みなさん、野菜や果物はいつもどこで買っていますか? 京都には、旬の食材を数多く揃え、毎日の食卓を支えている八百屋さんがあちこちにあります。市場や農家から直接仕入れているため、品質や鮮度が高いのが八百屋さんの強み。今回は4つのお店を取材し、それぞれのこだわりや想いをうかがいました。
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創業90年以上。市場との繋がりを大切にしながら、地元の農家から仕入れるやり方をミックス—西喜商店—

JR丹波口駅から歩いてすぐ、青果や水産物などが集まる京都市中央市場。その近くにあるのが、大正時代末期に創業した「西喜商店」です。現在4代目として店を切り盛りするのは近藤貴馬さん。実は、以前は東京のゲーム会社で働いていて、店を継ぐ気はまったくなかったのだそう。
「いつからか、自分の力で地域に貢献できる仕事がしたいという想いが湧いてきて。そのときに、家業が八百屋だったことを思い出したんです(笑)。野菜を売って、誰かの役に立つような仕事がしたいと、継ぐことを決意しました」

京都中央市場の場外売店として、野菜やフルーツのほとんどを市場から直接仕入れている同店。近藤さん曰く、仕入れにはこれまで先代が積み重ねてきた経験や知識が活かされているのだとか。「市場に何十年も出入りしているので、この時期のこの産地のものは品質がいいという目利きはあります」。加えて、市場内の業者との厚い信頼関係も同店の強み。品質の良し悪しに加えて、価格変動などの情報交換を常に行っています。

近藤さんは店を継ぐ前の2年間、地域農産物の販売支援を行う会社で働いていた経験も。そのネットワークを活かし、地元の農家から直接仕入れた野菜も扱っています。「先代まで農家さんとのつながりはまったくなくて、僕の代で始めました。市場から仕入れる昔ながらの八百屋の在り方と、直接農家さんから仕入れるやり方をうまくミックスさせることを目指しています」
近藤さんが店を継ぎ、新しく始めたことはほかにも。京都市内のコミュニティキッチンを使って、旬の野菜や、流通で生じる行き場のない野菜を活用した料理イベントを開催。初めて会う人同士でも、料理をすることで会話が生まれ、新たな出会いのきっかけになっています。

「小さい店だからこそ、お客さんとの会話がすごく大事。今日おすすめの野菜はどれだとか、同じ野菜でもいろいろと種類があるなかでどれが美味しいとか、そういうのを教えられるのが僕らの強み。お客さんには、せっかく八百屋に来るなら、会話しながら美味しい野菜を買ってほしいなと思います」。また、個人商店が減少していくなか、多様性が大事だとも。「大手の店だけではなく、小さなお店で買い物することが、これからの社会で必要だと感じています。僕たちの子どもの世代にも、こういう昔ながらの個人商店が続いていってほしいです」。買い物を通じて生まれる、人との繋がりを大切にしています。
■西喜商店
京都市下京区朱雀分木町市有地
JR嵯峨野線「丹波口」駅下車 徒歩約9分
営業時間 9:30〜17:30
定休日 水・日曜、祝日
農家の想いが詰まった“Farm Spirit”をお客さんに届けたい—やおやONE DROP 北大路店

地元のお客さんが次々と入店していくこちらは、小谷亘さんと遼子さんが夫婦でオープンした「やおやONE DROP 北大路店」。場所は自然豊かで、住宅街が広がる京都市北区。2006年に京都市左京区・下鴨のガレージで野菜の販売を始め、現在の場所に移転したのは2012年のことです。
同店には3つのコンセプトがあります。一つは、直接農家から仕入れた野菜を扱う“産地直送”。生産者と実際に会って話をすることで、見えてくることがあると遼子さんは言います。

「農家さんと話してみると、良いものをつくりたいという意識や、どんなこだわりを持ってやっているのかがわかる。それがつくるものにも反映されているなと感じます」。この農家の想いを、同店では“Farm Spirit”と呼んでいます。「気持ちが伝わってくると、私たちも頑張って売りたいなと思いますし、お客さんにもその良さを伝えたくなる。農家さんの顔が見えることで、お客さんに自信をもっておすすめできますしね」
2つめは、できるだけ近くにいる農家から野菜を仕入れる“ローカル”。「地元で揃わないものは遠地からも仕入れますが、近くで頑張っている農家さんをできるだけ応援したいと思っています」

3つめは、できるだけ農薬や化学肥料に頼らない野菜を扱うこと。ただ、店を始めた当時とは考え方が変わってきたと遼子さん。「かつて八百屋を始めたばかりの頃は、有機野菜を販売することが環境問題の解決に繋がるのではと考えていました。しかし、いろいろな農家さんの野菜に出合っていくなかでそうとは言いきれないな、と徐々に考え方が変わっていったんです。今は農薬や化学肥料への依存をできるだけ減らそうと、工夫を凝らして模索し続ける姿勢が大切だと思っています」
考え方が変化し、現在は取り扱う商品の幅も広がったそう。「有機栽培にこだわることに、だんだんつじつまが合わなくなってきて。野菜を取り扱う上で、最も大切にしたいのは“つくり手の魂がこもった野菜を届けること”なのに、農薬使用の有無に縛られてしまうことに葛藤がありました。今は栽培方法や農業スタイルはさまざまであることが当たり前という考えから、有機野菜だけでなく普通の栽培方法の野菜も取り扱っています」

2023年1月には、地下鉄京都市役所前駅の地下街に2号店「ゼスト御池店」をオープン。「北大路店は同じ場所で長くやってきたので、今度は新しいお客さんが待っている場所に出店したいと思い、ゼスト御池店をスタートしました。これからは2つの店舗をしっかり続けていきたいです」
■やおやONE DROP 北大路店
京都市北区小山初音町26
京都市営地下鉄烏丸線「北大路」駅下車 徒歩約6分
営業時間 11:00~19:00
定休日 日・月曜
環境負荷の小さな農業で育てた野菜やフルーツのほか、パンや加工食品なども—坂ノ途中soil—

京都駅の南西に位置する東寺。そこから南へ数分歩いていくと、店の入り口にいくつもの植物が並べられた「坂ノ途中soil」が見えてきます。オープンは2011年8月。京都市南区に本社を置き、野菜の宅配サービスなどを行う「株式会社坂ノ途中」が運営しています。
「最初はここが本社で、出荷作業などをしていたのですが、野菜を販売してほしいというお客さんからの声があって。そこで一部を販売スペースにしたのが始まりです」と教えてくれたのは、店長の谷口ゆかりさん。

坂ノ途中で掲げているコンセプトは、「100年先も続く、農業を。」。環境への負担が少ない農業に取り組む人々を増やして、持続可能な社会を目指していきたいという想いから、次の5つの基準をクリアする農家の作物を優先的に取り扱っています。
1.環境への負荷を低減する農業を目指していること
2.農業者としての基本的なスキルがあることに加え、農産物の品質向上を目指していること
3.地域、社会、農業に貢献するなど、尊敬できる姿勢を備えていること
4.新規就農や小規模の農家など、環境への負担低減を目指して農業を行っていること
5.対面や非対面を問わず、野菜の状況などを把握できる密なコミュニケーションが取れること

さらに店内には、調味料や加工食品などもズラリ。無添加のものや、野菜がより美味しくなるものを、という視点で谷口さんがセレクトしているそう。「お客様から『こういうの置いてほしい』というリクエストをいただくことがとても多くて。ご要望に少しずつ応えていったら、今のようになりました」

このほか、毎週木曜日にはパンも販売。お客さんの「添加物が入っていないパンが欲しい」という声から取り扱うようになったそう。「天然酵母 ひねもすぱん」(大阪府枚方市)の国産小麦と天然酵母を使ったパンが棚に並びます。お客さんの希望を叶える、幅広い品揃えも同店の魅力です。

お客さんが野菜を購入するときは、店奥にある貯蔵庫から出したものをお渡ししています、と谷口さん。「貯蔵庫はそれぞれの作物に合わせて温度管理をしているんです。ここで買って、実際に料理するまでには少し時間が空くと思うので、なるべく良い状態のものを食べていただきたいです」。美味しい野菜を、より良い状態で届けたいという同店の想いがうかがえました。
■坂ノ途中soil
京都市南区西九条比永城町118-2
近鉄京都線「東寺」駅下車 徒歩約5分
営業時間
月・水~金曜 11:30~13:30、14:30~18:00
土曜 11:30~18:00
定休日 火・日曜、第2・3月曜
元料理人がセレクト! いろいろな“美味しい”が揃う—八百屋みどりなす—

オフィスビルやショップが多く集まる地下鉄四条駅と五条駅の中間ほど。夕方になると多くの近隣住民が買い物にやってくるのが、松原通の住宅街にある「八百屋みどりなす」。2015年にオープンしました。
もともと料理人だったという店主の田村嘉章さん。「フレンチレストランで働いていたとき、伏見区の辻農園という農家さんがつくっているカブをサラダに入れて提供したことがあって。そのときにお客さんに、これってなんのフルーツですか?って聞かれたんです。そのお客さんの反応が面白くて、すごく印象に残っていました」
そんな美味しい野菜が揃うセレクトショップのような八百屋ができたらと思ったのが店を始めるきっかけだったそう。店名も、辻農園でつくられているミドリナスにちなんで名づけられています。

仕入れの基準は?と尋ねると、“美味しいもの”というのは大前提にあります、と田村さん。美味しいの中にも、さまざまな要素が含まれているのだそう。「一番わかりやすいのは甘さなのですが、美味しさはそれだけではないと思っています。旨味もそうですし、鮮度が良いものは食べたときに弾けるような、元気がある感じがする」。例えば大根の場合、甘みや辛み、そして煮たときに味が染みこみやすいものなど、同じ大根でも特徴はさまざま。どんな料理にするかによって、美味しいの基準は変わってくるのだそう。

さらに、料理人が喜ぶような珍しいものを揃えるようにしているのは、元料理人の田村さんならでは。「週1回、京都を拠点に活動する山野草研究家のバカボンさんが、その時期にベストな状態の野草を届けてくれています」。写真左のニセアカシアはマメ科の植物で、豆のような味がするのだとか。ほかのお店ではなかなか見かけない、珍しい商品です!

“美味しいもの”、そして料理人が使ってみたい!と思えるものを揃えている同店。ですが「まだ納得がいくものを集めきれてないんです」と田村さんは言います。
「仕入先の新規開拓はしていきたいなと思っています。それぞれの土地には、これをつくったら絶対に間違いない、という名人がいるんです。そんな人たちがつくるものをどんどん集めていきたい。お客さんにも、他の店とは違う美味しいものを食べてほしいので」
■八百屋みどりなす
京都市下京区松原通高倉東入ル杉屋町278
京都市営地下鉄烏丸線「四条」駅下車 徒歩約7分
営業日 12:00~19:30
定休日 日曜、祝日 ※祝日のない週の水曜は休み
先代が積み上げてきた市場との繋がりを大切にしていたり、農家さんの想いのこもった野菜を扱っていたり……。今回は個性豊かな八百屋さんをご紹介しました。またお店の方との会話が楽しめるのも、八百屋さんで買うことの魅力の一つ。今の時期のおすすめを聞いてみると、新たな野菜や果物との出合いが見つかるかもしれません。ぜひみなさんも、近くの八百屋さんに足を運んでみてくださいね。
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