「働き方改革」の一環で注目が集まるテレワークの普及
日本経済の再生、一億総活躍社会実現に向けて、政府が"最大のチャレンジ"としているのが働き方改革の実現だ。その働き方改革実行計画のひとつ、「柔軟な働き方がしやすい環境整備」としてテレワーク※の推進が進められている。厚生労働省や総務省など、各省でも情報発信や促進がされているが、近年は民間企業による個々の取組みも目立つようになってきた。
テレワークにより、ワークライフバランスの実現や、女性や高齢者の就業機会の拡大に繋がるなどの効果が期待されているが、実際の普及状況はどうなのだろうか。2018年3月28日、国土交通省発表の「平成29年度テレワーク人口実態調査」の結果をみていこう。
勤務先にテレワーク制度等があり、かつ、普段仕事を行う事業所・仕事場とは異なる場所で仕事をしたことがあると回答した人は、9.0%と、2016年の7.7%より1.3 ポイント上昇した。政府が掲げる、「世界最先端IT 国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」のテレワークの目標は2020年で15.4%であり、まだまだ目標との開きがあることがわかる。「テレワークを実施してみたい」と回答している非テレワーカーは39.8%おり、テレワークの実施意向と実際との差も見られる。
※テレワーク:インターネットなどのICT(情報通信技術)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方のこと
業態、企業規模により普及度合いに差が
では、どういった事業に就いている人がテレワークをしているのだろう。雇用型テレワーカーを割合の多い順に見ると、「情報通信業」が最も多く33.8%、次いで「学術研究、専門・技術サービス業」が27%であった。最も普及度が低いのが「宿泊業・飲食業」で7.2%、「医療、福祉」8.4%、「生活関連サービス業、娯楽業」8.6%なども低い。接客業やサービス関連業が低い傾向にあるようだ。職種別では、「管理職」33.2%、「営業」29.2%、「研究職」28.7%の割合が大きい。企業がテレワークを導入するにあたり、一部の職種のみ認めている割合が70.3%と大きく、対象は「専門・技術職」約34%、次いで「営業」「管理職」「事務職」がそれぞれ3割前後であることが理由のひとつとして考えられる。
企業の導入状況はというと、雇用型テレワーカーのうち、「勤務先にテレワーク制度等がある」と回答したのは16.3%だった。前回調査の14.2%より2.1ポイント上昇した。制度等があると回答した人のうち、テレワーカーの割合が55.3%であるのに対し、「制度等がない」と回答した人のテレワーカー割合は6.9%と、制度の導入状況により普及度合いに大きく差が見られる。
また、勤務先の導入状況は企業規模により差がある結果となった。従業員数1,000人以上の企業で、導入割合が最も高く25.1%、以降、従業員数が減るほど導入割合は低くなる。1~19人、20~99人ではともに11%であった。
改善が必要な点は
勤務先にテレワーク制度がある人は、どういった点を課題に感じているのだろう。改善するべき点として、「テレワーク制度等の対象者の拡大」を挙げる人が最も多く30.2%。次に「テレワークの実施可能頻度の拡大」22.1%、「テレワークする際の手続きの簡略化」19.7%であった。
なお、回答者全体の認知度については、テレワークという働き方を「知っていた」が24.8%、「聞いたことはあったが内容はよく知らない」37.7%、「知らなかった」37.4%である。企業の導入促進と同時に、テレワークという働き方の理解を進める必要もあるようだ。
厚生労働省は、テレワークの導入を検討している企業や担当者向けにテレワークの運用・導入ガイドブック「テレワークで はじめる 働き方改革」を作成している。2012年、ロンドン五輪による交通の混雑を避けるため、ロンドン市内の企業の約8割がテレワークを導入した。総務省では、東京大会の開会式にあたる7月24日を「テレワーク・デイ」とし、参加する企業を募っている。各省や自治体以外にも、テレワークを導入する企業のニュースを見聞きする機会が増えた。各省や自治体、民間の活発な動きにより、今後テレワークの普及が加速度的に進むことに期待したい。
テレワークで はじめる 働き方改革(厚生労働省)
https://work-holiday.mhlw.go.jp/material/pdf/category7/01_01.pdf
公開日:




