札幌都心に近く、課題を抱えた苗穂駅周辺を再開発
北海道新幹線の札幌延伸を見据え、札幌都心の東側にある苗穂エリアが、大きく生まれ変わろうとしている。JR札幌駅の隣にある苗穂駅の北口で、駅と一体となった再開発プロジェクトが動きだした。株式会社大京と住友不動産株式会社、経営難で収益拡大が急務となっている北海道旅客鉄道株式会社(JR北海道)が3社共同で取り組む「苗穂ステーションパークプロジェクト」だ。生活に必要な機能をまちの中心部に集約するコンパクトシティの構想を取り入れ、苗穂駅とタワーマンションや商業施設を空中歩廊で直結。JR北海道の施設跡地のうち約8,000m2に「新しいまち」をつくるという大規模な計画だ。
苗穂エリアは明治時代から、交通利便性と豊かな伏流水を背景に工業地域として発展。ビール醸造所、味噌・醤油醸造所、鉄道工場、製糸工場などが建ち並び、北海道のものづくりを支えてきた。札幌市によると、苗穂駅周辺は札幌都心から東側に2~3㎞と近く都心機能を補完する立地ながら、これまで効率的な土地利用がなされず、居住地区と工業地区が入り混じり、駅が南北を分断するという積年の課題があった。
そこで市と住民、企業が協働し、まちづくりの指針となる「まちづくりガイドライン」を2002年に策定。その後、札幌市内最大級の複合商業施設「アリオ札幌」の開業(2005年)など民間による開発が進んだことから、より具体的な「まちづくり計画」が作られた。まちづくり計画では、「にぎわいの核づくり」「歩きやすい快適なまちの実現」「地域資源を結ぶ観光交流のネットワークの形成」が目標に掲げられ、そのために苗穂駅の南北通路の実現や、民間開発をさらに推進していくことが盛り込まれた。
苗穂駅は札幌駅から旭川方面に1駅、所要時間は3分ほどで、利便性が高い。地元の声に応える形で2018年11月、駅は総工費約52億円をかけて移転開業し、道内で話題を呼んだ。新駅舎は札幌駅方向に約300m移り、自由通路を備えた橋上駅舎となったことで、それまで隔てられていた南北が、自由に行き来できるようになった。
「まちづくり計画」で求められた民間開発では、南口と北口で高層の集合住宅や医療施設、高齢者住宅などを集約する再開発が行われることになった。大京などによる北口のステーションパークプロジェクトはその一環となる。
プロジェクトの中心は高層分譲マンション
ステーションパークプロジェクトの核をなすのは、300戸、地上27階建ての分譲マンション「ザ・グランアルト札幌苗穂ステーションタワー」。大京など3社が目指す像は「新たな苗穂のシンボル」で、マンションを中心にまちづくりに関わり、にぎわいを生み出していくという。苗穂駅から空中歩廊で直結される利便性を前面に押し出していて、「アリオ札幌」とも歩廊でつながる予定で、徒歩約1分で行くことができる。住民らの交流の場所となる広場は3つ設ける。サービス付き高齢者向け住宅や病院も近くに建設される予定という。
マンションの部屋は、1LDK~4LDKと多くのタイプがあり、断熱性能と省エネ性能を高め、1次エネルギー消費量を国基準より20%以上削減した集合住宅「ZEH-M Oriented(ゼッチ・マンション・オリエンテッド)」に、北海道で初めて国から認定された。地震による振動をダンパーで抑える制震構造や、防災備蓄庫、非常用発電機を設置している。5月25日にマンションギャラリーが一般公開され、販売開始は2019年7月ごろ、竣工は2021年1月、入居開始は2021年春を予定している。分譲価格帯は4,000万円前後が中心。大京によると一般の会社員のほか、雪かきが負担になっているような一軒家に暮らすシニア層、投資家といった幅広い層をターゲットに見据えている。
高まる札幌圏の再開発需要
札幌都心部では既に、北海道新幹線の延伸や市によるコンパクトシティ化の流れもあって、高層マンションや大型ホテルの建設ラッシュが続いている。この波は周辺にも波及しそうな勢いで、公共交通の利便性が高いエリアは再開発需要が高まりそうだ。
2019年5月14日にあった「ザ・グランアルト札幌苗穂ステーションタワー」の報道関係者向け発表会では、大京の常務執行役、藤平善久さんが「札幌市内では、新幹線駅ができる札幌駅の東側にまちの重心が移っています。札幌駅から列車で3分の苗穂駅の周辺は地理的ポテンシャルが高いですね」と解説。
札幌駅近くで分譲と賃貸の高級マンションを2019年に入って相次いで竣工させた住友不動産の北海道支店長、松田昭さんも鉄道を利用しやすい利点を強調する。「アリオまでの交通手段は現在、多くが車になっています。それが苗穂駅からすぐの空中歩廊でつながることになり、札幌駅からのアクセスが劇的に変わります。雰囲気が変わっていくことを期待しています」と展望を語った。
JR北海道が初めてマンション開発に参入
さらに注目されるのは、子会社を除けばマンション事業へ初参入するJR北海道が社有地を売り、事業者選定の段階から開発に携わっていることだ。同社は北海道新幹線の札幌延伸が予定される2031年度に経営自立を目指して「長期経営ビジョン」を策定しており、開発関連の事業による収益拡大を柱に据えている。その中でも重点を置くのが、マンション開発。苗穂駅周辺の今回のプロジェクトでは、にぎわいが増せば鉄道利用者が増えるという相乗効果も期待されている。
発表会で小山俊幸副社長は「単に土地を売却するだけでなく、マンションにすることで収益が得られる。大京と住友不動産からマンション開発のノウハウを教授してもらい、次の展開につなげたい。良い物件があれば、積極的に挑戦したいです」と意欲を見せた。
新幹線の開業が再開発の連鎖を引き寄せている札幌圏で、JRがプレーヤーに加わり、新たな展開を見せている。駅を中心にした、新しいまちづくりの行方が注目される。
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