自宅を事務所として利用している場合、家賃をどのように経費として計上すればいいのか迷う方も多いのではないでしょうか。

事業用の家賃を経費にするには「地代家賃」として適切に処理する必要があります。

この記事では、地代家賃の税区分や具体的な仕訳方法、事業経費として計上する際の注意点について解説します。自宅兼事務所として家賃を支払っている方や、経費として申告する際の計上方法を知りたい事業者の方は、ぜひ参考にしてください。

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自宅の一部を事務所として利用している場合、家賃の一部を「事業経費」として計上できます。

 

家賃の支払いは賃貸借契約に基づいて行われますが、居住用賃貸物件の家賃には消費税が課されないため、税区分は「非課税仕入」となります。

 

以下のように、事業用として利用する割合に応じて家賃の一部を経費として計上します。

 

50平米の部屋のうち25平米を事務所にしている場合

家賃

計上できる額

5万円

2.5万円

10万円

5万円

20万円

10万円

このように、事業用として利用している割合を正確に算出し、適切な税区分で処理することが重要です。正しい手順で経費計上すれば、確定申告もスムーズに進められます。

 

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自宅の一部を事務所として使用し、家賃を経費に計上する場合、事業用部分と私用部分の割合に応じて仕訳を行います。

 

たとえば、月額10万円の家賃のうち事務所部分が50%であれば、5万円分を事業経費として計上し、残りの5万円は私用部分として除外します。

 

具体的な仕訳例として、現金で支払った場合の記入方法は以下のとおりです。

借方

金額

貸方

金額

地代家賃(事業用)

50,000円

現金

100,000円

事業主貸(私用)

50,000円

このように、事業用部分を「地代家賃」として記入し、私用部分は「事業主貸」として処理します。家賃の支払いが口座振替の場合、貸方は「普通預金」に置き換えます。

 

仕訳のポイントは、事業用と私用の割合を正確に計算することです。割合は面積や使用時間に基づいて計算しますが、不明確な場合は合理的な根拠を基に決定しましょう。

 

税務署から根拠を求められる可能性があるため、計算の記録や賃貸借契約書は必ず保管しておくことが大切です。

 

12月に来月分である1月の家賃を前払いした場合、その支払いは「前払費用」として処理し、翌月に費用として計上します。理由は、支払い時点ではまだ翌月の使用分としての家賃であるためです。

 

具体的な仕訳例として、12月に10万円の家賃を前払いした場合の記入方法は以下のとおりです。

借方

金額

貸方

金額

前払費用

100,000円

現金

100,000円

1月になった段階で、費用として計上するための仕訳を行います。

借方

金額

貸方

金額

地代家賃

100,000円

前払費用

100,000円

このように、前払いした家賃は「前払費用」として資産扱いにし、翌月に費用計上します。

 

家賃を事業経費として計上する際は、税務上のルールや正しい計算方法を理解することが大切です。ここでは、注意点として3つのポイントを解説します。

 

繰り返しになりますが、家賃を経費として計上する場合、事業用と私用部分の割合を正確に計算する必要があります。

 

具体的には「使用している面積」や「使用している時間」など、合理的な基準に基づいて算出します。

 

たとえば、家賃が10万円で自宅全体の50%が事務所として使われている場合、計算は次のようになります。

 

■面積で按分する場合

家賃10万円 × 50% = 5万円

■時間で按分する場合

(1日24時間のうち事務所として9時間使用し、20日間稼働する場合)

・1ヶ月の総時間:24時間 × 30日 = 720時間

・事務所稼働時間:9時間 × 20日 = 180時間

・使用割合:180時間 ÷ 720時間 × 100 = 25%

 

経費として計上できる家賃

家賃10万円 × 25% = 2万5,000円

家賃の経費計上には事業用割合を正確に計算し、合理的な基準を示すことが不可欠です。

 

家賃を事業経費として計上する際は、使用割合や金額の根拠となる資料を必ず保管しておきましょう。税務調査では、経費按分の妥当性や根拠について詳細な説明を求められることがあるためです。

 

保管すべき資料は以下のとおりです。

  • 賃貸借契約書
  • 家賃支払いの証拠
  • 按分計算の根拠

たとえば、賃貸借契約書は事業用として家賃を支払っていることを証明し、家賃支払いの証拠は経費として処理するための実際の支払い記録となります。

 

また、按分計算の根拠は、事業用と私用部分の割合を合理的に説明するために欠かせません。

 

これらの資料をそろえておくことで、税務署からの指摘や確認にも適切に対応でき、事業経費として正しく家賃を計上することが可能になります。

 

確定申告には以下の2種類があります。

白色申告

・比較的簡単な手続きで所得を申告する方法

・帳簿付けの義務が最低限に抑えられているもの

青色申告

・複式簿記など正確な帳簿付けが必要となるもの

・最大65万円の特別控除や、赤字の繰越控除、減価償却の特例など、税制上のさまざまな優遇措置を受けられる

白色申告では、事業で使用する割合が50%を超えない限り、家賃を経費として認めてもらえません

 

所得税法施行令第96条に基づき、家事関連費は「主たる部分」が事業に使用され、かつ必要な部分を明確に区分できる場合に限り経費として計上が可能です。

 

ここでいう「主たる部分」とは、事業用の割合が50%を超えることを意味します。たとえば、自宅の50%超を事務所として利用している場合は経費として認められますが、45%の利用では対象外です。

 

一方、青色申告の場合は、事業使用の割合が50%以下でも、その割合に応じて経費として計上できます

 

事業割合が50%以下の場合は、税制上の優遇措置が多い青色申告への切り替えを検討するのもひとつの手段です。

 

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光熱費や通信費も、事業で使用した分については経費として計上できます。

 

ただし、家賃と同様に、事業用と私用部分を明確に分け、使用割合に応じて按分する必要があります。私用分は経費に含めず「事業主貸」としての処理が必要です。

光熱費の按分方法

事業スペースの面積や使用時間を基準に計算

通信費の按分方法

使用目的や事業用機器の割合に応じて判断

たとえば、家賃全体の30%を事務所として使用している場合、光熱費や通信費も30%を経費として計上します。また、仕事用のインターネット回線が1つだけある場合、その費用は全額事業経費とすることが可能です。

 

このように、光熱費や通信費は事業に使った割合を正確に計算し、適切に処理することが重要です。

 

家賃を事業経費として計上するには、事業用と私用部分を正確に区分し、適切な税区分で処理することが大切です。

 

地代家賃の仕訳や光熱費・通信費の計算方法を理解し、根拠となる資料をきちんと保管しておくことで、確定申告時のトラブルを防げます。また、白色申告と青色申告の違いを把握し、自分に合った方法で進めましょう。

 

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