京街道と野崎街道が交差し、古くから栄えた市

昭和39年ごろの千林商店街の様子。昔から活気があったようだ昭和39年ごろの千林商店街の様子。昔から活気があったようだ

天下の台所として栄えた大阪。時代は変わったとはいえ、商売のまちという印象は健在だ。
各地の商店街ではさまざまな工夫が試みられ、店舗ごとにお得な100円商品を用意して、商店街ぐるみを100円ショップにする「100円商店街」や、店主が一般顧客に商品などの知識を伝えてファンづくりを目指す「街ゼミ」など、さまざまな取り組みをして活性化をはかっているようだ。また、日本一長い商店街として知られる天神橋筋商店街も、大阪市北区にある。

旭区にある千林商店街も、大阪の人々にとってはなじみ深い商店街の一つだろう。
最近では、位置情報を使用するゲームにからめたイベントの「モンスターゲットだぜ大作戦」で、ニュースにも取り上げられたから、府外の人も名前を聞いたことがあるかもしれない。ツールを使って商店街に現れるモンスターの数を増やし、集客に利用したのだが、歩きスマホなどのマイナス面がクローズアップされる中、前向きな取り組みが話題になった。
このほかにも「日本一元気な商店街」をテーマに、小物作りのワークショップやハロウィンの仮装パーティ、手芸や木工の1日体験教室など、さまざまなイベントを行っているようなので、千林商店街振興組合の事務長である岡田浩二氏に話を聞いてきた。

京街道と野崎街道が交差する場所にある千林商店街の歴史は古く、1910年に京阪電車森小路駅ができた時には、すでに市が立っていたそうだ。戦後は、大阪市内では戦災を免れた唯一の商店街として遠方からの来客もあり、1975年(昭和50年)に、商店街振興組合として法人化した。

「日本一元気な商店街をめざす」が商店街のテーマだが、強いこだわりがあったわけではない。
「この地域にはダイエーや長崎屋、ニチイなどの大きなスーパーがあり、共存共栄していくために値段を下げ、切磋琢磨してきたので、千林商店街は日本一安い商店街として有名でした。でも、私たちは、良いものを安く売ろうと頑張っているので、安さだけに注目されるのは本意ではありません。そこで、千林にどんな取柄があるだろうと考えたら『元気』ではないかとなったのです」
確かに、お店の種類が豊富でほとんどの商品がそろうからか、商店街を歩けば多くの人とすれ違い、活気を感じる。その中で、思いついた試みをどんどん行動に移していけるのが、千林商店街の強みなのだろう。

全国でも珍しい「テーマソングを持つ商店街」でもあるが、岡田氏によれば、
「約30年前、業者さんから、テーマソングを作ってみませんかと打診があったとき、そら面白いやないかとなったようですね。昔から新しいもの好きで珍しいもの好きだったんだと思います」
と、ノリの良さは今に始まったことではないようだ。現在の千林商店街も、深く考えて立ち止まるのではなく、思いついたことをどんどん行動に移している。

さまざまな問題に前向きに取り組む

お話しを聞かせてくださった、千林商店街振興組合事務長の岡田浩二氏お話しを聞かせてくださった、千林商店街振興組合事務長の岡田浩二氏

月に一度以上はなにかしらイベントを開催しているが、必ずしも話題になろうと狙っているわけではないそうだ。
「モンスターゲットだぜ大作戦」も、安全のための啓発がきっかけ。「ポケストップ」と呼ばれるツール入手場所が商店街中に11ヶ所あり、歩きスマホが増えて危ないのではないかと話題になったのだ。そこで敢えてポケストップを地図に載せ、歩きスマホをしなくても見つけられるようにしたところ、商店街の地図にポケストップが載っているのは珍しいと評判になったので、「せっかくだから」と、イベントをすることになったのだそうだ。このイベントでは、通常の1.5~2倍もの人が集まり、具体的な成果はまだ見えないが、「商店街という場所に初めてきた」「千林商店街ってここにあったんだ」といった感想も多く、今後につながりそうな実感はあるという。
1回目は若い人がほとんどだったが、2回目はファミリー層が多く、高齢の参加者も多かったとか。
「イベントのあと、おじいさんやおばあさんが、散歩がてらにプレイする姿を見るようになり、運動のモチベーションになっていると思います。今後もフリーWi-Fiを設置するなどして、商店街を歩いていただけるイベントができないかと考えています」
と、将来の展望にもつなげているようだ。

株式会社全国商店街支援センターによる「商店街活性化創出事業モデル」に採択された1000ピースプロジェクトも、5年目になる。もともとは千林商店街のメンバーと、千林ファンが集まって、地区をよくしていこうと始動したもので、千林の名所や名物をフリーペーパーで発信するのが主な活動。メンバーそれぞれがお薦めの場所やものを記事にして、編集しているのだそうだ。買い物客からも好評で、「フリーペーパーはどこで手に入るのですか?」と問い合せもあるという。

千林の強みは組織と前向きさ

千林商店街の強みは、組織がしっかりしている点だろう。200店舗を10班に振り分けて、各班から班長と理事2名のほか、企画部や事業部、管理部、IT部などの役員が選ばれる。彼らが集まって企画し、その後班に持ち帰って話し合うので、取り組みが全店舗に周知されやすく、意志の疎通ができ、協力しやすい雰囲気になるのだそうだ。
「商店街にある店舗は業種もさまざま。どんなイベントを開催しても、全ての商店が潤うわけではありません。だからこそ、人が集まるイベントを考えています。人が集まれば、後は各店舗の工夫次第。ちょっとおまけをするとか、お客様により合う商品を勧めるとか、スーパーやショッピングセンターにはない、個人商店ならではの魅力を発見していただくきっかけになるイベントを開きたいです」
と、岡田氏は述懐する。実際、小物作りのワークショップやハロウィンの仮装パーティなどのイベントも、多くの買い物客が集まるきっかけになっているようだ。

今後のイベントも従来と大きく変化させる予定はないが、目新しいものは積極的に取り入れていきたいそうだ。たとえば、2月24日に始動する「プレミアムフライデー」を、イベントにつなげられないかと考えている。プレミアムフライデーは月末の金曜日は3時に仕事を切り上げて、プライベートを楽しもうという主旨。「商店街に関係ない」「早く帰って寝るだけだ」と否定的な意見が多い中、千林商店街振興組合は、「何かやった方が面白い」と考えているそうだ。

この取材で印象に残ったのは、「景気が悪い」とか「個人商店には厳しい時代」などという、悲観的な言葉が一切出てこなかったことだ。しかし難しい話もない。「思いつきですが」「深い考えではないんですが」と前置きしながらも、「新しいものは受け入れたい」「面白いことは積極的に」と、とにかく前向きな印象を受けた。それこそが、千林商店街の「元気」の源であり、魅力なのだろう。
千林商店街が生み出すイベントは、元気がもらえるものが多そうなので、今後も注目していきたい。

チームワークの良い千林商店街の店主たちチームワークの良い千林商店街の店主たち

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