アパートやマンションのような集合住宅と比べると、一戸建ては隣の住戸との距離があるため、騒音は気になりにくいといえます。そのため、賃貸一戸建てでは楽器の使用やペットの飼育といった、騒音につながりやすい行為が認められているケースも多く見られます。

しかし、騒音と感じるレベルには個人差があるのも確かです。一般的に楽器の音や騒ぎ声などは騒音と受け取られるケースが多いですが、日常生活で生じる音を騒音と感じることもあります。

そのため、賃貸一戸建てにおいても防音対策は無関係ではありません。また、防音対策は近隣住民のためだけでなく、プライバシーの保護にもつながります。

防音性が高い物件を選ぶポイント

防音対策を考えるのであれば、まずは物件自体の防音性が高いかどうかを見極める必要があります。ここでは、防音性に優れた物件を選ぶポイントを紹介します。

気密性

気密性とは、簡単に言えば「建物にどれだけ隙間がないか」を示す性能です。気密性が高い建物は、外との空気の出入りが少なく、快適な室内環境を保ちやすいというメリットがあります。

そして、空気が外に逃げにくいという性質は、同時に「音が外に漏れにくい」あるいは「外の音が入ってきにくい」ということも意味します。そのため、まずは気密性が高い物件かどうかを判断基準にするのが、騒音対策の第一歩となります。以下で、気密性につながる3つのポイントを見ていきましょう。

鉄筋コンクリート造

鉄筋コンクリート造とは、鉄筋とコンクリートを用いた建築方法のことです。構造にコンクリートを用いることから隙間が生まれにくく、高い防音性を発揮するのが特徴です。

ただ、鉄筋コンクリート造はマンションなどの集合住宅で用いられることが多く、一戸建てで採用されるケースは多くありません。それだけに、賃貸一戸建てで鉄筋コンクリート造の物件があれば、その時点で防音性が通常よりも優れていると判断できるでしょう。

二重窓

二重窓とは文字どおり、窓を2重にすることをいいます。気密性を高めるとともに、外窓と内窓の間にできる空気の層が熱や音の出入りを和らげます。そのため、空港近くの物件や幹線道路沿いの物件などで採用されるケースも多いです。

賃貸一戸建てで採用されている場合には、防音性に配慮されている物件と考えることができるでしょう。

中空二重構造

「中空二重構造」とは、壁を2重にして、その間に空間を設けるつくりのことを指します。壁同士に適度な空間が確保されることで、音の伝播を抑えられるため、防音性の高い住まいになります。

防音性を高めるためのコツ

賃貸一戸建ての防音性は、物件そのものの構造や周囲の住宅との位置関係によって大きく左右されます。しかし、入居者自身の工夫によって防音性を向上させることも可能です。

ここでは、賃貸物件でも行える4つの防音対策を紹介します。

吸音材を使用する

ホームセンターなどで販売されている吸音材を購入し、壁などに設置すれば、手軽に室内の防音性を向上させることができます。吸音材は音を吸収する性質を持った素材であり、グラスウールやロックウール、ウレタンフォームなどが該当します。

なお、防音対策の主な手段としては「吸音」と「遮音」の2つが挙げられます。それぞれ以下のような違いがあるので、基本的なポイントを押さえておくことも大切です。

防音効果が高いのは「遮音」ですが、こちらは建築時の設計によってある程度決まってしまうものです。そのため、賃貸物件で入居者が入居後に行える騒音対策としては、「吸音」が基本となります。

これから部屋探しを行うなら、まずは遮音性（＝気密性）の高い物件を選び、そのうえで吸音材などを利用するという順番で防音対策を考えるといいでしょう。

防音マットを使う

防音マットは床から伝わる音や振動を防ぐアイテムです。子どもの足音や家具を動かす音などが下の階に伝わるのを防いでくれるので、階下に住民がいるマンションなどの防音対策として用いられることが多いです。

ただし、楽器の演奏では、床に伝わる音が外に抜けてしまうリスクもあります。一戸建てでも必要に応じて活用を検討してみましょう。

天井裏に吸音材を使う

天井裏に空間がある場合には、空洞部分に吸音材を詰めることで、防音性能の向上が期待できます。ただし、天井裏の作業を自分で行うのは難しい面もあるため、あらかじめ貸主や管理会社などに相談しておくことも大切です。

防音室を設置する

楽器の演奏などによる騒音トラブルを避けるには、専用の防音室を導入するのもおすすめです。簡易的な防音室であれば、楽器メーカーなどでレンタル品も取り扱われているため、比較的安価で取り入れることができます。

防音対策を行うときの注意点

最後に、賃貸一戸建てで防音対策を行う際の注意点を確認しておきましょう。

大がかりな作業は貸主や管理会社に相談しておく

防音マットを敷いたり、吸音材を設置したりするだけの簡易な対策であれば、工事不要なため問題なく実践できます。しかし、天井裏に入り込んで作業するなど大がかりな作業になる場合は、必ず貸主や管理会社の了解を得ましょう。

空調管理に気をつける

気密性の高い物件は防音性能に優れている一方、湿気が室内にこもりやすいという弱点があります。結露やカビの発生を防ぐためにも、こまめに換気を行い、室内の湿度を一定に保つことが大切です。

防音性能を過信しない

音は目に見えないため、どれだけ防音性を高めても、音漏れを完全に防ぐのは難しい面があります。騒音トラブルを避けるには、防音性能に頼りすぎず、日常から大きな音を出さないように注意することも大切です。

記事のおさらい

最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。

Q：賃貸一戸建てでも防音対策は必要？

A：一戸建ては集合住宅と比べれば音のトラブルにつながりにくい面がありますが、そもそも騒音と感じるレベルには個人差があるので、できるだけ防音対策をしておく方が安心です。話し声などが外に漏れないようにすれば、プライバシーの保護にもつながります。

Q：防音性に優れた物件を見極めるポイントは？

A：構造面では、気密性の高さに着目するのがポイントとなります。そのうえで、鉄筋コンクリート造や中空二重構造、二重窓などが防音性を見極める条件として挙げられます。

Q：防音対策を自分でするには？

A：壁や天井裏に吸音材を導入したり、防音マットを敷いたりすれば、自分でも防音対策を行うことが可能です。また、楽器演奏などの特定のシチュエーションにおける防音対策なら、防音室のレンタルなども検討してみるといいでしょう。