東京都もついに商業地が下落

2021年3月23日に発表された最新の地価公示から東京圏の動向を中心に振り返る2021年3月23日に発表された最新の地価公示から東京圏の動向を中心に振り返る

2021年の地価公示は「〇年ぶり地価下落!」という言葉が躍った。全国全用途平均は6年ぶり、地方圏は4年ぶりに下落に転じている。東京圏も8年ぶりに下落しており、2014年から続いた上昇基調はついに下落局面に突入した。

東京圏は、新型コロナウイルスさえなければ恐らく2021年も地価上昇が続いたであろう。本来であれば2020年は五輪が開催予定であったため、東京の地価はさらに高まるシナリオだったはずである。

しかしながら、新型コロナウイルスにより状況は一変してしまい、多くの人の予想を裏切る結果となった。新型コロナウイルスは、五輪の延期だけでなく、外国人観光客を激減させたことが地価を下落させた直接的な要因となっている。東京都では、商業地で下落幅が大きい順に台東区、中央区、新宿区が並ぶ。台東区は浅草という外国人観光客に絶大な人気を誇る観光地を抱えており、訪日客の激減がホテル用地需要を大きく減退させた。

また、銀座を擁する中央区も訪日客の激減等によってテナントが撤退し、空店舗が増えた。その結果、不動産の収益力が落ちたことで土地価格の下落が生じている。

毎年全国No.1の地価となる「中央区銀座4丁目(標準地番号:中央5-22)」は、2021も全国で最高額の地価(53,600,000円/m2)であった。しかしながら、その下落率は▲7.1%と大きなものとなっている。

さらに、新宿区は歌舞伎町が緊急事態宣言によって大きな打撃を受けた。飲食店の営業が厳しくなったことから、テナントの撤退や賃料の下落が続き、新宿エリアも不動産の収益力が落ちてきている。

2021年における東京23区全体の商業地の下落幅は▲2.1%であり、2020年の+8.5%と比べると状況は一変してしまったのだ。

2021年3月23日に発表された最新の地価公示から東京圏の動向を中心に振り返る令和3(2021)年 地価公示 圏域別・用途別対前年平均変動率
国土交通省資料より

住宅地は小幅な下落に留まる

東京圏の住宅地は全国とほぼ同水準の下落幅となった(画像はイメージ)東京圏の住宅地は全国とほぼ同水準の下落幅となった(画像はイメージ)

東京圏の住宅地については、下落率は小幅な動きにとどまった。2021年の全国の住宅地の下落率は前年比▲0.4%であるが、東京圏は前年比▲0.5%であり、全国とほぼ同水準の下落幅といえる。東京23区においても全体では▲0.5%の下落幅に留まる。

ただし、港区と目黒区の2区だけはそれぞれ+0.3%の上昇を記録している。新型コロナウイルスの影響は、富裕層への影響は比較的少なかったといわれており、高所得層が需要の中心となる港区や目黒区は上昇が継続した。

2021年における住宅地の最高額は「港区赤坂1丁目(標準地番号:港-4)」である。港-4の価格は4,840,000円/m2、変動率は+2.5%であり昨年よりも上昇している。

東京都の最高額地点は、商業地は下落したものの住宅地は上昇する結果となっており、商業地と住宅地では異なる様相を見せた。

勝ち組は工業地

2020年は緊急事態宣言やテレワークの推進によって「巣ごもり需要」が伸びた2020年は緊急事態宣言やテレワークの推進によって「巣ごもり需要」が伸びた

2021年の地価公示の中で、勝ち組となっているのは工業地だ。工業地には倉庫用地としての需要があり、新型コロナウイルスがさらに土地価格を押し上げる結果となった。2020年は緊急事態宣言やテレワークの推進によって「巣ごもり需要」が伸びたため、インターネット通販を利用する人たちが増加した。

そのため、物流拠点となり得る倉庫用地の需要も増加している。工業地で上昇率の高かったエリアは、東京近郊の横浜市や松戸市、船橋市等に集中した。

工業地で全国トップの上昇率となったのは「横浜市鶴見区大黒町(標準地番号:横浜鶴見9-2)」の11.1%である。

工業地は全国的に見ても高い上昇率を示している。従来、工業地も商業地の値動きに連動する傾向があったが、インターネット通販の拡大により、近年は商業地とは別の値動きをするトレンドが見え始めている。

東京圏ならではの地価動向の特徴

東京都のオフィス街(画像はイメージ)東京都のオフィス街(画像はイメージ)

新型コロナウイルスは、全国の平均地価を下落に向かわせる方向に働いたが、東京では特有の地価動向が見られた。

まず、全国的に共通で生じた事象としては、外国人観光客の激減によるホテル用地需要の減退である。また、緊急事態宣言により飲食店等の状況が苦しくなったため、大阪や名古屋などでも商業地の下落が目立っている。

一方で、オフィス需要の高い東京では、テレワークの推進が大きな影響を与えている。東京は大企業が多く、各社が大きな床面積を借りていることから、テレワークの影響は地方都市よりもインパクトがある。

東京でも、小規模なオフィスは2020年内において既に解約の動きが出始めた。まだ大規模オフィスの解約は相次いでいないが、それでも大企業はテレワークを継続しており、2021年以降は大企業による大型オフィス解約もあり得ると予想されている。東京では、オフィス周辺に飲食店も多いため、テレワークによって出勤者が減ると周辺の飲食店もかなりのダメージを受ける。加えて、緊急事態宣言により営業時間の短縮が要請されたことから、オフィス周辺のテナント需要はかなり減退している。

2021年の地価公示は浅草や銀座といった観光地が大きな打撃を受けたが、今後はオフィス街も下落していく可能性が残っている。

また、テレワークの推進は住宅地にも影響を及ぼした。東京圏では千葉県などの郊外に移り住む人が出始めている。東京は住宅価格が高く、仕事部屋を確保できない家に住んでいる人も多いため、在宅勤務が常態化すると、働きにくくなってしまう人が増える。その結果、東京から近郊の都市に広い部屋を求めて引越す人が増えるという現象が生じたのだ。

実際に、住宅地の平均価格は東京都と神奈川県、埼玉県はいずれも▲0.6%の下落となっているが、千葉県だけは+0.1%と上昇している。市川市、船橋市、松戸市、習志野市、浦安市、千葉市といった北西部だけでなく、木更津市、市原市、君津市、袖ケ浦市といったアクアライン経由で東京に行けるエリアまで地価の上昇が見られた。

さらにテレワークの影響は、東京近郊の街だけでなく、周辺の別荘地まで影響を及ぼしている。「長野県軽井沢町(標準地番号:軽井沢-1)」では、前年比+10.0%も地価が上昇しており、際立った上昇傾向を見せた。軽井沢は、テレワークで東京に住む必要のなくなった人たちに人気がでており、別荘ではなく移住を目的とした需要が増えてきている。

テレワークは新型コロナウイルスが収まっても継続されていくものと考えられており、東京郊外の住宅地や別荘地に対して、引き続き地価上昇の影響を与えるものと思料される。

東京都のオフィス街(画像はイメージ)令和3(2021)年 地価公示 東京圏の地域別対前年平均変動率
国土交通省資料より

懸念される大企業の動向と期待される海外マネーの流入

テレワークを今後も継続することを公言している企業もテレワークを今後も継続することを公言している企業も

今後の東京圏の地価動向で最も懸念されるのは大企業の動向だ。大企業の中には新型コロナウイルスに関わらずテレワークを継続することを公言している会社も多く、今後はオフィスの賃貸需要が大幅に減少する可能性がある。

一般的に、オフィスの解約は半年前の解約予告が必要であり、解約までには時間がかかる。テレワークで様子見の段階であった大企業は2020年の段階では解約までは踏み切れなかったものと思われる。

しかしながら、大企業がテレワークの営業に確信を持てれば、今後は各企業が大きな床面積を借りなくなることも予想される。東京の場合、1つの企業が借りているオフィスの床面積が広いため、解約の流れが続くと大きな空室を発生させるビルが続出することになる。そのため、今後は地価下落が第二弾として港区や渋谷区、品川区といったオフィス街へと波及していく可能性が高い。テレワークは新型コロナウイルスが終焉しても続くと想定すれば、長期的に地価へ影響を及ぼすであろう。

一方で、期待されるのは海外からの投資マネーの流入である。アジア圏は新型コロナウイルスの影響が小さく、かつ、日本は低金利の状況であることから、海外投資家が早くも東京のオフィスビルを購入し始めている。海外投資家の需要が活発化すれば、地価の下支えとなるため、回復は早いとも考えられる。

いずれにしても、地価は下落局面に突入したばかりであり、懸念と期待の入り混じる中、2021年も不透明感が強い。アフターコロナは、「テレワーク」と「海外マネーの流入」が綱引きしながら地価に影響を与えていくだろう。

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