防災と健康に注目。「免疫力」と「回復力」を兼ね備えた住まい

レジリエンス住宅CH14のリビングダイニングルームレジリエンス住宅CH14のリビングダイニングルーム

台風の進路に位置し、4枚のプレートが地下にひしめきあう日本は、世界でも有数の災害大国だ。全世界で起こったM6超の地震のうち、2割が日本に集中しており、南海トラフ地震や首都直下型地震は「いつ起こってもおかしくない状況」といわれる。
こうした中、各社は建物の耐震化を進め、太陽光発電やHEMS(ホーム・エネルギーマネジメントシステム)を導入したスマートハウスを投入。住まいの省エネ化と防災力の強化にしのぎを削っている。

とはいえ、停電時にスマートハウスが蓄電池から電気を供給できるのは、数時間から1日程度。仮に建物の被害が少なくても、電気やガス、水道などのライフラインが止まれば、避難所生活を強いられることになる。そこで、株式会社LIXIL住宅研究所では、「非常時にもエネルギーを自給しながら、安心して暮らせる家」の研究開発に着手。2013年10月に、コンセプトホーム『レジリエンス住宅CH14』を発表した。

「レジリエンスとは、強くてしなやかな“強靭性”の意。CH14の開発にあたっては、“平常時には免疫力を高め、非常時には早く回復できる住まい”というコンセプトを掲げました。女性建築家や女性医師とコラボしながら、『ライフライン(自律)』『健康』『ライフステージ』『絆』という4つのレジリエンスを追求。とくに、自律(災害時のライフライン復旧)と健康という2つのポイントに着目し、免疫力と回復力を併せ持つ住まいを模索しました」(LIXIL住宅研究所 広報宣伝部・千明和彦氏)。

ライフラインが止まっても、1ヶ月間は電力の自給自足が可能

非常時の発電を行う自律コージェネレーションシステム非常時の発電を行う自律コージェネレーションシステム

CH14の最大の特長は、災害でライフラインがストップしても、約1ヶ月間は平常通りの生活が続けられるという点だ。
停電したときは、屋外にある発電機の始動グリップを引き、自律コージェネレーションをスタート。これは、LPガスを燃料として発電しながら、廃熱を利用して給湯や空調をまかなう仕組みだ。
「この住宅では、貯槽量150kgのバルクにLPガスを貯めておくことで、約1ヶ月間、電力を自給することができます。東日本大震災では、都市ガスの復旧が遅れたことが、避難生活を長引かせる原因の1つになりました。その経験から、自律した暮らしを実現するためには、都市ガスよりもLPガスのほうが有効だという結論に至ったのです」(同・執行役員研究所長、高橋司郎氏)

この自律コージェネにより、非常時でも、テレビや冷蔵庫、照明、コンセントを使うことが可能になる。食料の調理やテレビからの情報収集もできるので、万一の時には、CH14を地域コミュニティのための防災拠点として活用することもできるという。
また、敷地内には水盤を設け、100ℓの水を貯められる貯水槽を設置。ここに雨水を貯め、災害で断水しても、水洗トイレなどの生活用水を確保できるようになっている。

余剰電力販売で、ゼロエネルギーから「お金を稼げる家」に

高窓から室内の熱気を戸外へ排出高窓から室内の熱気を戸外へ排出

もちろん、CH14が真価を発揮するのは、非常時だけではない。
平常時には、自律コージェネと太陽光発電によるダブル発電で、家庭で使う電気を自給自足。“ゼロエネルギー”の住まいを実現することができる。
なお、同社では、電気自動車を太陽光発電の蓄電池として使うことを想定している。この方法を使えば、将来的には、日中にソーラーパネルで作った電気を電気自動車に充電し、夜間に電気自動車から住宅に供給することもできるという。

一方で、消費電力を抑えるための工夫も随所に凝らされている。
その1つが、「通風」による方法だ。CH14では、室内の空気の流れに沿って、地窓や高窓・天窓を配置。低い窓から冷えた空気を取り込み、高い窓から室内の暖気を外に出すことで、室温を調整する設計になっている。
もう1つの省エネ法は、「湿度調整」によるものだ。CH14ではデシカント調湿システムを採用し、1年を通じて室内の湿度を50%前後にキープ。夏場は湿度を10%抑えるだけで体感温度が1℃下がり、冬場は加湿することで体感温度が上がるので、エアコンの消費電力を大幅に節約できるという。

「ダブル発電と省エネで、ゼロエネルギーを実現する。これが、レジリエンス住宅CH14の特長です。太陽光発電を4kw/時、ガスコージェネによる発電を1kw/時とすると、1年間でゼロエネルギーを実現することができる。さらに太陽光発電で2kwをプラスすると、売電により年間8万円が稼げる計算になります。ゼロエネルギー住宅を超えて、“お金を稼げる家”にすることができるのです」(高橋氏)

「災害に脆弱な国」の「強靭な住まい」を目指して

HEMSの進化系、スマートロボット『リリボ』。リリボはLIXILとLIXIL住宅研究所が企画開発したもので、NECのコミュニケーションロボットPaPeRoを採用しているHEMSの進化系、スマートロボット『リリボ』。リリボはLIXILとLIXIL住宅研究所が企画開発したもので、NECのコミュニケーションロボットPaPeRoを採用している

CH14では、スマートロボット『リリボ』を活用した実験にも取り組んでいる。
このリリボはHEMSの進化形で、省エネのための行動を音声でアドバイスしてくれる。たとえば、夏場に外気が室温より低いときは、「エアコンを止めて窓を開けてください」、トイレの照明を消し忘れたときは「1階トイレの電気を消してください」と呼びかけてくれる。また、災害発生時には、“住まいの司令塔”として、さまざまなナビゲーションを行うという。

「こうした作業を、ロボットを使わず、全自動で行うことはもちろん可能です。しかし、省エネとは、人間が自ら行動することによって初めて身につくもの。ロボットを使うことで、楽しみながら省エネに取り組んでいただきたい。将来的には、介護や非常時の通信手段など、さまざまなシーンでロボットが活躍することになると思います」(高橋氏)

技術の進歩にともない、住宅のインテリジェント化は進む一方だ。だが、ハイテク化が進めば進むほど、電力への依存度も高くなり、停電が起これば、暮らしはたちまち立ち行かなくなる。その意味で、ライフライン喪失の問題と真正面から取り組んだ、同社の試みは興味深い。
災害に脆弱な国に住む私たちにとって、暮らしを守るための強靭な住まいとはどうあるべきか。レジリエンス住宅CH14の提案は、今後の住まいを考える上で多くのヒントを与えてくれそうだ。