畳生活からフローリング生活へ、住宅事情の変化がお仏壇の進化を後押し
まずは読者の皆様に質問をひとつ。
右の室内写真を見て、『どこにお仏壇があるか?』すぐにおわかりいただけただろうか?
じっくり眺めてみると、肘掛椅子の奥の壁側に設置された家具が『お仏壇』であることに気付くのだが、おそらく最初は多くの方が『お仏壇の写真』ではなく、『イマドキなインテリアの写真』だと思われたのではないだろうか?
核家族化が進み、集合住宅に暮らす人が増え、畳の部屋がなくなり、コンパクトで機能的な家具が好まれるようになった…そんな住宅事情の変化に合わせて、近年は『お仏壇事情』も大きく変わってきているようだ。
店舗デザインも変化、モデルルーム風で“入りやすく、カジュアルに”
▲東京都葛飾区、再開発が進む『京成金町』駅前の商業ビルの中に入っている『はせがわ ヴィナシス金町店』。従来の店舗は、郊外の幹線道路のロードサイドに構えるのが業界の慣例だったが、駅近の商業ビルの中にインテリアショップ風店舗を展開することで、新たな客層の獲得を狙う“お仏壇の今”についてリサーチするため、今回お邪魔したのは東京都葛飾区にある『はせがわ ヴィナシス金町店』。仏壇製造・販売の大手、株式会社はせがわ(本社:東京都文京区)のアンテナショップだ。
“お仏壇屋さん”というと、お線香の香りがたちこめた空間に重厚な構えのお仏壇がズラリと並んでいて、どうも敷居が高く入りにくいイメージがあるが、ここ『はせがわ ヴィナシス金町店』は一見したところインテリアのセレクトショップのようなカジュアルな感じ。
店内はマンションのモデルルーム風のゆったりとした空間が再現されていて、フォトフレームやキャンドルスタンドなどの小物類も、「これが“仏具”?」と驚いてしまうほどの洒落たアイテムが揃っている。
「たしかに、インテリアショップと間違えてご来店される若い世代のお客様も多いですね。“収納家具だと思ってよくよく見たら、お仏壇でビックリした!”と驚かれます(笑)」と、店内を案内してくださったのは入社37年というベテランスタッフの安藤浩一さん。日本の高度経済成長期直後から平成の現代まで『お仏壇の変遷』をずっと見守ってきた人物だ。
テレビボードのスリム化に合わせて、お仏壇の奥行きもスリム化
▲左から、東京営業部販売教育スタッフの安藤浩一さん、『はせがわ ヴィナシス金町店』店長の蓮尾憲二郎さん、本社営業企画部の雨谷亮太さん、中平千尋さん。「今までまったくお仏壇に興味が無かった方にも、このアンテナショップに立ち寄っていただくことで、関心を持ってもらうきっかけになれば嬉しいですね」と蓮尾店長「もともと、お仏壇のルーツは『お寺』にありました。一部の裕福な貴族が『菩提寺』を持つことで亡き先祖を敬い、お参りをしていたところから始まっています。
その後、“お寺に行かなくても家の中でお参りができるように”と、お仏壇が建具の一部として造り付けられるようになり、江戸時代後期に入ってからは建具から独立した形の『箱型仏壇』が登場しました。一般家庭でも仏間が設けられるようになったのは明治に入ってから。大正、昭和へと時代が流れ、“一家に一基、お仏壇を持つ時代”へと変化していったのです」と安藤さん。
仏壇職人と呼ばれる技術者は、当初『京都』にしかいなかったそうだが、大名の参勤交代によって様々な地方文化が交流する中で、仏壇作りの技術も各地へと広まっていった。そのため、現代でも地域によって『形』や『木の材質』『作り方』が異なっているという。
「昭和40年代から、核家族化やマンション世帯の増加により『新型仏壇』と呼ばれるタイプのお仏壇が登場しはじめましたが、特に大きく仏壇のデザインが変わったのは20年ほど前からでしょうか。そのきっかけは“フローリングブーム”でした。
“マンションのフローリングにお仏壇を置いてもなんだか合わない”というお客様からの意見が多く聞かれるようになり、マンションのインテリアにマッチする『家具風仏壇』が登場するようになったのです」(安藤さん談)。
はせがわ×カリモク家具のコラボレーション
はせがわの最新シリーズである『ソリット ボード ジャスト』シリーズは、老舗インテリアメーカー『カリモク家具』とのコラボレーションによって誕生した。
●フローリングや建具の色調トレンドに合わせ
『ピュアオーク・モカブラウン・ウォールナットナチュラル』の3色を展開
●薄型テレビの普及に伴い、テレビボードとも合わせやすい奥行き30cmにスリム化
●扉を開いたときにも、前に飛び出さず側面に収納できる省スペース設計
●同じ素材の収納家具とコーディネートが可能
などなど、現代の住宅事情と顧客ニーズに合わせ、様々な工夫が取り入れられている。
まさか、お仏壇が“テレビボードのサイズに合わせてスリム化”することになるとは…参勤交代時代の仏壇職人は、誰もこんな未来を想像していなかっただろう。
故人と対話する時間を、次世代へと受け継ぐことが大切
「従来のお仏壇は、親から子へ、子から孫へと大切に受け継がれるものでしたが、最近は“インテリアに合わないからお仏壇を買い替えたい”という方も多くいらっしゃいます。
以前、私が担当したお客様のケースでは、“家具をピンクで統一しているのでピンク色のお仏壇を作ってほしい”というオーダーをいただいたこともありましたね(笑)。もちろん、オリジナルカラーで仕上げて、大変ご満足いただきました」(安藤さん談)。
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菩提寺から造り付けへ、そして、箱形仏壇から新型仏壇へ…『お仏壇の変遷』は、日本の住宅事情の変化と共にずっと歩んできたのだから、これからも止まることなく進化を遂げていくのだろう。ひょっとして近い将来、『折りたたみ式仏壇』や『手乗り仏壇』など、仰天プランが登場するかもしれない。
「そういう展開もあり得るでしょうね(笑)。ただ、お仏壇の形やデザインがどのように変わったとしても、一番大切なのは、故人に向かって手を合わせ、対話をする時間を持ち続けること。“お仏壇が身近な場所にある住まい”が次世代へと受け継がれていくと良いですね」と安藤さん。
ぜひ皆さんも、マンション購入や一戸建て住宅建設の際には間取りのプランニングと共に、“お仏壇のある生活空間づくり”についてもじっくり検討してみてはいかがだろうか?
■取材協力/株式会社はせがわ
http://www.hasegawa.jp/memorial/campaign/dokuhon_2012/
■はせがわ ヴィナシス金町店
http://www.hasegawa.jp/shop/search/shopdetail/kanamachi/
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