東京と大阪を結ぶリニア中央新幹線の中間駅が中津川に

沿線エリアのまちの活性化が期待されるリニア中央新幹線沿線エリアのまちの活性化が期待されるリニア中央新幹線

最先端技術を駆使し、超電導磁石を活用して高速走行を可能にするリニア中央新幹線。東京・大阪間を最高時速500kmで走るといわれる。開業すれば、超巨大な経済圏が形成され、大きな経済効果を生み、まちの発展も期待される。

まずは東京の品川から名古屋までの開通を予定。当初の計画では2027年の開業を目指しているが、工事着工できていない箇所があり、延期も想定されている。

駅は、沿線となる1県に1駅設置される計画が立てられた。品川と名古屋の間に、神奈川県相模原市、山梨県甲府市、長野県飯田市、岐阜県中津川市と計6つの駅ができる予定だ。

今回は、岐阜県駅(仮称)ができる中津川市について、リニア開通に伴って取組むまちづくりに迫りたい。

中津川市では誘致を進めるにあたり、「まちづくりのさまざまな側面への波及効果を最大限活用し、当市が持つ豊かな自然、独自の歴史・文化、多様な産業、観光資源、交通の要衝としての地の利といった潜在的な力を高めたい。そして周辺地域との連携による“広域の拠点都市”を目指していきたい」と期待。

地上駅の設置が可能、高速道路のICに近接、環境への影響が少ないなど、諸条件を満たしたことで設置が決まったという。

市民目線を大切にした、まちづくり計画策定へ

南北に長い形の中津川市は、東に木曽山脈、南に三河高原、そして中央に清流として知られる木曽川が流れる。豊かな自然による農林業が盛んな一方、中央自動車道が通り、名古屋圏へのアクセスの至便性、また、ちょうど首都圏と近畿圏の中間地点であることで、多数の企業が進出できる工業団地の開発も進めてきた。

そんななかでさらなる発展を目指しての、リニア新駅の誘致。

リニア中間駅設置に選定された際に行われた市民アンケートでは、リニア開通で期待することとして、「東京や名古屋へ移動しやすくなること」が最も高く、次いで「新たな企業が立地し、雇用が確保されること」であった。

リニアを利用すれば名古屋まで約15分、東京まで約60分。現状の交通アクセスと比べると名古屋までは約40分、東京までは約1時間40分の短縮と推計され、ぐっと近く感じられるようになる。経済の発展、雇用機会の創出は、市民の豊かな暮らしにつながる。また、多くの市町村が抱える人口減の解消も期待できる。

その後、中津川市は市民の意見をすくいあげる車座懇親会を開催。そこでは「実際に中津川で働く若い人たちの意見を集約する場が必要」「地域に合った戦略が重要。市がしっかりリーダーシップをとり、市民レベルの意見を聞くことが大事」「まちづくりがうまくいけば人が住んでくれる。将来人口を増やすまちづくりをどうするかビジョンをしっかりして、大きな夢を持った形のまちづくりを考えていかなければならない」といった意見が出た。

そうした市民目線を大切にしながら「中津川市リニアのまちづくりビジョン策定委員会」を立ち上げ、リニアを見据えたまちづくり計画を進めている。

リニア岐阜県駅(仮称)設置予定のエリアの空撮写真リニア岐阜県駅(仮称)設置予定のエリアの空撮写真

まちづくり5つの重点プロジェクトが進行中

取組みは誘致の際に期待されたことを実現するため多岐にわたるが、策定された「中津川市リニアのまちづくりビジョン」において重点プロジェクトとされているのが下記の5つ。

「中津川市リニアのまちづくりビジョン」重点プロジェクト5つ

①体験のまち“なかつがわ”においでんさいプロジェクト

②いろんなもの誘致プロジェクト

③なかつがわで暮らそうプロジェクト

④リニア車両基地を活かそうプロジェクト

⑤「癒し」の駅前づくりプロジェクト


①では既存の地域資源の活用で市に人を呼び込む。②ではリニアによる交通利便性を持つ新たなビジネス拠点としてリニア駅近接に新たな事業用地の開発を計画。③は移住・定住者の促進を目指す。④はリニアの車両基地も造設されることで、新たな観光資源としての期待ができる。⑤は人々が訪れる玄関口になるリニア駅の周辺を整備し、文化や産業など地域の魅力の発信や多様な交流の場の創出などを盛り込んだ検討を行っている。

移住希望者を対象に行われた、田舎暮らしツアーの様子移住希望者を対象に行われた、田舎暮らしツアーの様子

移住・定住検討者向けに積極的に魅力を発信

重点プロジェクトの一つになっているとおり、移住・定住者が増えることは市の活性化に大きな役割を果たす。

中津川市定住情報ポータルサイト「中津川に住もう!」やSNSなどで、市の魅力を積極的に発信。中京圏で行われたイベントに出展して、市内の山林で産出される東濃桧(とうのうひのき)で作られる産直住宅をPR。コロナ禍においてはオンラインでの移住相談や移住ツアーも実施している。それとともに、空き家情報バンクや補助金といった移住定住者の住宅確保のための支援などの取組みも行う。

空き家を活用した田舎暮らしが体験できる体験住宅の整備、遊休農地や耕作放棄地を活用した市民農園の開設もされている。

市役所の定住推進課によると「人口減少を少しでも食い止められるよう、移住者に向けた施策だけではなく、未来を担う若者の市外流出の抑制と地元定着を図るよう取組みも進めています」とのこと。

自家用車が主な移動手段となっている現状だが、「市民がいつまでも住み慣れた地域で暮らし続けられるよう、利用しやすい地域公共交通の維持を目指す」との計画もあるそうで、住みよいまちづくりのための細やかな配慮がされている。

中津川市加子母、川上、付知地区などで育った東濃桧で作られた産直住宅。東濃桧は、古くは名古屋城の建築にも使用されたといわれる銘木だ中津川市加子母、川上、付知地区などで育った東濃桧で作られた産直住宅。東濃桧は、古くは名古屋城の建築にも使用されたといわれる銘木だ

駅周辺は自然を生かした癒しも感じられる空間に

リニア駅が設置されるのは、JR中央本線・美乃坂本駅の近く。中津川市役所からは西へ車でおよそ10分。隣の恵那市との市境に程近い場所である。

駅周辺の整備は、令和元年度よりデザイン会議を立ち上げ、来訪者や地域住民にとって使いやすく、居心地の良い空間とする計画が進行中だ。

加えて、駅近くには千旦林川(せんだんばやしがわ)という川が流れているのだが、国土交通省が促進する河川空間を生かした取組み「かわまちづくり」事業に登録された。これにより、駅前広場から千旦林川沿いにある親水公園までを一体的に整備することに。ランニングやウオーキングコースの設置、この地のシンボルである恵那山の眺望を生かした空間作り、自然環境を感じられる体験などが盛り込まれる予定となっている。

リニア新駅を中心に、風光明媚な土地柄を生かした新たな空間作りが期待されるリニア新駅を中心に、風光明媚な土地柄を生かした新たな空間作りが期待される

まちの整備から観光PRまでトータルで計画を進める

中津川市加子母地域にある、地歌舞伎が上演される「かしも明治座」。明治時代に建てられ、岐阜県の指定有形民俗文化財に指定されている中津川市加子母地域にある、地歌舞伎が上演される「かしも明治座」。明治時代に建てられ、岐阜県の指定有形民俗文化財に指定されている

リニア駅の建設予定地の1km南は、江戸時代に整備された中山道が通っていた場所。市内には中津川宿、落合宿、馬籠宿と、かつての宿場町の雰囲気が残っている。また、市民が演じる地歌舞伎と呼ばれる文化も受け継がれている。

市役所の観光課では「超近代的なリニアに乗って着いた場所には、江戸時代の風情を残すまちがあり、街道文化を現在に受け継ぐ人がいます。恵まれた自然の景色に包まれ、古きよきものと超近代が共存する当地の魅力を広く発信し、旅先として選んでいただけるよう取組んでいきたい」と語る。

リニアによる波及効果をまちづくりに最大限に活かそうと取組んでいる中津川市。以前からあったここにしかないものに、リニアによって新たにできるここにしかないものが加わって、住んでよし、訪れてよしのまちを目指している。

着々と進められる各計画は市のホームページで詳細に報告されているので、ぜひ参考にしてほしい。

取材協力・画像提供:中津川市役所 リニア都市政策部リニア対策課
参考URL:https://www.city.nakatsugawa.lg.jp/shisei/urbandev/1/index.html
中津川市定住情報ポータルサイト「中津川に住もう!」:https://www.nakatugawa.com/