超高齢化社会にある日本において、一人暮らしをする60代以上の人は年々増加傾向にあります。しかし、60代は仕事や収入の状況が変化しやすいタイミングでもあり、入居審査などに不安を感じてしまうこともあるでしょう。
今回は60代からの一人暮らしを始めるうえで、どのような点に目を向けておくべきか、詳しく解説していきます。
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60代の賃貸物件の利用率は決して少なくない! シニア世代の住宅事情

総務省によれば、2020年9月15日現在の推計では日本における65歳以上の高齢者は約3617万人とされており、総人口の28.7%を占める割合となっています(※)。
そして、それとともに、60代以上の賃貸物件の利用率も増加しているのです。ここではまず、データを基に、シニア世代の住宅事情を見ていきましょう。
一人暮らしのシニア世代の3割以上が賃貸物件を利用している
総務省が5年ごとに行っている2018(平成30)年「住宅・土地統計調査」によれば、65歳以上の単身世帯における賃貸物件の利用率は33.5%となっています。
賃貸物件の利用率自体は過去15年間でほぼ横ばいであるものの、高齢単身世帯の数自体が大幅に増加しているため、全体を通して利用者は増えているといえるのです。
賃貸物件が選択される主な理由
シニア世代が賃貸物件を利用する主なケースは、「自宅を購入しなかった」といった理由のほかに、「子どもの独立によって自宅を売却した」なども挙げられます。
仮にマイホームを購入していても、子どもが独立すれば家が広すぎると感じられるため、売却をして賃貸物件に引越すといった人は多いのです。また、相続対策で生前に自宅の売却を済ませておく人も少なからずいます。
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審査に通過するか不安…入居審査に通るために知っておきたいポイント

60代はそれまでと異なり、仕事や収入の状況が大きく変化しやすいタイミングだといえます。そのため、賃貸物件の入居審査に不安を感じてしまう人もいるでしょう。
ここでは、シニア世代に対する貸主のイメージと、審査に通過するためのポイントを見ていきます。
貸主が一人暮らしのシニア世代に不安を感じる理由
国土交通省が行った調査(2016(平成28)年「家賃債務保証の現状」)によれば、貸主の半数を超える人が、単身の高齢世帯への貸し出しに不安を感じているとされています。そのうちのもっとも大きな理由は、「家賃の安定した支払いへの不安」です。
仕事がなくなったり、収入が低下したりするリスクもあるため、支払い能力が不安視されてしまうこともあるのです。また、60代の後半に差しかかるにつれて、単身世帯では「健康状態への不安」が気にされてしまうこともあります。
そのため、まずはこうした貸主のイメージを理解したうえで、審査に通過するための準備を進めることが大切です。
入居審査に通過するためのポイント
基本的に、60代でも仕事を続けている場合には入居審査に通過しやすくなります。そのうえで、十分な収入のある子どもや親戚などの身近な相手が連帯保証人になってくれれば、審査ではより有利になるのです。
連帯保証人が見つからない場合には、家賃保証会社の利用もひとつの方法となります。
先ほどと同じ国土交通省の調査によると、60代でも半数近くが保証会社の審査に通過しており、自分の信用だけで賃貸借契約を結んでいる人も一定数いるのです。
ただ、物件によっては利用ができないところもあるため、連帯保証人を頼めない場合は、初めから「保証人不要」となっている物件から探すほうが無難です。
また、健康状態への不安については、家族や親戚が近くに住んでいるなどの事情が審査で有利に働くこともあります。
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シニア世代が利用できる各種制度と主な仕組み

賃貸物件を利用する高齢者の増加に応じて、国はさまざまな制度を設けています。ここでは、シニア世代が利用できる各種制度の仕組みについて詳しく見ていきましょう。
住宅セーフティネット制度とは
住宅セーフティネット制度とは高齢者や障がい者、子育て世帯等の住宅の確保に配慮が必要な方(住宅確保要配慮者)に対し、増加している民間の空き家・空き室を活用し、提供する制度で以下の3つの柱から成り立っています。
1.住宅確保要配慮者向け賃貸住宅の登録制度
2.登録住宅の改修や入居者への経済的な支援
3.住宅確保要配慮者に対する居住支援
また、セーフティネット住宅とは、高齢者や子育て世帯、障がいを抱えた人の入居を受け入れて1の登録制度において登録されている賃貸住宅のことです。
日本では空き家が増加していることもあり、空室を効率的に活用しながら、住まいを見つけるのが難しい人へ安価で貸し出す制度が設けられているのです。
セーフティネット住宅として登録された賃貸物件は、国土交通省が定める耐震性能や居住面積などの基準を満たすように改修されます。そして、住宅はネットワークで管理され、住まいを見つけるのが難しい人とのマッチングが行われる仕組みです。

図 住宅確保要配慮者向け賃貸住宅の登録制度
参照:「セーフティネット住宅 情報提供システム」
主な窓口は都道府県指定の「居住支援法人」と、自治体や関係会社の連携によって成り立つ「居住支援協会」の2つであり、どちらも入居相談や情報適用、入居後の見守りといった手厚いサービスを行っています。
さらに、家賃保証などを代行してくれるところもあるため、審査に不安を抱えている人でも利用が可能です。
家賃債務保証サービス
連帯保証人を用意できない場合は、一般財団法人の「高齢者住宅財団」が行っている家賃債務保証サービスを利用することもできます。
60歳以上であれば利用が可能であり、家賃滞納リスクや原状回復費用などの保証を行ってもらえるのです。
保証料はかかってしまうものの、2年間の保証期間で月額家賃の35%と、通常の家賃保証会社とほとんど変わらない金額で利用できます。
ただ、すべての物件で利用できるわけではなく、あらかじめ財団と基本約定を結んだ賃貸住宅に限られる点には注意が必要です。
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シニア相談可の物件とは?

全体から見れば数は少ないものの、シニア世代の利用に理解のある貸主も増えています。そうした物件は「シニア相談可」として扱われており、単身世帯の高齢者にも安心できるのが大きな特徴です。
シニア相談可物件の探し方
シニア世代の単身世帯に不安を感じている貸主が多いのは事実だといえます。しかし、貸主から見れば、高齢者は若い世代よりも安定して住み続けてくれるといったメリットもあるのです。
そのため、高齢者でも借りやすいように、あえて「シニア相談可」としている物件もあります。こうした物件では、シニア世代の一人暮らしにも一定の理解があるため、審査などが有利に働く可能性も高いです。
LIFULL HOME’Sでは、「シニア・高齢者歓迎物件」の特集を行っており、簡単に全国のエリアから検索を行うことができます。あらかじめ60代からの一人暮らしに適した物件を絞り込めるので、利用を検討してみましょう。
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何に目を向ければいい? 60代の一人暮らしに適した物件を探すポイント

シニア世代の部屋探しにおいては、ミドル世代までとは異なった点に目を向ける必要があります。ここでは、60代の一人暮らしに適した物件を見つけるポイントを見ていきましょう。
移動のしやすさと利便性に目を向ける
足腰への負担などを考え、エレベーターのない物件では高層階よりも低層階を選ぶと便利です。また、エレベーターがついていても、災害などで使えなくなってしまう可能性はあります。
緊急時の避難経路を考慮すると、なるべく1階や2階などの低層階を選ぶほうがいいでしょう。また、近隣の環境にも目を向けておくことが大切です。
閑静な住宅街よりも、日々の買い物や医療機関へのアクセスのいい利便性の高い立地のほうが住みやすく感じることもあります。事前に地図などで物件の周囲を確認しておきましょう。
バリアフリーを意識しておく
今は十分に元気でも、年齢を重ねるうちに、ちょっとしたケガなどで身動きがとりにくくなってしまうこともあります。そのため、今後に備えて、バリアフリーにも目を向けておくことが大切です。
たとえば、「段差が少ない」「廊下が広い」「各所に手すりが取り付けられている」といった特徴は高齢者でも住みやすいと感じられるポイントのひとつだといえます。
特に室内や共用部分の廊下は、万が一に備えて、支えてくれる人が一緒に通れるくらいの広さを意識しておきましょう。
防犯設備を重視する
悪質な訪問販売や空き巣などに狙われないようにするためにも、セキュリティ設備の整った物件を選ぶことも大切です。防犯に関する条件には、オートロックやモニター付きインターホン、管理人常住などの多種多様なものがあります。
どの設備を重視するかは人によって異なるため、不動産会社の担当者に相談しながら決めていくと安心です。
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この記事のポイント

この記事のポイントをまとめます。
ポイント
- シニア世代の賃貸物件利用率は増加しており、単身世帯の3割以上は賃貸物件に住んでいる
- 入居審査においては安定した収入と連帯保証人、健康状態などが見られやすい
- 高齢者が利用できる各種制度にも目を向けておく
- シニア・高齢者歓迎物件の特集から部屋探しをすると便利
- 部屋探しで特に重視すべきなのは移動の利便性、バリアフリー、セキュリティの3点
60代の一人暮らしは、入居審査のポイントと部屋探しのコツを押さえることが重要です。すてきな住まい探しに役立ててくださいね。
シニア・高齢者歓迎の物件
更新日: / 公開日:2021.01.19










