「遺品整理」――遺族で行うもの

「遺品整理は遺族で行うもの」――この意識は消えないでほしい「遺品整理は遺族で行うもの」――この意識は消えないでほしい

「遺品整理」、大切な人を亡くした後にやらなければならない辛い作業。故人の家財道具を整理することで生前の思い出がよみがえり、悲しい気持ちに拍車がかかってしまうかもしれない。だが、その思いはきっと、気持ちが落ち着いたときに大切なものになるだろう。
遺品整理は家族・親類で行い、悲しみと思い出を共有するもの――当然、遺族で行うことだった。

ところが近年「遺品整理業」が注目を集めている。この背景には単身高齢者の急増がある。内閣府が発表した「平成26年版高齢者白書」によると、高齢者人口における単身高齢者の割合は、2010年時点で男性約139万人(11.9%)、女性約341万人(20.3%)と、全体で30%を超えている。一人暮らしで亡くなる高齢者の増加、子どもが遠方に住んでいて遺品整理に通うことができないなど、家族の暮らし方の形態が変化しているためだ。

トラブルが相次ぐ遺品整理業

公的な資格のない遺品整理業。トラブルの報告が多いだけに、業界の健全化が急がれる公的な資格のない遺品整理業。トラブルの報告が多いだけに、業界の健全化が急がれる

遺品整理業の内容は多岐にわたる。故人の貴重品・思い出の品・衣類・家具・家電・食料品などを、残すものと廃棄するものに整理し、不要品を処分・リサイクルに出す。保険証書や不動産登記簿などの重要書類を探し出し、思い出の品や貴重品を遺族へ渡す。なかには、行政への届け出支援や不動産・車の処理まで手がける会社もある。顧客は悲しみのなかにあり、ものとしては無価値でも遺族にとっては大切だったりと、細心の心づかいが必要な仕事だ。

だが、実際には遺品整理業に関する公的な資格はなく、法整備も進んでいない。業界への参入障壁が低いことから、ここ数年で清掃業やリサイクル会社の新規参入が増え、トラブルが相次いでいる。
「現在、全国で6,000~8,000社程度の遺品整理関連会社があると思われます。2011年から4年弱のあいだに国民生活センターに寄せられた遺品整理に関する相談は、1万件を超えています。苦情で多いのは、高齢者や女性をねらった不当な請求や行為です。部屋の状態も見ず高額の金額を提示する、貴重品を遺族に無断で持ち出す、回収した遺品を不法投棄するなど多岐にわたっています」と一般社団法人遺品整理士認定協会 事務局長の伊藤友勝さん。

業界の健全化が急がれるなか、注目を浴びているのが「遺品整理士」だ。

トラブルを避けるために、気をつけることは?

一般家庭の不要品回収は行政による許可制で誰でもできるものではない。無許可の会社のトラブルに巻き込まれないように注意が必要だ一般家庭の不要品回収は行政による許可制で誰でもできるものではない。無許可の会社のトラブルに巻き込まれないように注意が必要だ

一般社団法人遺品整理士認定協会が認定する「遺品整理士」は、遺族の代行で遺品整理を行う。廃棄物・リサイクル品の取扱いに関する各法規制、遺品整理を取り巻く社会問題、供養についての心構えなどを学ぶ。
2015年1月現在で6,000名超が遺品整理士の資格を取得しており、そのなかから審査を経た332社が優良企業として認定協会のHPで紹介されている。遺品整理士は遺品整理業を開業するうえで必要な公的資格ではないが、依頼する会社を選ぶ指針になるだろう。

では、遺品整理を依頼するにあたって注意することは何か? 認定協会の伊藤さんに聞いた。
・現地で荷物量を確認してもらい、可能な限り2社以上の内訳の入った見積書を取ること
※荷物の量によるが、平均的な価格は、1LDKで15万円、一軒家で30~50万円程度。見積りの内訳は大きく、人件費・分別梱包費・廃棄物の量に分かれている
・状況によって作業日の延期、中止などもあるため、キャンセルした場合の手数料を確認しておくこと
・事前に重要な書類等が無いか、探すべきものが無いかを確認する
・家具、家電などのリサイクル品がある場合は、処分費用や買取可能かどうかを確認すること
・作業中は立ち会いをすること
・廃棄物の取扱いについて、事前に説明を受けること
・廃棄物処理に関する行政の許可を得ているかどうか確認すること

そもそも一般家庭の不要品を廃棄する場合、当該市町村による一般廃棄物収集運搬の許可が必要だ。近年、ポスティングや軽トラックで不当に廃品回収をする無許可の会社があらわれ、法外な料金を請求したり、不法投棄をするというトラブルが増えている。廃品回収の訪問を受ける場合には、車輌や名刺に廃棄物収集運搬の免許番号が表記されているかどうかは最初にきちんと確認をする必要がある。

“遺品と遺族をつなぐ”仕事の健全化を

「4LDKの一軒家で暮らしていた親が亡くなられて、半年間、小さなお子様を連れて遺品整理をしていた女性から連絡をいただきました。3年かけて半分の遺品を片付けたそうですが、体力的にきつくなり、残りをプロにお願いしたいという依頼でした。遺品整理士のいる会社を紹介し、実際に作業をしたら6時間で終わったそうです。その女性は、廃棄したくてもできなかったものが片付いて、気持ちの整理もできたと喜ばれていました」と認定協会の伊藤さん。
遺品は廃棄物ではなく遺産の一部だ。遺族の心情を理解し、気持ちに寄り添いながら誠実な仕事をする遺品整理会社も増えている。プロに依頼する場合は、モラルのある会社を選びたい。ここには消費者の判断力が問われる。

「現在、遺品整理業には業務内容を監査する所管庁がありません。私たちは、1年以内に『遺品整理士』を認定資格化できるように関係省庁に働きかけています。遺品整理士になりたいと資格を取る方には、身近に辛い経験をし、遺品整理を通して人の役に立ちたいという思いの強い努力家が多いです。そういう方たちにスポットをあてて意識の高い人材を排出することで、不正な業者を淘汰していくことが私たちの仕事のひとつです」

基本的に遺品整理は遺族で行うものだ。ただ、体力的・精神的にプロの手を借りたほうが良い場合もあるだろう。遺品と遺族をつなげる仕事の、早急な健全化が待たれる。

2015年 02月11日 11時41分