物価上昇が続く中、新生活の住まい探しシーズン到来

物価上昇が続く中、新生活の住まい探しシーズン到来

新年を迎え、春になれば就職や進学などで一人暮らしを始める人は多いだろう。何かと出費がかさむ新生活。生活費はできるだけ抑えたいが、世界的なインフレの影響で、日本もさまざまな分野で物価上昇が続いている。総務省が発表した2022年10月度の消費者物価指数(総合指数)は、前年同月比3.7%の上昇、記録的な円安の影響を受けた輸入物価指数(円ベース)は、前年比48.5%の上昇となった。

不動産市場も金融緩和による低金利政策に加え、建築資材や人件費の高騰など価格上昇要因が重なり、物件価格の高騰が続いている。LIFULL HOME`S住まいインデックスによれば、東京都の標準的な中古マンションの価格は直近の3年間で17.33%程度上昇している。それに続くように賃貸物件の賃料も上昇傾向にある。東京都の標準的な賃貸マンションの家賃は、直近の3年間で2.23%程度上昇している。家賃7万円だとしたら月々約1,500円の増額だ。

家計で大きな割合を占める住居費はできるだけ抑えたいものだが、都心の企業で働く人・都心の学校に通う人にとって「通勤・通学の利便性」も住まい選びで妥協したくない要素の一つだろう。しかし都心へのアクセスを優先するほど一般的に家賃は高くなる。
そこで今回LIFULL HOME'S PRESSでは、都心に毎日通う人をターゲットに、「【一人暮らし×都心通勤・通学編】住みやすさのわりに家賃が安い駅ランキング2023」と題して、「都心に近く・住みやすく・かつ家賃も抑えられる街」、そのような3拍子そろった街の可視化を試みた。ランキングの概要を見ていこう。

物価上昇が続く中、新生活の住まい探しシーズン到来

【一人暮らし×都心通勤・通学編】住みやすさのわりに家賃が安い駅ランキング2023 概要

本ランキングの対象駅は、都心の職場や学校に通いやすい駅として、JR山手線各駅、ならびに山手線各駅から20分圏内にある駅としている。
また「駅周辺の施設充実度が高い(※1)」ことを「住みやすい」と定義し、不動産・住宅情報サイトLIFULL HOME'Sの独自データをもとに、各駅から徒歩15分圏内の単身世帯用物件の平均家賃とその駅周辺の施設充実度から「理論家賃(駅周辺の住みやすさに見合う妥当な家賃)」を算出。その理論家賃と比べ、実際の平均家賃が安い駅をランキングにした。これは「都心に通いやすく、住環境が優れているわりに家賃を抑えて一人暮らし用の住まいを借りられる駅」を表しているといえる。 対象物件は、築40年以内、駅徒歩15分以内、1R・1K・1DK、10平米~45平米未満の賃貸マンションとした。

※1:駅周辺の施設充実度は、LIFULL HOME'S住まいインデックスで用いられるWalkability Index(ウォーカビリティインデックス)の総合スコアを参照。
Walkability Indexとは、駅から徒歩15分以内でアクセス可能な施設(スーパー、コンビニ、公園、飲食店、カフェ、文化施設、子育て・教育施設、医療施設など)を、分類ごとの周辺立地数をもとに、その充実度を100点満点でスコア化したもの。東京大学・株式会社日建設計総合研究所が共同で研究・開発を進めている、不動産の立地環境を暮らしやすさの観点から指標化した日本初のデータ。

駅周辺充実度と平均家賃より理論家賃を算出。理論家賃に比べ安い駅をランキング化(Excel® にて算出)駅周辺充実度と平均家賃より理論家賃を算出。理論家賃に比べ安い駅をランキング化(Excel® にて算出)

1位 亀有駅、2位 川口駅、3位 金町駅。常磐線沿いの各駅が上位に

ランキング結果を見ていこう。1位は「亀有」駅(JR常磐線・東京都葛飾区)、2位「川口」駅(JR京浜東北線・埼玉県川口市)、3位「金町」駅(JR常磐線・東京都葛飾区)、9位には「綾瀬」駅(JR常磐線・東京都足立区)、10位には「北千住」駅(JR常磐線・東京都足立区)と、トップ10に常磐沿線駅が4駅ランクインする結果となった。

1位の「亀有」駅は、大手町駅まで24分 、東京駅まで33分、新宿駅まで40分と交通利便性が高く、駅から徒歩15分以内でアクセス可能な施設の充実度をスコア化した「駅周辺充実度」は、100点満点のうち85ポイント(※2)となった。「亀有」駅は今回の対象駅の中で、駅周辺環境の充実度から算出した理論家賃と実際の平均賃料との差額が最も大きく、マイナス4.52万円。これは住環境から見た妥当な家賃に対し、数字上は4.52万円低い家賃相場で借りられることを意味している。

常磐線全駅のなかで亀有駅の家賃相場はほぼ中央くらいだが、そのわりに駅前環境が充実しており、また亀有銀座商店街や亀有北口中通り商店街も活気があり、家賃に対するコストパフォーマンスが高い街といえるだろう。カテゴリー別に見ると「スーパー」のスコアが91.0、「弁当・総菜」のスコアが87.0と、仕事や学業で忙しい一人暮らし層にとってうれしい施設が充実している。

※2:LIFULL HOME'S住まいインデックス「亀有駅の住まいと暮らしやすさ」
https://lifullhomes-index.jp/info/areas/tokyo-pref/01038-st/
亀有駅の賃貸物件:
https://www.homes.co.jp/chintai/theme/15104/tokyo/kameari_01038-st/list/

2位にランクインした「川口」駅は、理論家賃と平均賃料との差額がマイナス4.38万円と、「亀有」駅に続き僅差で2位となった。「川口」駅は、2021年のJR駅別乗車人数は埼玉県の中で大宮、浦和に次ぐ3位、埼玉エリアの中心駅の一つといえる。池袋駅まで19分、新宿駅まで24分、渋谷駅まで30分と、東京の主要駅に30分前後でアクセスできるなど交通利便性に優れるほか、「飲食店」のスコアが83.0、「スーパー」が87.0、「コンビニ」が82.0と駅前施設が充実している(※3)。

※3:LIFULL HOME'S住まいインデックス「川口駅の住まいと暮らしやすさ」
https://lifullhomes-index.jp/info/areas/saitama-pref/00599-st/
川口駅の賃貸物件:
https://www.homes.co.jp/chintai/theme/15104/saitama/kawaguchi_00599-st/list/

【一人暮らし×都心通勤・通学編】住みやすさのわりに家賃が安い駅ランキング2023 ~ 1位~10位【一人暮らし×都心通勤・通学編】住みやすさのわりに家賃が安い駅ランキング2023 ~ 1位~10位
【一人暮らし×都心通勤・通学編】住みやすさのわりに家賃が安い駅ランキング2023 ~ 1位~10位1位「亀有」駅前の様子。亀有駅南口には70店舗ほどが軒を連ねる「ゆうろーど(亀有銀座商店街)」、北口には亀有北口一番街商店会などがあり、日常の買い物に便利な街だ。駅から少し歩けば落ち着いた住宅街が広がる

3位は、JR常磐線と京成金町線、直通運転の東京メトロ千代田線も含めれば実質3路線が利用できる金町駅。交通利便性に優れながらも平均家賃が7.68万円と、ランキングトップ10の中では2番目に低い賃料であった。下町情緒が残る街並みが魅力であるが、駅の南口・北口それぞれで大規模な再開発が進んでいる。金町駅の住まいインデックス(※4)によれば、東京都の標準的な中古マンション価格の直近3年間の変動率17.33%に対し、金町駅は19.94%とやや高い推移を見せている。一般的に家賃は売買価格の変動より遅れて動く傾向があるため、早いうちに部屋を借りれば比較的安い家賃のまま街の利便性を享受できるといえそうだ。

※4:LIFULL HOME'S住まいインデックス「金町駅の住まいと暮らしやすさ」
https://lifullhomes-index.jp/info/areas/tokyo-pref/01039-st/
金町駅の賃貸物件:
https://www.homes.co.jp/chintai/theme/15104/tokyo/kanamachi_01039-st/list/

【一人暮らし×都心通勤・通学編】住みやすさのわりに家賃が安い駅ランキング2023 ~ 1位~10位2位となった「川口」駅は、荒川を挟み東京都に隣接した街。駅前は大型商業施設が立ち並ぶ。写真は駅東口につくられた公共広場「キュポ・ラ広場」
【一人暮らし×都心通勤・通学編】住みやすさのわりに家賃が安い駅ランキング2023 ~ 1位~10位家賃が抑えめで、都心へのアクセスにも優れる金町駅。北口徒歩圏内には東京23区内で最大規模の広さを有する「水元公園」もあり、四季折々の自然を楽しめる

家賃と住みやすさのバランス重視なら、城東エリア・東京との県境に位置する各駅

11~30位は下記の画像のとおりの顔ぶれとなった。全体の傾向としては、下町の風情が残る城東エリアの各駅のほか、4位「川崎」駅(JR東海道本線・神奈川県川崎市)や12位の「川口元郷」駅(埼玉高速鉄道・埼玉県川口市)のように、東京都と埼玉県、神奈川県、千葉県の県境に位置する駅が上位にランクインしている。環状7号線沿いおよびその周辺地域の街とも言い換えることもできるだろう。都心へ通勤・通学しやすく、都市の利便性を享受しながら比較的家賃を抑えて暮らすことができる駅といえる。

【一人暮らし×都心通勤・通学編】住みやすさのわりに家賃が安い駅ランキング2023 ~ 11位~20位【一人暮らし×都心通勤・通学編】住みやすさのわりに家賃が安い駅ランキング2023 ~ 11位~20位
【一人暮らし×都心通勤・通学編】住みやすさのわりに家賃が安い駅ランキング2023 ~ 11位~20位【一人暮らし×都心通勤・通学編】住みやすさのわりに家賃が安い駅ランキング2023 ~ 21位~30位

複数駅が上位となった城東エリアであるが、都心に近いわりに家賃が抑えられている要因の一つに、荒川と江戸川の間に位置する地理的条件がある。ハザードマップ上で、河川が氾濫した際に浸水が想定される「洪水浸水想定区域」にかかる可能性が高い地域であり、想定水深は物件の立地によるが、そのリスクも家賃相場に反映される要素の一つと考えられる。

対照的に、11~30位にランクインしたのが私鉄沿線の城西エリアだ。18位に「練馬」駅(西武池袋線・東京都練馬区)、22位に「石神井公園」駅(西武池袋線・東京都練馬区)、23位に「富士見台」駅(西武池袋線・東京都練馬区)など、練馬区の駅が多くランクインしている。河川周辺のハザードマップにかかる地域もあるが、想定される水深は比較的浅い。また、練馬区は武蔵野台地のほぼ中央に位置するため、地震にも強いとされている。トップ10の駅に比べると平均家賃はわずかながら高くなるが、自然災害へのリスクをどう捉えるかも、一人暮らしの街選びのポイントとなるだろう。

【一人暮らし×都心通勤・通学編】住みやすさのわりに家賃が安い駅ランキング2023 ~ 11位~20位
【一人暮らし×都心通勤・通学編】住みやすさのわりに家賃が安い駅ランキング2023 ~ 11位~20位18位にランクインした「練馬」駅、北口のペデストリアンデッキと商業施設。西武池袋線のほか、東京メトロへの直通運転と都営大江戸線も利用できるターミナル駅である

ライフスタイルの多様化に伴い、住まい選びの軸も変わる

テレワークの定着など、新型コロナウイルス感染症の拡大は私たちの日常に大きな変化をもたらした。ただ、それまでの暮らしが新たなものに置き換わったわけでなく、自宅で毎日フルリモートで働く人がいる一方、週に何回かは都心のオフィスへ出社する人、毎日都心へ通勤する人など、ライフスタイルが多様化しているといえる。ユーザー一人ひとりが重視する住まい選びの条件も、コロナ前と比べ変化が起きているだろう。

LIFULL HOME`S PRESSではそのようなさまざまなライフスタイルのユーザーを想定し、第一弾として「都心に毎日通う人」に向け、交通利便性・住みやすさ・家賃、本来相反するといえる3つの要素をもとに、よりバランスのいい駅の可視化を試みた。2023年1月中に、同様のランキング【一人暮らし×テレワーク編】【二人暮らし×都心通勤・通学編】【二人暮らし×テレワーク編】を順次発表していく予定だ。

ライフスタイルにより街選びは変わる。駅前の施設充実度を重視するなら7位「吉祥寺」駅(平均家賃11.07万円)に注目だ。「駅周辺充実度」のスコアが上位30駅の中で突出しているが、近い駅前環境の「池袋」駅(平均家賃12.11万円)、「秋葉原」駅(13.34万円)と比較すれば、家賃を抑えて暮らすことができるライフスタイルにより街選びは変わる。駅前の施設充実度を重視するなら7位「吉祥寺」駅(平均家賃11.07万円)に注目だ。「駅周辺充実度」のスコアが上位30駅の中で突出しているが、近い駅前環境の「池袋」駅(平均家賃12.11万円)、「秋葉原」駅(13.34万円)と比較すれば、家賃を抑えて暮らすことができる

■ランキング調査概要
・対象駅:1都3県(東京・神奈川・千葉・埼玉)に所在する全駅のうち、JR山手線各駅、ならびに山手線各駅から20分圏内の全駅、また掲載物件200件以上の駅
・対象物件:築40年以内、駅徒歩15分以内、1R・1K・1DK、10平米以上~45平米未満の賃貸マンション
・対象期間:(家賃・掲載物件)2021年10月~2022年9月・(駅周辺充実度)2022年10月時点
・算出方法:駅ごとの対象物件の平均家賃と駅周辺の施設充実度から「理論家賃(駅周辺の住みやすさに見合う妥当な家賃)」を算出、その理論家賃と比べて実際の平均家賃が安い駅をランキング化
・集計分析:LIFULL HOME'S事業本部 リサーチグループ

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