賃貸物件の更新書類を見て「いつの間にか家賃が上がっている」と驚いた経験はないでしょうか。あるいは、一方的な「値上げのお知らせ」が届き、戸惑っている方もいるかもしれません。
結論からお伝えすると、借主の同意がない「通知なしの家賃値上げ」や「一方的な値上げ」に法的な拘束力はありません。家賃の改定は、貸主と借主の双方が合意して初めて成立するものだからです。
この記事では、通知なしの家賃値上げがなぜ認められないのか、法律の背景から正しい対応方法まで、分かりやすく解説していきます。
トラブルに発展してしまった際の対処方法も解説していますので、万が一の不安に備え、ぜひ最後までお読みください。
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家賃値上げは「通知なし」や「事後報告」でも有効?

「勝手に家賃を上げられた」と感じたとき、まず気になるのは、従わなければならないのか、法的に有効なのか、という点ではないでしょうか。
ここでは、通知なしや事後報告による値上げの法的効力と、思わぬ落とし穴について解説します。
結論:借主の「合意」がない値上げは無効
借主であるあなたが同意していない家賃値上げは、法的に無効です。なぜなら、賃貸借契約は貸主と借主の「合意」によって成り立っているからです。
家賃の金額も契約内容の一部ですから、その変更には当然、双方の合意が求められます。これは借地借家法という法律で明確に定められており、借主の権利を守るための重要なルールです。
つまり、事前の相談もなく更新契約書の金額だけが書き換えられているような値上げは無効であり、そのまま従う義務はないということを覚えておいてください。
気づかずにサインしてしまったら「有効」になる
ただし、ここで一点だけ注意が必要です。たとえ事前の説明がなかったとしても、値上げ後の金額が記載された書類に署名捺印をしてしまうと、その時点で「合意した」と見なされてしまいます。
これは、契約書へのサインが「書面に記載された内容に同意する」という意思表示だと法的に解釈されるためです。「よく読んでいなかった」「気づかなかった」という事情は、残念ながら考慮されません。
実際によくあるのが、更新書類の本文には「更新のご案内」としか書かれていないのに、賃料欄だけが従前より高い金額に変わっているケースです。
また、小さな文字の注釈や備考欄に「次回更新より賃料を改定」という文言が紛れ込んでいることもあります。
こうした事態を防ぐために、更新に関する書類が届いたら、まず「賃料」の欄を指さし確認する習慣をつけましょう。少しの手間が、大きなトラブルを未然に防いでくれます。
もし勝手に引き落とし額が増えていたら?
口座振替で家賃を支払っている場合、ある月から勝手に引き落とし額が増えていた、というケースもあり得ます。このような場合は、まず冷静に状況を確認することが大切です。
まず管理会社に連絡を取り、「いつから」「いくら」引き落とし額が変わったのかを確認してください。そのうえで、値上げの合意をした覚えがなければ、「合意していないので差額を返金してほしい」と明確に伝えましょう。
このとき、電話だけでなくメールなど記録が残る方法で連絡しておくと、万が一話がこじれた場合の証拠になります。
「〇月〇日に電話でお伝えしましたが」という主張は、相手に「聞いていない」と言われれば水掛け論になってしまうからです。

届いた「お知らせ(通知書)」の効力と対応

では、実際に家賃値上げのお知らせが届いたとき、どう対応すればよいのでしょうか。
ここからは、届いた通知書の法的な意味と、受け取った後にとるべき正しい対応について解説します。
ポストに入っていた「お知らせ」は決定事項ではない
ポストに届いた「家賃改定のお知らせ」は決定事項ではなく、あなたが同意するまでは「提案」に過ぎません。
公的な書類のような体裁で届くと、「これに従わなければいけないのでは」と不安になる方も多いでしょう。しかし法的には、これは貸主からの「値上げの申し込み」であり、一方的に契約内容を変更する効力はないのです。
たとえば、「〇月〇日より、賃料を現行の8万円から8万5,000円に改定いたします」と書かれた通知が届いたとします。
一見するともう決まったことのように読めますが、これはあくまで提案に過ぎず、あなたが同意するまで値上げは成立しません。
届いた書類の体裁に惑わされず、「これは提案であって決定ではない」ということを覚えておいてください。
ただし「無視」し続けるのはNG!
ここで注意していただきたいのが、「法的効力がないなら放っておけばいい」という考えは危険だということです。
なぜなら、長期間にわたって何の反応も示さないと「黙認した」つまり「暗黙のうちに同意した」と判断されるリスクがあるからです。
特に、通知を受け取った後に増額した家賃をそのまま支払い続けてしまうと、「値上げを受け入れた」と見なされる可能性が高まります。
通知を受け取ったら、たとえ電話であっても「値上げには現時点で同意できません」という意思表示は必ず行ってください。できればメールや書面など、記録が残る形で伝えておくとより安心です。
更新通知書の「小さな記載」にも注意
更新の時期になると届く「契約更新のご案内」にも、注意が必要です。
一見すると更新手続きの案内だけに見えても、書類のどこかに「次回更新より賃料を〇〇円に改定」といった記載が紛れ込んでいることがあります。
メインの文章ではなく、欄外の注釈や備考欄に小さく書かれていることも珍しくありません。
「いつもの更新手続きだろう」と思い込んで中身を確認せずにサインしてしまうと、知らないうちに値上げに同意したことになってしまいます。
先ほどお伝えしたとおり、署名捺印をした後では「読んでいなかった」は通用しません。
面倒に感じるかもしれませんが、更新関連の書類が届いたら必ず隅々まで目を通し、特に「賃料」「家賃」といった金額に関わる記載がないかを確認する習慣をつけましょう。
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通知トラブルに巻き込まれたときの対処法

「合意していない」と伝えても話が進まない、管理会社が取り合ってくれないなど、困った状況に陥ったときはどう対処すればよいのでしょうか。
ここでは、トラブルが深刻化した場合の具体的な解決策を、段階別に紹介します。
電話で「聞いてない」と伝えるだけでは弱い
家賃値上げをめぐるトラブルが起きた場合、電話だけで抗議するのは得策ではありません。前述したように、電話でのやり取りは、記録が残らないからです。
「そんな通知は届いていない」「事前に説明を受けていない」と主張しても、相手から「いえ、お送りしました」「お電話でご説明しました」と言われれば、それ以上追及するのは困難になります。
こうした水掛け論を避けるためにも、トラブル発生時は必ずメールや書面など、記録が残る形で自分の主張を伝えるようにしてください。
たとえば、次のような内容を簡単に記すものでも構いません。
事前の通知を受けておらず、値上げに合意した覚えもございません。つきましては、従前の賃料での契約継続を希望します。 |
文面を作成するときは、感情的な表現は避け、事実を淡々と述べることを心がけましょう。冷静な姿勢を示すことで、相手も誠実に対応してくれる可能性が高まります。
どうしても話し合いが進まない場合は「内容証明郵便」
メールや書面で連絡しても話し合いが平行線をたどる場合は、「内容証明郵便」を用いた対応を検討してみてください。
内容証明郵便とは、「いつ」「誰が」「誰に」「どんな内容の文書を」送ったのかを、郵便局が公的に証明してくれるサービスです。
通常の郵便と異なり、「届いていない」「そんな内容ではなかった」といった言い逃れができなくなります。
具体的な文面やルールについては、以下の記事を参考にしてみてください。

また、内容証明郵便を送るという行為自体が、こちらの真剣な姿勢を示すことにつながります。
「法的手続きも辞さない」という意思表示になるため、それまで動かなかった相手が交渉に応じ始めるケースも少なくありません。
合意できないまま更新日を過ぎたら「法定更新」
値上げに納得がいかないまま更新期限が迫ってくると、「退去しないといけない?」と不安になるかもしれません。
しかし、更新日を過ぎてもこれまでの家賃でそのまま住み続けられる法律があるので安心してください。
これは借地借家法で、「法定更新」という制度として定められています。貸主と借主の間で合意に至らない場合、契約が自動的に更新されるというものです。
同意しないことを理由に退去させられることはないため、焦って値上げに同意するサインをする必要はありません。
もし更新を迫られたとしても、「まだ検討中ですので、後日回答します」と伝え、落ち着いて話し合いの場を持つことが大切です。
なお、法定更新後は「期間の定めがない契約」に切り替わりますが、これによって借主が不利になることは基本的にありませんので安心してください。

まとめ
家賃値上げは、貸主からの一方的な通知や、通知なしの事後報告では成立しません。あくまで借主の「合意」があって初めて有効になる、ということを覚えておいてください。
また、届いた「お知らせ」は決定事項ではなく貸主からの提案です。受け入れるかどうかは借主の意思に委ねられます。
ただし、無視を続けると「黙認した」と見なされるリスクがあるため、「合意できない」という意思表示を残しておくことが大切です。
万が一、話し合いがまとまらず更新日を過ぎてしまっても、法定更新によって従前の条件で住み続けることができる点も押さえておきましょう。
身に覚えのない値上げがあった場合は、焦らず冷静に、まずは「確認したい」と相談することから始めましょう。


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