近年、夏の暑さ・冬の寒さの軽減や光熱費の削減などを目的に「内窓」を取り付け、二重窓・二重サッシにするリフォームを実施する方が増えています。窓は住まいの中で最も熱の出入りが多いため、高い断熱効果に期待できます。また、既存の窓を残したまま設置することから工期が短く、リフォーム費用も比較的安価です。さらに現在は、内窓の設置費用の約50%相当の補助金が支給されます。
本記事では、YKK AP株式会社リノベーション事業部営業推進部の清水陽介さんの解説を交えながら、内窓リフォームの効果や費用、補助金などについて解説します。
二重窓・二重サッシ(内窓)とは? リフォームの効果
二重窓・二重サッシとは、1つの窓枠に2枚の窓やサッシを備えたものです。既存の住宅では、窓の内側にリフォームで「内窓」を取付けることで二重窓・二重サッシにできます。
「毎年、驚くような猛暑化が進んでいるところですが、“夏暑い・冬寒い”という住まいの問題を解決するうえで最も効果的なのが、なんと言っても『窓』のリフォームといえます。既存住宅で一般的な『アルミフレーム×複層ガラス』の窓では、冬季の暖房時に室内の熱の約50%が流出し、夏季の冷房時には侵入する熱の約68%が流入すると試算(※)されています。内窓の設置は窓やサッシそのものの交換と比べて手軽であるにもかかわらず、断熱性能の向上に加え、結露の抑制や冷暖房費の削減、遮音性能の向上など、さまざまな効果に期待できるんです」(清水さん、以下同)

※シミュレーション結果は、算出条件に基づいた結果であり、保証するものではありません。また、今後評価基準、算出基準、条件等の変更により数値が変動する可能性があります。

内窓(二重窓・二重サッシ)リフォームの具体的な効果は、次のとおりです。
「空気層」が断熱効果を高める
「空気」は熱を伝えにくい性質を持っています。内窓を設置することで既存の窓との間に空気層が生まれ、断熱効果を高めます。
冷暖房費の削減
断熱性能が向上すると、外気の影響を受けにくくなり、夏は涼しく冬は暖かい室内環境を保てます。結果、エアコンの使用を抑えられ、冷暖房費の削減につながります。
遮音性・防犯性の向上
窓が二重になることで外からの騒音を遮り、室内を静かに保てます。さらに、二重窓は侵入に時間がかかることから防犯性も高まります。
健康効果
室内外の温度差が緩和されるため、ガラス面に結露が発生しにくくなります。結露を防ぐことでアレルギーの原因となるカビやダニの繁殖を抑え、健康維持に役立ちます。さらに断熱性能の向上は、冬場に起こりやすいヒートショックのリスク軽減にもつながります。
内窓は「樹脂+Low-E複層ガラス」がベストな理由

※Uw値:熱貫流率。値が低いほど熱が伝わりにくい
現在、国内で採用されている主なフレーム(窓枠)は、アルミ・アルミ樹脂複合・樹脂の3つ。既存住宅の約7割の窓のフレームはアルミ製といわれていますが、最も断熱性能に優れているのは樹脂です。
「アルミは、樹脂の約1,400倍も熱を伝えやすい素材です。断熱効果が高い樹脂ではなく、アルミ製のフレームが普及してきた理由は、加工がしやすく供給がしやすかったためです。また樹脂は従来、耐久性などに懸念があったことにも起因していますが、実際には樹脂窓には高強度の『ポリ塩化ビニル(PVC)』が使用されているため、長期間安心してお使いいただけます」
一方、窓ガラスは単板(1枚)・複層(2枚)・トリプル(3枚)と、ガラスの枚数が増えていくにつれて断熱効果が高くなります。Low-E複層ガラスは、複層ガラスの内側に熱の伝わりを抑える「Low-E膜」をコーティングして性能を高めています。
「Low-Eがコーティングされていない複層ガラスの内窓もありますが、2023年に住宅の省エネリフォームへの支援が強化されてからは、補助額が大きいLow-E複層ガラスが主流となっています」
内窓がつけられない? デメリットを解消する樹脂内窓「ウチリモ」
内窓の取付けに必要な額縁の寸法は従来、70mm以上が一般的でした。しかし、全国のマンションのうち、額縁が70mm以上なのはわずか35%に留まります。(n=964。YKK AP調べ)マンションのみならず、古い木造住宅やツーバイフォー、軽量鉄骨造の一戸建てなども窓の額縁が薄い傾向にあります。
額縁の寸法が足りない場合は、額縁を延長する「ふかし枠」を取付けたうえで内窓を施工しますが、室内側に内窓がせり出ることになるため圧迫感が出てしまいます。また、カーテンレールや家具などが干渉してふかし枠を取付けられない場合は、内窓を取付けられません。
こうした「内窓がつけられない」「圧迫感がある」といった課題を解決するのが、2025年7月に発売されたYKK APの「ウチリモ 内窓」です。
「既存住宅のうち半数程度が内窓を取付けるために必要な寸法(70mm)に足りないという調査結果でしたが、実は、ふかし枠取付け率はわずか9.4%に留まります。つまり、ふかし枠が必要なお住まいでは内窓の設置を諦めるケースが多いものと推測されます。ウチリモは、これまで施工性や意匠性を理由に内窓を取付けられなかったお住まいにも設置可能なんです」
ふかし枠なしで取付け可能

ウチリモは、断熱効果が高い複層ガラスを搭載しながらも、下枠の見込み寸法を薄くすることで、取付けに必要な額縁寸法をわずか58mmに抑えています。さらに窓額縁から最大11mm室内側に枠を持ち出すことによって、最小47mmまでふかし枠なしで設置可能です。結果、戸建て住宅の約75%、RCマンションの約55%の窓にふかし枠なしで内窓を取付けられます。
圧迫感も軽減

ふかし枠の奥行きは一般的に25mm・40mm・70mmです。40mm・70mmのふかし枠を取付けるには補強材が必要となり、その分、追加の費用がかかり、施工にも時間を要します。額縁の寸法や設置する内窓の重量によっては束タイプの補強材が必要で、意匠性が損なわれやすく、家具の配置にも制約が生じることがあります。
一方、ウチリモは額縁内にすっきり収まりやすいため圧迫感が出にくく、カーテンレールや家具などにも干渉しません。

樹脂フレームと複層ガラスで断熱
ウチリモのフレーム(窓枠)は樹脂、ガラスはLow-E複層ガラスです。フレームとガラスのダブル断熱で結露を抑制するうえに、冷暖房費の大幅な削減にも寄与します。

「ブラック」が新登場
内窓のフレームの色は白やブラウンなどが一般的で、1990年代後半に建てられた住宅のフレームはブラックが主流です。
「ウチリモの開発にあたり、新色の『カームブラック』をラインアップしました。1990年代後半のお住まいというと、ちょうどリフォームを検討する時期に差し掛かります。お好みに合わせて、既存窓と合う色の内窓をお選びいただくことができるようになりました」

補助金でお得に内窓リフォーム!「先進的窓リノベ2025事業」とは?
現在、国をあげて住宅の省エネ化を促進していることから、省エネリフォームへの補助金が非常に充実しています。内窓の取付けは、補助額最大200万円の「先進的窓リノベ2025事業」の対象です。
「樹脂フレーム・Low-E複層ガラスのウチリモは、同事業の性能区分の『S』に該当し、補助額は大(2.8m2以上)が6万5,000円、中(1.6m2以上2.8m2未満)が4万4,000円、小(0.2m2以上1.6m2未満)が2万8,000円です」
※仕様によってグレードが異なる場合があります。詳しくはこちらからご確認ください

費用・補助額シミュレーション
掃き出し窓(幅160㎝×高さ200㎝)1箇所、腰窓(幅160㎝×高さ100㎝)2箇所の計3箇所に「ウチリモ 内窓」を取付けた場合の商品代および工事費の参考価格(税込)は30万円程度です。一方、先進的窓リノベ2025事業の補助額は、15万3,000円。約50%相当が還元されます。
実際の費用は窓のサイズや枚数によって異なるため、YKK APの「かんたん診断」で自宅に合った窓と参考価格を確認してみましょう。内窓の設置を検討している場合は、窓リフォーム工事のプロである「MADOショップ」に相談するのが安心です。
「窓の断熱性を高めるにはカバー工法などの方法もありますが、補助金の還元率は内窓が最も高いです。ただし、先進的窓リノベ2025事業は、2025年12月31日までに施工と申請が完了するリフォームが対象で、補助金の消化状況によって早期終了する可能性があります。
国による断熱窓導入の集中的支援は、2022年から2025年までの3カ年計画です。来年以降、新たな補助金制度が創設される可能性はあるものの、ここまで還元率が高いかどうかは定かではありません」
まとめ
内窓(二重窓・二重サッシ)リフォームは、手軽に住まいの断熱性能を高められる効果的な方法です。YKK APの「ウチリモ 内窓」は、これまで意匠性や施工性から内窓の設置が難しかった住まいにも対応しています。
還元率が高い先進的窓リノベ2025事業を利用できるのは、2025年12月31日までです。補助金の消化状況によって早期に終了してしまう可能性があるため、お早めに施工業者にご相談ください。
更新日: / 公開日:2025.09.29










