全国の商業地の基準地価が10年ぶりに上昇へ
2017年9月19日、国土交通省から7月1日時点の基準地価(都道府県地価調査価格)が発表された。
基準地価は、各都道府県の調査を基にして9月下旬に公表される地価指標の一つだ。同じく土地の適正な価値を判定する指標の一つである公示地価の場合、判定する主体が国であるのに対し、基準地価の判定主体は各都道府県である。
また、調査対象範囲も、公示地価が原則として都市計画法で規定する「都市計画区域」を対象とするのに対し、基準地価は、都市計画区域外も対象とするほか、「林地」も含めている。
今回の基準地価では、全国の商業地での平均変動率は昨年と比べて0.5%の上昇となっており、昨年が0.005%とほぼ横ばいだったため、10年ぶりに上昇したこととなった。上昇した背景には、外国人観光客の増加などによる店舗やオフィス需要の高まりが要因の一つとして考えられる。対して、全用途と住宅地においては、それぞれマイナス0.6%と、引き続き減少が続いているものの、その下落幅は8年連続で縮小している。
各都市では、それぞれどのような動きを見せたのだろうか。詳しく見ていきたい。
地方都市は、住宅地、商業地ともに三大都市圏を上回る上昇例も
東京、大阪、名古屋の三大都市圏は昨年に引き続き地価が上昇しており、商業地が5年連続、住宅地は4年連続で上昇している。特に、三大都市圏の商業地の昨年比の上昇率は3.5%と、昨年の同2.9%に比べて大きく上昇しており、年々その幅は大きくなっている。また、東京23区についてもすべての地点で上昇を続けており、主に中央区、千代田区、港区、品川区といった都心を中心に上昇率が拡大している。一方、住宅地は、プラスで推移しているものの上昇率はなだらかで、商業地の地価上昇が特に目立つ大阪圏においても、住宅地は3年連続横ばいとなっている。
そして、ここ数年上昇が目立っているのが、札幌市、仙台市、広島市、福岡市の「地方4市」である。地方4市では、商業地が7.9%と三大都市圏の商業地3.5%を上回っており、住宅地も2.8%といずれも三大都市圏を上回る上昇率となった。特に福岡市は同9.6%上昇と2桁近い伸びで、外国人観光客の増加や旺盛なオフィス需要を背景に、店舗やホテルなどの土地需要が増加している。
いずれも都心部での再開発や海外訪日旅行客の増加を受けて、商業施設やホテルの出店が進み、地方の主要都市でも地価の回復傾向が広がったと考えられる。
反対に、下落幅が最も大きかったのは秋田県だ。2014年から連続で住宅地、商業地ともに最も下落幅は大きく、住宅地が2.9%(前年3.4%)の下落、商業地が3.1%(前年3.8%)となっている。
商業地上昇率のトップ10に京都市が5地点ランクイン
全国の商業地の上昇に大きく影響していると考えられるのが、大阪圏の商業地の上昇率である。大阪圏では、商業地が昨年と比べて4.5%と東京圏の3.5%を上回っており、心斎橋やなんばエリアの海外旅行客の増加を受けて高い上昇率を示した。また、同じ大阪圏のうち、京都市も10.3%(前年6.5%)と大幅に上昇している。やはり、京都市においても、海外旅行客などの観光需要が地価上昇をけん引しており、全国の上昇率トップ10位中、京都市は5地点がランクインした。中でも、京都市伏見区は商業地で全国1位の上昇率29.6%を示し、下京区でも25.3%の上昇率となった。伏見区は、伏見稲荷大社周辺で外国人観光客が増えて店舗の出店ニーズが強く、主にホテル用地としての需要などが地価の上昇を押し上げる形となった。
なお、今回地価が最も高かったのは、商業地が中央区銀座2丁目の明治屋銀座ビルで12年連続の1位。1平方メートル当たり3,890万円で90年のバブル期(同3,800万円)超えとなった。また、住宅地の上昇率1位は、2年連続で北海道ニセコ地区の倶知安町だ。昨年比で28.6%の上昇となっており、背景には、今や町全体の世帯数約9,000世帯中、約15%にあたる1,400世帯が外国人居住者が占めている"リゾート需要"である。
都市圏における観光客の増加、国内リゾート地への移住者や外資による観光投資の増大など、いずれも外国人の需要増加によって地価が上昇している状況と言えるだろう。
三大都市圏から周辺都市へと地価上昇の動きは広がっているものの、今回の結果から、主要地方都市と地方圏との間でより一層二極化が進んでいることがわかる。
土地の所有者にとって、こうした土地動向は、相続税などにも大きな影響を及ぼすものである。今後も引き続き、上昇する地域と下落する地域が鮮明に別れていくのだろうか。その動向に注視したい。
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