沿線開発から約半世紀が経過。再開発をすすめ、すべての世代にやさしい街に

2019年11月に開始された相模鉄道(相鉄線)とJR線の直通運転。さらに2023年3月の開始が予定されている相鉄線と東急線の直通運転に向け、都心部への交通の利便性向上が期待されている相鉄線沿線。

相鉄いずみ野線は1976年に、二俣川~いずみ野間が開業(1999年に湘南台駅まで延伸)。駅の開業と同時に大規模なニュータウンが造成されるなど、沿線の開発も行われてきた。そのひとつが「南万騎が原」駅周辺のエリアだ。2014年に相鉄グループが同エリアで暮らす人に実施したアンケートによると、「自然環境が豊富」「治安が良い」などの理由から生活満足度は高いものの、一方で開発から約半世紀が過ぎ、住民の高齢化による活力の低下や住居の経年劣化などの問題も顕在化していた。

そこで相鉄グループでは、国土交通省によるモデル事業などを活用しながら、さまざまなプロジェクトを推進。賃貸マンション・分譲マンション・サービス付き高齢者向け住宅・介護施設などの建築に加え駅前広場を再整備するなど、住み替えを含め多世代に対応する住み良い街づくり事業を行ってきた。

今回は、「南万騎が原」駅周辺の再開発プロジェクト「みなまきみらいプロジェクト」の狙いや取組み内容、手応えなどについて、相鉄不動産株式会社 プロジェクト開発部の小寺克征さんにお話をお聞きした。

ファミリー・若年層・高齢者層向けの住宅群を整備し、多世代が交流する地域コミュニティを創出。</br>近隣の既存住宅に住んでいる人に多様な住み替えメニューを用意し、エリア内の住み替え循環を推進したことなどが評価され、</br>「みなまきみらい多世代共住モデル」が2019年度グッドデザイン賞を受賞したファミリー・若年層・高齢者層向けの住宅群を整備し、多世代が交流する地域コミュニティを創出。
近隣の既存住宅に住んでいる人に多様な住み替えメニューを用意し、エリア内の住み替え循環を推進したことなどが評価され、
「みなまきみらい多世代共住モデル」が2019年度グッドデザイン賞を受賞した

住民アンケートをもとに課題を抽出。さまざまな取組みに活用

「万騎が原」住宅地は、相鉄線「南万騎が原」駅が開業する前の1960年前後に、二俣川駅からのバス便でのアクセスとして開発された団地だった。その後「南万騎が原」駅開業に合わせて開発された「柏町」住宅地のふたつの地域の合計で、現在1万人ほどの人が暮らしている。

「相鉄グループでは、2014年に万騎が原と柏町のふたつの街でアンケートとインタビュー調査を行い、地域課題を調査しました。その問題を解決するのが、今回のプロジェクトの背景になります。
アンケートでは『長年暮らしているから、このエリアで生活を続けたい』というコメントがある一方で、高齢者からは『山坂が厳しい』『駅から離れると大変』『一戸建て住宅以外にほとんどなく、高齢者向けの住み替え先が少ない』というご意見がありました。また若い世代からは『子育てが大変だから、駅前に保育園などが欲しい』というようなご意見をいただきました。

そこで、この地域課題を解決するためのプロジェクトを事業提案し、2015年10月に採択された国土交通省の『スマートウェルネス住宅等推進モデル事業』などを活用し、さまざまな取組みを行っています」

スマートウェルネス住宅等推進モデル事業:高齢者・子育て世帯等の居住の安定確保及び健康の維持・増進に資する先導性が高い事業等を行う民間事業者等を公募し、国が選定した事業の実施に要する費用の一部を補助するもの

1958年~1967年に相鉄として最初に手掛けた大規模住宅地が「万騎が原」住宅地。土地分譲は行わず</br>全区画を一戸建て住宅分譲としたため、整然とした街づくりが実現された1958年~1967年に相鉄として最初に手掛けた大規模住宅地が「万騎が原」住宅地。土地分譲は行わず
全区画を一戸建て住宅分譲としたため、整然とした街づくりが実現された
1958年~1967年に相鉄として最初に手掛けた大規模住宅地が「万騎が原」住宅地。土地分譲は行わず</br>全区画を一戸建て住宅分譲としたため、整然とした街づくりが実現された1976年4月開業当時の「南万騎が原」駅

賃貸住宅からサ高住まで。エリア内での住み替え循環を図る

多くの世代により快適に暮らしてもらうために「みなまきみらいプロジェクト」が推進したのが、近隣の既存住宅に住んでいる人たちに対して住み替えメニューを用意し、エリア内での住み替え循環を図ることだった。

そこで、相鉄グループではハード・ソフト両面からプロジェクトを始動。
ハード面では、若い世代向けに賃貸マンション「KNOCKSみなまきみらい」の建築のほか認可保育園「グローバルキッズ南万騎が原園」、学童クラブの設置を行った。高齢者向けにはサービス付き高齢者向け住宅「グランドマストみなまきみらい」の建築のほか、デイサービス・居宅介護支援、訪問介護・看護事業所の整備などを実施。
また日々の生活に配慮して、スーパーの「そうてつローゼン」建て替えや調剤薬局、クリニックなどを駅前に誘致することで、より暮らしやすい街に。モデル事業以外でも駅前に分譲マンション「グレーシアみなまきみらい」を建築するなど、住み替えを促す取り組みを主導した。

ソフト面では「住まいの相談窓口」の設置のほか、相鉄グループが一体となった各種の住み替え応援メニューを用意するなどして、住み替えを促進。
「まず考えたのが、駅前周辺にほぼ一戸建て住宅しかなかったため、多様な住まいを提供することでした。若い世代にとっていきなり一戸建て住宅や分譲マンションの購入はハードルが高いため、賃貸マンションを建築しこのまちで暮らすきっかけをつくりました。同時に子育て世代の住みやすさも考慮し、認可保育園と学童クラブの整備、小児科や病児保育の誘致も行っています。

また、介護は必要ではないものの、移動が少し困難になっている高齢者向けの、自立型サービス付き高齢者向け住宅も建築しました。介護が必要な方というよりも、駅前に住むことで横浜まで買い物に出かけるなど、よりアクティブな暮らしを期待したものです。分譲マンションも、シニアの方の新生活にフィットするのではないかと考えて建築しました。

今後住み替えが進んだとしても、賃貸マンションに住んでいる若い方たちも何年かすると年を重ねていきます。そのときには近隣の一戸建て住宅や、中古になりますが分譲マンションを購入したり、サービス付き高齢者向け住宅への入居も可能です。このような住み慣れたエリア内で住み替え循環を促進する取組みは、一定の成果をあげられたと考えていますし、今後早い年月の間にも徐々に成果が期待できると考えています」

「南万騎が原」駅前に建築した賃貸マンション「KNOCKSみなまきみらい」。2017年3月に入居開始「南万騎が原」駅前に建築した賃貸マンション「KNOCKSみなまきみらい」。2017年3月に入居開始
「南万騎が原」駅前に建築した賃貸マンション「KNOCKSみなまきみらい」。2017年3月に入居開始2017年4月に開園した認可保育園「グローバルキッズ南万騎が原園」
「南万騎が原」駅前に建築した賃貸マンション「KNOCKSみなまきみらい」。2017年3月に入居開始2017年7月に入居を開始したサービス付き高齢者向け住宅「グランドマストみなまきみらい」

住み替え循環に貢献した分譲マンション。一方、サ高住への住み替えは少なかった

「南万騎が原」駅前に建設した分譲マンション「グレーシアみなまきみらい」の購入者は30代・40代が多く、それは一般的な傾向と話す小寺さん。特徴的だったのが、相鉄不動産が分譲した他のマンションよりも親子の近居・同居が多かったことだったという。

「内訳は子どもが沿線外から親の近くに転居してきての近居、沿線内の別の地域から転居しての近居、逆に親が子どもの近くに引越してきた例もありました。またマンション建設を機に親子で同居を始めた家族もありました。
分譲マンションを購入する場合、費用を捻出するためにもともと住んでいた家を処分する方が多く、住み替えを促進するには分譲マンションが適しているように感じています。建物検査が無料で受けられるなどする『あんしんフルサポート』、自宅が売れなかった場合でも買取保証金額で確実に自宅を売却できる『買取保証付仲介サービス』、住み替えまでの仮住まいが不要な『住んだまま買取サービス』ほか、スムーズに、不安を少なくしながら住み替えを促すソフト面のサービスも、多くの方にご利用いただきました」

分譲マンション購入が多くの人の住み替えに利用された一方、サービス付き高齢者向け住宅はそれほど自宅の処分には結びつかなかったという。

「入居者の8割ほどが80歳以上の方で、女性が多いというのも一般的な傾向です。万騎が原や柏町の方が多いかと予想していましたが、実際は沿線外からが約4割、沿線の横浜市旭区・泉区の方が約4割でした。
サービス付き高齢者向け住宅は基本的には賃貸住宅のため、入居時も敷金・礼金程度の一時金で済み、有料老人ホームに入居するときのような多額の一時金が不要です。高齢者が施設に入るときは、その施設が本当に自分の暮らしに合うのかどうかが不安なため、なかなか自宅を手放しません。初期費用が抑えられることから、サービス付き高齢者向け住宅に関しては、自宅を売却し、住み替えて入居する方はいませんでした。

今回つくったのは数多くある『介護型』のサービス付き高齢者向け住宅ではなく、『自立型』のサービス付き高齢者向け住宅で、介護度がそれほど高くない人を対象にした施設です。『元気なうちに住み替えたらこんなに充実した生活ができる』という、『自立型』の価値の発信が今後の課題と考えています」

親子の近居・同居が多く見られた分譲マンション「グレーシアみなまきみらい」。2018年11月に入居開始親子の近居・同居が多く見られた分譲マンション「グレーシアみなまきみらい」。2018年11月に入居開始

活性化を促す継続した取組みで、より住み良い街、沿線を目指す

お話をお聞きした、相鉄不動産株式会社 プロジェクト開発部の小寺克征さん。「地域の皆様が安心して暮らせるように、『南万騎が原』駅前の周辺施設がゆるやかにつながりながら、防災について考え、意見交換を行う『みなまきみらい防災ミーティング』を年に数回開催しています。顔が見える関係づくりなど、この街に住む人が安心・安全に暮らせるような取組みも継続して行っていきたいと思います」お話をお聞きした、相鉄不動産株式会社 プロジェクト開発部の小寺克征さん。「地域の皆様が安心して暮らせるように、『南万騎が原』駅前の周辺施設がゆるやかにつながりながら、防災について考え、意見交換を行う『みなまきみらい防災ミーティング』を年に数回開催しています。顔が見える関係づくりなど、この街に住む人が安心・安全に暮らせるような取組みも継続して行っていきたいと思います」

横浜市や国と共にハード・ソフト両面から取組んできた「みなまきみらいプロジェクト」。今回のプロジェクトの手応えについて、小寺さんにお聞きした。

「『南万騎が原』駅を利用していただく方にとっては、賃貸マンションや分譲マンションなど住まいの選択肢が増えたと思います。また、駅前の商業施設が充実したことで、生活利便性も上がり、住みやすい街になったと同時に住み始めやすくなったのではないでしょうか。このような取組みを、今後も沿線内で行っていきたいと考えています」

また、相鉄グループが一体となった住みやすい環境づくりも継続して続けていきたいと話す。
「グループ企業には鉄道やバス会社のほか、スーパーのそうてつローゼンなど多数の会社があり、そして私たち相鉄不動産は住まいを提供しています。街をつくっておしまいではなく、相鉄グループとしても沿線にたくさんの方に住み続けていただきたいですし、街が活性化することも企業にとって喜ばしいことです。エリア活性化の取組みは以前から継続的に続けていますし、今後も続けていきます。自画自賛ですが相鉄線沿線は住みよい環境ですし、ぜひ相鉄線沿線をお住まいの選択肢にしていただきたいですね」と小寺さん。

南万騎が原エリアでの知見を活かし、2駅先の「弥生台」駅周辺の再開発を行ったほか、今後「ゆめが丘」駅周辺の開発を予定するなど、より住みやすい、住み替えしやすい地域に変化を遂げている相鉄線沿線。都心との直通運転が始まり、沿線の利便性が高まっている相鉄線沿線の進化に、これからも注目したい。


■南万騎が原みなまきみらいプロジェクト
https://www.sotetsufudosan.co.jp/machi/minamaki/

■取材協力/相鉄不動産株式会社
https://www.sotetsufudosan.co.jp/

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