一人暮らしを考えていても、「生活保護の受給中は賃貸物件を借りられるのだろうか」と不安に思うことがあるでしょう。生活保護制度では住宅扶助と呼ばれる家賃補助が受けられるため、条件に合えば、金銭的に余裕がない方でも賃貸物件を借りることが可能です。

この記事では、生活保護を受給中の人が賃貸物件を借りる方法について解説します。既に一人暮らしをしていて、生活保護の受給を考えている方もぜひ参考にしてください。

生活保護利用に理解ある不動産会社を探す一人暮らしにぴったりな物件家賃補助のある物件(特定優良賃貸住宅)

結論からいうと、生活保護の受給中でも一人暮らしは可能です。 生活保護では、住宅扶助という形で家賃を補助する仕組みがあるため、経済的に困難な方でも最低限の生活を維持できます(※家賃補助の上限金額は地域によって異なります)。     

 

ただし、生活保護を受けずに安定した収入を得られている人と比べると、物件の選択肢に制限があることは理解しておきましょう。

 

なお、一人暮らしをしている途中で生活保護を受給することも可能です。ただし、申請するには特定の条件を満たす必要があります。次章では、生活保護の受給条件や保護内容について詳しく見ていきましょう。

 

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生活保護を受けるには、受給条件に該当することが必要です。ここでは、生活保護の受給条件や保護内容について解説します。

生活保護は日々の生活に困窮する人を保護し、最低限度の生活を保障する制度です。生活保護は世帯単位で行われ、世帯全員が資産や能力などを活用しても最低限度の生活を維持できない場合に、生活の保障が受けられます。

 

生活保護の受給条件は、以下のとおりです。

  • 不動産や預貯金などの資産がない
  • 働けない事情がある、または働いていても生活できるだけの収入を得られない
  • 年金などを活用しても最低限の生活費を得られない
  • 親族などから経済的な支援をしてもらえない

上記のとおり生活保護は、土地や家といった現金化できる資産がなく、病気やケガで働けない人が受けられます。なお、「働いていても収入が少なく生活が苦しい」「年金や貯蓄を切り崩しても生活できない」といった場合も、生活保護の対象となります。

 

ただし、条件は定められているものの、一部例外があるため、生活保護の申請前に福祉事務所に相談することをおすすめします。

厚生労働省が公表している生活保護の内容は、下表のとおりです。

生活を営む上で生じる費用扶助の種類支給内容
日常生活に必要な費用
(食費・被服費・光熱費等)
生活扶助基準額は、

  1. (1)食費等の個人的費用
  2. (2)光熱水費等の世帯共通費用を合算して算出。

特定の世帯には加算があります。(母子加算等)

アパート等の家賃住宅扶助定められた範囲内で実費を支給
義務教育を受けるために必要な学用品費教育扶助定められた基準額を支給
医療サービスの費用医療扶助費用は直接医療機関へ支払
(本人負担なし)
介護サービスの費用介護扶助費用は直接介護事業者へ支払
(本人負担なし)
出産費用出産扶助定められた範囲内で実費を支給
就労に必要な技能の修得等にかかる費用生業扶助定められた範囲内で実費を支給
葬祭費用葬祭扶助定められた範囲内で実費を支給

出典:生活保護制度|厚生労働省(2024年11月時点)

 

上記のように、食費や光熱費、住宅費、医療・介護サービス、葬祭・出産費用など、幅広い費用が支給対象となります。

 

医療扶助は、医療機関の窓口で支払う自己負担分だけでなく、入院時の食事代なども含まれるため、健康上の不安を抱えている方でも安心して医療を受けられます。就労に必要な技能の修得費用も、一定額の範囲内で実費が支給されるので、費用面で不安がある方も安心して学習に集中できるでしょう。

 

賃貸物件に住む場合、家賃は住宅扶助として支給されます。ただし、管理費や共益費、水道光熱費などは対象とならないため、自分の生活費から捻出しなければなりません。初期費用の具体的な支援(一時扶助金)については、後の章で詳しく解説します。      

ここでは、生活保護を申請する際の注意点を3つ解説します。

生活保護は、あくまで困窮している方が一日も早く自立した生活を送れるよう支援するための制度です。そのため、支給される保護費は「最低生活費から年金などの収入を差し引いた金額」となり、無駄な出費は含まれていません。

 

なお、生活保護を受給すると、資産や支出の管理が厳しく制限されます。主な制限事項は、以下のとおりです。

  • 土地、家屋、車など資産価値が高いものは処分して生活費に充てる
  • 預貯金は、保護開始時に所有する金銭のうち、最低生活費の5割のみ保有できる
  • 家計の支出を節約する

土地や家屋、車については原則として処分が要求されますが、各家庭の事情により保有できる場合があります。たとえば、現在住んでいる家の資産価値が低ければそのまま保有が認められることがあります。

 

また、生活に必要な車だった場合、特に車が生活の必需品となる地域では一般的な車の保有が認められることもあります。ただし、高級車は対象外です。

 

預貯金については、たとえば最低生活費が10万円の世帯で、申請時に8万円の預貯金がある場合、4万円を保有することが許可されます。生活保護を受ける場合は、家計の支出も節約しなければなりません。常に収入と支出のバランスを意識し、計画的な生活を送ることが大切です。

生活保護を受けると入居審査に通らない可能性があります。これは、支払能力が低いと判断されることが多く、大家や管理会社から敬遠されるケースがあるためです。

 

しかし、生活保護の受給者向けの物件を取り扱っている会社もあるため、調べてみるといいでしょう。生活保護では住宅扶助が受けられ、代理納付(生活保護者に代わり福祉センターなどが家主に直接家賃等を支払うこと)も可能であるため、大家にとっては安心材料となります。

 

なお、住宅扶助には各自治体で定められた限度額があり、その範囲内の家賃の物件でないと住むことができません。そのため、希望する物件の家賃が限度額を超える場合は、他の物件を探すか、差額を自己負担する必要があります。

虚偽の内容で生活保護を申請し、不正受給が発覚した場合は、懲役や罰金などの刑罰が科せられることがあります。

 

たとえば、十分な収入があるのに少なめに報告をして不正に受給する場合です。発覚すると今までに受けた保護費を返還したり、懲役刑を受けたりする可能性があります。 悪質であると判断された場合は、生活保護法違反や刑法上の詐欺罪に問われることもあるため、不正な申請は絶対にしないようにしましょう。

 

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生活保護を受けている人が、賃貸物件を探す際の流れは以下のとおりです。

  1. 住宅扶助の許可を得る
  2. 不動産会社へ相談する
  3. ケースワーカーに報告する
  4. 入居審査を受ける
  5. 賃貸借契約を結ぶ

まず、必要な手続きは自治体の窓口で住宅扶助の許可を得ることです。自治体により異なりますが、住宅扶助では家賃補助の対象として、以下の費用を一時扶助金として補助します。

  • 家賃
  • 敷金、礼金など
  • 仲介手数料など

これらの初期費用は一時扶助金の限度内で支給されるため、生活保護を受けている方でも賃貸物件に入居することが可能です。また、仲介手数料や引越し費用、火災保険料も扶助対象となることがあるため、事前に確認をしましょう。

 

次に、不動産会社で物件を探します。この際、生活保護を受給していることを伝え、適切な物件を紹介してもらいましょう。生活保護を受給していても入居可能な物件は存在します。ただし、住宅扶助では家賃に上限があるため、その範囲内で支払える物件を探してもらうことが大切です。

 

物件が決まったらケースワーカーに相談し、不動産会社からもらった見積書などを提示して了承を得ることが必要です。 ケースワーカーが了承した後は入居審査へと進み、大家が入居に同意したら当事者同士で賃貸借契約を結びます。

 

生活保護を受給中でも一人暮らしは可能です。ただし、支給される住宅扶助には上限が設定されているため、家賃補助の金額内で収まる物件に住む必要があります。

 

生活保護であると大家に敬遠されるのではないかと思いがちですが、自治体では家賃の代理納付を実施しているところがあり、家賃滞納の心配がありません。そのため、生活保護を受給している人向けの物件を提供している大家もおり、住む場所は探せば見つかるものです。 

 

賃貸物件を借りるときは自治体やケースワーカーに相談し、現在の状況に適している物件を選びましょう。

 

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