『リライフプラス』presents リノベ界の新しいヒーロー(ときどきヒロイン)を探せ! vol.10

リノベーション専門誌『リライフプラス』が注目する、リノベーション界の新しいヒーロー(ときどきヒロイン)にインタビュー。リノベーションを仕事として選んだ理由や手掛けてきた家のこと、仕事以外で好きなこと、などざっくばらんにお話を伺っていきます。

藤田雄介|Camp Design inc.|リライフプラス連載|リノベーションお役立ち情報|HOME'S/ホームズ

vol.10 藤田雄介さん(Camp Design inc.)

profile

1981年 兵庫県生まれ
2005年 日本大学生産工学部建築工学科卒業
2007年 東京都市大学(旧:武蔵工業大学)大学院工学研究科修了
2008-09年 手塚建築研究所勤務
2010年~ Camp Design inc.主宰
2013年~ ICSカレッジオブアーツ 非常勤講師

http://www.camp-archi.com

団地を1棟丸ごとリノベーションするという斬新なテーマのコンペ(UR主催の花畑団地27号棟プロジェクト)で見事グランプリを獲得した藤田さん。コンペには約400点以上もの応募があったという。藤田さんのプランは、ひと部屋をまるまる「ルームテラス」にしてしまう、というシンプルかつ大胆なものだった。
藤田さんのオフィスはごくシンプルなインテリアながら、ディテールまで丁寧につくり込まれた自作の家型モビールや、使い勝手の良い木製の雑貨など、よくよく見ると藤田さんの家づくりにも通じる何かを感じさせるモノたちが、さりげなく置かれていた。


オフィス|Camp Design inc.|リライフプラス連載|リノベーションお役立ち情報|HOME'S/ホームズ

Now
団地コンペで400点以上の中から見事グランプリに!


-花畑団地コンペのプランは、かなりつくり込んだのでしょうか?それが意外にサラッと出来たんですよね(笑)。ポイントを1つに絞って、それがあることで全体が大きく変わるような提案をしようと思い、継続的に考えていたアイディアや、今までに手掛けたプロジェクトに取り入れたことを組み合わせていったら出来ていた、という感じです。また、部屋の中を変えるだけじゃなくて、建物の外に対しても何かを投げかけたい、という気持ちもありました。-木製の建具も印象的ですね団地に限らずですが、集合住宅のリベーションは制約が多い。そうした中で、建具を変えることは住まい全体に大きな影響があり、外から見たときの印象も大きく変わる。木製の建具そのものが古くて新しい存在で、これからの団地を象徴しているとも言えるのではないかと思うんです。-2次審査は公開形式だったそうですね最終選考に残った10組が観客と審査員の前でプレゼンテーションし、その場でグランプリが決まる、という形式だったのですが、審査員には西沢立衛さんなどもいらして、緊張しました。-団地に住んだ経験は?団地ではないのですが、父の会社の社宅で暮らした経験があり、郊外ならではの雰囲気には馴染みがありました。初めて花畑団地を訪れたときは、敷地がゆったりしていて、空が広いなと感じました。-藤田さんのつくる家はプランは大胆で内装はシンプル、という印象を受けますがあらかじめ建物に色をつけなくてもいいと思っているんですよね。僕がつくるのは背景みたいなもので、住み手が自分たちで色をつけていけばいいんじゃないかと。実際、入居後にお邪魔すると、住み手が自分たちで手を入れていたり、家具や雑貨などでいい感じに色づけしてくれていて、そういうのを見ると嬉しくなりますね。-Camp Designという事務所名にした理由は?外の気持ちよさを感じられるような住まいをつくりたい、という思いもありますし、またCampというのは美術用語でもあって、日本語で言うと「数寄屋」の「数寄」みたいな意味合いで使われていたようです。そんなところも面白いなと思ってつけました。

Past
母のマインドコントロール(?)で建築の世界へ


-大学卒業後、大学院に進んだのはなぜですか?大学時代は都市計画が専門の先生のゼミにいたのですが、もっと設計をガシガシやっている先生のところで勉強したい、と思って武蔵工業大学(現・東京都市大学)の手塚研究室に入りました。面白い人が多くて、いつもにぎやかでしたね。卒業後はそのまま手塚建築研究所の所員として働き始めました。組織で働くのはあまり向いていないと思うので、アトリエ系の事務所で働くというのはごく自然な選択でした。-手塚建築研究所ではどんな仕事をされていたのですか?「大変すぎてあまりその頃の記憶がないんですが(笑)箱根の「彫刻の森美術館」にある「ネットの森」を担当したときのことはよく覚えています。金物を使わないで組んでいくので、何度も何度も模型をつくってそれを図面に起こして構造解析して、ということを繰り返しました。なかなかできない経験をさせてもらったと思っています。-ご両親はどんなお仕事を?父はごく普通の会社員です。母は声楽をやっていたので音楽が好きで、本当は僕に音楽をやらせたかったようなんですが、あまり興味を示さず(笑)途中で方向転換して建築をやらせようと思ったみたいです。母に安藤忠雄さんの「光の教会」の写真を見せられたり、テレビで『建てもの探訪』を見たり、ということをするうちに次第に建築に興味が湧いてきた、という感じです。ちょっとしたマインドコントロールですね(笑)。今思えば、父も自分とは違う芸術方面の仕事をさせたかったのかな、と思います。芸術系なのかガテン系なのかはわかりませんが。-独立のきっかけは?とくに「独立しよう!」と意気込んでしたわけではないのですが、実家をリノベーションすることが決まって、その実家を見た知り合いからまた仕事の依頼が来て、という感じで、引くに引けなくなったというのが実情です(笑)。

Future&More...
建具などのパーツ類を商品化することで新しい建築のあり方を提案していきたい


-仕事をするときに心掛けていることはありますか?例えばマンションのリノベーションの場合、南側より北側が明るい、という場合もあるので、そういうことを見逃さないようにしています。それとできるだけ長くその場所に身を置いて、風の流れや朝と夜の光の違いを感じたり、環境の特徴をつかむことを大切にしています。実測もかなり細かくやる方だと思います。-今後はリノベーションをメインでやっていく予定ですか?とくに新築とリノベーションを分けて考えてはいません。新築の場合も結局はその環境をどうリノベーションするか、ということでもあるので、新築でもリノベーションでもやるべきことはそれほど変わらないと思っています。「リノベーション」って最近になって生まれたものではなくて、日本では神社仏閣をはじめ、建物が古くなってきたら直して大切に使う、ということは昔から行われてきたことですよね。そういう普遍的な価値観を大切にしていきたいと思っています。-静かな野望があるそうですが開発パートナーとして関わった木製引き戸や木のツマミをR不動産の「tool box」で販売しているのですが、もっといろいろなパーツを手掛けていきたい。そういうものがジワジワ広がってくことで、建築家がガッチリつくり込んでいくだけではない、建築のあり方が生まれていったら面白いなと思うんです。1つのプロジェクトでつくったものがそこで終わりじゃなくて、他のプロジェクトにも応用したり、商品化していけたら、いい循環が生まれる気がします。

藤田雄介|Camp Design inc.|リライフプラス連載|リノベーションお役立ち情報|HOME'S/ホームズ

R不動産が手掛ける「tool box」で販売している木製引き戸(写真左2点)と「木のつまみ」(写真右)。いずれも藤田さんが開発パートナーとして携わった

藤田雄介|Camp Design inc.|リライフプラス連載|リノベーションお役立ち情報|HOME'S/ホームズ

友人の木工作家・西本良太さんがデザイン・製作を手掛けるちりとりとコーヒーフィルターホルダー。シンプルかつ機能的でありながら、ぬくもり感もある

藤田雄介|Camp Design inc.|リライフプラス連載|リノベーションお役立ち情報|HOME'S/ホームズ

愛読書だという、Bルドルフスキー著『人間のための街路』(写真右)。「古今東西の街路についての本ですが、日常的な光景である街路が論理化されて、改めて言葉として読むことで、さまざまな気付きがあるんです」と藤田さん。左はホンマタカシさんの写真集

-仕事以外で好きなことは?写真は見るのも撮るのも好きですね。大学時代は写真部で部長もしていました。現場でもよく写真を撮ります。撮ることで気づくことって結構あるんですよね。見るほうで言うとホンマタカシさんの写真は好きです。誰も撮らなかったようなニュータウンの写真を見て、こんな風景の切り取り方があるのか、と驚きました。-最後に、現在進行中のプロジェクトについて教えてください都内の築50年近い団地の一室のリノベーションが進行中です。塗装の下地などに使われる寒冷紗(かんれいしゃ・綿または麻で粗く編んだごく薄い布)を使った網戸で部屋を仕切る予定です。「柱間装置」(柱の間に設けられた建具や窓などのこと)という、日本で昔から使われてきた手法に近い考え方なんですが、季節や用途に合わせて建具を使い分ける、というようなことを提案できたらと思っています。

藤田雄介|Camp Design inc.|リライフプラス連載|リノベーションお役立ち情報|HOME'S/ホームズ

旭川にある高橋工芸のカップ。「北海道に行ったときにたまたま見つけて。1本の木をくり抜いてつくられているそうです。軽いし、熱を通しにくいので、熱くても冷たくても持てるすぐれものです」

撮影/山田耕司 聞き手/『リライフプラス』編集部 君島喜美子

『リライフプラス』ブログ http://blog.livedoor.jp/relifekk/

『リライフプラスvol.15』(扶桑社刊)|リライフプラス連載|リノベーションお役立ち情報|HOME'S/ホームズ

『リライフプラスvol.15』(扶桑社刊)好評発売中!

『リライフプラスvol.15』(扶桑社刊)好評発売中!

work01 花畑団地27号棟プロジェクト


花畑団地27号棟プロジェクト|藤田雄介(Camp Design inc.)|リライフプラス連載|リノベーションお役立ち情報|HOME'S/ホームズ花畑団地27号棟プロジェクト|藤田雄介(Camp Design inc.)|リライフプラス連載|リノベーションお役立ち情報|HOME'S/ホームズ花畑団地27号棟プロジェクト|藤田雄介(Camp Design inc.)|リライフプラス連載|リノベーションお役立ち情報|HOME'S/ホームズ1フロアに2戸で5階建て、全10戸がすべて角部屋の「ボックス棟」と呼ばれる建物を丸ごとリノベ。室内に居ながら屋外の心地よさも感じられる「ルームテラス」を設けたのが特徴的。木製の建具を取り入れたことによって、室内だけでなく、外観の印象も大きく変化した。400点以上の応募作の中から見事グランプリを獲得し、2014年3月に竣工した。

所在地:東京都足立区
専有面積:39~40㎡
戸数:10戸
築年:1966年 竣工:2014年3月
施工:江州建設
撮影:長谷川健太


work02 袖壁の住宅


袖壁の住宅|藤田雄介(Camp Design inc.)|リライフプラス連載|リノベーションお役立ち情報|HOME'S/ホームズ袖壁の住宅|藤田雄介(Camp Design inc.)|リライフプラス連載|リノベーションお役立ち情報|HOME'S/ホームズ正面が全面バルコニーで東西に細長い間取りを、袖壁で仕切ることによりさまざまな機能を持った空間がワンルームの中に共存するユニークなプラン。浴室とトイレ以外は建具がないのでぐるりと回遊できるが、袖壁でほどよく仕切られているのでオープンになりすぎず、絶妙なバランスで空間が見え隠れする。

所在地:東京都西東京市
専有面積:50.22㎡
築年:1976年 竣工:2014年
施工:河行工務店
総工費:約750万円
撮影:川村麻純


work03 日吉の住宅


日吉の住宅|藤田雄介(Camp Design inc.)|リライフプラス連載|リノベーションお役立ち情報|HOME'S/ホームズ日吉の住宅|藤田雄介(Camp Design inc.)|リライフプラス連載|リノベーションお役立ち情報|HOME'S/ホームズ家のほぼ中心を木製ガラス戸でタテに仕切った。引き戸をすべて開け放してオープンに使うことも、閉めて個室として使うこともできるフレキシブルさが魅力。建具は用途によって枠やガラスの素材を変えているのも注目すべき点。

所在地:神奈川県港北区
専有面積:62.39㎡
築年:2003年 竣工:2011年
施工:HandiHouse Project
総工費:約500万円(設計料別)
撮影:HATTA


work04 翠ヶ丘の住宅


翠ヶ丘の住宅|藤田雄介(Camp Design inc.)|リライフプラス連載|リノベーションお役立ち情報|HOME'S/ホームズ翠ヶ丘の住宅|藤田雄介(Camp Design inc.)|リライフプラス連載|リノベーションお役立ち情報|HOME'S/ホームズ藤田さんの両親が新築で購入し、転勤のため長年賃貸に出していたマンションを、両親が再び住むためにリノベーション。既存の壁との間に空間を設けてシナ合板で壁をつくり、その壁が南北の部屋をつないでいる。玄関脇のスペースを「ルームテラス」とし、床材を貼り分けることで、室内でありながら戸外のような雰囲気をつくり出している。

所在地:兵庫県芦屋市
専有面積:81.46㎡
築年:1987年 竣工:2010年
施工:キョーワテクノ
総工費:約750万円(設計料別)
撮影:HATTA