住まいを探すときには、ガスの種類にも目を向けておくと、入居後にかかる費用の計算や比較がしやすくなります。ガスには都市ガスとプロパンガスの2種類があり、それぞれ仕組みや料金設定には違いがあります。

今回は2つのガスの種類を比較しながら、どのような違いがあるのか詳しく見ていきましょう。
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都市ガスとプロパンガスの違い

 

まずは、都市ガスとプロパンガスの基本的な違いについて紹介します。

 

都市ガスでは、液化天然ガスが使われており、主成分はメタンと呼ばれる空気よりも軽い気体です。一方、プロパンガスでは液化石油ガスが使われており、主成分はプロパンやブタンなどの空気よりも重い気体です。

 

そのため、空気より軽い都市ガスではガス漏れ警報器が天井付近に、空気より重いプロパンガスでは床付近に設定されるといった違いがあります。

 

なお、プロパンガスで使われる液化石油ガスは「LPガス」とも呼ばれているので、プロパンガスを使っている物件の情報にはLPガスと記載されることもあります。

 

都市ガスは地下の導管を伝って供給されるため、導入コストがかかってしまい、多数の利用者がいなければ費用を回収することができません。そのため、住居数の多い都市部を中心に利用されています。

 

一方、プロパンガスはガスボンベを運べばどこでも供給できるので、人口の少ないエリアや住居ごとの距離が離れている地方でも利用できます

 

経済産業省が2017年3月に発表した資料(※)によると、都市ガスは国土全体の約6%にしか配管されていません。

 

また、国内での都市ガスの普及率は約46%(2014年度末時点)で、東京や大阪は80%を超えるものの、20%を下回る道府県が半分以上を占めています。

 

※ 経済産業省「電力及びガスの小売り全面自由化について

 

エネルギー効率は、発熱量の高いプロパンやブタンを使うプロパンガスのほうが高いとされています。火力で比較をすれば、都市ガスに比べて2倍以上の強さがあり、2分の1未満の量で同じエネルギー量が得られます。

 

しかし、都市ガス用のコンロはプロパン用よりも多くのガスが放出される仕組みとなっているため、実際に利用する場面では火力の違いを感じることはほとんどありません

料金システムの比較

 

都市ガスとプロパンガスでは、料金システムに大きな違いがあります。ここでは、それぞれの料金体系について詳しく見ていきましょう。

 

都市ガスはもともと、電気や水道といった公共料金と同じように「総括原価方式」で料金が決められていました。

 

総括原価方式とは、簡単に言えば、かかった営業費に適正な利益を加えて算出する方法であり、事業者が安定的な運営・供給を行える仕組みのことです。

 

運営するためには国の認可が必要なので、事業の透明性も確保され、より安定性が高まるのが大きなメリットです。一方、競争原理が働かないため、コスト削減の努力が行われにくい点が問題視される面もありました。

 

そこで、2017年からは都市ガスにおける総括原価方式が撤廃され、全面的に小売り自由化となりました。これにより、現在では事業者が自由に料金を設定できるようになっています。

 

プロパンガスの料金設定は当初から自由化されていたため、事業者によってコストに大きな差が生じることも珍しくありません。

 

消費者も自由に利用するガス会社を選べるため、営業費を下げるなどの企業努力が行われた結果、同じ地域でも2倍程度の価格差が生じるケースもあります。

 

ガス料金は、毎月どのくらい利用するか、あるいはどのようなプランを利用するかによっても異なります。さらに、そのほかの料金とセットで組み合わせることで割安になるキャンペーンなども増えているため、一概に金額を比較することはできません。

 

ただ、一般的には都市ガスよりもプロパンガスのほうが高くなる傾向があります。その理由は、プロパンガスのほうは「1件当たりの運送コスト」など、原価が都市ガスよりもかかりやすいためです。

 

それぞれの平均額を比較する公的な統計データはありませんが、たとえば、一般社団法人日本エネルギー経済研究所のデータ(※1)を参考にすると、東京都における2021年10月のプロパンガス利用料金は「基本料金1,760円」、従量料金部分は「5m3で4,482円」「10m3で7,177円」「20m3で1万2,471円」となっています。

 

ファミリー世帯であれば、1月当たり10m3程度を利用するため、料金は9,000円程度(基本料金1,760円+10m3で7,177円)と計算できます。

 

それに対して、総務省統計局「家計調査(家計収支編)(2020年)」(※2)を参照すると、東京都区部に住む2人以上世帯では、ガス代の平均月額が5,935円とされています。

 

あくまで一例ではありますが、両者を比較すると、プロパンガスは平均よりもやや割高であることが分かります。

 

※1 一般社団法人日本エネルギー経済研究所「一般小売価格 LP(プロパン)ガス 確報(偶数月調査)2021年10月

※2 総務省統計局「家計調査 / 家計収支編 二人以上の世帯 詳細結果表(2020年)

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プロパンガス

 

これまで解説したように、どちらのガスの種類でも選べるのであれば、基本的には都市ガスのほうがプロパンガスより経済的です。

 

現在プロパンガスを利用しているのであれば、以下の条件を満たす場合に限り、都市ガスに切り替えることもできます。

・近くにガス導管が通っている

・ガス導管を引き込む工事ができる

・賃貸の場合は大家さんや管理会社からの許可が必要

都市ガスを利用するためには、近くにガス導管が通っていることが絶対条件となります。また、まれに近隣の私道との関係によって工事ができない場合もあるので、周囲の条件をクリアしていることも大切です。

 

そのうえで、賃貸物件では大家さんの許可なしに変更することができないため、必ず事前に許可をとらなければなりません。ただし、アパートやマンションなどの集合住宅では、全室一括で変えなければならないので、許可をとるのは現実的ではありません。

 

賃貸で変更が認められるとすれば、一戸建ての物件を借りていて、大家さんと直接交渉が行える場合に限られるでしょう

 

まずは、ガス導管の引き込み工事に10万~15万円程度のコストがかかります。ただ、費用はあくまで目安であり、導管から距離が離れている場合にはさらにコストがかかってしまうこともあります。

 

また、都市ガスとプロパンガスでは使える機器に互換性がないため、給湯器やガスコンロなどを丸ごと入れ替える必要があり、その分の費用として5万円ほどかかります。

 

現在プロパンガスを利用していて、都市ガスへの切り替えを検討している場合には、利用料金だけでなく導入コストも計算に入れて判断しましょう。

 

これまで解説したように、基本的にはプロパンガスよりも都市ガスのほうがお得に利用できます。そのため、都市ガスからプロパンガスへの切り替えでメリットが得られるケースはほとんどありません

 

「中華料理などの飲食店で火力を必要としている」など、プロパンガスへの切り替えが適している例外もいくつかはありますが、個人では現在使っている都市ガスをそのまま利用するか、よりお得なプランの取扱いをしている都市ガスを選択するほうがいいでしょう。

都市ガス・プロパンガスの注意点

 

都市ガスとプロパンガスには、それぞれ料金以外にもいくつか注意しておくべきポイントがあります。都市ガスは利用できるエリアが限られており、プロパンガスからの切り替えができない地域も多いです。

 

また、賃貸物件ではそもそも切り替えが難しいので、物件探しの段階で注意しておくことが大切です。

 

特に、もともと都市ガスの部屋に住んでいた場合は、持っているコンロなども都市ガス対応のものなので、プロパンガスの部屋に引越しをする際には買い替えなければなりません。

 

プロパンガスの部屋から都市ガスの部屋に引越しをする際も同様に買い替えの手間やコストがかかるので、ガスの種類は見落とさないように気をつけましょう。

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不動産情報ポータルサイトLIFULL HOME’Sでは、地域や路線から物件を検索できるだけでなく、こだわりの条件から物件を絞り込めます。こだわり条件では、ガスの種類も選べるので、あらかじめ検索条件として設定しておくのもひとつの方法です。

 

理想にぴったり当てはまる物件を探すためには、できるだけ正確に条件設定を行う必要があるので、こだわり条件にどのような項目があるのか確認してから部屋探しをスタートするといいでしょう。

  • 都市ガスとプロパンガスは、ガスの成分や供給エリアなどの仕組みが異なる
  • 一般的にはプロパンガスよりも都市ガスのほうが経済的
  • 賃貸物件の場合、入居後にガスの種類を切り替えるのは難しい
  • ガスの種類ごとに使えるコンロや機器が異なる点にも注意
  • 賃貸物件を探すときには、ガスの種類にも目を向けて条件設定をしよう
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更新日: / 公開日:2020.07.08