
西日本エリアで賃貸物件を探す際、“敷引き”という言葉を目にする機会があるかもしれません。何かの割引が受けられそうにも思える言葉ですがそうではなく、退去時に返却される金額に関わってくる取り決めです。
契約を結んだあとに“知らなかった…”と困惑することのないよう、敷引きの仕組みや注意点を知っておきましょう。
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保証金と敷引きの仕組み

“敷引き”の仕組みを知る前に、まず“保証金”について解説していきます。
保証金は貸主への預け金
“保証金”とは、西日本地方にみられる商慣習で、入居者から貸主(大家さん)に支払われる預かり金です。もし家賃の滞納があった場合には、不足分を保証金から補填することになっています。保証金の金額は物件ごとに異なりますが“家賃◯ヶ月分”と指定されるのが一般的です。賃貸借契約を結ぶ際に、初期費用としてまとめて支払います。
返金の際に保証金から敷引きされる
物件の退去までに家賃の滞納がなければ、保証金は入居者に返却されるのですが、ここで適用されるのが敷引きの仕組みです。預けた保証金から、契約時に取り決めした敷引きの金額が差し引かれ、その差額が返金されることになります。
敷引きの金額も“家賃◯ヶ月分”と指定されるのが一般的です。
例えば家賃8万円の物件で“保証金3ヶ月・敷引き1ヶ月”と記載されている場合の保証金は8万円×3ヶ月の24万円です。退去時には家賃1ヶ月分である8万円が敷引きされて、差額の16万円が返却されることになります。
また、保証金と敷引きが同じ金額に設定されていれば、退去時の返金はないということです。
※実際の初期費用には仲介手数料や前家賃などが別途必要となります。
敷引きの名目は物件の修繕費用
敷引きされた分のお金は、退去した物件の修繕費用に充てられることになっています。室内をきれいに使用していて修繕費用がほとんど掛からなかった場合でも、敷引き額は変わりません。また、使用状況が悪く、修繕費用が敷引きの金額以上になる場合は、別途請求される場合もあります。
東日本に多い「敷金・礼金」との違い
東日本から西日本へ(あるいはその逆も)引越しする場合、商慣習の違いに戸惑いを感じるかもしれません。東日本で一般的な初期費用、“敷金・礼金”についても確認しておきましょう。

敷金は貸主への預け金
敷金とは、保証金と同様に貸主に支払う預け金です。退去時に物件の現況を貸主が確認し、修繕に掛かる費用を見積もった上で差し引き、差額が返金されます。
首都圏での敷金の相場は家賃1〜2ヶ月分程が目安です。
礼金は返却されない
礼金とは、住居が不足した戦後に“家を貸してくれてありがとう”という意味で支払われたお礼が、商慣習として残ったものです。預り金ではないため、退去時に返却されません。初期費用として契約時に支払います。
首都圏での礼金の相場は、家賃0~2ヶ月分ほどが目安です。
一例として、家賃8万円の物件で“敷金2ヶ月・礼金1ヶ月”と記載されている場合、家賃3ヶ月分である24万円が初期費用として必要になります(手数料・前家賃は別途)。
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入居者はどこまで修繕費用を負担するべきか

賃貸物件の退去時に起きやすいものが、修繕費用に関するトラブルです。保証金・敷金の返金額に関わってくるため、入居者と貸主のどちらが費用を負担するべきかで訴訟になるケースもあります。
そこで、国土交通省が“原状回復をめぐるガイドライン”(※)を定めました。
このガイドラインによると、原状回復とは室内を入居時と全く同じ状態に戻すことではありません。なぜなら、普通に暮らしているだけでも室内に付く細かな傷や、紫外線による日焼けを、完全に防ぐことは不可能だからです。そのような傷みの修繕費用は、入居者に負担義務がないとしています。
通常の使用による傷みの一例・紫外線による床材や壁紙の日焼け・黄ばみ
・ポスターなどを壁に留めるための画びょうの穴
・冷蔵庫の裏側の壁にできた黒ずみ敷引きが定められている場合、通常の使用による傷みの範囲を超えていなくても、一律に修繕費用が差し引かれることになります。しかしそのような仕組みは、原状回復ガイドラインの内容に即していないとして、現在では敷引きの慣習は減る傾向にあります。ただし、すでに契約を結んでいる場合は、原則的に契約書の内容が有効です。
※国土交通省 「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について
退去時の取り決めを契約前にしっかり確認しよう
契約時の初期費用である保証金と、退去時に適用される敷引きの仕組みは、東日本エリアの敷金・礼金とは少し異なります。初期費用の金額だけでなく、退去時にいくら返却されるのかをしっかりと把握することが大切です。
契約書の記載内容をよく読み、不明な点があれば必ず不動産会社に質問して、納得してから契約を結びましょう。
・敷引きとは、退去時に返却される保証金から差し引かれる金額のこと
・保証金・敷引きはおもに西日本エリアでみられる商慣習
・敷引きの名目は退去後の居室の修繕費用とされている
・賃貸借契約の際は退去時の返却金についても確認しておこう
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更新日: / 公開日:2018.10.04









