賃貸借契約は、新生活を始める重要な一歩ですが、内容を十分に理解せずに進めてしまうと後々トラブルになることがあります。

特に敷金や原状回復、契約更新時の条件については、事前にしっかりと確認しておくことが大切です。

しかし、賃貸借契約書や重要事項説明書は専門的な内容が多いため、初めての方にとっては理解しづらいと感じることがあるでしょう。

この記事では、賃貸借契約で注意すべきポイントや、起こりやすいトラブル事例について具体的に解説します。

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賃貸借契約書は、部屋を借りる際に入居者(借主)と大家さん(貸主)の「権利」と「義務」を明確に定める重要な文書です。

 

具体的には、入居者が契約期間中に守るべきルールや、大家さんの対応義務が細かく記載されています。トラブルを未然に防ぐためには、これらの内容をしっかりと確認することが重要です。

 

特に「退去時の原状回復費用の負担割合」や「解約の際の連絡期限」などの条項については、事前に理解しておかないと、退去時に予想外の費用が発生したり、不利な条件を受け入れざるを得ない状況に陥ったりする恐れがあるため注意してください。

 

賃貸借契約に関連する書類として、「重要事項説明書」がありますが、これは賃貸借契約書とは役割が異なります。

  • 重要事項説明書:契約前に入居者に説明するための資料
  • 賃貸借契約書:大家さんと入居者の間で交わされる契約書

重要事項説明書は、契約前に入居者が物件や契約条件を十分に理解するための書類です。

 

不動産会社に所属する宅地建物取引士が「物件の構造や室内設備」「敷金・礼金の取扱い」などを入居者に説明する際に使用します。

 

一方、賃貸借契約書は、契約を正式に交わす際に利用される文書で、大家さんと入居者の権利と義務が記載されています。

 

重要事項説明書を確認せずに契約を進めると、後にトラブルに発展することがあります。物件や契約条件について疑問があれば積極的に質問し、不明点を解消しておくことが重要です。

 

ここでは、賃貸借契約後のトラブルを未然に防ぐために注意すべきポイントを3つ解説します。

 

敷金は、入居者から大家さんへの「預かり金」であり、契約終了後に基本的には返還されるものです。しかし、修繕費用や未払いの家賃に充当される場合があり、全額返還されないこともあります。

 

特に注意が必要なのは「敷金返還に関する特約」が契約書に記載されている場合です。

 

たとえば、契約書に「通常使用による損耗でも修繕費用を敷金から差し引く」といった条項が記載されている場合、通常の生活で生じる損耗に対しても費用を請求される可能性があります。

 

修繕費用として差し引かれる場合には、どの部分にどれだけの費用が充当されたのかを明細書で確認することが重要です。敷金の取扱いについて正しく理解しておけば、退去時に予期せぬ負担を回避できます。

 

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原状回復とは、賃貸物件を退去する際に、物件を借りた当初の状態に戻すことを意味します。

 

しかし、すべての修繕を入居者が負担する必要はなく、大家さんが負担すべきものと、入居者が負担すべきものが明確に分けられています。

 

具体的な内容は、以下のとおりです。

負担者

具体例

大家さん負担

日焼けによる壁紙や床の変色

家具設置による床やカーペットのへこみ

フローリングの通常使用による擦りキズ

入居者負担

タバコのヤニによる壁紙の汚れ

壁紙への落書きや大きな穴あけ

ペットによる柱や床のキズ

上記のように定められている場合があるため、入居者と大家さんそれぞれの負担範囲を把握しておくことが大切です。契約前にしっかり確認し、もし不明点があれば事前に解消しておきましょう。

 

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賃貸借契約の更新について、以下の内容が明確に記載されているかを確認することが重要です。

  • 更新料の有無
  • 更新料の金額
  • 更新料の支払い時期

また、更新時には経済状況や物価上昇などの社会的な影響により、家賃が値上げされる可能性があります。

 

多くの賃貸借契約書には「社会情勢により家賃が改定される可能性がある」といった条項が記載されているため、見落としのないよう注意してください。

 

家賃が上がる条件やタイミングについて、事前に大家さんや仲介会社に確認しておくことで、予期せぬ負担を防ぎ、契約更新時のトラブルを回避できます。

 

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賃貸借契約後に、予想外のトラブルに見舞われることがあります。ここでは、賃貸借契約後に起こり得るトラブルを3つ解説します。

 

敷金は本来、退去時に未納家賃や修繕費用を差し引いた残額が返還されるものです。しかし、不当に高額な修繕費用が請求されることで、敷金が返還されないトラブルが発生することがあります。

 

たとえば、「フローリングの多少の擦りキズ」「ドアの開閉時につく小さな擦りキズ」といった通常の生活で生じる損耗まで、修繕費に充当されるケースです。これらの費用については本来、大家さんが原状回復を負担するのが一般的です。

 

トラブルを避けるためには、大家さんに修繕費用やクリーニング費用の内訳を明細書で提示してもらい、内容を確認することが重要です。

 

さらに、契約書に記載されている特約条項を再確認し、不明点があれば不動産会社に相談することで、不必要な負担を避けられます。

 

退去時の原状回復に関して、経年劣化と入居者の過失による損耗の区別があいまいな場合、トラブルに発展する可能性が高くなります。

 

たとえば、経年劣化とみなされるべき「カーペットの日焼け」や「壁紙の自然な汚れ」などが、入居者負担の修繕費として請求されるケースです。

 

トラブルを防ぐためには、事前に賃貸借契約書や重要事項説明書をよく確認し、疑問があればその場で解消しておくことが重要です。

 

高額な請求が発生した場合には、すぐに承諾せず、不動産トラブルに詳しい専門家に相談することを検討しましょう。

 

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契約更新時には、借地借家法第三十二条に基づき、家賃が値上げされる場合があります。

借賃増減請求権

第三十二条

建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。

引用:e-Gov 法令検索|借地借家法第三十二条|借賃増減請求権

値上げが認められる主な理由は、以下のとおりです。

  • 不動産の資産価値の上昇
  • 景気の改善による物価の上昇
  • 現行家賃が近隣相場より低い場合

ただし、家賃改定には入居者と大家さん双方の同意が必要です。たとえば、近隣相場と比較して値上げ額が妥当でない場合、大家さんと交渉ができます。

 

また、契約書に更新料や改定条件が記載されている場合もあるため、内容をしっかり確認しておきましょう。

 

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賃貸借契約は、新しい生活を始めるうえで重要な手続きですが、内容を十分に理解していないとトラブルの原因となる場合があります。

 

敷金や原状回復、更新料の条件などについて不明点がある場合は、必ず契約前に確認し、納得したうえで契約を進めることが大切です。もし、不安があれば不動産会社や弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

 

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