生活保護を受けながら賃貸物件を探すときには、通常の部屋探しとは異なる手続きを行う必要があります。細かな手順や入居審査の状況も異なるため、何かと不安を感じてしまうケースも多いでしょう。今回は生活保護の受給中にどのように部屋探しを行えばよいか、手順を追いながら具体的に解説していきます。また、家賃補助の制度や入居審査のポイントについても詳しく見ていきましょう。
賃貸物件を探す生活保護利用に理解ある不動産会社を探す
生活保護を受けながら賃貸物件を探す手順
生活保護を受給していても賃貸物件を借りることは可能です。ここではまず、どのように部屋探しを行えばいいのか、具体的な手順を追いながら解説していきます。
手順1:役所で許可をもらってから物件を探す

生活保護の受給中に賃貸物件を借りるためには、各自治体の役所で許可をもらう必要があります。そこからは、ケースワーカーとの相談を通じて、二人三脚で手続きを進めていくのが一般的です。
家賃の上限額が明確になったら、部屋探しを行います。このときには、不動産会社に「最初に生活保護を受給していることを伝える」ことが重要なポイントです。
生活保護に理解のある貸主の物件を探してもらえたり、審査に必要なポイントを教えてもらえたりすることもあるため、できるだけ早い段階で状況と家賃の上限額を相談しましょう。
手順2:ケースワーカーに物件の情報や必要金額を了承してもらう

物件が決まったら、ケースワーカーに家賃や初期費用の金額を伝え、了承してもらえたら入居審査へと移ります。このとき、注意すべきなのは、「家賃だけではなく初期費用の金額も伝える必要がある」ということです。
最初の段階で初期費用の見積もりを出してもらうのを忘れると、二度手間になってしまうこともあるため、後の手順を想定して手続きを進めましょう。
手順3:入居審査を受けて契約日を決める
ケースワーカーの許可がもらえたら、大家さんや管理会社による入居審査を受けます。審査に通過したら、初期費用が用意できる期日をケースワーカーに教えてもらい、それに応じて賃貸借契約を結ぶ日取りを設定します。
審査や契約には多くの必要書類があるため、ケースワーカーのアドバイスに沿って慎重に準備を進めましょう。
手順4:引越しの手続きを進める
無事に契約日が決まったら、次は引越しの手続きを進めます。引越しにかかる費用も負担してもらえるものの、複数の引越し会社で見積もりを取り、一番安いものを選ぶ必要があります。
会社を選ぶ際には、インターネットなどで一括見積もりをしてもらえるサービスもあるため、引越し日が決まった段階で見当をつけておきましょう。引越し会社に関する了承をもらってからは、初期費用を受け取って賃貸借契約を結び、引越しの期日までに荷物をまとめておく必要があります。
不動産会社を選ぶポイント
賃貸物件を借りるまでには、ケースワーカーと何度もやりとりをする必要があるため、できれば部屋探しまでをスムーズに済ませたいところです。そのため、どの不動産会社に仲介を依頼するのかが、とても重要なポイントとなります。
LIFULL HOME’Sの「FRIENDLY DOOR」では、インターネット上から「生活保護利用者フレンドリー」な不動産会社を探せるサービスを提供しています。生活保護の事情を理解し、親身になってサポートしてくれる不動産会社を地域ごとに探せるため、利用を検討してみましょう。
家賃補助のある物件(特定優良賃貸住宅) 引越し料金の見積もりをするどこまで支援が受けられる? 家賃補助(住宅扶助)制度の仕組み
生活保護の受給中に受けられる家賃補助は、地域や世帯人数によって上限額が決められています。ここでは、家賃補助(住宅扶助)制度の細かな仕組みを見ていきましょう。
家賃補助(住宅扶助)制度の仕組み
家賃補助(住宅扶助)制度とは、生活保護を受給している人の衣食住のうち、住環境を整えるために住宅費等を給付する重要な制度です。そのため、家賃とともに、引越し代金や初期費用なども補助の範囲に含まれています。
ただ、初期費用や引越し代金、火災保険料などは「一時扶助金」として扱われており、きちんと上限の範囲内に収めなければなりません。そのため、それぞれの金額について、ケースワーカーから許可をもらう必要があります。
また、管理費・水道光熱費などは、家賃補助のなかに含まれません。月々の生活費として受給される「生活扶助費」から捻出する必要があるため、別途で確保することを忘れないようにしましょう。
家賃補助の具体的な金額
物件の賃料相場はエリアごとに大きく異なるため、家賃補助の金額も地域によって変わります。また、世帯の人数によって必要な部屋の広さが異なることから、人数に合わせた上限が設定されているのです。
それぞれの地域は都道府県ごとに1~3等級までの等級別に分かれており、もっとも高い東京都1級地では、1人世帯で5万3,700円とされています。上限額は地域差が大きく、たとえば、東京・大阪・愛知・福岡では以下の表のとおりです。
愛知県や福岡県は1級地がなく、それぞれ2級地が上限額の目安となります。
| 1人世帯 | 2人世帯 | 3~5人世帯 |
|---|---|---|---|
東京都1級地 | 5万3,700円 | 6万4,000円 | 6万9,800円 |
東京都2級地 | 4万5,000円 | 5万4,000円 | 5万9,000円 |
東京都3級地 | 4万900円 | 4万9,000円 | 5万3,200円 |
愛知県2級地 | 3万7,000円 | 4万4,000円 | 4万8,100円 |
大阪府1級地 | 3万9,000円 | 4万7,000円 | 5万1,000円 |
福岡県2級地 | 3万2,000円 | 3万8,000円 | 4万1,100円 |
※厚生労働省「住宅扶助基準額一覧」(令和2年4月現在)参照
家賃補助のある物件(特定優良賃貸住宅) 生活保護利用に理解ある不動産会社を探す賃貸物件の入居審査で注意すべきポイント
貸主のなかには、生活保護を受給している人に対して不安を抱いている人もいます。入居審査に対して慎重な態度を示す人も少なくはないため、きちんと審査の注意点を押さえておきましょう。
早めの行動と準備を心がける
生活保護を受給している場合は、ケースワーカーとのやりとりが多いので、通常の部屋探し以上に契約までの時間がかかります。必要書類などに漏れがあると、どんどん手続きが遅れてしまうため、余裕を持って行動できるように時間をつくりましょう。
服装や態度に気をつける
貸主からすれば、何よりも「きちんと家賃を支払ってくれる」ことが部屋を貸し出す重要な条件となります。そのため、借主自身の人柄が審査項目のひとつとして見られることも多いです。
不動産会社へ足を運ぶ際には、きちんと身だしなみを整えることを意識したうえで、ていねいな応対を心がけましょう。担当者が味方になってくれれば、部屋探しや審査においてとても心強い存在となるのです。
家賃補助のある物件(特定優良賃貸住宅) 生活保護利用に理解ある不動産会社を探す連帯保証人がいない場合の対処法
賃貸物件を借りるときには、一般的に家賃の滞納などの保証をしてくれる連帯保証人が求められます。しかし、生活保護を受けている場合には連帯保証人を見つけることが難しいケースも多く、審査につまずいてしまうこともあるのです。
ここでは、連帯保証人がいない場合の対処法について見ていきましょう。
保証会社を探す
連帯保証人がいない場合には、保証会社を探す必要があります。ただ、保証会社を利用するためには、保証会社自体の審査を受ける必要があり、利用料もかかってしまう点には注意が必要です。
ただ、物件によっては保証会社の利用を認めていないところもあるため、事前に確認しておくことが大切となります。また、連帯保証人が見つけられない場合でも、緊急連絡先だけは頼める人を探しておくほうが安心です。

保証会社の仕組み
代理納付ができるか確認する
代理納付とは、家賃補助として入居者が一度お金を受け取るのではなく、自治体から直接貸主の口座に毎月家賃を振り込んでくれる仕組みです。貸主からすれば、公的な機関から直接お金を振り込んでもらえるため、それだけでも信用度が高まるポイントとなります。
代理納付はすべての自治体が行っているわけではないものの、不動産会社や保証会社の審査がスムーズになるため、状況に応じてケースワーカーに相談してみましょう。
保証人不要の物件 生活保護利用に理解ある不動産会社を探すまとめ
この記事のポイントをまとめます。
この記事のポイント
物件探しから引越しまでは何度もケースワーカーとやりとりをする必要がある
生活保護利用者フレンドリーな不動産会社を見つけるのがポイント
家賃補助の上限額は地域や世帯の人数によって異なる
入居審査に時間がかかることを見越して、ゆとりのある行動を心がける
連帯保証人がいない場合の対処法を押さえておく
生活保護受給中でもきちんと手順を踏めば賃貸物件は借りることは可能です。手順を押さえ、ケースワーカーと連携しながら進めていきましょう。
家賃補助のある物件(特定優良賃貸住宅) 生活保護利用に理解ある不動産会社を探す更新日: / 公開日:2020.12.25










