賃貸物件を借りるための初期費用には、さまざまな項目があります。
そのなかでも、敷金と礼金は代表的な項目のひとつであり、金額も大きな割合を占めるケースが多いです。賃貸物件を借りる際には、これらの費用の仕組みを正しく理解しておけると安心です。
今回は、敷金と礼金の違いやそれぞれの役割、相場、敷金・礼金なし物件の特徴を見ていきましょう。
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敷金と礼金の違いは?

敷金と礼金は、どちらも賃貸物件を借りるときに支払う初期費用です。しかし、それぞれの役割には大きな違いがあります。
ここではまず、両者の基本的な違いについて見ていきましょう。
支払う目的の違い
敷金には「万が一に備える担保」としての意味合いがあります。
家賃の滞納や借りた部屋を傷つけてしまったときの修繕など、入居者の責任によって何らかの費用が生じてしまった場合に備えて、あらかじめ預けておく資金としての性質を持っています。
一方、礼金は「大家さんへの謝礼」として支払う費用です。
これは、まだ賃貸物件が数少ない頃に、入居者から大家さんに対して「お世話になります」という思いを込めて心づけを支払っていたのがはじまりとされています。
返金の有無に関する違い
敷金は預け金としての性質を持っているため、特にトラブルがなければ、退去時に返金されます。
また、退去時の原状回復費用が発生したとしても、必ずしも全額が使われてしまうというわけではなく、必要経費を除いた分は戻ってきます。
それに対して、礼金はお礼のためのお金なので、返金されることはありません。
相場の違い
敷金も礼金も、基本的には「家賃○ヶ月分」のように、家賃に基づいて計算されます。そのため、家賃が高い物件ほど、初期費用も高くなると考えるのが一般的です。
ただし、具体的な金額には明確な決まりがないため、物件によって大きく変動する場合もあります。
相場は敷金・礼金ともに家賃の0~2ヶ月程度とされていますが、物件によっては3ヶ月分必要になることもあります。
たとえば、ペットを飼う場合には、キズや汚れが発生するリスクが高くなるので、通常よりも敷金を多めに預けなければならないケースが多いです。
なお、敷金・礼金の相場について、国土交通省の2021年度「住宅市場動向調査」(※)では以下のようなデータが示されています。
敷金・礼金の有無
| あり | なし | 無回答 |
|---|---|---|---|
敷金 | 60.0% | 32.3% | 7.7% |
礼金 | 45.9% | 46.4% | 7.7% |
データは三大都市圏(首都圏、中京圏、近畿圏)におけるもの
このように、敷金・礼金ともに受け取っていない賃貸物件も多くあります。特に、礼金においては、半数近くの物件で発生していないことが分かります。
敷金・礼金の金額
| 家賃1ヶ月分未満 | 家賃1ヶ月分 | 家賃1ヶ月超~2ヶ月分 | 家賃2ヶ月超~3ヶ月分 | 家賃3ヶ月超 |
|---|---|---|---|---|---|
敷金 | 4.1% | 65.9% | 22.2% | 6.1% | 1.7% |
礼金 | 3.5% | 72.1% | 20.1% | 4.3% | – |
データは三大都市圏(首都圏、中京圏、近畿圏)におけるもの
金額については、敷金・礼金ともに1ヶ月分と設定している物件が多いです。
ここから読み取れるのは、「敷金と比べて礼金なしの物件数の方が多い」「敷金・礼金どちらも家賃1ヶ月分が多い」という結果です。
まずはこの結果を踏まえて、借りたい物件の敷金・礼金がどのように設定されているかを確かめてみるといいでしょう。
※ 国土交通省住宅局「令和3年度 住宅市場動向調査 報告書」
敷金礼金0(ゼロ・なし)物件
敷金・礼金なし物件とは? どんな仕組み?

先ほどデータで紹介したように、敷金や礼金を受け取っていない物件も一定数あります。それでは、これらの費用がかかる物件とそうでない物件があるのには、どのような理由が関係しているのでしょうか。
ここでは、敷金・礼金なし物件の基本的な仕組みについて解説します。
敷金がない場合の仕組み
敷金には、さまざまなトラブルに備える重要な役割があるため、ほとんどの場合は敷金に代わる仕組みが採用されていると考えられます。
たとえば、敷金の代わりに「清掃費やクリーニング費用が発生する」ケースなどです。
入居時あるいは退去時に、清掃費を入居者が負担することになっていれば、大家さんとしては敷金を受け取らなくても、原状回復費用に関する不安が軽減されます。
この場合、入居者側の実質的な負担は、敷金を家賃1ヶ月分預けるのと同じ程度となります。
また、敷金なしに設定しやすい状況として、保証人の代わりに保証会社を利用するケースが挙げられます。この場合、保証会社が家賃滞納などを保証してくれるため、大家さんからすれば、敷金を預かる以上に安心感があるのです。
なお、保証会社を利用するには、入居者が保証料を支払わなければなりません。保証料の相場は家賃0.5~1ヶ月分とされているので、この場合も実質的な負担は敷金1ヶ月分と同程度です。
礼金がない場合の仕組み
明確な役割がある敷金に対して、礼金はそもそも謝礼金なので、受け取らないとしている大家さんも増えています。
また、築年数や立地などの条件から、なかなか入居者が決まらないときに、礼金カットを検討するケースもあります。
礼金が発生するのは入居時の一度きりなので、家賃を下げるのに比べて、ほかの入居者へ与える影響が少ないのが特徴です。そのため、大家さんとしては、比較的に採用しやすい方法といえるでしょう。
敷金・礼金なし物件のメリット・デメリット

敷金・礼金なしの物件のメリットは、「初期費用が安く済む」点にあります。
たとえば、家賃7万円のアパートを借りるケースで考えれば、敷金・礼金が1ヶ月分軽減されるだけで、14万円の出費を抑えることができます。
引越しのタイミングでは何かとお金がかかるため、大きなメリットといえるでしょう。
一方、前述のように「借り手を早く見つけたい物件で導入されることも多い」点や「敷金の代わりに清掃費や退去費用がかかる場合がある」点はデメリットです。
また、敷金・礼金のどちらもゼロにしている物件を選ぶとなると、物件の選択肢が狭まる点に注意が必要です。
敷金・礼金なしにこだわるのであれば、立地や間取り、設備などの条件を調整して、妥協できるポイントを見つけておくといいでしょう。
敷金礼金0(ゼロ・なし)物件
初期費用がお得な物件を探す方法

初期費用を抑えるためには、あらかじめ「敷金なし」「礼金なし」などの具体的な条件を絞り込んで部屋探しをするとスムーズです。
不動産情報ポータルサイトLIFULL HOME’Sでは、賃貸物件の検索ページで条件にチェックを入れるだけで、手軽に敷金なし物件や礼金なし物件を絞り込むことができます。
また「敷金・礼金0(ゼロ・なし)の物件」では、すぐに敷金・礼金がかからない物件だけを検索することができます。
初期費用を抑えたいのであれば「フリーレント物件特集」もおすすめです。
フリーレントとは、入居後の一定期間にわたって家賃がかからないサービスのことであり、最初の1~2ヶ月間、長ければ3~6ヶ月間もの家賃を免除してもらえます。
どちらも費用を節約する有効な方法なので、上手に活用して理想の部屋を見つけましょう。
まとめ
- 敷金は家賃滞納や部屋の損傷などのリスクに備えて預けておく担保金のこと
- 礼金は部屋を貸してくれる大家さんに支払う謝礼金のこと
- 2021年度「住宅市場動向調査」によると半数近くの物件で礼金は発生していない
- 敷金・礼金ともに家賃1ヶ月分程度としている物件が多い
- 敷金・礼金なし物件もあるが、メリットとデメリットをきちんと把握しておくことが大切
敷金礼金0(ゼロ・なし)物件 フリーレント物件
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