ウッドショックが生じた要因

ウッドショックが発生した背景と今後予想される影響を解説ウッドショックが発生した背景と今後予想される影響を解説

2021年3月頃から住宅業界の中で「ウッドショック」と呼ばれる現象が騒がれ始めている。ウッドショックとは輸入木材価格の高騰のことを指し、かつてのオイルショックになぞらえて名付けられた言葉だ。

日本は木材の自給率が4割弱程度となっており、6割強を輸入材に頼っている。新型コロナウイルスの影響により米国や中国の需要が高まったことから輸入材が調達しにくくなり、住宅業界に深刻な影響を与え始めている。

日本の住宅産業が輸入木材に頼らざるを得なくなったのは、もともとは国内の林業の衰退が理由として挙げられる。日本の森林は戦時中にかなり伐採されており、戦後も住宅需要がひっ迫したことでさらに伐採される結果となった。木材は、植林してから市場に出るまで30年以上の時間が必要となるため、いったん急激に伐採が行われるとすぐには回復できなくなる。その後、木材は徐々に海外の安価な輸入材に頼るようになり、国内の森林が回復される前に林業従事者の高齢化も進んでいった。

さらに、住宅業界の中でローコストをうたうハウスメーカーも台頭してきたことで、輸入材の依存度が一層高くなっていったという背景がある。このような状況の中、新型コロナウイルスの影響により米国内で都心から郊外に一戸建てを建てる動きが増加したことや、世界最大の木材輸入国である中国が新型コロナウイルスを早期に抑え込んで需要を回復させたことで世界の木材需要が急増した。

その結果、日本は輸入材が調達しにくくなり、ウッドショックが生じてしまったのだ。

ウッドショックは特に梁(はり)に影響を与えている

米松(ベイマツ)製材などの高騰により、特に梁(はり)に影響が米松(ベイマツ)製材などの高騰により、特に梁(はり)に影響が

木材は、木造住宅の主に柱と梁(柱と柱を繋ぐ横架材のこと)に利用されている。梁は構造的に強度の強い材料が求められるが、国産の木材は梁に適したものが少ないため、梁の多くは輸入材に頼っている状況にある。梁の材料としては、米松(ベイマツ)製材やレッドウッド(RW)集成材と呼ばれる木材を輸入して用いることが多い。ウッドショックでは、特に米松製材やレッドウッド集成材の価格高騰が住宅市場に影響を与えている。

国産材で梁に適した木材となるとカラマツが有力候補となるが、カラマツは供給量が少ないため調達が難しくなっている。一方で、柱についてはスギやヒノキが用いられることが一般的だ。スギやヒノキは国産材でも調達しやすいことから、柱に関してはウッドショックの影響は比較的少ないものとされている。

ローコスト住宅や建売住宅へ影響は大きい

ウッドショックはすべての住宅メーカーに大きな打撃を与えているわけではない。もともと、国産材しか使わない住宅メーカーも存在するため、そのような会社にとっては直接的なダメージは少ない。一方で、「ローコストを標榜する住宅メーカー」や、「建売住宅のメーカー」は安い輸入材に頼ってきたことから影響が大きくなっている。そのため、当面はローコスト住宅や建売住宅に関しては価格が上昇していくことが懸念される。

ただし、木造住宅であっても建物の価格は木材だけで決まっているわけではない。住宅は、基礎や屋根、壁、内外装の仕上材の他、電気や空調、給排水の設備も加わった形で構成されている。木材の価格の占める割合は、住宅価格全体のうち1割程度とされており、その1割を構成する部分が上がるというイメージになる。

よって、ウッドショックといっても、住宅価格が極端に高騰していくわけではなく、家が購入できなくなるような混乱は起きないものと想定される。

簡単には進まない国産材への切り替え

日本は森林面積が多い国でもあるため、輸入材が高いのであれば国産材に切り替えればよいのではないかという考えもある。しかしながら、国産材への切り替えは簡単には進まない。

1つ目の理由としては、今の住宅メーカーの建物設計は輸入材の強度を前提に設計されており、国産材に切り替えようとすると建物設計から変えていかなければならないことになる。設計が変われば使用する木材の量も変わってくることから、国産材に切り替えたとしてもコストが安くなるとは限らない。

2つ目の理由としては、急に国産材に切り替えようとしても供給体制が追い付かないという現状がある。仮に柱で使うスギやヒノキが供給できたとしても、肝心の梁で使うカラマツなどを市場で求められる量まですぐに供給することができない。

3つ目の理由としては、そもそも林業は30~50年程度のスパンで商品を出す産業であるため、ウッドショックのような一時的な現象に対し生産者側がいちいち反応しないことが挙げられる。慌てて梁になる木材を植林したところで、ウッドショックが収まってしまえば、また国産材は輸入材に価格で負けてしまうことになるからだ。

よって、国内には森林が多くあるものの、すぐに国産材へ切り替えるといった対応は難しい。長い目で見ればウッドショックは一過性の現象であると考えられることから、静観する生産者は多いと予想されるのだ。

国産材への切り替えはさまざまな理由により容易には進まない国産材への切り替えはさまざまな理由により容易には進まない

国内の建築費はもともと上昇傾向にある

ウッドショック以前に国内の建築費は、もともと上昇傾向にある。

国土交通省の示す建設工事費デフレーター
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/jouhouka/sosei_jouhouka_tk4_000112.html
は、ここ数年上昇傾向が続いている。建設工事費デフレーターとは、建築費を指数化した指標のことである。
2001年からの直近過去20年の中で、木造住宅の建設工事費デフレーターが最も低いのが2002年度の93.8である。それに対して最も高いのが2019年度の112.4となっている。

2002年と比較すると2019年の時点では木造住宅の建築費は約2割弱上昇していることになる。近年、建築費が高騰し続けているのは、国内の職人不足が主な原因となっている。職人の高齢化によって絶えず退職者が増えていることから担い手が追い付かず、職人を確保するために建築費の上昇が続いている。

昨今の建築費の上昇は、ウッドショックのように材料費の高騰ではなく、建築業界の人手不足が原因となっており、原因が一過性の問題ではない。そのため、仮にウッドショックが終わったとしても建築費の高騰は続くと考えられる。ここ数年、建築費は「今年が一番安い」という状況が続いており、ウッドショック後に建築費が下がることは期待しにくいのだ。

建築業界の慢性的な人手不足もあり、建築費はもともと上昇傾向にある建築業界の慢性的な人手不足もあり、建築費はもともと上昇傾向にある

当面は国産材を使った注文住宅も検討したい

一戸建て住宅を検討するなら、当面は国産材を使った注文住宅も検討したい。理由としてはウッドショックの影響を大きく受けているのは、ローコスト住宅や建売住宅であるからだ。ローコスト住宅や建売住宅は、基本的に輸入材を多く使っているため、価格が上昇していく懸念がある。

一方で、国産材を使っている注文住宅であればウッドショックの影響は少ない。しかも、国産材を使用する住宅には国土交通省が行っている「地域型住宅グリーン化事業」の補助金制度がある。地域型住宅グリーン化事業は、地域材を積極的に利用することを促す制度であり、例えば長期優良住宅を建てると最大110万円の補助金を受けられるようになっている。

長期優良住宅とは、長期にわたり良好な状態で使用するための措置がその構造および設備に設けられた優良な住宅のことだ。国産材は、補助金制度によって以前よりも利用しやすくなっている。
地域型住宅グリーン化事業は毎年要件が少しずつ変わるため、最新情報をしっかり確認した上で利用してほしい。

【参考HP】
地域型住宅グリーン化事業(評価)
http://chiiki-grn.jp/