「できるだけ安い費用で引越しがしたい」といったときには、初期費用を抑えるのが近道です。
しかし、「敷金・礼金なし」の物件は、初期費用が大きく抑えられるだけに、何かデメリットや落とし穴が隠されているのではと不安に感じられる部分もあるでしょう。
今回は敷金・礼金なしの物件について、その詳しい仕組みや注意点について解説します。
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敷金・礼金の仕組み

敷金・礼金なしの物件について見ていく前に、まずは敷金・礼金の基本的な仕組みを理解しておきましょう。
敷金とは
敷金とは、賃貸物件を借りる際に大家さんに預けておく担保金のことです。
たとえば、借主が家賃を滞納してしまったり、建物を損傷してしまったりしたときには、敷金として支払ったお金から補塡(ほてん)されることとなります。
費用の相場としては、家賃の1~2ヶ月程度が目安です。ただ、基本的に、敷金には万が一の際の補填といった意味があります。
そのため、特に問題が起こらなければ、退去時には原状回復の費用を差し引いた金額が戻ってきます。
礼金とは
礼金はその名のとおり、大家さんに支払う謝礼金のことです。
賃貸物件の仕組みがそれほど普及していなかった時代には、お世話になる心付けとしての意味合いで借主から大家さんに一定の謝礼が支払われていました。
その慣習が今でも礼金という形で残っているのです。礼金の相場は、家賃の1~2ヶ月程度が目安であり、こちらは敷金と違って手元に戻ってくることはありません。
ただ、あくまでも慣習によるものであるため、礼金を不要とする大家さんも一定数います。
敷金・礼金の取扱いは地域によって異なる
西日本では、敷金の代わりに「保証金」という名称が使用されることもあります。主な役割は敷金とほとんど変わらず、家賃滞納などのリスクに備えるのが目的です。
また、保証金とともに「敷引き」という名称が使用されることもあり、こちらは「あらかじめ差し引かれることが決まっているお金」です。
敷引きは、東日本の礼金と同じような意味を持っていると考えて問題ありません。
たとえば、「保証金3ヶ月分・敷引き1ヶ月分」となっている場合には、退去時には保証金2ヶ月分から原状回復費用を差し引いたお金が返ってくることとなります。
なお、敷引きが設定されている分、保証金は東日本の敷金よりも高くなるのが一般的です。
敷金・礼金がゼロになる理由

敷金・礼金は賃貸借契約を結ぶうえで、大切な役割を持っているお金だといえます。それにもかかわらず、敷金・礼金なしの物件があるのはどのような理由によるものでしょうか。
ここでは、敷金・礼金がゼロになる背景を詳しく見ていきましょう。
社会的背景に関する理由
日本では、人口の減少などにより、空き家の増加が問題となっています。
国土交通省が行った調査(※)によれば、空き家を賃貸・売却する際の課題として、「借り手・買い手の少なさ」がもっとも大きな問題として挙げられています。
また、このうち借り手・買い手が見つからない場合の対応方法として、半数を超える55.8%が「価格や家賃を引き下げる」方法を選択しているのです。一方、「賃貸・売却をあきらめる」を選択した人は16.8%にとどまります。
空き家のままにしておくと、設備の劣化や防犯面の不安、ごみの不法投棄といったリスクもあるため、家賃を引き下げてでも借り手を見つけたいという貸主は多いのです。
そうした社会的背景も、敷金・礼金なしの物件が増加しているひとつの要因と考えられます。
物件ごとの理由
敷金や礼金がないことで、初期費用が少なくなるため、貸主は通常よりも借り手を見つけやすくなります。そのため、空室を防ぐために敷金・礼金をなしとしている物件は少なくありません。
特に、礼金は、本来謝礼の意味を持っているため、貸主の判断で不要とするケースも多いです。また、敷金については、契約の時点で発生しない代わりに、清掃費として後から受け取る形にしているところもあります。
さらに、保証会社の利用が必須の物件では、家賃滞納リスクに備える必要性が薄くなるため、敷金を受け取らないと判断されることがあります。
(※)国土交通省「令和元年 空き家所有者実態調査 報告書」
敷金礼金0(ゼロ・なし)物件 家賃相場を調べる敷金・礼金なしの物件を借りるときの注意点

敷金・礼金なしの物件を借りる際には、いくつか注意しておきたいポイントがあります。ここでは、契約の前に目を向けておくべき注意点を見ていきましょう。
契約書を細かくチェックする
敷金や礼金がなしとなっていても、清掃費やクリーニング代などがかかってしまうこともあります。基本的には敷金よりも安く設定されているケースが多いものの、きちんと確認しておきましょう。
また、退去時の取り決め、違約金の有無などに目を向けておくことも大切です。大家さんとしては、「せっかく初期費用を下げたのだから長く住んでもらいたい」と考えるのが自然だといえます。
そのため、物件によっては、退去や契約の解除について細かなルールが設定されていることもあるのです。
詳しい内容は、契約のタイミングできちんと説明してもらえるので、分からない点があれば、不動産会社の担当者に確認をしておきましょう。
家賃の相場をチェックする
場合によっては、敷金や礼金がない分だけ家賃に上乗せされていることもあります。そのため、周辺の似たような物件と家賃を比較しながら、相場を把握することも大切です。
エリアごとの家賃相場については、LIFULL HOME’Sの「家賃相場」で手軽に調べることができます。最寄り駅や市区町村ごとに平均的な賃料をチェックできるので、事前に活用してみるといいでしょう。
時期によって物件数は大きく異なる
部屋探しをする時期によって、敷金・礼金なしの物件数は大きく変化します。
1~3月の繁忙期と比べると、入居希望者の少ない閑散期は、特別に敷金・礼金がゼロになっているといったケースも少なくありません。
敷金・礼金なしは、空室を防ぐ目的でとられる措置としての側面があるため、時期によって変化する条件である点も理解しておきましょう。
敷金・礼金なしの物件を探す方法

敷金・礼金なしの物件は、注意点をきちんと理解しておけば、初期費用を抑えられる点が大きなメリットとなります。
ここでは、敷金・礼金なしの物件を探す方法について見ていきましょう。
不動産情報ポータルサイトを利用する
敷金や礼金は、部屋探しで意識される重要な項目でもあるため、一般的な不動産情報ポータルサイトでは物件の検索時に「敷金なし」「礼金なし」といった条件を選択できるようになっています。
家賃や間取りなどの条件とともに適切な条件を入力すれば、敷金・礼金なしの物件だけを簡単に絞り込むことができます。
また、LIFULL HOME’Sでは「敷金・礼金0(ゼロ・なし)の物件」特集を組んでいます。このページから絞り込めば、より手軽に物件を見つけることが可能です。
敷金礼金0(ゼロ・なし)物件 家賃相場を調べる交渉するときのポイント

敷金・礼金は貸主が任意に設定している費用であるため、状況によっては交渉によって免除してもらえる可能性もあります。
ここでは、交渉を行う際に意識すべきポイントを紹介していきます。
交渉に応じてもらえるケース
同じ物件内に空室が目立つ場合には、初期費用を少し安くしてもらえれば必ず入居するといった意思を伝えることで、交渉に応じてもらえる可能性もあります。
貸主が空室を埋めることが難しいと判断すれば、ある程度の譲歩をしてもらえるケースがあるのです。
また、同じエリアの似た物件と比べて、初期費用の条件に大きな差がある場合には、交渉次第で値下げをしてもらえることもあります。
無理な交渉は禁物
交渉を行う際には、マナーを守って誠実な対応を心がけることが何よりも大切です。
貸主としては、「安心して部屋を貸せる人に入居してもらいたい」と考えるのが普通であるため、マナーに反する態度をとってしまうと契約自体ができない可能性もあります。
また、無理に敷金や礼金を免除してもらおうとするよりも、初めから家賃の値下げをお願いしたほうが効果的な場合もあります。
フリーレント物件を探すのもアリ
フリーレント物件とは、契約期間中の一定期間に、家賃がかからない物件のことを指します。
通常は入居後の1ヶ月間、長いところでは3~6ヶ月間のフリー期間を設定しているところもあるため、コストの大幅な節約につながるのです。
費用を抑えるためには、敷金・礼金だけでなく、フリーレント物件にも目を向けてみるといいでしょう。
敷金・礼金なし物件の特徴を正しく理解してお得に住める部屋を見つけよう

- 敷金と礼金はそれぞれ異なる役割を持っている
- 敷金や礼金がなしになる理由には社会的な背景と物件ごとの事情が関係している
- 契約書と周辺の家賃相場をチェックしておくことが大切
- 「敷金・礼金0(ゼロ・なし)の物件」特集から探すと便利
- 敷金と礼金は状況によって免除や値下げに応じてもらえるものの無理な交渉は禁物
よくある質問
「礼金なし 」なのはなぜ?
礼金は、貸主の判断であり・なしを決められます。2000年代以降は早く借り手を見つけたい場合などに、「礼金なし」とする物件が増えてきました。礼金なし・敷金なしのいわゆる「ゼロゼロ物件」もあります。詳しくは礼金なしの物件がある理由をご覧ください。
敷金礼金なしだとどうなる?
敷金・礼金なし物件の最大のメリットは、物件を借りるときの初期費用の負担が少なくなる点です。一方デメリットは、相場よりも家賃が割高に設定されていたり、クリーニング代や保証料など意外な部分で費用がかかったりする可能性がある点です。詳しくは敷金・礼金なし物件のメリット・デメリットをご覧ください。
更新日: / 公開日:2021.03.11










