新築よりも安い価格で購入できる中古マンションですが、理想の住まいにするために、購入に合わせてリフォームやリノベーションを検討する人も多いのではないでしょうか。

施工会社に依頼する方法もありますが、「予算をできるだけ抑えたい…」という人は、自分たちでセルフリフォーム・セルフリノベーションすることも可能です。

今回は、一級建築士事務所アルド住宅研究所の弘中純一さんにお話を伺い、中古マンションでセルフリフォーム・リノベーションするときのポイントや費用相場、失敗しないための注意点などについて解説します。
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リフォームとリノベーションの違い

 

まず、リフォームとリノベーションの意味合いの違いですが、実はあいまいな部分が多いのが現状です。

 

一般的には、リフォームは劣化している部分を元に戻す修繕工事のことを指し、リノベーションは新たな価値を付加して理想の住まいにすることを指します。ただし、厳密な言葉の定義があるわけではないため、工事内容がリフォームといえるようなものでも、リノベーションと呼んでいるケースも多いようです。

 

「たとえば、一戸建て住宅であれば、間取りの変更を含むような大規模リフォームは、構造体部分も工事範囲となり、リノベーションと呼ぶのにふさわしいものです。一方、マンションの場合は、骨組みだけを残して解体し、間取りや内装を変える“スケルトンリフォーム”があります。スケルトンリフォームをリノベーションと呼ぶのは一般的な使い方ですが、会社によっては部分的なリフォームをリノベーションと呼んでいることもあります」(弘中さん、以下略)

中古マンションでセルフリノベーションできる場所

 

大規模なリフォームやスケルトンリフォームを会社に頼まずに行うことは難しいですが、弘中さんによると、具体的には以下のような内容であれば、DIYでカバーすることができるとのことです。

◆中古マンションのセルフリノベーションの具体例

  • 塗装や塗り壁
  • 壁紙貼り
  • 洗面化粧台や洗浄便座の交換
  • 水栓類の交換
  • 木製の収納棚の作成
  • 照明器具の交換 など

「照明器具の新設は電気配線が必要となり、資格が必要になります。DIYで可能な範囲は限られますので、注意が必要です」

 

上記の他にも、間取り変更を行う際は、壊せる構造の壁なのか、残しておくべき柱はどれかなど、専門知識が求められます。自分たちが行いたい工事の内容がDIYでできることなのか、心配な人は専門家に相談してみるのもおすすめです。

 

「資格者が必要な部分については、専門会社に工事をお願いする方法もあります。ただし、その場合は工事完成後の責任の所在など、専門会社と協議して合意書を交わすなどの配慮が必要でしょう」

 

中古マンションのセルフリノベーションは、工事に資格が必要になる部分に関してはDIYではできません。たとえば、電気配線の新設や給水・給湯などの水道配管に関わる工事、玄関やドアなどの共用部分の交換などがこれに含まれます。

 

「玄関ドアや窓などは共用部分になるので、交換などは管理組合の承認が必要であり、施工品質の面からもDIYは望ましくありません。また、間仕切りの変更は壁式コンクリート造のマンションの場合、間仕切り部分に耐力壁が配置されていることもあり、耐力壁は共用部分である構造躯体になります。変更や改造などはできず、手を加えてはいけない部分になります」

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中古マンションのセルフリノベーションにかかる期間と費用の目安

 

セルフリノベーションの工事期間の目安は、工事にどの程度時間を割けるのかがポイントになります。たとえば、1日6時間程度の作業時間が取れる場合のケースで見ていきましょう。

◆居室(6畳)の塗り替えをする場合

  1. 室内の片付けと養生で1日
  2. もともとの状態が悪い場合は下地調整で1日
  3. 下塗り1日
  4. 上塗り1日 ※ただし、材料により中塗りが必要な場合も有り
  5. 養生1日

    合計4日~1週間が目安

◆間取りを変更する場合(居室6畳の2部屋を1部屋にする場合)

  1. 室内の片付けと廊下など周辺の養生、照明器具やコンセントカバーの撤去などで1日
  2. 間仕切り壁の解体と発生材処理(工事で発生したゴミの処理)で1日
  3. 建具枠の取り付けと電気配線(外注)で1日
  4. 間仕切り撤去部まわりの床の補修で1日
  5. 壁・天井の張り替えや塗り替えで3日~5日
  6. 撤去した照明器具やコンセントの設置、さらに養生撤去と清掃で1日

    合計1週間~10日が目安

◆キッチン設備を交換する場合

  1. 床の養生と既存キッチンの取り外し・処分で1日~
  2. 新しいキッチンの設置、水栓などの接続、キッチン周りのシーリング、養生の撤去と清掃で1日

    合計2日以上が目安

「キッチン設備の交換は、一人ではできない作業です。水栓の接続は専用工具が必要になることもあり、プロに頼むほうが確実でしょう。ガス配管や接続は、必ずガス供給会社に来てもらわなければなりません」

 

セルフリノベーションにかかる費用は、材料費と部品代、住宅設備器具代、工具代がメインで、ホームセンターやインターネットなどで購入できます。

 

中古マンションのリノベーションで想定される材料費の内訳は、以下のとおりです。

材料費の内訳

  • 壁紙:1,000円未満/平米
  • 塗料:500~1,000円/平米
  • 珪藻土(壁紙用):500~1,000円/平米
  • しっくい:500~1,000円/平米
  • タイルカーペット:1,500~2,000円/平米
  • クッションフロア:600~1,000円/平米
  • システムキッチン:約20万円/セット~
  • 洗面化粧台:約2万円/セット~
  • 洗浄便座:約1万5,000円/台~
  • 室内ドアセット:約1万円/セット~
  • 工具代:数千円~3万円程度

「本格的なリノベーションとなると、専門会社に依頼した場合は数百万~1,000万円程かかります。DIYでリノベーションをする場合は、資材や住宅設備などの購入費用だけで済むので、会社に依頼した場合と比較すると、約35~40%まで抑えられるでしょう」

中古マンションのセルフリノベーションをする際の注意点

 

中古マンションは一戸建てとは違い、セルフリノベーションする際にはいくつか注意点があります。弘中さんによると、まずは気をつけたいのがマンションの構造だそうです。

 

「マンションのほとんどは鉄筋コンクリート造か鉄骨鉄筋コンクリート造であり、構造方式はラーメン構造が多いです。ラーメン構造は専有部分内に構造躯体がないため、壁・床・天井スラブで囲まれた内部空間は、自由に改造や変更ができます。しかし、5階建て以下のマンションでは壁式構造になっているケースが多く、専有部分内にも耐力壁が存在します。耐力壁には手をつけることができないので、間取りの変更ができない場合があります」

 

この他にも、古いマンションではスラブ下配管になっているケースがあり、水回りの移動が難しいこともあるそうです。

 

「スラブ下配管とは、下階の住戸の天井裏に配管がある方式です。この場合は配管の移動、つまり水回り設備の位置変更はほとんどできません。また、仮に工事をしたとしても、工事中のミスやアクシデントにより、下階の住戸に水漏れ事故を起こす可能性があります」

 

中古マンションでセルフリノベーションをする際は、マンションの構造や配管への影響を考えなくてはなりません。また、改装工事についてはマンションの管理組合で細かく規則が決められています。工事の届け出も必要なため、よく確認することが大切です。

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中古マンションのセルフリノベーションをする前に準備するもの

 

中古マンションのセルフリノベーションをする際に大切なのが、事前の準備です。

 

「マンションの構造方式は、必ず確認するように。まずは、必要な材料や工具をリストアップし、作業の工程も頭の中だけでなく紙に書いてみましょう。そうすると、忘れているものに気付くこともあります。インターネットなどで体験談を参考にするのもいいでしょう。また、マンションの管理組合への提出書類は数種類あることもありますので、きちんと用意するようにしましょう」

 

セルフリノベーションは作業そのものが楽しいというイメージもありますが、事前の準備をせずに行うと、失敗に終わる可能性もあります。マンションの管理組合への確認と合わせてマンションの構造についても確認し、作業工程をイメージしながら必要な材料、養生に必要なテープやシートなどを準備しましょう。

 

「作業の前に丁寧な養生をすると、仕上がりがまるで違います。“段取り八分”という言葉のとおり、入念な準備が大切です」

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