アレルギー性の住宅病の社会問題化とともに、室内環境を健康に保つ機能を持つ、「天然由来の壁仕上げ材」に注目が集まってきています。有害化学物質を吸着し、湿度を調節するだけでなく、耐久性や耐火性にも優れた天然の壁仕上げ材は、エコリフォームを実現する建築材料といえそうです。
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■CO2やホルムアルデヒドを吸着固定する水硬性石灰

 

「エコな部屋を借りる」で取り上げた「畑の付いているエコアパート」の1室でも壁に採用されていた「NHL(=Natural Hydraulic Lime、天然水硬性石灰)」は、フランス産の100%天然の壁仕上げ材です。粘土質を含む石灰岩から作られたNHLは、古代ローマ建築にも使用された「セメントのルーツ」といえる存在で、内環境を健康に保つさまざまな機能があります。

  • 空気中のCO2を吸収しながら硬化し、時間をかけて元の石灰岩に戻る
  • 調湿性能が高い。外気の湿度が高いときには吸湿し、湿度が低く乾燥したときには水分を放出。室内の湿度を安定した状態に保とうとゆるやかに働く
  • 強アルカリ性である

※ホルムアルデヒドなどの揮発性化学物質を強力に吸着固定する力をもつ。(揮発性化学物質のほとんどが酸性なので、強アルカリ性のNHLに吸着された後、内部で中和されて固定されてしまう)

 

※消臭性に優れている。(強アルカリ性はダニ・カビの発生も抑え、さらに死滅させる効果を持っている)

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これらの機能の中でも、特に特徴的な「ホルムアルデヒドなどの化学物質を吸着する」という機能についての興味深い実験データがあります(図7-1)

 

実験内容:試験体をを密閉した袋内に入れ、ホルムアルデヒド100ppmを添加。ガス濃度は検知管で測定し、24時間ごとに5回、72時間後1回、ガスを再添加する作業を繰り返した。

 

結果としては、比較対象のタイル系健康壁材と比べて、吸着後の放散が少ないことが見受けられます。更に濃度1ppmの実験では24時間で約 0.1ppmまで低下することが確認されています。

 

ちなみに1ppmとは塗りたてのペンキ程度の濃度。現場でもペンキを塗装した直後にNHLを施工すると、揮発臭が無くなるという報告があるといいます。

 

図7-1:NHLが持つ化学物質の吸着性能

図7-1:NHLが持つ化学物質の吸着性能

そのほか、乾燥している冬にNHLの調湿特性を実験したものがこちら(図7-2)です。床から1500mmの高さの湿度を計測しました。この結果を見ると、窓開放後、一旦下がった湿度が緩やかに一定の湿度へと回復しているのが分かります。また、逆に高湿度の夏には、湿度を下げる効果が確認されているそうです。室内の湿度を一定に保つ、NHLの性質がはっきりとわかります。

 

工学院大学中島研究室調べ。乾燥している冬にNHLの調湿特性を実験。床から1500mmの高さの湿度を計測。窓開放後、一旦下がった湿度が緩やかに一定の湿度へと回復している。逆に高湿度の夏には、湿度を下げる効果が確認されているそうだ。

 

NHLは石灰岩ですから、それ自体は当然不燃です。独居老人世帯などの室内や、住宅密集地の外壁に効果的に使用すれば、防火対策上のメリットも期待できるでしょう。また、植物繊維など、空気層を持つ骨材(セメントの場合の砂の役割に相当)を混ぜることで断熱性能を高めることもできます。

 

図7-2:NHLが持つ吸湿性能

図7-2:NHLが持つ吸湿性能

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■NHLとの最大の違いは色

 

NHLと同様に天然素材の壁仕上げ材に「天然スイスしっくい」があります。調湿性能や化学物質吸収力などの室内環境を快適、健康に保つ性能はNHLと非常に似通ったものがあるようです。

 

大きな違いは色。NHLの薄いベージュ色に対して、天然スイスしっくいは非常に明るい白色で、それが半永久的に変わらない点が特徴です。

 

 

施主がDIYで塗った自宅マンションの壁の写真。青い天然顔料で着色してある。壁と天井の角など複雑な形状をした部分でも慣れてくれば十分可能だとか

施主がDIYで塗った自宅マンションの壁の写真。青い天然顔料で着色してある。壁と天井の角など複雑な形状をした部分でも慣れてくれば十分可能だとか

  • 強アルカリ性のスイス産石灰
  • 陶土やセルロース繊維などの天然素材の骨材を調合してあり、水を混ぜて練るだけで施工できる壁仕上げ材として商品化されている
  • 非常に明るい白色で、それが半永久的に変わらない
  • 内壁・外壁に使用でき、着色も可能
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この他、最近注目されている100%天然由来の壁仕上げ材には、帆立貝などの貝殻を焼成して作った商品などがあります。調湿性能や化学物質吸収力などの性能にはそれぞれ差があるでしょうが、ほぼ同様の室内環境性能を持っていると考えてよさそうです。注意したいのは、接着剤などの化学物質を含まないかどうか。また、こうした天然素材100%の壁仕上げ材の室内環境性能は、塗る厚みによって効果も変わってきます。

 

これらの仕上げ材で壁や天井などを覆ってゆくだけで、室内環境を健康に変えられるのですから、エコリフォームの手法として大いに注目したい建材です。また、着色したりテクスチャーの変化を加えることで、壁全体をオブジェのように仕上げることができるので、個性的な住まいの演出も可能です。

 

建築家不破博志さんが開発した手法「NHL籾殻の版築」で仕上げられた中古マンションの壁(奥のベージュ色)。地層のように固められた表情が芸術品のような趣を放っている

建築家不破博志さんが開発した手法「NHL籾殻の版築」で仕上げられた中古マンションの壁(奥のベージュ色)。地層のように固められた表情が芸術品のような趣を放っている

 

次のページでは、DIYとプロにお願いした、エコリフォーム事例を紹介します

01 天然材の室内環境性能
 ・100%天然壁の効果
 ・天然壁リフォーム事例

 

02 減税と優良基準づくり
 ・エコリフォーム減税
 ・適合リノベーション基準

 

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更新日: / 公開日:2013.03.10