アンティーク塗装やエイジング加工により、時を感じる空間に


リノベーションを前提に、勤務先の近くに中古マンションを購入したDさん。ひとり暮らしにちょうどよい広さでしたが、築46年のため内装や設備は劣化、天井高も低く、さらに浴室と洗面室が一緒など、ライフスタイルに合わない間取りが気になっていました。理想は、「古い洋館のように趣き深い空間」いうことから、素材の使い方や見せ方にこだわり、経年で自然に魅力を増したような住まいをつくりました。「開口枠や巾木には濃げ茶の木を使いたい」というリクエストに、デザイナーのオリジナリティをプラス。額縁のようなデザインの開口枠を、木目模様や色むらを残しながらアンティーク塗装することで、この家を何十年も見守ってきたようなどっしりとした風格を与えました。ゲートのようなたたずまいが、リビング・ダイニングに重厚感をもたらします。開口枠だけでなく、巾木や建具も同様にアンティーク塗装。クロゼットの扉は海外の既製品ですが、オリジナルの塗装と仙徳色のツマミを取り付けたことにより、コストダウンを図りながらオーダーメイドのような上質感を出すことができました。床はエイジング加工を施したオーク無垢材をヘリンボーンに張り、上質感と経年変化を感じさせるフローリングに。グリーンを並べる予定の窓際は、清掃性の高いタイルを採用しました。ワンルームのような単一の空間は、床材を貼り分けることによって心地よい変化をもたらしています。
(写真左)アンティーク塗装を施した開口枠やクロゼットの扉、建具が空間をノスタルジックに彩る (写真中)天井材を撤去して天井高をアップ。 コンクリート躯体を直接白く塗装し、表面の傷や凹凸を見せている (写真右)ハンドメイドで削り込まれた無垢フローリングを、ヘリンボーン張りに。 クラシカルな印象がアップ

(写真左)アンティーク塗装を施した開口枠やクロゼットの扉、建具が空間をノスタルジックに彩る
(写真中)天井材を撤去して天井高をアップ。コンクリート躯体を直接白く塗装し、表面の傷や凹凸を見せている
(写真右)ハンドメイドで削り込まれた無垢フローリングを、ヘリンボーン張りに。クラシカルな印象がアップ


“暮らし”を楽しむための、たくさんの小さなこだわり


ひとり暮らしのため、余分な個室やクロゼットは不要だというDさん。限られたスペースを少しでも広く使えるよう、リビング・ダイニング・寝室を一つの空間にまとめました。ベッドスペースは、空間のテイストを損なわないようシンプルなファブリックをご提案。ベッドサイトには、エイジング加工を施したソケットライトを2つ。小さくひっそりとした光は、就寝前の静かなひとときにぴったりです。ベッドの向側にはアンティークの机やトルソー、小物を配置。Dさんのイメージに合わせ、ちょっとしたストーリーを想像させるようなスペースに仕上げました。もともとオープンだったキッチンは、「ゲストが来ても見えないように」と独立型をご希望。スペースを確保するために大きく移動し、キッチンを囲う壁を設けました。壁の一部には白いタイルを目地なし突付けにし、清潔ですっきりとした印象に。油汚れをさっと拭き取りやすいこともメリットです。ステンレスのコンパクトキッチンを使って、すっきりとスタイリッシュに仕上げたキッチン。一方、乳白色のやわらかな光を届けてくれる丸いブラケットライトや、アンティーク塗装をほどこした巾木からは、なつかしい温もりを感じることができます。実用性の高めつつ、居室と同じような趣をプラスし、邸内全体の印象を統一しました。
(写真左)躯体に直接塗装した壁。 クロスよりもシャープな印象で、無垢のフローリングや巾木の質感を引き立てる (写真中)アンティークの家具や雑貨が溶け込む。 これから少しずつアイテムを増やしていく楽しみも (写真右)清潔感のただようキッチン。味わいのある素材や照明を使い、居室とイメージを合わせた

(写真左)躯体に直接塗装した壁。クロスよりもシャープな印象で、無垢のフローリングや巾木の質感を引き立てる
(写真中)アンティークの家具や雑貨が溶け込む。これから少しずつアイテムを増やしていく楽しみも
(写真右)清潔感のただようキッチン。味わいのある素材や照明を使い、居室とイメージを合わせた


ディテールこそ大切に。どこから見ても統一性のある空間


壁にはキッチンと同じタイルをダークグレーの目地で貼り、馬目地に貼ったタイルの印象を深めています。間取りや排水の関係から採用することとなった据え置き型のバスタブは、タイルの壁とマッチし、レトロな空気感がたっぷり。洗面台のミラーは現場でアンティーク塗装、その上にはキッチンと同じ丸いブラケットライト。一方で、床にはグレーのモザイクタイル、洗面台は実験用のプレーンなシンクを使うなど、部分的に素っ気ないアイテムや素材を取り入れることで、アメリカン・ニューシネマのようなクールな空間に。洗面室とWCの建具は、海外の既製品にアンティーク塗装を施したオリジナルです。木目模様や凹凸、色ムラが残る木の風合いや、歪んだレトロガラスによって長年培ってきたような風格が生まれ、空間のなかでも一際大きな存在感を放っています。もちろん、建具の枠も同様にアンティーク塗装しました。廊下に敷いたタイルは、リビングの窓際と同じタイプ。ひとつひとつ形や色合い、大きさが異なるタイルをデザイン貼りにしました。抽象画のようにやわらかな表情を見せるタイルと、重厚で趣きのある建具は、同じ時代を過ごしてきたようにぴたりと調和。素材や設備のディテールにこだわることで、どの角度から見てもノスタルジックな空気を感じられるようになっています。
(写真左)もともと洗面室とバスルームが同一空間にあり使いづらかったため、今回のリノベーションで分けた (写真中)アンティーク塗装を施したWCの扉は、ドアノブに真鍮を取り付けたことで上質感が生まれている (写真右)壁付けの丸いライトはキッチンと同じタイプ。素朴な形と乳白色の光が空間をやさしく包む

(写真左)もともと洗面室とバスルームが同一空間にあり使いづらかったため、今回のリノベーションで分けた
(写真中)アンティーク塗装を施したWCの扉は、ドアノブに真鍮を取り付けたことで上質感が生まれている
(写真右)壁付けの丸いライトはキッチンと同じタイプ。素朴な形と乳白色の光が空間をやさしく包む