日暮里駅は明治38年(1905)、東北線の上野~田端間に開業。現在も日暮里駅は、山手線ではなく東北本線に所属する駅となっています。しかし、日暮里は東北本線の駅にもかかわらず、日暮里駅には東北本線は停車しません。というより東北本線のホームがありません。ではどうして、東北本線の駅なのでしょうか。
今回は、日暮里駅の駅名の由来や歴史をひもとき、駅の出口によって異なる日暮里の魅力をご紹介します。
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日暮里は、実は山手線ではなく「東北本線」の駅!?

古レールを再利用した柱が目立つ11番ホーム
日暮里駅では戦後となる1945年以降、東北本線・高崎線の中・長距離列車は一切停車しない状態で、ホームはあっても使用されていませんでした。そして昭和52年(1977)、東北・上越新幹線のレールを新設するために東北・高崎線ホームが撤去されました。以来、「東北本線の駅なのに東北本線のホームがない」という状態となっているのです。
現在、日暮里駅のホームは、3番線・4番線ホームが常磐線、9番線・10番線ホームが山手線外回りと京浜東北線南行、11番線・12番線ホームが山手線内回りと京浜東北線北行となっています。ホームの番号に欠番があるのです。5番線・6番線と7番線・8番線は、撤去された東北本線・高崎線のホーム番号だったのです。
日暮里駅には京成電鉄の駅もあります。1番線・2番線ホームは京成電鉄のホーム番号となっているのです。
標高差は20m以上。山の手と下町の境界を走る

南改札からの跨線橋 標高差を感じさせる
山手線の上野駅~田端駅間は、武蔵野台地と荒川の洪水域の境界を走っています。上野から山手線内回り電車で日暮里方面へ向かうと、車窓の左側は高台の台地がずっと続きます。
この高台は、武蔵野台地の東北端となる「上野台」。一方、車窓右側は山手線よりもかなり低い平地が広がっています。こちらが旧荒川の洪水域であり、「東京低地」と呼ばれる一帯。両者の標高差は20m以上に及びます。
台地上の高台が「山の手」、低地が「下町」です。つまり、上野~田端間の山手線は「山の手」と「下町」の境界に沿って走っているのです。日暮里駅も、駅の南側は高台、北側は低地となっています。
日暮里駅の物件を探す 街の情報を見る おすすめ特集から住宅を探す常磐線の起点駅として開設された
日暮里駅は、常磐線との関わりで開業した駅です。常磐線は、1896年、日本鉄道土浦線として田端~土浦間に開業、その後水戸・いわき方面へ延伸していきます。これは、土浦線が、常磐炭鉱の石炭などを東京へ輸送することを主目的とした鉄道(旅客営業も行なう)だったことが理由でした。その東京側の起点は、当初は田端駅だったのです。
もともと上野~田端間の区間は、山手台地と下町低地の地形的境界に線路が敷かれていたため、田端駅が開設された場所も高台となりました。このため、土浦線は、低地から高台への勾配を登るため、スイッチバックで田端駅へ入線していました。スイッチバックとは、ジグザクに敷かれた線路を、列車が前進・後退を繰り返して進み、標高差を越えること。
三河島方面からやってきた土浦線の列車は、田端駅を通り過ぎるようにして停車、いったん逆方向に進んで坂を上って再び停車、そして進行方向を逆転させて田端駅に到着。そして、再び進行方向を逆転させて上野駅へ向かっていました。三河島は東京低地と呼ばれる標高の低い一帯で、上野台地に設けられた田端駅とは標高差があったため、こうした運転になったのです。
スイッチバックは前進と後退を何度も繰り返します。現在のような電車の場合であれば、前進・後退を繰り返すためには先頭車両と最後尾車両に運転士が移動する、あるいは運転士が交代するということでスムーズに行なうことが可能です。しかし、蒸気機関車が客車をけん引するという当時の列車では、機関車の付け替えが必要となり、時間がかかるのです。
開業当初の常磐線は貨物輸送が主体でしたから、こうした運転でも差しさわりはありませんでした。しかし、貨物列車はともかく、旅客列車では、駅が目の前なのにいちいち蒸気機関車を付けかえて前進・交代を繰り返すという時間のロスが嫌われます。そこで1905年、三河島から大きくカーブをするように新たな線路を敷設して、日暮里駅を新設。三河島~日暮里間に新たなルートを設け、スイッチバック運転による客車の運転は廃止され、進行方向を変えずに上野へ向かうようにしたのです。日暮里駅はこのような事情から新設されたのでした。
日暮里~三河島間は曲率半径(曲線のある場所の曲がり具合を表す指標の一つ)約350mという、全国的に見ても稀な急カーブとなっていますが、これはすでに線路が敷設されているところに逆方向への線路を無理やりに敷設せざるを得なかった事情によるものです。
「日暮しの里」と日暮里駅
日暮里駅はこうした事情で開設されたため、建設された場所も、常磐線から急カーブで東北線に接続する地点となりました。
「日暮里」の地名は、一説によると江戸時代から伝わる「日暮しの里」に由来する、といわれます。風光明媚で、料亭などもあって昼ひなかから三味線の音が絶えず、一日中遊んでいても飽きることがない、朝から日暮れまで退屈しないといわれたのが地名の由来。
その「日暮しの里」に近いことから駅名は「日暮里」とされたのですが、実際の「日暮しの里」は現在の西日暮里駅付近になります。日暮里駅が開業した当時は日暮里駅から至近距離に新駅(西日暮里駅)が設けられることは想定していませんでしたから、日暮里駅の駅名が江戸時代の「日暮しの里」に由来しても不思議はありませんでした。
日暮里駅の物件を探す 街の情報を見る おすすめ特集から住宅を探す駅前に広がる寺町と霊園

駅の西側は谷中霊園
日暮里駅の改札口は南改札と北改札の2か所。南改札は線路やホームを見下ろす跨線橋に通じ、北改札は改札口の外で西口と東口に分かれています。西口を出ると台東区、東口に出ると荒川区。それぞれに歴史も雰囲気も異なる街が広がっています。
特に駅の西側の上野台と呼ばれる台地には、江戸時代から寺院が集まった寺町を形成しており、現在も寺町の風情と谷中霊園とがあって閑静な雰囲気を醸し出しています。
猫が似合う谷中

観光客でにぎわう谷中銀座
駅西口を出ると、道路は標高の高い上野台へ登っていき、その先で下り坂になります。上野へ続く台地と、本郷に連なる台地の間に、かつて藍染川という川が流れていました。この藍染川によって造られた谷間が、古くから「谷中」と呼ばれてきたのです。
日暮里駅から歩くと、坂道を上って数分で視界が開けた場所に出ます。眼下には「谷中銀座」の商店街、その商店街へ下りていく階段は「夕やけだんだん」と名付けられた夕日の名所です。東京都心に近い場所とは思えない、どこか懐かしい雰囲気を感じさせる風景です。
階段を下りたところから続く谷中銀座商店街には、個人商店を中心に、様々な業種の約70店舗が全長170mほどの短い通りに建ち並んでいます。下町情緒あふれる商店街ということで、商店街そのものが観光地になっており、商店街としても街のキャラクターに黒猫の「せん」を決め、猫のストリートファニチャーを設置するなど「猫に会える街」として、観光客や散歩を楽しむ人々にアピールをしてきました。
ちなみに2016年2月の調査で、2月26日(金) 9258人、2月27日(土)1万4183人が谷中銀座を訪れており、観光シーズンとは言えない時期にこれだけの集客ができるということは驚くべきことといっていいでしょう。

谷中銀座の猫のストリートファニチャー
イメージキャラクターが黒猫ということで、商店街の各店舗の店先にも、招き猫や猫のぬいぐるみが置かれていたり、商品に猫がデザインされたものが目についたりと、商店街全体で猫をフューチャーしているのがわかります。猫グッズの専門店も少なくありません。
また、商店街で設置した木彫りの猫のストリートファニチャーが、道端や屋根の上など7体あって、「七福猫」と呼ばれており、これらを捜し歩くのも猫好きには楽しみなのだとか。
もちろん、生きている猫もいます。いわゆる「外飼い」の猫や、ボランティアの人によって避妊処理などをされたいわゆる「地域猫」など。猫に出会える路地裏は谷中の魅力の一つかもしれません。
日暮里駅の物件を探す 街の情報を見る おすすめ特集から住宅を探す再開発と新交通システムの東口

日暮里・舎人ライナーが頭上を覆う東口
日暮里駅東口は、高層マンションと新交通システム「日暮里・舎人ライナー」の高架線が目立つものの、駅を少し離れるだけで下町特有の雑多な雰囲気が漂います。
駅前のロータリーには太田道灌の騎馬像。太田道灌は室町時代(15世紀半ば)の武将で、日暮里には出城の一つだったといわれる道灌山があります。
日暮里繊維街

日暮里繊維街
駅の東側では、日暮里繊維街が知られています。駅南改札から跨線橋を東側に進むと、上野台地との標高差を如実に物語る長い階段があって、そこから日暮里中央通りに向かうと「日暮里繊維街」のモニュメントが見えてきます。
この通りの両脇に約1㎞にわたり80を超える生地織物の店舗が軒を連ねるのが、「日暮里繊維街」です。生地や反物、紳士・婦人服地、子供服、繊維製品、ボタンなど服飾関連の小物や付属品など、生地織物に関する様々な品が売られています。
このあたりは江戸時代には田んぼや畑が広がる農村地帯でした。一方、江戸時代から明治にかけて、浅草周辺では古着店などが集まっていたようです。こうした店が、区画整理や周辺の市街地化に伴って、大正時代に日暮里周辺に移転してきたのが始まりといわれています。
このように駅の西側と東側とで雰囲気がまったく異なっています。これもまた、日暮里という街の魅力でしょう。
日暮里駅の物件を探す 街の情報を見る おすすめ特集から住宅を探す更新日: / 公開日:2017.10.29










