北大阪急行線延伸で新駅「箕面船場阪大前」「箕面萱野」が開業
2024年3月23日、Osaka Metro御堂筋線と相互乗り入れを行う北大阪急行線が千里中央駅から北に約2.5km延伸され、新駅「箕面船場阪大前」「箕面萱野」が開業する。
新駅付近からから大阪市内へのアクセスは、これまで路線バスを利用して千里中央駅に行くルートが主流だったが、延伸開業後は新駅から都心方面に向かう列車に乗車できるようになり、利便性が飛躍的に向上する。北大阪急行線と並走する新御堂筋はこれまで深刻な交通渋滞が発生していたが、延伸により移動手段の選択肢が増えることで渋滞の緩和も期待される。
また、交通利便性の向上による居住ニーズの高まりも想定される。開業前の直近3年で、中古マンション・中古一戸建ての価格、賃貸物件の賃料相場にどのような影響が出ているのか、LIFULL HOME'Sに掲載された物件のうち、新駅の半径500m圏内(※)の物件の平均価格・賃料の推移を、新駅がある箕面市全域、大阪府全域と比較した。
※新駅の半径500m圏内:箕面萱野駅および箕面船場阪大前駅を中心とした半径500mの円に町域が含まれる町丁(箕面市船場東1~3丁目、船場西1~3丁目、萱野1~5丁目、稲6丁目、北緑丘3丁目、坊島3~5丁目、西宿1~3丁目、白島1・2丁目、豊中市新千里西町3丁目、新千里北町1・2丁目)
中古マンション・一戸建ての物件価格は3年間で約1.5倍に上昇
中古マンション・中古一戸建ての平均価格は、箕面市全域では2021年2月が3,169万円、2024年1月が3,653万円と3年間で15.3%上昇している。一方、延伸により開業する新駅「箕面船場阪大前」「箕面萱野」のそれぞれ半径500m圏内にある物件に絞った場合、2021年2月が3,838万円、2024年1月は5,685万円と3年間で48.1%の上昇となり、箕面市全域を大きく上回る伸びを示した。
箕面市、大阪府全域の価格水準がともに上昇基調にあるなかでも、延伸エリアの中古マンション・中古一戸建て価格の上昇は著しく、北大阪急行線の延伸が沿線の不動産市場に影響しているといえそうだ。
開業を前に賃貸物件の家賃相場も上昇傾向に
続いて賃貸物件市場に目を転ずる。
賃貸物件の平均賃料は、箕面市全域では2021年2月が5万8,098円、2024年1月が5万7,359円と3年間で1.3%下降している。一方、延伸により開業する新駅「箕面船場阪大前」「箕面萱野」のそれぞれ半径500m圏内にある物件に絞った場合、ボラティリティが大きいものの、2021年2月は5万8,701円、2024年1月は6万9,814万円と3年間で18.9%上昇した。一般的に家賃相場は粘着性が高く、3月の延伸開業以降にさらに強含む可能性もある。
需要の増加で賃貸物件の入居率も上昇か?
また、賃貸市場ではLIFULL HOME'Sに掲載された物件数にも、延伸の影響が見て取れる。
延伸により開業する新駅「箕面船場阪大前」「箕面萱野」のそれぞれ半径500m圏内の掲載物件数は、2023年7月頃まで1,000件前後で推移していたが、2023年下半期以降減少傾向に。2023年12月には524件と過去3年間で最少となった。
不動産会社は空室に入居者を募集する目的でLIFULL HOME'Sに物件を掲載するが、同エリアでは賃貸需要の増加に伴って既存物件の空室が少なくなっていること、さらに、空室が発生しても募集開始後すぐに申し込みが入るなどで、1物件あたりの掲載期間が短くなっていることが、掲載物件数減少の主な要因と考えられる。
箕面市のますますの発展に期待がかかる
北大阪急行線の延伸構想は、1985年の第三次箕面市総合計画にさかのぼる。構想から40年近くを経て、箕面市の悲願がようやく実現することとなったのだ。今回の延伸では、箕面萱野駅前に整備されるバスターミナルを中心にバス路線が再編されたり、箕面船場阪大前駅近くに新たな文化施設が建設されたり、沿線のみなず市域全体にその効果が及ぶことが期待されている。
延伸によって交通利便性が向上するエリアでは、当然居住需要が高まることが予想され、調査でも新駅周辺で売買物件・賃貸物件ともに価格・家賃相場が上昇していることがわかった。この背景には、居住需要の増加に加え、居住検討者の属性の変化があると考えられる。都心アクセスが脆弱だった3年前は、主に近隣へ通勤・通学する人々の需要がメインだったが、延伸で都心アクセスが強化されることで、都心へ通勤する人々からの需要が増加。大阪市内や吹田市などと比較検討されることとなり、検討者の予算感も上がっていると思われる。
実際、箕面船場阪大前駅周辺を例に挙げると、2021年春にLIFULL HOME'Sに掲載された新築賃貸物件は、そのほとんどが単身向け物件だった。同年近隣に移転してきた大阪大学箕面キャンパスの学生が主なターゲットだ。しかし、2024年2月のある時点で掲載されている同駅周辺の新築賃貸物件は、そのすべてがファミリー向け物件だった。
新駅周辺では、これらの需要を取り込もうと現在も開発が続く。2025年1月には箕面船場阪大前駅直結の分譲マンション「Brillia Tower 箕面船場 TOP OF THE HILL」が完成予定。3LDKの価格帯は6,000万円台以上と、これまでの箕面市の相場からするとやや高めだ。
一般的に、新築価格の上昇は中古価格の上昇へとつながる。さらに相場の上昇は買い控えを誘発し、ファミリー層を中心とした賃貸需要を増加させ、家賃相場に影響を及ぼすとも考えられる。このように、新駅周辺の開発が落ち着くまでは、沿線では売買・賃貸問わず相場の上昇が続く可能性がありそうだ。
大阪の大動脈である御堂筋線は半世紀以上にわたり「千里中央」の行先を掲げて走り続た。その間の千里を含む北摂の発展はご存じのとおりだ。これに代わる「箕面」の2文字は、箕面にどのような輝きをもたらすのだろうか。北大阪急行線の延伸をきっかけとした、箕面市のますますの発展に期待したい。
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