フローリングは多くの賃貸物件で採用されている床材ですが、経年や木材の特性により、劣化や変形が見られるケースがあります。

今回は、賃貸物件でフローリングの「浮き」を見つけた際の対処法として、費用負担に関するルールや注意点をご紹介します。

フローリングのある物件

フローリングの「浮き」とは、何らかの原因で床材が部分的に浮き上がってしまった状態です。浮きが生じると、歩くときにきしむ音がしたり、表面に凹凸が生じたりするため、快適性や安全性が損なわれてしまいます。

浮きが生じる原因には、大きく分けて2つのパターンがあります。一つは、天然の木材が持つ調湿効果によるものです。

 

木材は、湿度に合わせて、湿気を吸収して膨張したり、放出して収縮したりする性質があります。木の特性上、伸縮は避けられないため、ある程度の動きが生じるのは考慮しておきましょう。

 

もう一つの原因は、経年劣化によるものです。表面のコーティングが剥がれる、床下に水漏れが生じるなど、木材がダメージを受けると、浮きにつながることがあります。

浮きはそのままにしておくと、さらに状態が悪化する恐れがあるため、注意が必要です。劣化が進み、万が一割れや剥がれが生じれば、ささくれや凹凸などによってケガをする可能性があります。

 

快適で安全な室内環境を保つために、浮きを発見した際は、できるだけ早い段階で対処しましょう。

 

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賃貸物件で発生したフローリングの浮きは、「原則として」貸主が補修費用を負担します。フローリングの寿命は、一般的に15〜20年程度とされており、経年劣化による浮きは入居者側に責任がないとみなされるため、補修は貸主側で行うのが基本です。劣化が進む前に、できるだけ早めに管理会社や貸主へ連絡し、対処してもらいましょう。早期発見・早期対処により、補修費用を抑えやすくなり、貸主の損失も最小限に抑えられます。

フローリングの浮きは原則として貸主が補修費用を負担しますが、状況によっては入居者が負担しなければならないケースもあるので注意が必要です。賃貸物件の補修費用は貸主と入居者の間で認識のズレが生じやすく、トラブルに発展するケースも少なくありません。

 

そこで、国土交通省は「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を定め、賃貸物件の補修に関するルールを明確化しました。ガイドラインを基に、賃貸のフローリングに関するルールを確認しておきましょう。

原状回復とは、「経年劣化による損耗(自然損耗)や通常の使用による損耗(通常損耗)を除き、借主が入居・使用する前の状態に戻すこと」を指します。賃貸物件の入居者には、退去時に原状回復を行う義務があります。

 

そのため、著しいキズや汚れ、破損などがあれば、退去時に入居者が修繕費用を負担しなければなりません。ただし、自然損耗や通常損耗に該当する場合は入居者に責任がないため、貸主が費用を負担することになります。

 

この際、自然損耗や通常損耗に該当するかが判断の基準となります。たとえば、家具の移動で付いたキズや汚れ、ペットの引っ掻きキズなどは、「通常の使用範囲を超えている」とみなされ、原状回復の対象となる可能性があります。国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、建物の各部位について、どこまでが「通常の使用」にあたるのかを詳しくまとめています。

床の通常使用による損耗の具体例

ガイドラインでは、床の「通常の使用と認められるもの」として、以下の具体例を示しています。

通常使用の損耗とみなされるもの

  • フローリングのワックスの剥がれ
  • 経年劣化によるフローリングの色落ち
  • 家具の設置によるへこみ・跡

経年劣化によるフローリングの浮きも、通常の使用による損耗と判断できるため、貸主が補修費用を負担するのが一般的です。

床の通常使用を超えた損耗の具体例

一方、次のようなケースでは、通常の使用を超えた使い方による損耗とみなされます。

通常使用を超えた損耗とみなされるもの

  • 引越しや物の移動で付いたキズ
  • 借主の不注意によるフローリングの劣化

入居者の故意・過失による損耗は、入居者側に責任があるため、補修費用を負担しなければならない可能性があります。たとえば、窓を開けたまま数日間外出し、雨が吹き込んでフローリングが浮いてしまった場合などは、入居者が費用を負担する可能性が高いでしょう。

 

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フローリングの浮きを発見した際は、適切な対応をとることが重要です。補修を自分で行うリスクや注意点について見ていきましょう。

賃貸物件では、建物や設備は貸主の所有物であるため、貸主の許可を得ず勝手に修理を行うことは原則としてできません。水道管の破裂など緊急性が高い場合に限り、入居者による修理が認められることもありますが、フローリングの浮きについては、緊急性が高いと判断される可能性は低いでしょう。

 

また、仮に自分で修理会社に依頼した場合、貸主が普段から利用している会社と比べて費用が高くなれば、差額を請求される可能性があります。そのため、フローリングの浮きを見つけたときには、できるだけ早めに管理会社または貸主へ連絡・相談をすることが大切です。

民法の規定では、管理会社や貸主に修理を依頼したにもかかわらず、なかなか対応してもらえない場合には、入居者側で修理を行うことも可能とされています。

 

民法607条の2(賃借人による修繕)

賃借物の修繕が必要である場合において、次に掲げるときは、賃借人は、その修繕をすることができる。

一 賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、又は賃貸人がその旨を知ったにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき。

二 急迫の事情があるとき。

(出典:e-Gov法令検索『民法』)

 

この場合、修理にかかった費用は、貸主に請求することが認められています。ただし、修理できるのは、あくまでも通常の使用に必要な範囲に限られます。

 

たとえば、無許可で床材のアップグレードを行うと、差額を請求されてしまう可能性があるため注意しましょう。また、トラブルを防ぐために、貸主には繰り返し相談をしたうえで、なかなか対応してもらえなかったという経緯をきちんと記録しておくことが重要です。具体的には、相談内容や日時をメモし、メールでのやりとりも証拠として残しておきましょう。

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最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。

Q:フローリングの浮きは誰が補修費用を負担する?

A:経年劣化や通常使用の損耗が原因の場合は、原則として貸主が費用を負担する必要があります。ただし、家具の移動やペットにより生じた傷や、雨が吹き込んだことによる劣化などが原因の場合は、入居者側に責任が生じるため注意が必要です。

Q:フローリングの補修は自分で修理会社を呼んでもいい?

A:賃貸物件は貸主の所有物であるため、貸主に無許可で修理会社を手配することはできません。必ず貸主や管理会社に相談しましょう。ただし、「貸主になかなか対応してもらえない」「明らかに緊急性が高い」といった特定の状況では、例外的に入居者が修理を行える場合もあります。

 

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