『リライフプラス』presents リノベ界の新しいヒーロー(ときどきヒロイン)を探せ! vol.3

リノベーション専門誌『リライフプラス』が注目する、リノベーション界の新しいヒーロー(ときどきヒロイン)にインタビュー。リノベーションを仕事として選んだ理由や手掛けてきた家のこと、仕事以外で好きなこと、などざっくばらんにお話を伺っていきます。リノベ魂あふれるオフィスもバッチリご紹介します!


 ルーヴィス代表 福井信行さん

vol.3 株式会社ルーヴィス代表 福井信行さん


profile


1975年 神奈川県横須賀市生まれ横浜市育ち
1994年 テネシー明治学院高等部を経て桐蔭学園横浜大学に入学。半年で中退
1994年~1996年 ニート
1996~2000年 インテリアショップ・ACME FURNITURE入社。アメリカ中古家具のバイヤー、メンテナンスを担当
2000年~2005年 父が社長を務める株式会社福井地所(神奈川県横浜市)にて賃貸管理の仕事に携わる
2005年 30歳を目前にしてリノベーション会社・株式会社ルーヴィス設立。インテリア、不動産、リノベーションの3分野を融合させ、不動産ストックの流通活性化に取り組んでいる
http://www.roovice.com/


住宅から店舗まで、幅広いジャンルのリノベーションを数多く手掛けてきたルーヴィスの3軒めとなるオフィスは、横浜市営地下鉄阪東橋駅5番出口から5~6歩、つまり駅を出てすぐのマンションにある。築40年。エレベーターを降りると一戸建てのような玄関が現れた。広さはバルコニーも入れると300平米以上あるという。


ルーヴィスのオフィス

Now
「リフォーム」と「リノベーション」のあいだ


-オフィス、すごい広いですね! しかもマンションなのに2階建て
昨年の夏に引っ越しました。残置物がある状態でよければという条件つきでしたが、家賃が格安だし、直しながら使っていくというのもいいかなと思って。庭もあるし玄関は昭和っぽくて面白いし、いろいろできそうだなと。残置物は4トントラックで5台分ほどありましたけど(笑)-やっぱり地元の横浜にこだわりがあるんですか?
僕らの仕事って、基本こちらから出向くことが多いので、場所はどこでもいいといえばどこでもいい。東京はスピードが早すぎて馴染めないし、田舎もちょっと苦手。強いて言うなら都会でも田舎でもない、中途半端な落ち着き感が横浜を選んだ理由かな。横浜にいると東京の仕事が来ないのかなと思ったけど、今も6~7割が東京の仕事なんですよね。-スタッフ、女子が多いですね
たまたまなんですけどね。毎年1人ずつくらいのペースでスタッフが増えてます。いま正社員が6~7名、アルバイトさんと業務委託の方も入れると総勢8~9名。異業種から転職してきた人も結構います。面接では、話した感じでは大丈夫そうかなっていう人を採用するようにしています。未経験者でもフラットな視点で見るように、あとあまり期待しすぎないようにしてるかな(笑)。学歴とか、以前どんな仕事をしていたかっていう所はあまり見ないことが多いですね。-すこし前ですが『an an』のリノベ特集に施工例が掲載されていましたよね
鎌倉市の減築したお宅ですよね。あのお宅は僕もかなり印象に残っています。高度成長期は「足す」ことがよしとされてきたけれど、これからは人口も減っていくし、国が緩やかに衰退していく。「減る」ことがメインになっていく世の中にフィットしながら、心地よく住まうにはどうすればいいか検証したい、という気持ちもありました。-減築のメリットはどんな点だと思いますか
日当りや風通しがよくなるのはもちろんですが、電気代などのランニングコストがグッと安くなる。それと、目に見えないけれど家族の距離が近くなってコミュニケーションが取りやすくなるっていうメリットもあると思います。精神的な豊かさを得られるという点でもすごく意味があるんじゃないかな。コンパクトにする事で家族の距離感を調整するような。-木賃アパートを借り上げて設計・施工から管理運営まで行う「木賃デベロップメント」は新しいビジネスモデルとして話題になりましたが
賃貸のオーナーさんって高齢の方が多いんです。でも借りる人は20~30代が圧倒的に多い。こういう部屋が入居者に選ばれるっていうことを理解してもらいにくいんですよね。どうしても「費用をかけて改修しても本当に回収できるのか」っていう話になってしまう。じゃあ自分たちでやってみよう、ということで取り組むことにしました。ルーヴィスさんのリノベーションは「やりすぎない」ところがいいなってずっと思ってました
僕はデザイナーではないので、「作品」をつくりたいとう気持ちはないんです。力技ですべてを変えてしまうのがちょっと気恥ずかしいというか。古いままでもいい所はそのまま残しながら、何年後かにも飽きないものができたらいいかなって。以前住んでいた人がどんな考えでこの家をつくったのかなって考えるのも好きなんですよね。「リノベーション」というほど大げさじゃなくて、「リノベーション」と「リフォーム」のあいだ、ぐらいのところでいい感じの空間をつくれたら、と思っています。-ついでに言うとルーヴィスさん=ローコストっていうイメージもあったんですが
平米7万のときもあれば平米15万のときもあって、いろいろなんですが、安かろう悪かろうは絶対イヤだなと思っていて。だから、安くできる方法を考えるのは好きですね。下地をそのまま使う、何もしない、イケアを使う、などいろいろな方法はありますが、まずはお客さんの要望を全部聞いてから組み立てます。素材でいうと足場板のような、操作されていない素朴な材料に惹かれますね。

Past
ハウスクリーニングでたくさんの現場を
見ることから始まった


-『新建築』に掲載された時、プロフィールに「ニート」って書いて削除されそうになったそうですが…
はい。削除しないでくださいってお願いしました(笑)。高校3年間をアメリカで過ごし、日本の大学に進学したんですが、半年で中退して、その後3年半ニートやってました。まわりの友達が就職し始める頃、さすがに働かないとまずいなと。なんとなく家具って面白そうだなと思って16社ほど受けたんですが全部落ちて、面接の帰り道に『ガテン』を買ったんですよね。そしたら大崎の木工所で募集があって、運良く採用されて1年近く働きました。-その後、目黒の「ACME FURNITURE 」に入社したのはなぜですか?
たまたま通ったら求人の張り紙がしてあって、外国に行けそうかなっていう淡い期待もあって入社しました。1950~1960年代の家具をメインに扱っているんですけど、いいものであればデザイナーものでなくても欲しい人がいて、高く売れるんだなっていうのが驚きでしたね。念願かなって店長とアメリカへ買い付けにも行けました。-そしてその後、26歳のときにご実家の不動産会社で賃貸管理の仕事に就いたんですよね
最初はいやだったんですけど、まあ1回やってみるかと。でもやっぱりダメだった。賃貸管理ってクレーム処理がメインなんで、しんどかったですね。あと、横浜駅から徒歩5分なんていう条件のいい物件でも借り手がつかなかったりして、家具は直すと高く売れるのに、不動産はなんで古くなると価値が下がるのかなっていうのがすごく疑問でした。-30歳で会社をつくろうと思ったきっかけは?
会社を辞める2年くらい前にブルースタジオさんの本を読んだんです。古い物件でも、かっこよく直せば借りたい人いるじゃん! って。それで、30歳になる1か月前に会社をつくりました。何も実績がないから、できるだけいろんな現場を見るにはどうしたらいいかって考えて、最初はハウスクリーニングの仕事をやってました。1年で500件くらいはやったんじゃないかな。新築一戸建て、ビル、賃貸、なんでもやりましたね-ハウスクリーニングからリノベーションにどうやって移行したんですか?
その時点ではまだリノベーションの「リ」の字もないんですけど(笑)、ハウスクリーニングの現場で大工さんとか電気工事屋さんと知り合って、だんだんと原状回復の仕事を頼まれるようになってきたんです。そうこうしているうちに銀行が「お金借りませんか」って言ってきたんで、「じゃあマンション買いたいからお金貸してください」って。新宿御苑の中古マンションを買って、スキーマ建築計画の長坂さんに依頼してリノベーションしました。それが最初のリノベーションです。-いわゆる再販ですよね。すぐ売れたんですか?
賃借人を見つけてから投資物件として売却する予定でした。借りる人はわりとすぐ見つかったんですが、売却までは1か月くらいかかって、銀行口座にお金がほとんどなくなってしまって。最終的には売却できて利益が出たんですが、再販はもうやめようってそのとき思いました。その後も原状回復の仕事をしながら、ぼちぼちリノベーションの依頼がくるようになってきたっていう感じです。

Future&more…
年相応の、オトナのためのリノベーション
を提案していきたい


-フェイスブックがもうすぐ6000いいね!ですよね。結構すごい数字だと思いますが
本当に有難い事ですが。1000いいね!ぐらいの頃は、正直フェイスブックって大したことないなっていう感じだったんですが、3000いいね! を超えたあたりから世界が変わりました。なので、とくにウェブ以外での集客はしていません。会社の交際費は、去年は年間で15万円でした。少ないですよね(笑)-今後取り組んでみたいことは?
今のルーヴィスは僕の個人商店みたいなイメージが強いので、もっとスタッフが活躍できるような環境をつくっていきたい。僕自身が何かやるっていうことよりも、経験してきたものをスタッフに伝えて、主体的に活躍して欲しいと思っています。週1でテーマを決めて2時間ぐらいのレクチャーやミーティングもやっています。外向きな話でいうと、リノベーションで得たものを新築にフィードバックしていけたらいいなっていう気持ちもあります。-年齢を重ねて、家に対する考え方も変わってきましたか?
それはありますね。いま38歳なんですけど、自分と同じぐらいの年のお客さんも増えてきたので、年相応の、オトナのためのリノベーションを提案できたらいいなと思うようになってきました。昔は断熱とか関係ないと思ってたけど、やっぱ冬寒いし、床暖いいよねとか(笑)。デザインだけじゃなくて機能的な部分もきちんと提案をしていきたい。60過ぎたら手すりについて真剣に考えたりもしたいですね。だから逆に若いお客さんは若いスタッフに担当させるようにしていきたいと思っています。-(2005年の設立以来)施工実績が累計300件以上だそうですが
大小ぜーんぶ合わせて、の数ですけどね。使えるものはうまく活用して、家を住み継いでいくことが根付けばいいなって思っています。家選びの選択肢が広がって、もっと気軽にいろいろ選択できる世の中になっていくといいですね。それと、うちは施工までやるっていうことにこだわってきたので、手を動かす人たちの地位がもっと向上していくといいなと思っています。-仕事以外の楽しみは?
実は人と話すのが得意ではないので、どちらかというとインドア派です。家でDVDを見たりゲームしたりしてる時が一番落ち着く(笑)。あと休みの日はだいたい箱根に行きます。大湧谷で卵食べて、湯本の日帰り温泉に入って昼寝して、ソバ食べて帰るっていう。ほぼいつも同じパターン。横浜からだと1時間半ぐらいなので、距離感がちょうどいいんですよね。ちょっとしたイナカ感を味わうというか。月2回ぐらいは行ってます。生息してるって言ってもいいかも(笑)-いま進行中のプロジェクトは?
田園調布駅から徒歩1分ぐらいの場所にある、敷地300坪くらいの平屋のリノベーションが進んでいます。立地も広さもスゴイんで、ワクワクしてます。 

撮影/難波雄史 聞き手/『リライフプラス』編集部 君島喜美子


『リライフプラス』ブログ http://blog.livedoor.jp/relifekk/リライフプラスvol.13『リライフプラスvol.13』(扶桑社刊)好評発売中!
『リライフプラスvol.13』(扶桑社刊)好評発売中! 

work01 減築した家@鎌倉


減築した家@鎌倉 ルーヴィス減築した家@鎌倉 ルーヴィス古い2階建ての木造住宅を施主と共に設計しリノベーション。以前の住人は小説家だったため、玄関部分には編集者の待合室もあり、面積は広いのに生かしきれていなかった。また、土地の広さを生かして敷地内に駐車場を作りたい、という理由で減築することに。リノベ後も大半は古い住宅のままだが、新しくつくったファサードが古い住宅へも派生していくような計画とした。

所在地:神奈川県鎌倉市
減築面積:12.3m2 内装:27.5m2
築年:1960年 竣工:2013年5月
家族:夫婦2人+子ども1人
工事費:315万円(設計料込み)
設計:大坪正佳、大坪文恵、福井信行
施工:ルーヴィス(福井信行、黒田基実、荒井良太)


 

work02 団地リノベ@旗の台


団地リノベ@旗の台 ルーヴィス団地リノベ@旗の台 ルーヴィス
団地リノベ@旗の台 ルーヴィス

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ネットで見つけた昭和33年築の公団住宅をローコストでリノベ。田の字型の3DKを寝室、子ども室、キッチンの3つのコーナーを持つ1室空間に。「工事はほとんど壊して、剥がして、塗る、という感じで、一番お金がかかったのは解体撤去費用でした」と福井さん。重ね張りされていた床を剥がしたら、建物の竣工当時の杉板の床が出て来たため、塗装を剥がして塗り直したそう

所在地:東京都品川区
専有面積:約39.60m2
築年:1958年 竣工:2010年8月
家族:本人+子ども1人
物件価格:1700万円
工事費:260万円(設計料込み)
撮影:山田耕司


『リライフプラスvol.5』 特集「物件価格1000万円台のTOKYO中古マンション獲得計画」にて掲載


 

work03 団地リノベ@亀戸


団地リノベ@亀戸 ルーヴィスリライフプラス ルーヴィス
リライフプラス ルーヴィス

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夫が生まれ育った団地に最初は賃貸で住み、その後運良く売り物件が出たため購入してリノベ。コストダウンも兼ねてOSB合板を床に採用した。型ガラスを使った味わい深い建具は白く塗装して再利用するなどし、団地ならではの良さを生かした、古さと新しさが混在する心地よい空間に。キッチンはステンレスのカウンターのみでごくシンプルに、浴室は浴槽のみの交換とした。

所在地:東京都江東区
専有面積:約51.72m2
築年:1968年 竣工:2009年3月
家族:夫婦+子ども2人
物件価格:1700万円
工事費:480万円(設計料込み)
撮影 長谷部均
『リライフプラスvol.1』特集「ヴィンテージなマンションで暮らそう!」にて掲載


 

work04 平屋リノベ@佐島


平屋リノベ@佐島 ルーヴィスリライフプラス ルーヴィス
リライフプラス ルーヴィス

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3棟の平屋を渡り廊下がつなぐ、ユニークな物件を週末住宅に。「どこまでリノベして、どこまで既存を生かすか、かなり迷った」(福井さん)という。施主と現地でひと晩「合宿」をして話し合った結果、左右の棟は「直したかどうかわからない程度」にし、中央の棟を重点的にリノベすることに。現場で左官の研ぎ出しをしてつくったキッチンや、海を眺められる埋め込み式の浴槽など、週末住宅ならではのリラックス感がある。

所在地:神奈川県横須賀市
専有面積:154.85 m2
築年:1962年 竣工:2011年8月
家族:夫婦2人
工事費:900万円(設計料込み)
撮影:飯貝拓司
『コダテrelife+』 特集「イイかも!平屋リノベーション」にて掲載