておきたい。
住宅ローン返済中に転勤することになったら?
住宅ローンを返済中の家を他人に貸すことも、見方を変えれば投資用物件を購入しているのと同じである。そのため、原則として住宅ローンの返済中に物件を他人に貸すことはできない。
マイホームを収益物件のように運用したければ、住宅ローンを完済した後に行うことが基本となる。ただし、例外的に住宅ローンの返済中であっても、転勤等の必要がありやむを得ない理由がある場合には、銀行も一時的に住宅を貸し出すことを認めてくれることが多い。転勤期間中に一時的に家を貸し出すことを「リロケーション」と呼ぶが、リロケーションをしたい場合は事前に銀行に了解を取れば不正利用にはならない。逆に了解を取らずにリロケーションを行ってしまうと、発覚した場合に不正利用を疑われることになる。
余計な疑念を生じさせないためにも、銀行にはきちんと了解を取った上でリロケーションを始めることがポイントだ。
住宅ローン不正利用の事例
住宅ローン不正利用は、大きく分けて借主が自ら意図的に行う場合と、だまされて行う場合の2パターンがある。自ら意図的に行う場合は救い難いが、気を付けたいのはだまされて行う場合だ。だまされて行う場合としては、投資用物件を売る不動産会社に勧誘されて知らずに不正利用してしまうケースがある。
手口としては、SNSや不動産投資セミナーを通じてターゲットに近づくことも多いようだ。場合によってはマッチングアプリ等で相手に近づき、一定の信頼関係を築いてから不動産投資の話を持ち掛けられるようなこともある。
詐欺グループは最終的に物件を買わせて利益を得ることが目的となっている。将来の不安につけこみ、投資物件を買うように誘導して購入資金を作るために借金をさせるというのが一般的な流れだ。銀行から不正に住宅ローンを引き出す虚偽申請の方法を提案され、理解が不十分なままにお金を借り、最終的には不当に高い金額で物件まで買わされる。
中には一時的に借主の住所を移して住民票を作成し、銀行に提出してあたかもそこに住んでいるかのように偽装する詐欺グループもあるようである。このように借主本人が詐欺にあっていたとしても、借主本人は銀行に対して詐害行為を行っている点には注意したい。
不正利用が発覚すれば、銀行から訴えられるのは詐欺グループではなく詐害行為を行った借主となってしまうのだ。
不正利用が発覚するとどうなるか
住宅ローンを使って投資物件を購入するような不正利用が発覚すると、以下のようなことが行われる可能性がある。
・住宅ローンからアパートローンへの借り換え
・住宅ローン残債の一括返済
・警察への通報もしくは損害賠償請求
1つ目としては、住宅ローンからアパートローンへの借り換えが求められる可能性がある。アパートローンであれば資金使途が投資物件の購入もしくは建築になるため、アパートローンに借り換えれば資金使途違反の問題は解消される。ただし、アパートローンと住宅ローンでは審査基準が異なり、必ずしも住宅ローンを借りることができた人がアパートローンを借りられるとは限らない。
アパートローンは物件の収益性も考慮されることから、例えばだまされて不良物件を高く購入したようなケースでは、アパートローンの審査に通らないことも考えられる。
2つ目としては、住宅ローン残債の一括返済が求められる可能性がある。
売却で住宅ローン残債が一括返済できれば乗り切ることはできるが、だまされて不良物件を高く買っているケースでは、住宅ローン残債が売却額を上回るオーバーローンとなってしまうこともある。オーバーローンで一括返済できない場合は、競売や任意売却といった措置が取られることになる。
3つ目としては、警察へ通報される、もしくは損害賠償請求を受けるといった可能性もある。
住宅ローンの不正利用は、あくまでも借主が加害者で銀行が被害者という関係だ。詐欺という犯罪を行っていることになるため、最悪の場合、警察への通報もしくは損害賠償請求の可能性があることは知っておきたい。
こんな勧誘には要注意!
詐欺グループにだまされて住宅ローンを不正利用するケースでは、物件を不当に高く買わされることが多く、借り換えや一括返済ができない可能性が高くなってしまう。そのため、一番重要なのはそもそも詐欺グループにだまされないということである。
詐欺グループは、SNSやマッチングアプリ、不動産投資セミナーを通じて近づいてくるため、巻き込まれないことが重要だ。住宅金融支援機構では、以下のような勧誘に気を付けるよう注意喚起を促している。
・返済中のカードローンや車の借入をフラット35で一本化しましょう。
・契約書を2つ作成しましょう。みんなやっているから大丈夫。
・フラット35は投資用物件にも利用できます。
・金融機関には自己居住用と説明すればOK。
・収入が少ない?うまくやるので任せてください。
・手続きはすべて私がやります。勝手に金融機関と話をしないで。
出典:フラット35「不正利用に巻き込まれないために」
https://www.flat35.com/files/400360270.pdf
住宅金融支援機構では、お客様コールセンターを設けているため、不審な勧誘を受けたら一度相談してみてほしい。







