船橋市発祥。民間図書館がまちの人を繋ぐ

船橋駅前にあるフェイスビル内にある民間図書館。気軽に、遅い時間でも借りられるのがみそ船橋駅前にあるフェイスビル内にある民間図書館。気軽に、遅い時間でも借りられるのがみそ

「船橋人物図鑑」は千葉県船橋市でまちを楽しく、賑やかにするための活動をしている人たちを1ページに1人ずつ紹介、それぞれが繋がっていくことを意図した冊子だ。5年前に16人が各人1人ずつ、仲間を誘うことでまちに関わる人を増やそうと始まった。1号目に掲載された人は32人。さらにそれから約1年後の現在、2号目として作られた冊子には新たに人が増え、全体で55人が掲載されている。普通、こうした媒体は地元の書店店頭などに置かれるなどして流通するが、船橋人物図鑑は手渡しが原則。それは人が実際に繋がることを意図しているからだ。

実際にページをめくると地元のお米屋さんからIT企業、アーティストに美容師、お坊さん、ケアマネジャーなどと実に様々な業種の人が掲載されている。活動も様々だ。作成の発起人の一人である岡直樹氏は10年前から民間図書館を作っている。当時の岡氏は大学生。都内まで通学、帰ってくるとすでに図書館は利用できない時間である。それならば、自分でも使える図書館を作ろうと考えたという。

もうひとつ、利便性だけで選ばれ、他に便利な場所があったら引っ越していく人の多い船橋の現状を変えたいという気持ちもあった。「100人友達がいたら、ヨソへ引っ越さないでしょう?」。図書館を通じて人間関係を作ろうという試みである。書籍は寄付で集め、理系の岡氏が誰でも扱える貸出・返却などのシステムを作った。運営する人はすべてボランティア。公共の図書館とは違い、人が触れ合い、繋がる場としての民間図書館は徐々に人を集めるようになり、現在では船橋市を中心に遠いところでは京都府、福岡県に至るまで91館にも増えた。関わるボランティアものべで1000人以上になっているという。当然、まちに顔見知りが大勢増えたと岡氏。その力が「船橋人物図鑑」にも生きている。

人間が馬の代わりに走る?! 船橋競馬場ダートランニングフェスタ

1999年から船橋に暮らし、地域を面白くする活動にはまってしまったという川崎氏1999年から船橋に暮らし、地域を面白くする活動にはまってしまったという川崎氏

2号目完成を祝って開かれたお披露目会に参加したのだが、そこでひときわ目立っていたのがチームふなばし88(ハチハチ)の川崎拓己氏。大阪出身の川崎氏は就職して上京、結婚して船橋市に転入、子育てをしてきた。子どもの郷里となる船橋をよく知りたい、盛り上げたいと考えたところから地域との関わりが生まれ、イベントの手伝いを始めたところ、面白くてはまってしまったという。そこで地元の五つ星お米マイスターの牧野基明氏とともにチーム船橋88を立上げ、本格的にイベントを開催することに。それが2011年10月から開催されている船橋競馬場を利用したダートランニングフェスタ。

同イベントは普段は馬が走る、9cmもの厚さの砂が敷かれたコースを人間が走るというもの。ふかふかの砂が力を吸収してしまうため、思うように走れず、悪戦苦闘することになるが、それが挑戦意欲をかきたてるのだという。ただ、面白い一方で肉離れを起こすなど、怪我する人も出るそうで、最初のうちは毎回、救急車を呼んでいたとか。リスクもある本気の遊びというわけだ。

「初回は2週間程度しか告知期間を取れず、参加者390人ほどで大赤字。でも、準備期間から盛り上がり、なんとか形になったのが嬉しく、以降毎年開催。定員は1000人としていますが、昨年は980人ほど。7回目となる2018年は1000人行くだろうなと思っています」。

イベント以外にネットラジオのパーソナリティ、ミステリー専門劇団の役者と大忙しの川崎氏だが、意外にも本業は普通(!)のサラリーマンとか。ちょっとびっくりである。

舞台の8割が船橋。映画「きらきら眼鏡」、2018年秋公開予定

本業は電気工事業を経営する大木氏。本業でもガーナやカンボジアに進出するなどパワフルな人だ本業は電気工事業を経営する大木氏。本業でもガーナやカンボジアに進出するなどパワフルな人だ

吉永小百合主演「ふしぎな岬の物語」、有村架純主演「夏美のホタル」などの映画の原作者である作家、森沢明夫氏は船橋市出身、在住。その森沢氏の2015年の作品「きらきら眼鏡」の映画化が船橋宿場町再生協議会を中心に、船橋市民の手によってサポートされ、進んでいる。

ホームページによると「船橋宿場町再生協議会(FSK)は、船橋市をこよなく愛する同志が集まり、船橋市生誕100周年にあたる2037年に向け、船橋市の『まちづくりの推進』『観光の振興』『船橋市の経済の活性化』などを目的に活動を行っています」とあり、地元を舞台とした映画を作ろうと考えていたところに森沢氏との出会いがあったという。

「お金を集めるところから始まり、ロケ地探し、市民オーディション、エキストラ出演、食事の提供と、ここまで市民が関わり、主導した映画は珍しいのではないでしょうか。すでに2017年10月にはクランクアップしており、現在は編集中。2018年3月上旬には完成し、秋には公開予定です。国際映画祭にも出品予定で、第二のロケ地である勝浦市も含め、千葉県全体が活性化するきっかけになれば」とは船橋宿場町再生協議会の大木武士氏。

2017年4月の決起会には600人、市民オーディションには800人以上の人が集まり、船橋市での撮影期間中の朝、昼、晩、夜食はすべて市民手作りの食事が提供されたという同作品。自分の住んでいるまちを大スクリーンで見るという経験ができる船橋市民を羨ましく思う。

小松菜をハイボールに? 船橋野菜を飲んで、食べて

学校の食育の授業などにも登壇するという平野氏。残念ながら手にしているのは小松菜ハイボールではない学校の食育の授業などにも登壇するという平野氏。残念ながら手にしているのは小松菜ハイボールではない

住宅街としてのイメージが強い船橋市だが、元々は農村であり、漁村でもあった。市のホームページによれば、今も市内には154カ所もの農水産物直売所がある。そのうち、にんじんと梨は特許庁の地域団体商標として登録されており、小松菜と枝豆は船橋ブランドとなっているとか。小松菜に関しては毎年5月に市内の小松菜料理を食べ歩く「こまつなう」なるイベントが行われてもおり、実は船橋市民の小松菜好きはかなりのものらしい。

その小松菜を作り続けているのが平野代一氏。船橋生まれの船橋育ちである。「船橋市の農業は多品種、高品質の典型的な都市農業。見える場所で作られており、かつ、庭先の直売所で売られていたり、キッチンカーが畑に来てそこで小松菜パウダーを使ったピザやワッフルなどを売っていたりと農業と商業が融合しているのも特徴でしょうね」。生産地と消費地が近く、鮮度が良く、美味しい野菜が食べられるまちというわけである。

その小松菜でいえば「試してみていただきたい」と、平野氏のお勧めが小松菜ハイボール。西船橋駅周辺の飲食店で提供しているそうで、茹でた小松菜をペースト状にし、そこにグレープフルーツシロップ、 ウイスキーにレモンを加えて作る。見た目は見事な青菜色で、最初はびっくりするかもしれないが、ビタミンA、鉄分などのミネラルが豊富でカルシウムの含有量が高いという小松菜が使われているのだ、健康に良いことは間違いない。ちなみに2018年には小松菜、ニンジンその他船橋産の野菜、果物を利用した船橋ビールがお目見えする予定もあるという。船橋市で飲む機会があったら、ぜひ、試してみたいものである。

日本有数の歴史を誇る船橋吹奏楽団が取り組む音楽のまちづくり

船橋吹奏楽団を率いる薄井氏。船橋人物図鑑には薄井氏以外にも音楽に携わる人たちが多く含まれており、「音楽のまち船橋」も納得である船橋吹奏楽団を率いる薄井氏。船橋人物図鑑には薄井氏以外にも音楽に携わる人たちが多く含まれており、「音楽のまち船橋」も納得である

船橋市にある各種団体のうちでも日本有数の歴史を誇るのが船橋吹奏楽団、通称船吹(ふなすい。なんだか可愛い)である。発足は1955年で「東京、横浜、蒲郡などに次ぎ、日本で五番目くらいだった」と理事長でクラリネット奏者の薄井玲子氏。ボーイスカウトの音楽隊にいた人たちがボーイスカウト卒業後も音楽を続けたいと発足したのが始まりで、薄井氏は大学3年時に参加。以来、30年間在籍しており、数年前には自宅も船橋市に。船橋、吹奏楽どっぷりの人生というわけである。

そうした歴史があるからだろう、船橋市には市を挙げての音楽イベントが複数ある。その中でも歴史があるのが1994年に船橋アリーナの落成イベントとして始まった「千人の音楽祭」。オーケストラから吹奏楽、邦楽、合唱と様々なジャンルの音楽が楽しめるイベントで、1996年からはふなばし音楽フェスティバルの一環事業として開催されてきた。現在では出演者、観客それぞれに2000人を超す参加があるそうだ。

さらに2014年から10月に開かれるようになったのがふなばしミュージックストリートという、船橋駅を中心とした屋内外10数カ所を舞台にした音楽イベント。よりカジュアルに楽しむ、オール船橋の音楽祭といったところだろうか。100組以上が演奏するだけではなく、ワークショップやスタンプラリーなども行われている。薄井氏はどちらのイベントにも実行委員として関わっており、「音楽を通じて人の輪を広げる楽しさと大切さを知った」という。

船橋市ではそれ以外にも認定は必要ではあるものの、毎週金曜日に京成船橋駅と船橋フェイスビルの連絡デッキをストリートミュージシャンや音楽家に開放、路上ライブができるようにするなど音楽を通じたまちづくりを行っている。実は音楽好きには住んでうれしいまちなのである。ただひとつ、残念なのは「音楽専用ホールがないこと」。薄井氏は本当に残念そうに言った。音楽のまちというからには欲しいところだが、はて。船橋市には頑張っていただきたいものである。

・情報ステーション
・船橋競馬場ダートランニングフェスタ
・船橋市宿場町再生協議会
・「きらきら眼鏡」公式ホームページ
・西船橋ひらの農園
・こまつなうのFacebookページ
・船橋吹奏楽団
・千人の音楽祭
・ふなばし音楽フェスティバル
・ふなばしミュージックストリート
・船橋市公認ライブ「まちかど音楽ステージ」

2018年 02月25日 11時00分