『リライフプラス』presents リノベ界の新しいヒーロー(ときどきヒロイン)を探せ! vol.12

リノベーション専門誌『リライフプラス』が注目する、リノベーション界の新しいヒーロー(ときどきヒロイン)にインタビュー。リノベーションを仕事として選んだ理由や手掛けてきた家のこと、仕事以外で好きなこと、などざっくばらんにお話を伺っていきます。


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vol.12 ハンズデザイン一級建築士事務所 星名岳志さん


profile


1975年 埼玉県生まれ
1998年 東京都立大学工学部建築学科卒業
1998年 株式会社山本理顕設計工場にて東雲キャナルコートCODAN基本設計等に携わる
2001年 株式会社ベルチェアソシエイツにて外資系企業のコーポレイトインテリアデザイン等に携わる
2008年 株式会社リカルドトッサーニアーキテクチヤーにて海外アパレル店舗設計等に携わる
2008年 株式会社水工房にて木造戸建住宅及びマンションスケルトンリフォーム、木造戸建新築等に携わる
2012年 ハンズデザイン一級建築士事務所設立

vol.12 ハンズデザイン一級建築士事務所 星名貴子さん


profile


1977年 千葉県生まれ
2000年 千葉工業大学工学部工業デザイン学科卒業
2000年 ア・シード建築設計にて注文住宅の設計等に携わる
2001年 エアサイクル産業にて素材や住まいの空気環境にこだわった注文住宅の設計に携わる
2008年 水工房にて木造戸建住宅及びマンションスケルトンリフォームに携わる
2009年 株式会社ホーメストにて都市型三階建注文住宅の設計に携わる
2012年 ハンズデザイン一級建築士事務所設立


http://www.hands-a-design.jp/


「グーグルマップで緑地帯を探して、その近くに建つマンションを探しました」というユニークな家探しの末、緑豊かな公園に隣接するマンションに巡り合い、リノベーションして暮らす星名さん夫妻。リノベーションの際、スケルトンの段階から完成までのプロセスを体験してもらいたい、と4回連続の見学会も行った。事務所・ショールームも兼ねてはいるが、あくまでも「住まい」であることを大事にした、という自宅は、玄関を入ってすぐの場所にナラ材と大谷石を使ったキッチンがあり、ゲストをあたたかく迎えてくれる。


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Past
仕事の内容も雰囲気もまったく違う
職場での経験が糧に


-建築を志したきっかけは?小さい頃から何かをつくる仕事をしたい、と漠然と考えていました。中学生の頃から、クルマのデザインってカッコいいな、なんて思い始めて、造形デザインや工業デザインを勉強できる大学に進学したかったのですが、残念ながら浪人してしまいまして。もう一度進路について考え直したときに、ふと建築もいいなと思って、建築学科に変更しました(岳志さん)。動物が好きなので、実は獣医になりたかったのですが、獣医学科のある大学自体が少ないこともあって狭き門なんです。それで、もう少し選択肢を広げて考え直しまして、父の影響で手を動かすのが好きだったこともあり、工学部を選びました。建築家でもある教授のゼミに入って設計の勉強をするうちにどんどん楽しくなってきて、今に至る、といったところでしょうか(貴子さん)。-貴子さんのお父様は、セルフビルドで家を建てたそうですねそうなんです。建築とは全く関係のない仕事をしていたのですが、定年後にCADを覚えて、電気工事士の資格も取って、ほぼすべてひとりで家をつくりあげたんです。いま思えば、父は日曜大工の延長で、よくものづくりをしていたんです。私が大学生の頃、自宅の洗面所を一緒にリフォームしたこともありました(貴子さん)。-卒業してからの歩みをダイジェストでおねがいします!僕は最初に山本理顕さんの事務所に入ったのですが、スタッフがみんな優秀で自分の力不足を感じてしまって…。もう少し身の丈に合った規模の小さい仕事ができればと思い、商業施設の内装を手掛けるデザイン事務所に転職しました。1件あたりの規模や金額のわりに裁量が大きかったし、細かい部分までこだわったデザインをさせてもらったのですごく勉強になりました。 (岳志さん)。-その後また住宅の仕事へ戻ったのはなぜですか?そのときすでに30歳を過ぎていましたが、やっぱりもっと小さくて、個人のこだわりを感じられる仕事をしたいと思い始めていて、ちょうど「リノベーション」という言葉が住宅業界でも聞こえ始めていた頃でした。今やらないと後悔するかも、と思い切ってリフォーム会社に転職したんです。ただ、私にとって商業から住宅への転向はなかなか難しいところがあって最初は苦労しました。(岳志さん)。-貴子さんの歩みは?最初はアトリエ系の事務所に入ったのですが、体力的にもキツくて1年で挫折しまして…。その後設計部もある工務店に入ってイチから勉強させてもらいました。その会社では新築一戸建ての仕事をメインにやっていました。ちょうどその頃「リノベーション」が流行り始めて、自分もやってみたいと思って、たまたま岳志さんと同じリフォーム会社に転職したんです(貴子さん)。-その頃1時間以上かけてロードバイクで通勤していたそうですねその会社がちょっと不便な場所だったんです。当時、新高円寺に住んでいたのですが、足立区にあるオフィスまで、1時間以上かけてほぼ毎日ロードバイクで通っていました。ロードバイクってまず乗り心地がいいし、ママチャリより断然早いし、いろんなものが目に入ってくるから乗っていて楽しいんです。(貴子さん)。-お二人が働いていたリフォーム会社ではどんなお仕事を?なかなかひとことでは言い表せませんが…(笑)、設計事務所ではまずやらないチラシのポスティングや電話営業まで、普通の会社でやるような仕事を一通り経験させてもらいました。それまではずっと企業相手の仕事だったので、最初は戸惑いましたね。規模の小さい会社だったので、どうやってひとつの会社を切り盛りしていくか、みたいなことを学べたのは良かったと思っています(岳志さん)。営業主体で、とにかく売り上げを上げなければならない、という雰囲気だったので、いいものをお客さんに提供することがなかなかできない状況が辛かったですね…。その後結婚もすることになり、二人で暮らす家を探し始めました。どうせなら自分たちの家をお客さんに見てもらって打ち合わせができたらいいなと思い始めて、最初は「できたらいいね」ぐらいのテンションだったのですが、だんだん本気になってきて、今の家を購入してリノベーションしました。(貴子さん)。

Work
収納カウンセリングを大事に考える理由


-ハンズデザインという事務所名はどのようにして決めたのですか?それがなかなか決められなくて、いよいよ決めなきゃっていう時期に妻の父の実家がある京都へ、結婚の報告も兼ねて遊びに行ったんです。そのときにたまたま立ち寄った観光案内所で、職人さんの手だけが写っているモノクロの写真を表紙に使っているパンフレットを見て、なんかいいよねって二人で話していて、「ハンズ」だけだと何の仕事か分からないから「デザイン」もつけようということになり、この名前にたどり着きました(岳志さん)。-事務所を設立するときに決めたことなどはありますか?どちらかというと、「こうしたい」ということよりも「こういう仕事はできるだけ受けないようにしよう」というのは最初からありました(貴子さん)。確かに、投資物件や建売住宅など、住み手の顔が見えない仕事はあまりしたくないねっていうのは共通の認識としてあった気がします。住む人のために設計をする、ということを大事にしていきたいと思っています(岳志さん)。-転機になったプロジェクトはありますか?私たちのところに依頼に来てくださる方は、同世代の30代の方が多いのですが、自宅で勉強会を開催したときに60代の方がいらしたんです。勉強会からしばらくして依頼があり、元々お住まいのマンションをリノベーションすることになったのですが、その方との家づくりはとくに印象に残っていますし、その後の私たちの設計のやり方に大きな影響がありました(貴子さん)。-具体的にどのようなお宅だったのですか?ひとことで言うと、すごくモノが多いお宅だったんです。それを半年くらいかけて少しずつ処分してもらって、その後1年ちかくかけて設計しました。今までの仕事の中でも最長記録ですね。その仕事をきっかけに、「モノ」と「収納」についてとことん話し合ってから設計に取り掛かる、というやり方になったんです。どのお宅の場合も、最初はそれを延々とやります(岳志さん)。-手間も時間もかかりそうですが「スッキリと暮らしたいけれどモノを捨てたくない」「収納はたっぷり欲しいけれど圧迫感が出るのはイヤだ」というニュアンスのことを言うお客さんも結構いらっしゃるんですが、矛盾していますよね。これだと当然いいものができないんです。だから、申し訳ないけれど、いいプランにならないのはモノが邪魔しているからなんですよ、ということを丁寧に説明します(岳志さん)。初日の現場調査で建物のサイズを測って、持ち物をすべて見せてもらって写真に撮ります。その持ちモノをどこにどう収めるか、図面に落とし込んでいくようなイメージです。おさまり切らないケースもよくありますが…。自分がどれくらいの量のモノを持っているか把握している人って少ないんです。持ち物をすべて見せてもらって写真に撮って「見える化」するとお客さんも安心するんです。だんだんスッキリした顔になっていくというか。(貴子さん)。-収納をたっぷり、という要望にはどう応えるのですか?私たちのプランは、結構収納が多い方だと思っています。ただ、入れば壁面収納でも何でもいいという訳ではないので、やはりモノが多い場合は減らしてもらうようお願いします。ハンズデザインでは造作家具やオリジナルキッチンをつくるケースが多いので、よりこうしたプロセスが重要になってくるのです(岳志さん)。長い方だと、設計に着手するまでに収納カウンセリングだけで半年から1年くらいかかることも。規模の小さい事務所だからできることだとは思いますが、これからも続けていきたいと思っています(貴子さん)。

Life&more…
「ふつうの生活者であること」を大事にしたい


-ウェブサイトにある「Time Table」がすごくいいなと思いました。午前8時始業、午後6時終業というのはほぼ守れているのですか?6時終業というのはバッチリ守っています(笑)。その代わり不定休ですが。私たちはまずふつうの生活者であることを大事にしたい、と思っていて、そういう意図もあって載せることにしました。いわゆるワークライフバランスに関しては、今がちょうどいいと感じています。(貴子さん)設計者って、一般の方にとって人となりが結構ナゾだと思うんですよね。だからできるだけ情報をオープンにしたいと思って公開することにしました。僕らはスケジュールをグーグルカレンダーで管理しているのですが、そのグーグルカレンダーを誰でも見らえるようにしようっていう案もあったんです。あまりにリアルすぎるのも良くないんじゃないかという結論にたどり着いて、結局やめましたが。それと、ある程度の量の仕事をしていることが分かると安心感があるんじゃないかなと思って、いま進行中の仕事なんかもちょこちょこアップデートしています(岳志さん)-自宅をリノベーションしたことで変わったことはありますか?やっぱり自分たちの経験を踏まえた上でお客さんに説明すると説得力がありますし、丁寧に暮らすとこんなに楽しいんだっていうことがリノベのモチベーションになると思うので、「こういう風に暮らしたい」と思ってもらえるようなシーンを見せていきたいと思っています。自宅のリノベに関することはブログなどでも意識して書くようにしていますし、今後も自宅を使っていろいろな提案をしていけたら、と思っています(貴子さん)。-仕事をしていてよかった!と感じるのはどんな時?「ラジオ体操をするようになりました」とか「毎週末スタバに行っていたけど、今はちょっといいコーヒーを買って家でゆっくり飲むようになりました」なんておっしゃっていただいたりすると、やっぱり嬉しいですね。たこやきパーティーに呼んでいただいたりすることも。(岳志さん)-今後取り組んでみたいことはありますか?「こんなものがあったらいいな」とか「こうだったらいいのに」というアイディアをちょこちょこノートに書き留めています。住まいに関わるちょっとしたプロダクトのアイディアだったり、環境を良くしていけることはなんでもやってみたいですし、もしもこうだったらという話は二人でもよくします。具体的には今後のお楽しみということで…。 (貴子さん)。
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共に暮らす白、シルバー、シナモン、3羽の文鳥は水浴びが大好きだそう



 

撮影/難波雄史 聞き手/『リライフプラス』編集部 君島喜美子


『リライフプラス』ブログ http://blog.livedoor.jp/relifekk/


『リライフプラスvol.16』(扶桑社刊)|リライフプラス連載|リノベーションお役立ち情報|HOME'S/ホームズ

『リライフプラスvol.16』(扶桑社刊)好評発売中!

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work01 マンションリノベーション@船橋


マンションリノベーション@船橋|ハンズデザイン一級建築士事務所|リライフプラス連載|リノベーションお役立ち情報|HOME'S/ホームズマンションリノベーション@船橋|ハンズデザイン一級建築士事務所|リライフプラス連載|リノベーションお役立ち情報|HOME'S/ホームズ星名さん夫妻の自邸兼オフィス。キッチンと、ゆったりとした玄関ホールをコアにして、北側をプライベートなスペース、南側をパブリックなスペースとした。北側に3室あった個室をワンルームとし、浴室を北の窓側に移動した。キッチンカウンターにはナラ、リビングダイニングの床にはアメリカンブラックチェリー、浴室の天井には青森ヒバ、寝室の床には杉、と様々な樹種を取り入れているのも特徴的。

所在地:千葉県船橋市
専有面積:72.24㎡
建物の竣工年:昭和61年築
家族構成:夫38歳 妻36歳
リノベーション工事費:1,200万円

work02 マンションリノベーション@浦安


マンションリノベーション@浦安|ハンズデザイン一級建築士事務所|リライフプラス連載|リノベーションお役立ち情報|HOME'S/ホームズマンションリノベーション@浦安|ハンズデザイン一級建築士事務所|リライフプラス連載|リノベーションお役立ち情報|HOME'S/ホームズ家族が思い思いに過ごせるよう、オープンなワンルームの中に様々な場所を点在させた。その中心に、家具のように空間に馴染むアイランドキッチンがある。キッチンはオリジナルで、三層構造の3ステップシンク、引出し収納など使い勝手にもとことんこだわった。寝室や子供室、トイレなどの壁の一部を施主がDIYで鮮やかな色に塗装し、空間のアクセントとしている。

所在地:千葉県浦安市
専有面積:80㎡
建物の竣工年:平成9年築
家族構成:40代夫婦+子供1人

work03 マンションリノベーション@鴨川


マンションリノベーション@鴨川|ハンズデザイン一級建築士事務所|リライフプラス連載|リノベーションお役立ち情報|HOME'S/ホームズマンションリノベーション@鴨川|ハンズデザイン一級建築士事務所|リライフプラス連載|リノベーションお役立ち情報|HOME'S/ホームズ2人目の子供の誕生をきっかけに、所有していたリゾートマンションをリノベーションした。施主からの要望は「すごく普通の部屋」だったそう。リゾートマンションのため、かなりコンパクトだったキッチンをアイランドキッチンに変更したことで、子供たちに目が届きやすくなり、生活動線も格段に良くなった。LDKの床はナラ、また壁の一部にレッドシダーを貼ることで、木のぬくもりが感じられる空間に。キッチンの壁の一部や天井は施主がDIYで塗装した。

所在地:千葉県鴨川市
専有面積:67.5㎡
建物の竣工年:平成元年築
家族構成:30代夫婦+子供2人

work04 マンションリノベーション@船橋


マンションリノベーション@船橋|ハンズデザイン一級建築士事務所|リライフプラス連載|リノベーションお役立ち情報|HOME'S/ホームズマンションリノベーション@船橋|ハンズデザイン一級建築士事務所|リライフプラス連載|リノベーションお役立ち情報|HOME'S/ホームズ本文中でも「転機になったプロジェクト」として触れたお宅がこちら。元々住んでいたマンションを住みながらリノベーションした。半年近くにも及ぶ収納カウンセリングによって少しずつ物を減らし、1年近くかけてプランを練り上げた。持ち物が定位置に収まるようキッチン、キャビネットなどはすべて造作し、素材や高さを揃えることで圧迫感をなくした。壁と天井はホタテ塗装、床はアメリカンブラックチェリー、家具と建具にはタモ柾目の突き板など、上質な素材を取り入れている点にも注目したい。

所在地:千葉県船橋市
専有面積:93.19㎡
建物の竣工年:平成12年築
家族構成:60代夫婦