移住検討者向けに市職員が現地を案内

新型コロナウイルスの感染拡大が全国的に始まった2020年1月から、約2年がたった。この2年の間に、自分の住む家や場所について考え直したり、引越しや移住を検討したりした人もいるのではないだろうか。

そういった移住検討層をターゲットに、地方自治体は移住者を呼び込むためにさまざまな施策を実施している。WEBプロモーションやセミナー、移住支援金・居住支援金などなど…。ここ2年ほどでそういった広告を目にする機会が増えたようにも感じる。

京都府亀岡市では地道に移住検討者の相談・サポートを行い、移住者が増えつつある。自治体の担当者が移住・定住促進施設に宿泊した人をツアーで案内し、街のよいところから悪いところまで何でも話してくれるのだ。亀岡市役所

そんななか、地道に移住検討者の相談・サポートを行い、移住者が増えつつある自治体がある。京都府亀岡市だ。旧亀山城下町の一角にある古民家宿「離れ」にのうみを移住検討者向けの「移住・定住促進施設」として活用。一定の条件を満たした移住検討者は、移住体験料金で宿泊することができる。自治体で提供されるお試し移住施設は、自治体担当者の案内がない場合も多いが、亀岡市は違う。自治体の担当者が移住・定住促進施設に宿泊した人をツアーで案内し、街のよいところはもちろん、悪いところもざっくばらんに話してくれるのだ。「離れ」にのうみに宿泊し、自治体の担当者の話を聞いた人の中には、実際に移住した人もいるという。

京都にもアクセスがしやすく自然が豊富

亀岡市は京都市の西に隣接。大阪府とも隣り合っており車で1時間ほどで行ける。京都駅からJR亀岡駅へは快速で20分、国道9号や京都縦貫自動車道などの大きな幹線道路が街を通り、交通利便性が良いといえる。都市部への通勤通学にも便利で、かつ、田舎のゆったりした暮らしも満喫できる。都会と田舎の両方のいいとこ取りなのが「トカイナカ」亀岡の魅力といえる。また、JR亀岡駅の南口側には明智光秀の拠点だった亀山城跡や古寺、神社などが立ち並ぶ城下町エリアもある。

JR亀岡駅南口の風景。京都駅から快速で20分と、都市にもアクセスしやすい場所といえるJR亀岡駅南口の風景。京都駅から快速で20分と、都市にもアクセスしやすい場所といえる
JR亀岡駅南口の風景。京都駅から快速で20分と、都市にもアクセスしやすい場所といえる亀岡駅南側の城下町エリア

ミディアム・マイルド・まちなかに分類した「亀岡暮らしなび」

「移住検討者の方向けに、亀岡市を3つのエリアに分類した『亀岡暮らしなび』を作成しました。より自然のある場所に住みたい方は『ミディアム』、中間エリアは『マイルド』、利便性の良いエリアを求める方は『まちなか』がおすすめです」と話すのは、亀岡市長公室SDGs創生課 係長の橋本広明さん。

地図を見ると分かりやすいのだが、亀岡市のまちなかエリアは国道9号と京都縦貫自動車道付近に広がっており、店舗や病院などもおおむねまちなかエリアに集積している。だが、国道9号付近を少し抜けると、穏やかな田園風景が広がるのだ。亀岡市の耕地面積は約2,750haと、京都府全体の1割を占める。ちなみに京都といえば京野菜が有名だが、亀岡で約7割を生産しており農業も盛んに行われている。

移住希望者向けマップ「亀岡暮らしなび」亀岡市ホームページより移住希望者向けマップ「亀岡暮らしなび」亀岡市ホームページより

移住希望者向けマップ「亀岡暮らしなび」亀岡市ホームページより
https://www.city.kameoka.kyoto.jp/soshiki/6/1848.html

「亀岡市は、市内の12地区を移住促進特別区域に指定しています。移住促進特別区域内の空き家に移住する場合は、改修費用として補助金が支給されます」

2022年3月7日現在の移住促進特別区域は、東別院町、西別院町、曽我部町、吉川町、ひえ田野町、宮前町、東本梅町、馬路町、旭町、千歳町、河原林町、保津町だ。

日本で初めてレジ袋禁止を開始

日本では、プラスチック製買い物袋の有料化が2020年7月にスタートした。だがその2年前、全国で初めて亀岡市と亀岡市議会は「かめおかプラスチックごみゼロ宣言」を実施。プラスチック製レジ袋有料化を開始し、2030年までに市内から排出される使い捨てプラスチックごみをゼロにすることを目指している。

「亀岡市の環境保全の取り組みは、保津川の船頭さんたちが長年、川の清掃を継続していたことに始まっています。保津川下りは亀岡の主要な観光資源ですが、お客さんにきれいな川を見てほしいのに、当時、川にはプラスチックごみが多く散乱していました。ごみ拾いを船頭さんたちが長年していたのですが、市としても、保津川から下流に流さないために一歩進んだ取り組みをしようということで始まりました」

そういった船頭さんたちの取組みや「かめおかプラスチックごみゼロ宣言」の効果があってか、今では保津川でプラスチックごみを見ることはほとんどなくなってきたそうだ。

秋の保津川下り。保津川は亀岡の貴重な観光資源でもある秋の保津川下り。保津川は亀岡の貴重な観光資源でもある
秋の保津川下り。保津川は亀岡の貴重な観光資源でもある亀岡駅北口を少し進むと保津川が見える

環境先進都市に賛同し移住を決めた人も

お話を伺った亀岡市長公室SDGs創生課 係長の橋本広明さん。移住検討者の質問にひとつひとつ丁寧に、ざっくばらんに答えてくれるお話を伺った亀岡市長公室SDGs創生課 係長の橋本広明さん。移住検討者の質問にひとつひとつ丁寧に、ざっくばらんに答えてくれる

「世界に誇れる環境先進都市」を目指す亀岡市の考えに賛同し、移住を決めた人もいるという。

「ミツバチの巣から採れるみつろうを利用した天然素材のラップを制作する『aco wrap(アコラップ)』さんは、『かめおかプラスチックごみゼロ宣言』をきっかけに亀岡に移住されました。今後も環境に配慮し、特化した街であることをアピールして『そんな街に住みたい』『ここで起業したい』と思ってもらえるように、亀岡のよさを知ってもらう活動をしてきたいです」と橋本さんは話す。

借りれる空き家がないという課題

亀岡には移住者が始めたカフェや店舗などがいくつかある亀岡には移住者が始めたカフェや店舗などがいくつかある

京都への通勤のしやすさや自然の豊富さ、環境先進都市などのさまざまな側面から移住検討者が増えつつある亀岡市。だが、移住者と住居のマッチングに課題があるという。

「空き家はあるのですが、どこの誰なのか分からない人には貸したくないという持ち主の方が多く、希望の物件に住むまでに時間がかかってしまうケースが多いですね。地域のコミュニティが強く、周辺に迷惑をかけたくないという気持ちの大家さんが多いということもあり、移住を検討されている方には、まずは地域に入ってもらうことをおすすめしています。理想の古民家へ家族で移住された方は、まず亀岡に仮住まいとして移住して、そこから農業を通じて地域に入り物件を探されました。遠回りのようですが、まず地域に入ることが実は一番近道だと思います」

亀岡駅北口では分譲マンション、分譲一戸建てを含む複合開発が進行中

亀岡駅北口で建築中の分譲マンション。駅徒歩約1分という立地にある亀岡駅北口で建築中の分譲マンション。駅徒歩約1分という立地にある

橋本さんによれば、亀岡でも人気なのは自然が豊富なエリアにある古民家なのだそう。だが、まちなかエリアや、駅周辺に住みたい人にとってはひとつ選択肢が増えるかもしれない。

亀岡駅北口では、大規模な駅前の土地区画整理事業が進行中だ。亀岡駅北口に2020年にオープンした「サンガスタジアム by KYOCERA」を契機に、駅北には亀岡市が誘致したビジネスホテルが2021年に開業、駅徒歩1分の距離には総戸数96戸の分譲マンション(ローレルコート亀岡駅前)が2022年に竣工予定。さらに、駅北徒歩6分の立地には計162区画の大規模分譲一戸建て「セントフローレンスタウン亀岡駅北ソダチマチ」の分譲が進んでいる。

亀岡駅北口で建築中の分譲マンション。駅徒歩約1分という立地にある2020年にオープンした「サンガスタジアム by KYOCERA」

著者が亀岡を訪れた際は、ちょうど「サンガスタジアム by KYOCERA」と、亀岡駅北口の「かめきたサンガ広場」で、同時にイベントが開催されており、たくさんの家族と楽しそうに遊ぶ子どもたちで大変にぎわっていた。分譲マンションや分譲一戸建て住宅へのや入居が進めば、さらなるにぎわいが期待できそうな街であると感じた。



取材協力:亀岡市
https://www.city.kameoka.kyoto.jp/

亀岡駅北口で建築中の分譲マンション。駅徒歩約1分という立地にある亀岡駅北口の「かめきたサンガ広場」
亀岡駅北口で建築中の分譲マンション。駅徒歩約1分という立地にある亀岡駅北口の風景