出会ったのは決して『魅力的』ではない建物
JR大阪駅からひと駅、福島駅をおりると「聖天通商店街」があります。
にぎやかな商店街を抜けて街が落ち着いた雰囲気に変わったあたりにこの建物は建っていました。
築年不詳……、おそらく昭和20年代の木造3階建て。
商店、その後住居として使われていたこの建物は、年月の経過の間に増改築が繰り返され、決して「この建物に住みたい!」と思えるような代物ではない売り物件でした。
大阪の都心にあふれる、こういった建物。
「このままでいいの?」という思いから、リノベーションの企画がはじまりました。

大阪の街によくある一軒家。密集地ゆえに解体も難しい。そんな売り物件でした
この街で暮らすなら……『寄り合い土間』
オフィス街のすぐ隣に元気な商店街があり、さまざまな用途の建物が入り混じる。
大阪の街のひとつの特徴です。
とはいえ、時代の流れの中で商店街のかげりが言われて久しい。
実はそこが狙い目で、「人が来やすく、家が街の一部」という側面にしっくりいく都心居住のかたちがあるはず! …そう直感しました。はじめに思いついたのは街と家の合間、1階の土間(通称:寄り合い土間)でした。
外部とつながる約10畳のマルチスペースにつながるこの空間。
収納…? アトリエ…? 商店街らしくホームオフィスや小さなショップ…?
どう使ってもいい、リノベーションならではの提案です。

街に開かれたマルチスペースと、その奥の寄り合い土間。住まい手の『自分勝手』な空間です
縦空間のつながりが生んだ開放感
縦空間の自由な展開が戸建てリノベーションの面白さ。
nLDKに何人家族で住むかではなく、95㎡をどう使っていくか。
新築では出せない味がでた柱や梁、じゅらくの壁や欄間などは再利用。
素材感のあるタイルや、作家の手作りの大胆な柄の襖などをアクセントにコーディネートしました。

縦空間のつながりが開放感と空間の面白さを引き立てます。異素材をミックスして空間に奥行きを持たせました
大阪都心居住リアルケーススタディ
凝りに凝ったデザインではなく、住まい手が自分らしい住まいづくりを思いっきり楽しめる、余白のある住まい。
職⇔住、街の人⇔よその人、いろんな要素が混じり合う大阪らしさあふれるこの立地で、大阪の都心居住のリアルなあり方を模索しました。(Crafts House 2012)

